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第五話 可愛い女の子がパーティに入ってくれた

 俺達が酒場に来たところ思ったより切られたやつが多くいた。

しかしそういう奴らは既に諦めていたり新しく同じような似たもの同士で新たにパーティを組んでたりしてる奴もいた。


「だめだな…」


一通り見て回ったが良さそうなのは見つからなかった。それどころか俺たちと同じことを考えたやつが複数いたのか捨てられた奴を勧誘していたやつもいる。そしてそれらの結果から有望そうなのは既に居ない。


「こりゃだめだな」

「そうだね」


俺に任せると言ってはいたが少しもあの人が欲しいというような目をすることも無いミーシャ。


「別の場所を当たろう。後は冒険者ギルド…か」

「いい人いるかなぁ?」

「ここよりはいるんじゃないか?」


ここにはパーティによるメンバー募集の張り紙があるが逆のパーティを募集という張り紙はない。ならばメンバーを集めるのにはやはり向かないかもしれない。しかしギルドならば条件に適合した人を勧誘できる可能性もある。


「ならそっちも行ってみよっか」


そう彼女と話を纏めて出ていこうとした時だった。


「おい、メンバーの勧誘は出来たか?」


1人の男が偉そうな態度で大声をあげながら酒場に入ってきた。

その男は1人の少女にその言葉を向けているらしかった。

1人で席でも取っていたのだろうか。6人ほど座れそうなテーブルに1人ポツンと座っていた、黒髪の大人しそうな少女だった。


「…ご、ごめんなさい…」

「はぁ…使えねぇ女だな…」

「…ごめんなさい」


震える声で少女は男に謝っていた。

それなのに男はヘラヘラ笑ってまだ何か言おうとしている様子だ。


「おい、あんた」

「あぁ?なんだお前?」


ミーシャの俺を止める言葉も無視して俺の体は動いていた。

男が俺の顔を見てくる。勿論友好的なものでなく厳しいものだった。


「何があったのかは分かんないけどその子謝ってんだから許してやったらどうだ」

「許せ、許せ、か」


そう呟いて顔を抑えてふはははははと笑い始める男。何がおかしい。


「何故許さなくてはならん?」

「謝ったら許す。普通のことだろ?あんたはその普通が出来てないんだよ」

「こいつは俺が与えた仕事を満足にこなさかったんだよ。大事な大事な仕事をな。でも、まいいや」


そう言って俺から視線を外して少女を見る男。その目はゴミを見るようなそんな目だった。


「お前の代わりが見つかったからお前もう抜けていいぞ。貴重なヒーラーだから入れてやったが、つっかえねぇゴミが。良かったな!これ以上この俺様たちの迷惑にならずにな!」


虫でも追い払うかのような仕草で手をひらひらと揺らしている。


「待ってください…それだけは…私これからどうすれば…」

「勝手に野垂れ死んでろ。ほらいくぞ」


少女にきつい言葉を浴びせるだけ浴びせて男は仲間と共に外に向かっていった。


「うぅ…どうして…」


反対に少女は泣き始めた。


「元気出せよ。あんな奴らともういる必要も無いってそう考えれば済む話だろ?」


いたたまれなくなった俺は少女の隣に腰を下ろした。

今は兎に角励ましたかった。

自分が同じことをされたので彼女の気持ちは痛いほどによくわかる。


「そうだよ。あんな奴らと一緒に居なくて良くなったって思おうよ」


俺の横に腰掛けたミーシャもそう励ます。


「…でも…私…どうしたらいいか…」


そう言って机に突っ伏して泣き始める少女。


「…」

「フレイ…今なら押せばいけるよ…」


俺の耳元で悪魔のようなことを囁いてくるミーシャ。悪魔かお前は、突っ込みたくなったが、しかしこの状況を利用するために来たのもまた事実だった。

それに聞く限りこの子は俺たちに足りていないヒーラーという役割を請け負ってくれるはず。


「急で悪いんだが良かったら俺達のパーティに入らないか?これもまた悪いんだが俺達はパーティ追放された奴らだけど」


追放された奴らばかりで出来上がるパーティがどんなものなのか、というのは考えなくても何となく分かるレベルのものだ。だが選んでいる場合でもないだろう。


「え、いいんですか?」


しかし少女は意外にも俺の顔を見てそう聞いてきた。

しかもさっきまで泣いていたと思えないくらいの笑顔でだ。

とりあえずは持ち直してくれたようでうれしい。


「嘘をついてどうするんだ。あんたがどうかは分からないが俺達はあの塔を攻略したいと考えてる。そのために力を貸して欲しい」


戦えない俺のためにキビキビ働いて欲しい。


「はい。私で良ければ…使ってください」


予想していたよりあっさりと話はまとまったな。少女に手を伸ばす。


「俺の名前はフレイ、隣のこいつはミーシャって名前だ」

「リオです」

「リオだな。分かった。よろしくな」


彼女が握り返してくれた手をしっかりと握りしめる。


「ひゃっ…」


すると驚いたような声を上げたリオ。


「痛かったか?悪かったな」

「い、いえ…その…男の人と手を繋ぐって…初めてで…」


恥ずかしそうに俺を見てくる少女。


「ま、よろしくな」


改めてそう告げることにした。


「よ、よろしくです」


顔を赤くして返してくれるリオ。


「フレイ、お腹減ったー」


その時隣のミーシャがそう言ってきた。

そうだな。丁度酒場にいるしリオとももう少し適当な話をしておきたいところだな。


「分かった。ここで食べようか。リオも一緒にどうだ?」

「はい。ぜひ、ご一緒させてください」


そう答えてくれたので店員を呼びつけて適当にメニューを言い食事にすることにした。


「フレイはあの紅蓮団のメンバーだったんですか?」


リオと話して俺が元紅蓮団のメンバーということを伝えたら目を大きく見開いて驚いていた。


「ただの雑用として雇われていただけだがな。そんな大したものじゃない」


俺に何を期待したのかは分からないがジェガルは急に俺を雇ったのだった。

勿論他のパーティメンバーには反対されていたが、そんな意見を押し切って俺を雇った。結果俺は約立たずのゴミという評価で結局捨てられることになったのだが。


「でも…私は3流パーティだったので…それすら…」

「そう。悲しそうな顔するな。俺らのパーティはSランクになってリオにもいい景色を見せてやるから」


それは叶わない願いなんかじゃない。ミーシャに目をやる。


「なに?」


パンを口にしながらそう訊ねてくるミーシャがいるなら無理な夢なんかじゃないんだ。


「いや、何でもない」


そう答えて口元を歪めた。

何もかもが順調だ。このまま進んでくれるなら本当に世界一のパーティすら狙えるだろう。

そんなことを考えていたら少しばかり楽しくなってくるのだった。







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