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第10話:影に宿る古の力、黒豹の咆哮、そしてまさかの「巨大影」でベッドが狭い?!

ルーナとの契約を終え、レイと従魔たちはログハウスへと戻った。新たな仲間が増えた喜びで、レイの心は満たされていた。ルーナは最初こそ警戒していたが、レイの優しさと、他の従魔たちの歓迎に、次第に心を許し始めていた。まるで、新しい家族に迎えられて、ほっと一息ついているかのようだった。

その日の夜、レイは自室の天蓋ベッドに横たわり、静かに眠りについた。シャドウはいつものように、レイの影の中に潜り込んでいる。ミルはレイの胸元で丸くなり、ふわふわは足元で、フラムはベッドサイドテーブルの上で、それぞれ安らかな寝息を立てていた。バルドルは窓辺に止まり、夜空を静かに見守っている。まさに、レイの寝室は、動物たちの楽園と化していた。

真夜中、レイはふと、体の中から湧き上がる強い魔力の波動で目を覚ました。それは、これまでに感じたことのないほど強大で、どこか懐かしい、そして少しだけ苦しみを伴うような波動だった。その魔力の源は、レイの影の中にいるシャドウから発せられている。

「シャドウ……?」

レイが影に意識を集中させると、シャドウの意識がレイの心に直接語りかけてきた。

「……レイ。契約の力が、私の封じられた力を呼び覚ましている……」

シャドウの声は、以前よりも深く、そしてどこか苦しげだ。レイの契約の王印が、脈打つように熱を帯びている。ルーナとの契約によって、レイの祝福の力、特に契約の王印の力がさらに強まったことが、シャドウの古の力を覚醒させているのだ。

「苦しいの? シャドウ!」

レイが心配して声をかけると、シャドウの意識はさらに深く沈んでいく。その魔力の波動は、ログハウス全体を震わせるほどに強くなっていた。まるで、ログハウス自体が心臓になったかのようにドクンドクンと鳴り響いた。

ヴァルドとミリアも異変に気づき、レイの部屋に駆けつけてきた。彼らはレイの影から放たれる圧倒的な魔力に驚き、警戒するように身構える。バルドルも、窓から室内に舞い降りてきて、シャドウの異変に気づいているようだ。

「この魔力は……レイの従魔なのか!?」

ヴァルドが驚きの声を上げた。ミリアもレイの元へ駆け寄り、心配そうにレイの顔を覗き込む。

「レイ、どうしたの?」

レイは、苦しむシャドウのために、無意識のうちに大地の祝福の力を放っていた。緑色の温かい光がシャドウの影へと流れ込み、彼の苦しみを少しでも和らげようとする。レイの優しさが、シャドウの心を震わせた。

「……レイ……。覚悟しろ……」

シャドウの意識が、最後の力を振り絞るようにレイに訴えかけた。レイは迷うことなく頷いた。

「うん! シャドウ、頑張って!」

レイの言葉が、シャドウの心を支えたのだろう。次の瞬間、レイの影の中から、漆黒の光が激しく噴き出した。光は、レイの部屋を、ログハウス全体を、そして森の奥深くへと広がり、夜空を照らした。まるで、夜空に漆黒のオーロラが現れたかのようだった。


シャドウ、まさかのスーパーモデル体型に?!

光が収まった後、レイの影から現れたのは、もはや小さな黒猫ではなかった。そこにいたのは、威厳に満ちた漆黒の黒豹だった。その体躯は、レイの身長を遥かに超え、筋肉が隆起している。金色の瞳は以前よりも深く輝き、その瞳の奥には、古の賢さと、圧倒的な力が宿っていることが見て取れた。まるで、ファッションショーのランウェイを闊歩するスーパーモデルのような、完璧なプロポーションだった。

「ガアアアオォォォォォォォォッ!」

黒豹となったシャドウが、大きく口を開け、咆哮を上げた。その声は、森の獣たちを震え上がらせ、ログハウスの窓ガラスを微かに揺らすほどに力強い。その迫力に、ミルはレイの髪の中に隠れ、ふわふわはヴァルドの足元に、フラムはミリアの影に隠れた。まるで、「ひぇーっ!」とでも言いたげな、従魔たちの戦慄ぶりだった。しかし、レイは一切怯むことなく、目の前の黒豹を見上げていた。

「シャドウ……! 本当の姿だね!」

レイが感動の声を上げると、黒豹はレイの足元に優しく頭を擦り付けた。その大きな体は、以前よりもはるかに温かく、レイの体を包み込むようだ。

「……ふん。ようやく、本来の姿に戻れた。これも、お前のおかげだ、レイ」

シャドウの声は、威厳に満ちていながらも、レイへの感謝と、そして以前のような親しみを込めて響いた。彼の意識は以前よりもはるかに明確になり、記憶も鮮明に戻っているようだった。

「これからは、お前を守る盾となる。影から、貴様を――いや、お前をずっと見守ってやる」

シャドウはそう言うと、再びゆっくりと、しかし確実に、その巨大な体をレイの影の中へと滑り込ませた。彼の存在感は、レイの影の中にしっかりと宿り、レイの存在をさらに強固なものにしたように感じられた。そして、レイのベッドが、なぜか少しだけ狭くなった気がした。気のせいではないだろう。

ヴァルドとミリアは、目の前で起こった光景に、ただただ呆然としていた。彼らの知るシャドウは、ただの小さな黒猫だったはずだ。しかし、今、その猫が巨大な黒豹となり、再び影に潜り込む様を目撃した。

「あれが……レイの従魔の、本来の姿なのか……」

ヴァルドが絞り出すように呟いた。ミリアも、「こんな力を持っていたなんて……」と驚きを隠せない。まるで、自分たちの日常が、急にファンタジーの世界に転生したかのような顔だった。

バルドルは静かにその様子を見守っていたが、シャドウが影に潜むと、満足げに一つ頷いた。セイリオスは、既にいつものように居眠りしているが、その口元には微かな笑みが浮かんでいるように見えた。もしかしたら、夢の中で美味しい魚を食べているのかもしれない。

レイは、影に宿るシャドウの確かな存在を感じながら、静かに目を閉じた。これで、彼らとの絆はさらに深まった。レイの異世界での生活は、ただ楽しいだけでなく、計り知れない可能性と、まだ見ぬ驚きに満ちていることを改めて確信したのだった。

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