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異世界に召喚された俺は、ご立腹したお嬢様を餌付けで宥めることにした。  作者: 原案:ダンディ高松 執筆:長串望 加筆:ダンディ高松
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1-1

長串望先生に執筆していただいた「俺とお嬢の迷惑道中」をベースに長串望先生の文章を原案のダンディ高松が加筆・編集して噛み砕いた作品がこちらになります。

※「俺とお嬢の迷惑道中」の設定やストーリー展開に若干の変更点があります。

 「ヨシダ、ゴミ出ししといてー」

 「はいよー」

 

 俺は料理長兼店のオーナーに言われたとおり、ゴミを集めて店の裏に向かった。

 ビルに囲まれ薄明りしかない裏路地で、ダストボックスにゴミを入れたとき

 足元に光る模様が広がった。


 「ゲームで見た魔法陣ぽいな……」


 と思った次の瞬間にはまばゆい光に包まれ、俺は知らない部屋の中で棒立ちしていた。


 蝋燭のちらちら揺れる灯り。埃っぽいようなカビ臭いような、どこか古本屋か図書館を思い出させるような匂い。ヨーロッパの古城を思わせる石造りの壁。

 そして俺の前には目を輝かせるピンクがかった金髪の美少女がいた。


 回らないなりに空想に慣れた頭は、ちらっと思ったね。


 「異世界転生……いや、召喚ってやつか」


 毒されてるよな、まったく。


 まぁ、ちょっとは期待したし、向こうさんも何やら期待してたらしいんだが、残念ながら俺は特別な存在じゃあなかった。チートもない。ギフトもない。スキルもない。

 くたびれかけた三十路のおっさんだった。

 そう、俺は俺のままだったのである。


 せめてものご都合主義ってやつか、何とか言葉だけは通じたが、落胆は凄まじかったな。

 俺の方はなにしろ、絶望と仲良くしてる現代日本人だ。諦めも早い。

 だが相手はなぁ、古いおとぎ話の召喚魔法なんて試してみようとする夢見る十代だ。

 癇癪起こしてどうなるかと思ったぜ。


 幸いというか、その美少女はともかく親御さんはいい人でな。俺が召喚されたとかどうとかは半信半疑だったが、娘のわがままに振り回されたせいだってのはわかったんだろうな。

 

 「ヨシダ殿、ご迷惑をお掛けした。」

 

 謝罪しつつ、屋敷で雇ってもらえることになった。

 勝手も分からん異世界で、いきなり衣食住をどうにかするには厳しかったので本当に助かった。


 現代っ子の俺としてはいささか不便な中世ヨーロッパ風世界だったが、近代よりっつうか、割と発展はしているみたいで、長いこと戦争もない天下泰平の時代だってのは助かった。

 魔物も魔法も昔はあったらしいが、今はもう無いということらしい・・・

 

 「あの召喚は魔法じゃないのか?」

 

 という疑問は残るが追及すると厄介なことになりそうなので、考えないことにした。


 仕事は調理人をしていたことを伝えていたので、厨房につけてくれた。

 勝手は違うがやり方を覚えるのはそう苦でもなかった。

 ひねれば水が出る蛇口も、簡単に火がつくガス・コンロも、食材を山と詰めておける冷蔵庫や冷凍庫も、もちろん電気だってないが、俺一人じゃない。現地の頼れる先輩方の助けもあり住み込みで働かしてもらってもいる。お給金もあるわけだ。当座の暮らしとしちゃ、悪いもんじゃない。


 そんな中で問題があるとすれば、例のお嬢様である。

 カビの生えたおとぎ話を掘り起こしてくる情熱。

 召喚魔法なんて胡乱なものを試してみようとするフットワークの軽さ。


 そーら聞こえてくるぞ。


 「ヨシダ!ゴブリン狩りよ!」


 そして付き合わされるのは俺なのだ。

 行動力のあるファンタジー脳ってのは、まったく手に負えない。

 魔物はもういないというのに、どこからゴブリンなんて名称を仕入れてくるのか。

 ゴブリンなんていません!

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