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第四十話 限界

「なるほど、確かに赤目の力というのは凄まじいものですね。見えているだけでなく体にも変化をもたらしている様だ……では次は拙者の方から行きますよ」

 そう言うや否や、若杉も連撃を放ってきた。累はその赤い目で動きを捉えて躱し続けるが、若杉の動きの殆どが先ほどの累の動きの模倣であった。動きだけではないその速さまでも完全に模倣して見せたのだ。先ほどの累と同じところで、その攻撃の区切りは付いた。


「技や動きはともかく、なぜ速さまで模倣出来るのだ!?」

 累は息切れをしながらも若杉に聞く。

「赤目のからくりは拙者には分かりませぬ。しかし変化させるとは言っても、元々の体は同じもの。先ほどは力を速さに振り分けたのでしょう。拙者はそこまで正確に人間の動きと状態を解析し記憶できるのです。これは杉若の血筋に代々伝わる特殊な力なのです」

「杉若? 若杉ではなかったのか?」

「拙者今は若杉姓を名乗っておりますが、元は関が原では西軍の武将であった杉若無心の血筋なのです」


「私とて赤目の一族は、西軍であった真田幸村公にお仕えしていた事を知らぬわけではありません。しかしそれはもう終わった話。今更故人を現世に呼び戻してどうしようというのか?」

「勘違いなされるな。決して関ヶ原と徳川家に杉若家がされた事の私怨などという小さき物で動いているわけではござらん。日の本と侍の将来を憂いての事なのです。もう良いでしょう。賛同を得る事は諦めますが、黙って法具はお譲りください」


 累には迷いが生じていた。自分は生まれた時から太平の世であった。お国の事など何も考えすに生きて来たし、今はこうしてお家の事だけを考えて婿探しをしている。

 それに比べてこの若杉雨丸はどうだろうか? 己のことではなく、他の侍や日の本の事を考えて行動している。それが正解かどうかは累には分からないが、志は立派なものではないだろうか? そうしてなんといっても雨丸は歳は行っているが、若干のイケメンであった。あり寄りと言ってもいい。


「累殿! そのような世迷言に耳を貸す必要はありませんぞ!!」

 どこからとなくそう声がした。声のした方を若杉と累は見る。そこには斎藤丈一郎と塚原卜伝の姿があった。

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