第14話:宰相の書庫と、祝福の真実、そしてレイの「ご利益もりもり」能力講座が迷宮入り?!
王都での賑やかな一日を過ごした後、レイたちはアルヴィン宰相の執務室へと戻ってきた。夕食を終え、レオンとリィナは「友人と会うんだから邪魔しないでね!」とばかりに、嵐のように学園での友人に会うため、一時的に外出している。静かになった執務室で、アルヴィンはじぃじの特等席、膝の上にレイを乗せ、優しくその金髪を撫でた。
「レイ、今日は特別な話がある。お前の持つ、ちょっとすごい能力についてだ」
アルヴィンの言葉に、レイは背筋を伸ばした。父さんと母さんも、真剣な表情でアルヴィンの言葉に耳を傾けている。セイリオスは近くの本棚に止まり、「ふむ、余の出番はまだかのう?」とばかりに目を閉じ、バルドルは窓辺から静かに「何が始まるんだ?」とばかりに見守っていた。他のお友達(魔獣たち)は、レイの影や足元で、それぞれ静かに…いや、実は耳をピクピクさせて聞き耳を立てている。
「ユングリング家は代々、フレイ神の血を継ぐ者として、この国の守護を担ってきた。で、お前のように、なんか知らんけど能力をたくさん持ってる奴は、滅多に出てこないんだ。まるで、神様がお前を特別扱いしてるみたいに、な」
アルヴィンはそう言うと、執務室の奥にある隠し扉を「ギィー」と音を立てて開けた。そこには、天井まで届くほど巨大な書棚が、まるで本の壁のようにそびえ立つ、広大な書庫が広がっていた。一般には決して公開されない、ユングリング家の、そしてこの世界の「へぇ~、そうだったんだ!」な真実が記された秘匿された書庫だ。
「ここには、ユングリング家の、そしてこの世界の秘密がたくさん詰まっている。お前の持ってる能力も、その一つだ」
アルヴィンは、書庫の奥へと進み、古びた一冊の分厚い書物を「ホコリがすごいな」とばかりに手にした。その表紙には、見慣れない複雑な紋様が描かれている。
「まず、お前の持つ〈契約の王印〉だ。これは、単に魔物や魔獣と契約する力じゃないんだ。それは、彼らの心を理解し、魂でギューッと繋がって、本当の『家族』になれるすごい力だ。通常の契約だと、魔獣は従属するが、お前の王印は、彼らと『よっ、相棒!』みたいな対等な絆を築けるんだ」
アルヴィンはレイの右手のひらに刻まれた紋様を指し、続けた。
「そして、〈神霊視〉。これは、神性を持つ存在や、神に連なる力を視認する力だ。これがあれば、お前は世界の『え、マジで?』な真実や、隠された力をより深く認識できるだろう。将来、悪い大人に騙されにくくなるぞ。」
「次に、〈言霊理解〉だ。これは全ての言語を理解し、会話できる力だが、それだけではない。それは、言葉の奥に込められた真意を汲み取り、相手の心を『あら、やだ』って動かしちゃう力でもある。これがあれば、お前は将来、交渉術の達人になれるかもしれないな。」
「そして、〈大地の祝福〉。これは自然魔法への絶対的な適性だけでなく、大地そのものの力を引き出し、生命を育む力だ。植物を瞬く間に成長させ、枯れた大地を蘇らせ、生命の傷を癒す。うん、まさに『お母さんの手』だな。」
アルヴィンは、レイの頭を優しく撫でた。
「これらの祝福は、それぞれが強力だが、互いに連携することで、さらに大きな力を発揮する。お前はまだ五歳だが、その内に秘めた力は、このヴァルドラ王国どころか、この世界の均衡を『ぐらぐら』させるほどに、かけがえのないものなのだ。……まあ、今はまだ『ご利益もりもり』って感じでもいいがな。」
アルヴィンの言葉は、レイの心に深く刻まれた。自身の力が、どれほどの意味を持つのか。そして、その力をどのように使い、何のために使うべきなのか。幼いレイの心に、漠然とではあるが、使命感が芽生え始めていた。
「なんだか、すごい力なんだね……?うん、すごいのはわかったんだけど……逆に何がすごいのか、よくわかんなくなっちゃった!」
レイはアルヴィンの説明を懸命に理解しようとしたが、アルヴィンが五歳児に合わせて一生懸命砕いてくれた結果、かえって核心がぼやけてしまい、何がどうすごいのかが、逆に分からなくなってしまったのだ。目の前にいるシャドウやミルが「家族」であることは分かっても、それが一般的な「テイマー」とどう違うのか、漠然とした「神様っぽい」が何を意味するのか、具体的なイメージはまだ掴み切れない。
アルヴィンは、レイの小さな頭を優しく撫で、その素直で可愛らしい、そしてちょっとズレた問いに微笑んだ。
「ああ、そうだ。今はそれで構わない。いつか、お前自身がその真価を『ひらめいた!』って感じで理解する時が来るだろう。そのために、我々もセイリオスも、お前をしっかりサポートしていこう。途中で投げ出すなよ?」
レイがアルヴィンの胸に顔を埋めると、アルヴィンは優しくレイを抱きしめた。
「ああ、期待しているぞ、レイ。将来が楽しみだ」
書庫の片隅で、セイリオスが丸眼鏡をクイッと持ち上げ、満足げに頷いた。
「ふむ……ようやく、自身の能力の片鱗を理解したようじゃな。ここからが、本当の『レイの冒険』の始まりじゃ。早く余にも活躍の場をくれんかのう。」
セイリオスはそう呟くと、再び瞑想に入った。バルドルは、レイとアルヴィンを見守るように、静かに佇んでいた。レイは、この王都で、そしてこの「じぃじの秘密基地」こと書庫で、自身が持つ力の真の可能性を、これからさらに深く探求していくことになると感じていた。さあ、どんな面白い発見が待っているのやら!