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第13話:王都への旅立ちと、兄姉の再会、そして両親と祖父を驚愕させた「チーム・レイ」の登場?!

 レイが五歳の誕生日を迎え、家族とお友達との絆を深めてから、数日が過ぎた。今日は、祖父である宰相アルヴィンからお呼び出しがあり、レイが初めて王都の街へと向かう日だ。母さんと父さんは、朝からてんやわんやの大忙しだった。まるで、大統領の移動準備でもしているかのように、念には念を入れている。

「レイ、ちゃんと必要なものは持ったか? 王都は広いから、はぐれないようにな!父さんは方向音痴じゃないが、お前はちっこいからな!」

 父さんが念を押すように声をかける。母さんも、レイの旅支度を念入りに確認していた。まるで、ミッションインポッシブルの秘密兵器を最終チェックしているかのようだ。

「レイ、これを着ていくといいわ。王都は色々な人がいるから、目立ちすぎないようにね。ほら、その金髪とエメラルドグリーンの瞳は、まるで動く宝石だから!」

 母さんが差し出したのは、森の色によく馴染む、深緑色のフード付きマントだった。レイの金髪とエメラルドグリーンの瞳は確かに目を引く。マントを羽織ると、レイの姿はすっぽりと隠れ、まるで小さな森の妖精のようにも見えた。うん、隠れる気があるのかないのか、ちょっと微妙なラインだ。

「これで完璧だね!」

 レイは嬉しそうにマントを纏い、くるりと回ってみせた。

 通信所へと向かう途中、お友達がレイの周りに密かに、いや堂々と集まってきた。シャドウはレイの影に「フッ、お前からは離れん」とばかりに気配を放ち、ミルはレイの肩に「ぴぴぃ!」と張り付き、ふわふわは足元でモフモフと寄り添い、フラムはレイの頭の上で小さな炎を揺らしながら「僕も行く!」とばかりに待機。ルーナは、その白い毛並みを月の光のように輝かせながら、レイの横を静かに歩く。バルドルは既に空へと舞い上がり、上空から「何かあったら上空から援護射撃だ!」とばかりに見守っている。

「みんな、一緒に行こうね!」

 レイが声をかけると、お友達はそれぞれの方法で応え、レイの足取りは一層軽くなった。ログハウスから少し離れた通信所に入ると、転移陣が淡い光を放ち始めた。お友達は転移装置を使えないが、レイとの契約の絆が強固なため、レイが転移すれば、彼らも勝手に追従できるのだ。まさに、お友達の「密航作戦」は完璧だった……と、彼らは思っていた。

「さあ、レイ。じぃじが待ってるぞ」

 父さんの言葉と共に、光が強まり、視界が真っ白になる。


 ▪️王都の再会、そして「動く動物園」と化した一行が起こす驚愕の事態?!

 光が収まると、そこは宰相の執務室があるフロアだった。重厚な石造りの壁、高い天井、そして窓からは王都の活気ある街並みが一望できる。転移陣が設置された広間には、執務机から少し離れた場所にあるソファに、白銀の髪を持つ祖父アルヴィンが座り、静かに本を読んでいた。彼がレイたちの姿を認めると、その顔に穏やかな笑みが浮かんだ。

「ようこそ、レイ。そして、ヴァルド。ミリアも長旅ご苦労だったな」

 アルヴィンは、レイを優しく抱き上げ、その頬を撫でた。レイは、祖父の温かい手に身を委ね、王都の空気に胸を膨らませた。

「じぃじ、ひさしぶり!」

 レイが元気よく挨拶すると、アルヴィンは目を細めて頷いた。その時、フロアの扉がノックされ、勢いよく開かれた。

「レイ!」

 聞き慣れた声に、レイが顔を上げると、そこに立っていたのは、見慣れた双子の兄と姉、レオンとリィナだった。二人は学園の制服を身につけ、少し大人びた雰囲気を纏っている。彼らはレイの姿を見つけると、一目散に駆け寄ってきた。まるで、獲物を見つけた猛獣のように。

「レイ、会いたかったわ! 元気にしてた?ねぇ、お土産話たくさんあるんでしょ!」

 リィナがレイをぎゅっと抱きしめ、レオンもその頭を優しく撫でた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん! おかえり!」

