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第11話:黒豹と空駆ける仲間、そして料理の秘密基地は「母さんの隠れ家」?!

 シャドウが漆黒の黒豹としての力を取り戻して以来、レイの日常は新たな深みと興奮を増した。シャドウは普段はレイの影の中に潜んでいるが、レイが呼べばいつでもその雄大な姿を現す。その威圧感は健在だが、レイに向けられる眼差しは変わらず優しかった。まるで、「仕方ない、お前のために出てきてやるか」とでも言いたげな、ツンデレっぷりだった。

 ある日の昼下がり、ログハウスの庭では、バルドルが大きな翼を広げ、優雅に空を舞っていた。その背には、楽しそうに風を切るミルがちょこんと乗っている。ミルはバルドルの背中が気に入ったようで、よく一緒に空中散歩を楽しんでいた。まるで、空飛ぶ遊園地の乗り物に乗っているかのようだった。

「わーい! もっと高く!」

 レイが空を見上げると、バルドルはミルの声に応えるかのように、さらに高度を上げた。その様子は、まるで親子のように微笑ましい。バルドルは内心で「よっ!今日のフライトも最高だろ!」と得意げだったに違いない。

 一方、庭の片隅では、レイがふわふわと一緒に家庭菜園の手入れに励んでいた。ふわふわが大地の魔力を送ることで、野菜たちは驚くほどの速さで成長し、つやつやと輝いている。

「ふわふわのおかげで、いつも新鮮な野菜が食べられるね」

 レイが優しく頭を撫でると、ふわふわは嬉しそうに「ぴぃ!」と鳴いた。その横で、フラムが小さな炎を噴き出し、熱心に土を温めようとしている。

「フラム、焦がさないでね」

 レイが慌てて注意すると、フラムはしょんぼりと炎を引っ込めた。それでも、レイが料理をする時には必ずフラムを傍らに置き、火加減の指導を続けていた。フラムも真剣な顔でレイの手元を凝視し、少しずつだが火加減の調整が上手になってきているようだった。きっと、いつかは焦げない料理が作れるはずだ。

 そして、ログハウスの中では、セイリオスがいつもの定位置で居眠り……もとい、瞑想に耽っている。

「ジジィ、まだ寝てるのか?」

 バルドルが空から戻り、窓辺に止まると、セイリオスに話しかけた。

「ふぁ~……何じゃ、バルドル。余は今、深淵なる知識の海を探索しておったのじゃ」

 セイリオスは、うっすらと目を開け、丸眼鏡をクイッと持ち上げた。まるで「邪魔するな!」とでも言いたげな、迷惑そうな顔だった。

「へぇ、夢遊病じゃなくて良かったな。また永遠の眠りにでもついたのかと思ったぜ」

 バルドルが皮肉たっぷりに言うと、セイリオスはむっとした顔で羽根を広げた。

「まだピチピチじゃわい! お主こそ、そろそろ隠居の身だろうに、いつまで空を飛び回っておるのじゃ」

「冗談きついぜ、ジジィ。俺はこれからが本番だ。なぁ、レイ」

 バルドルはレイの方を向き、大きく羽ばたいてみせた。セイリオスとバルドルのコミカルな掛け合いは、今やログハウスの日常風景の一部となっていた。もう誰も止められない。


 母さんの秘密基地、そして幻の「星斬りの剣」?!

 その日の夕食後、レイは母さんに連れられ、ログハウスの地下へと降りていった。そこには、これまで知らなかった秘密の空間が広がっていた。石造りの壁には様々な調理器具が吊るされ、中央には巨大なオーブンと、見たこともないような魔道具が並んでいる。まるで、どこかの魔術師の隠れ家のような、わくわくする場所だった。

「ここが、母さんの秘密基地だよ」

 母さんが誇らしげに言うと、レイは目を輝かせた。

「すごい! 何ができるの、ここ?」

「ここではね、普通のキッチンじゃ作れないような、特別な料理を作るのよ。それに、色々な食材の加工もできる。もちろん、母さんが冒険で手に入れた珍しい魔物素材とかもね」

 母さんはそう言って、壁にかけられた古びた剣を指差した。その剣は、使い込まれているが、どこか神聖な輝きを放っている。

「そして、この剣は、かつて母さんが冒険者だった頃に使っていた、私の愛剣よ。『星斬りのスターブレイド』。どんな硬い魔物の鱗でも、これを振るえばバターのように切れるんだから」

 母さんは、剣を抜き、軽々と構えてみせた。その姿は、育児休業中の母親というより、やはり熟練の冒険者そのものだった。レイは、母さんの秘められた一面を垣間見た気がした。まるで、自分の母さんが、実は伝説のヒーローだったとでも言われたかのようだった。

「ここなら、フラムも火加減の練習をたくさんできるわね」

 母さんがフラムの頭を撫でると、フラムは嬉しそうに「ガォ!」と鳴いた。この場所でなら、フラムも安心して料理の腕を磨けるだろう。いつか、焦げないローストチキンをレイに振る舞う日が来るかもしれない。

 レイは、この新しい秘密基地で、フラムと共に料理の腕を磨くことを決意した。そして、母さんからこの世界の食材の加工方法や、料理の奥義を学ぶことが、今から楽しみで仕方なかった。きっと、これから食卓は、さらに美味しく、賑やかになることだろう。

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