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柊家当主の在る非日常 1年次編  作者: 夜亜
第1章 国立大日本帝高院、開院。
2/5

第2話 特殊ルール

2話目です!

前話を読んでいらっしゃらないと、今回の話は不明な点が多いことと思います。作者の文章力が足りずにお手数をおかけしますが、前話から読んでいただけると幸いです…。

桜舞う春。

新入生330名が、国立大日本帝高院に足を踏み入れた。

各30人ずつの編成。

2年生3クラス。

1年生8クラス。

なお、2年生クラスも1年生クラス同様、新入生の扱いだ。

今までそれぞれ違う高校に通っていたところを、この国立大日本帝高院に籍を移したかたちだからだ。


何故そんなことになったかというと、ひとえに国立大日本帝高院の特殊事情が絡んでいる。


柊、皇、圍、京。

この四大財閥の各代表者4名が、2年間のうちに、3名以上揃うこと。

かつ、その3名以上が満15歳にならない限り、国立大日本帝高院は開院されない。


2年生クラスには、圍家の代表者・圍於欹と、京家の代表者・京理創がいる。しかし、この2()()()()()()()、「3人以上が満15歳以上のとき開院される」という条件が今まで満たされなかった。

よって、1年生クラスにいる柊家の代表者・柊聖夜と、皇家の代表者・皇周が満15歳となるタイミングを待つかたちで、ようやく今日、この学院は開院されたのだ。

つい1か月前、理創が「お前達二人が生まれるのが遅れたがために無駄に待つはめに…」と聖夜と周に向かってそう言ったのは、そのためだ。


だが、いよいよ戦いは始まろうとしているのだ。


国立大日本帝高院の開院。

まず最初に行われたのは、講堂での「開院の儀」だった。入学式のようなものだといって、差し支えない。

大勢の生徒が整列している中で、壇上に1人の男性がのぼる。

50代半ば、といったところか。柔和な笑みを浮かべる一方、その眼光は猛禽な何かを秘めている。

聖夜は他の生徒同様にその男性を見上げ、そんな印象を抱いた。

男性は顔をマイクに近付け、語りを始める。

「令嬢令息の皆様。ようこそ、この国立大日本帝高院へ。私はこの学院の今代の理事長を務める、六郷博です。以後、お見知りおきを」

随分と学生相手に恭しい口調だ。理事長ともなればそれなりに社交界でも地位を築いている人間であることが多い。聖夜も六郷博という人物は噂で耳にしたことがある。だから、これは本人の性分か、それとも今後の展開を示唆する策略か。

まあ、今はどちらでもいいな。

聖夜は続けて、六郷の言葉に耳を傾ける。

「この学院は皆様も大変周知のことではありますが、他の高校と比べ、環境が特殊です。まず、この学院の修了課程は全2年。3年間在籍する、といった例外はございません」

国立大日本帝高院は、開院後2年で閉院となる。約140年間の歴史を持っていながら、たったの18年間しか開かれていないのも、その特殊ルール上だ。

「この学院ではクラスが2年間変更なく修了します。そして何よりーーーこの学院が特殊なのは、クラス間で閉院までの2年間に学院側からランキングがつけられるということ。勉学、運動、芸術、フォロワーシップ、社会貢献………さまざまな観点から皆様は評価を受けることになります。その評価は数値化され、ランキング決定の要素となるのです。皆様の目標は、閉院時の総合ランキングで全クラス1位を獲得すること。それにより、クラスの代表者はとある特権を手にすることが可能になります」

とある特権とは、全能大権のことだろう。

要は閉院時に発表される総合ランキングで1位に輝いたクラスこそが、四大財閥の長だ。

ここまでで六郷が語った内容は、今までの国立大日本帝高院のルールだ。

しかし、事前に「柊の代表者」として招集され、全てをきいている立場だからこそ言えるのだがーーー


今年はとんでもないルールが追加されたのだ。


聖夜でさえ、運営陣は何を考えているのかと耳を疑った。


そして、六郷はそれをついに口にした。


「今年から国の方からあるルールが追加されました。もう皆様の大半がお気付きでしょう。なんといっても新入生の半数に近い人数が、その追加ルールの対象生ですから」


「今までこの国立大日本帝高院は、いわば四大財閥の長を決めるためだけに存在してきた。ですが、時代は激動するもの。日本国も例外ではありません。四大財閥は日本経済を支え続けてきました。しかし!ーーーそれでいいのでしょうか、皆様。政府は日本国に新たな風を吹かせようと、このルールを追加したこと、ご理解いただきたい」


この男……やはり。

聖夜は確信に近いものを得て、他の財閥の代表者達の姿を探した。

案の定、圍於欹は苦い顔をし、京理創に至っては激しい怒りを露わにして、今にも理事長の六郷に掴みかかりそうな勢いだ。

皇周はというと……他人事めいた顔をしている。権力事には興味がないといった様子だった彼女らしくはあるが。

聖夜も周と同じ感想だ。本音を言うと、こんな茶番どうでもいい。


そして、六郷はその新ルールを発表したのだった。

「本来のクラスは四大財閥の数に従い、4つのみでした。柊クラス、皇クラス、圍クラス、京クラスの4つ。しかし、今年からは各学年最大新たに4つのクラスを新設いたしました」


社交界を編成する上流階級の人間は四大財閥の人間だけではない。

古くより天皇に仕え、高い地位を確立してきた名家というものがある。

名家は、はっきり言ってしまえば、四大財閥の4家とは対立の立場にある。四大財閥は名家上がりというわけではなく、始まりは小さな呉服屋。力ある町人、商人といえども、明治当時の身分格差においては名家たちに仕える身であった。

現代では、経済力で圧倒的な差をつけた四大財閥。

しかし、旧華族・皇族である彼ら名家は、何より自身の血筋を尊び、社交界でーーー特に政治界で大変強い発言力を持っている。財閥4家と違い、分家が多いがためにその道の支持者も比例し、数の戦いでは財閥側が不利となる。

また、名家の本家筋ともなると、四大財閥に所属しない者も多い。


そんな背景があるというのに、ここにきての追加ルール。

財閥界は今、何か不穏なものが立ち込め始めたのだとしか思えない。

こうなることは数年前から聖夜も予想していたことではあるが、それ以上に規模が大きい気がした。

だからといって、自分の計画に変更はない。


「……まあ、上手くやるしかないな」

新ルールの発表で喧騒の中にある財閥クラスの面々。聖夜は1人、そんな事を呟いた。





また次話も読んで頂けると、嬉しいです!

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