 レイは兄姉の再会に、心から嬉しそうな笑顔を見せた。

 その直後、広間の静寂が、一瞬にして打ち破られた。レイの足元から、ぬるりと漆黒の影が伸び、シャドウが姿を現した。父さんとアルヴィンが「え?!」と声を上げる間もなく、レイの肩からはミルが「ぴぴぃ!」と鳴きながら飛び出し、足元からはふわふわが「ぴぃ……」と可愛らしい鳴き声で現れた。さらに、レイの頭上からはフラムが小さな炎を揺らし、ルーナが月の光のような白い毛並みを輝かせながら、優雅に広間に現れたのだ。

「え、えええええええええええええええええええっ?!」

 父さんの顔は、完全に白とび状態だ。隣のアルヴィンも、普段は泰然自若としているはずなのに、口をあんぐり開けて、まるで石像のように固まっている。彼らが知る転移陣の常識は、今、盛大に崩れ去ったのだ。

「お、おいヴァルド……まさか、その、彼らは……」

 アルヴィンが震える声で父さんに問いかける。父さんは額の汗を拭いながら、か細い声で答えた。

「は、ははは……ええ、父さん。レイの、お友達です。どうやら、転移に巻き込まれて、ついてきてしまったようで……」

 その時、広間の窓がガタガタと音を立てたかと思うと、巨大な翼を広げたバルドルが、堂々と窓枠に止まった。その威容に、広間の空気が一瞬で凍り付く。

「な、なんだあれは!?」

 レオンが驚きの声を上げ、リィナは「きゃあああ!」と小さな悲鳴を上げた。彼らが知るレイのお友達は、せいぜい小さな黒猫やモモンガだったはずだ。それが、目の前には黒豹にモモンガ、謎の白い毛玉、炎の塊、白い狼、そして巨大ワシ! まさに、広間が「動物園化」している。しかも、その動物たちは、どれもこれも普通じゃないオーラを放っている。

「ふむ……賑やかになったものだ」

 アルヴィンは、しばらく固まった後、大きく息を吐き出し、眼鏡の位置をクイッと直した。その顔には、驚きと呆れ、そしてほんの少しの面白がっているような表情が混ざっていた。父さんも、アルヴィンのその言葉に、ようやく我に返ったように苦笑いを浮かべた。

「ちょうどいいところに来たな、レオン、リィナ。レイも来たことだし、今日は家族みんなで、王都の店で食事でもするか。もちろん、奢りは私だぞ!……ただし、その、お友達は、もう少し目立たないようにしてくれると助かるがな……」

 アルヴィンの提案に、レイはもちろん、レオンとリィナも目を輝かせた。特に、王都で暮らす彼らにとって、母さんが作る家庭料理は恋しいものだが、たまには外食も気分転換になる。ごちそうと聞けば、テンションが上がるのは人類共通だ。

 王都の賑やかな通りを、父さんと母さん、アルヴィン、レオンとリィナ、そしてマントで隠れたレイが歩く。レイはマントで姿を隠しているものの、その足元にはシャドウの影が微かに揺れ、頭上にはミルとフラムが、足元にはふわふわとルーナが寄り添っている。そして、上空にはバルドルが悠然と舞い、周囲の状況を常に監視していた。王都の人々は、時折空を見上げては、バルドルの雄大な姿に驚きと畏敬の念を抱いていた。「おい、あれって鷲か?いや、デカすぎだろ!」「もしかして、あの貴族様、お友達を連れてきたのか?」と、ひそひそ話が聞こえてくる。まるで、ユングリング家一行が「動く動物園」と化しているかのようだった。しかも、その動物園は、王都の人々に動揺と好奇の視線を振りまいていた。

 レイは、初めて見る王都の景色に目を奪われた。活気あふれる露店、行き交う人々、見たこともないような建物。全てが新鮮で、レイの好奇心を刺激する。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、王都ってすごいね!」

 レイが興奮気味に言うと、レオンとリィナは嬉しそうに微笑んだ。

「そうだろう? ここは国の中心だからな。何でもあるぞ、レイ」

「美味しいものもたくさんあるのよ! レイが喜びそうなデザートのお店も知ってるの! あ、あそこのカフェのケーキは絶品よ!」

 家族との再会、そして初めての王都の体験。レイの五歳の誕生日が、新たな冒険の始まりを告げるかのように、鮮やかに彩られていくのだった。さあ、この賑やかすぎる「チーム・レイ」、次は何を巻き起こすのやら?

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