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第16話:幻獣の噂と不思議な気配、そしてレイの「モフモフ探偵団」出動?!

 王都での滞在は、レイにとって毎日が新しい発見と刺激に満ちていた。宰相アルヴィンとの時間は、穏やかでありながらも、自身の祝福の「ご利益もりもり」っぷりを少しずつ理解する貴重な機会となった。ヴァルドとミリアは、レイが好奇心旺盛に王都を探索するのを温かく見守っていた。まあ、目を離すとどこかで何かとんでもないことをしでかしそうなので、ヒヤヒヤしながら、だが。

 ある日の午後、アルヴィンとヴァルドが王都の政務について「ああでもない、こうでもない」と真剣な顔で話し合っている間、レイはミリアとお友達(魔獣たち)と共に、宰相邸の広大な庭園を散策していた。手入れの行き届いた庭園には、見たこともない珍しい花々が「私を見て!」とばかりに咲き誇り、レイの〈大地の祝福〉が「おお、いい波動だ!」と心地よく反応する。

「まあ、こんなに綺麗な花が咲いてるわ!」

 ミリアが感嘆の声を上げると、レイは花にそっと触れた。すると、花びらがさらに鮮やかな色を放ち、まるで「レイくん、ありがとう!」とでも言いたげに、生き生きとした生命力に満ちていく。ふわふわがその様子をじっと見つめ、「ぴぃ……(レイ、お主、やるな)」と満足げに鳴いた。

 庭園の奥には、苔むした小さな祠があった。かつて、この場所に神が降臨したという伝説があるらしい。レイが祠に近づくと、〈神霊視〉が祠から微かな、しかし確かに神性の輝きを捉えた。それは、フレイ神の祝福とは異なる、より古く、しかし穏やかな、まるで「昔の知り合いかな?」と思わせるような波動だった。

「この祠、なんだかあったかいね。お昼寝にちょうどいいかも?」

 レイが呟くと、ルーナがレイの隣に静かに歩み寄った。彼女の青い瞳が、祠の奥を見つめている。

「……ワタシは……この場所を……知っているような……。あれ、この感覚は……?」

 ルーナの声が、レイの心に直接響いてきた。その声には、微かな戸惑いと、しかし確かに、遠い記憶の断片が揺れているようだった。ルーナの白い毛並みが、祠から放たれる微かな光に呼応するように、淡く輝く。まるで、月の光を宿したかのように。


 ▪️幻獣の歌声、そして王都での珍事?!

 その時、庭園の木々の奥から、かすかに、しかし明らかに「歌声」のようなものが聞こえてきた。それは、鳥のさえずりとも、風の音とも異なる、清らかで幻想的な響きだった。レイのお友達が、一斉にその音のする方向へ意識を集中させる。シャドウが影から身を乗り出し、その金色の瞳が「誰だ?私を差し置いて歌っているのは!」とばかりに音の源を鋭く探る。ミルはレイの肩で耳を立て、「何あれ?新種の鳴き声?」とばかりに首を傾げ、フラムの小さな炎がゆらゆらと揺れた。これは驚いている証拠だ。

「今の……歌声?こんなところで…?」

 ミリアもその音に気づき、訝しげに首を傾げた。

 バルドルが空から「ドシーン!」とばかりに舞い降りてきて、眉間に皺を寄せた。彼の鋭い感覚が、ただならぬ気配を捉えているようだ。まさか、幻獣が王都で歌い始めるとは。王都もついに、隠しきれない異世界の顔を見せ始めたのかもしれない。

「幻獣?」

 レイが問い返すと、ミリアは小さく頷いた。

「ええ。幻獣は、この世界でも非常に稀な魔獣よ。通常の魔獣とは一線を画す、特別な力を持つ存在なの。本来なら、こんな王都の中心部には現れないはずなんだけど……もしかして、レイの周りには変なのが集まってくる体質なのかしら?」

 再び、その神秘的な歌声が響いてきた。今度は、先ほどよりもはっきりと、より近くから聞こえる。その歌声は、どこか悲しげで、しかし同時に、希望に満ちた調べでもあった。レイの心に、強く惹きつけられるような感覚が湧き上がる。ルーナの体が、微かに震えているのが分かった。まるで、失われた記憶のパズルが、カチャリとハマろうとしているかのようだ。

「……この歌は……ワタシの……そう、ワタシも歌える!」

 ルーナがさらに深く、記憶を探るように呟く。

 その時、歌声が突如として止んだ。そして、木々のざわめきと共に、何かが素早く移動する気配がした。

「今のは……何だったんだ?まさか、新手の隠し芸か?」

 シャドウが影から現れ、警戒を緩めない。バルドルも、その鋭い目で木々の奥を睨んでいる。

「おそらく、何かの幻獣だろう。だが、なぜこの王都に……王宮のセキュリティ、ザルすぎるぞ!」

 バルドルの言葉に、ミリアは不安そうな顔をした。王都は国の中心であり、強固な結界と騎士団によって守られているはずだ。そこに幻獣が現れるなど、前代未聞の事態だった。いや、まさか、幻獣が王都観光にでも来たのだろうか?

 レイは、その歌声の主が、どこかルーナと似た、不思議な寂しさを抱えているように感じた。そして、何よりも、その歌声に強く惹きつけられた。まるで、「私を助けて!」と叫んでいるかのようだった。

「レイ、大丈夫? あまり奥に行かない方がいいわ。危ないからね!」

 ミリアが心配そうにレイの手を引くが、レイの心は、歌声が響いた木々の奥へと向かっていた。これは、もしや「モフモフ探偵団」の出番なのでは?!

 宰相邸の庭園に現れた幻獣の気配。それは、単なる偶然なのだろうか。それとも、レイの祝福や、ルーナの記憶が、新たな出会いを引き寄せているのだろうか。レイは、この不思議な出来事が、これから何をもたらすのか、期待と少しの不安を抱きながら、静かに空を見上げた。きっと、面白いことが起こるに違いない!

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