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第三十七話 俺のおかげで1000年分技術は進歩したらしい

 俺が貴族達の会議に放り込まれてから数日が経った。


「フレイ。お待たせ」


にっこり笑いながら俺の家の扉をノックしたスノウを出迎える。


「別に待ってはいないがな。いい加減外を出歩くのも疲れてきた頃だ」

「そうかのか?また英雄と呼ばれたくはないのか?」

「本当のことを言うなら勘弁して欲しいくらいだがな………」


そう言ってから苦笑する。

俺が天の塔を踏破してから町中、いや国中が俺を英雄扱いしている。


初めこそ俺を認めてくれたようで嬉しかったが何度も何度も言われると流石に参ってきた。

それに女の人だからまだましだったが、酷いときには俺の後ろをついてきて一日中付け回されたこともある。


「ま、今回は我慢しなくてはならんがね」


俺が何を言われようが今日だけは外に出なくてはならない。


「行くんだろ?天の塔」

「あぁ。今から行けるが」

「なら出発しよう」


そう答えたら準備をしてから天の塔へ再び入ろうという話になった。




 「これでOKです」


今回はアーニャも同行している。

研究者が着るらしい白衣は彼女に本当に似合っていた。


「これでガーディアンは動きを止めると?」


設置したそれを眺めて聞いてみる。


「はい。理論上はこれで制御出来るはずなんです」


彼女がこの100階層に設置したのは転移結晶に似た巨大な鉱石だった。


「この装置が完成したのはフレイ様たちのお陰です」


そう言ってにっこりと笑いかけてきたアーニャ。


「今度は様か………」


思わず苦笑いする。

そんな立派な人間ではないのだが。


「いえ、フレイ様ですよ。今は国中貴方の話題で持ち切りではないですか?貴方のスキルインストールの力は我々研究員のスキルにも影響を与えました。その結果……なんと!この国の技術は1000年分は進んだのではないか?と言われているほどですよ!」


軽く飛び跳ねてそんなことを言ってくれるアーニャだが俺にはその1000年という年月がどれくらいのものか分からない。


「えっと、よく分からないけど俺もそう言ってくれると嬉しいよ」

「それにしても凄いですよねフレイ様のスキル!私の専属技師になってくれませんか?」

「………か、考えとくよ」

「本当ですか?ありがとうございます!あのですね…次は転移結晶をより細かくして持ち運び可能な~」


俺が何の話か理解出来ていないのを理解出来ていないのかベラベラ話し続けるアーニャ。

何十分とも感じられる時間ベラベラ話したアーニャはようやく話を終えようとしていた。


「という訳なんですね。そのためにフレイ様のお力がどうしても必要なんですよ」

「う、うん。分かった。考えとく」

「約束ですよ?」

「あぁ。約束な」


アーニャの話は半分以上理解できなかった。

俺はその手の技術に関しての知識はないから当然の話だが。


「それよりもこの石ころはこれでもう動いているのか?」


転移結晶のように俺の目の前でクルクル回っているよく分からない鉱石。


「はい。動いているはずですよ」

「なら下の階層の方にガーディアンがどうなっているか見に行かないか?」


この鉱石がきちんと動いているのかどうか気になったのは俺だけではないらしい。

スノウがそう提案した。


「そうだな。俺は構わない」

「はい。見に行きましょう。もし不具合が出ていたら即修正しないといけませんし」


ここにいる全員が頷いたのを確認してからスノウが先頭に立って歩き始めた。



 「それでですね。えーっと…何から話せばいいか」


移動中もアーニャはベラベラ俺によく分からない話をしてきた。


「そうです!このえーっと」

「いいから落ち着け。もっとゆっくり話してくれ」

「伝えたいことが多すぎて落ち着いてられないんですよ!こっちの身にもなってください!」


何故か逆ギレされてしまった。


「はわわ…ごめんなさい」


流石に理不尽な切れ方だと自分でも気付いたのか謝ってくれた。


「いや、気にしてないけど」

「それでですね。そのためにフレイ様のスキルがもう一度必要になるかもしれないんですよ!」


何がそれでなのか一切分からないのは俺だけなんだろうか。

ちらっと後ろを見てみたがミーシャ達も難しい顔をしていたから多分俺だけじゃないんだと信じたい。

それを踏まえて適当に答える。


「あ、うん」

「本当ですか?皆さんも喜ぶと思います」

「そうなんだな」

「はい!お願いしますね」


微妙に会話になっているのか、なっていないのか分からない会話だがアーニャは満足そうなので良しとしよう。

そうして話していると寝転がっているガーディアン達が目に入った。


「アーニャ、あれは成功していているのだろうか?」

「えぇ。問題ないです。まさか1度で成功するとは思いませんでした流石フレイ様ですね」


そう言ってくる彼女。

彼女の話によるととりあえず実験としては成功したのだろうか。

実際は眠っているのか死んでいるのかどうかは分からないが動かないのは確かだし聞いてみることに使用。


「実験は成功した、ということでいいのか?この場合は」


どう見てもガーディアンが今すぐに起きて俺たちに遅いかかってくるという様子は見えない。

俺の考えでしかないがこれを見る限り今回の実験は成功したように思うが。


「はい。そうですね!フレイ様のおかげで大成功しています」


俺のおかげかどうかは分からないがアーニャの話によると今回の鉱石はきちんと動いているようだ。


「流石フレイ様です」

「俺を褒めても何も出ないぞ?」

「いえ、本当に感謝していますので」


モジモジ顔を赤くしながらそう行ってくるアーニャ。

そんなに大したことはしていないのだがな。

まぁ、しかしそこまで感謝してくれるなら嬉しくもある。


「流石だな。フレイは」


それを見てスノウもそんなことを言ってきた。まさかスノウにまで言われるとは思わなかったが感謝しておこう。


「ありがとうな」


実験は成功したようだしこれで今回の潜入は終わりだろうか。


「ところでいつここに住民を連れてくるつもりなんだ?」

「もうすぐの予定だよ。ちょうど大丈夫みたいだからねこの装置の方も」


そう語るスノウ。

そうか、なら近いうちにここで誰か暮らすことになるのか。


「感慨深いものがあるな。自分たちの整備した土地で誰かが暮らしてくれるというものは」


そしてそれが誰かの幸せに繋がるというのはいいものだろう。

そういう光景がここで広がることを想像すれば自然と嬉しい気持ちに包まれるな。


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