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第三十二話 やはり俺が最強な気がする

 結果から言えば果実は本物らしい。

その効果に嘘偽りはなかった。

どんな傷だって癒すみたいだ。


「ありがとうフレイ。昨日まで動かなかったはずの足が確かに動くようになった」


確かに男を感じさせる低い声で礼を言ってくるヴァリアス。


「鬼神に礼を言われるなど一生ものだな」

「今の鬼神はお前だろう?」


そう返されて何となく2人で顔を見合って笑ってしまった。


「確かにそうだな」


今の鬼神は俺か。


「なら、新旧の鬼神が目の前にいることになるんですね〜」


マミが呑気そうな声でそんな事を口にしていた。


「この2人がいるならもう敵なしですね!」

「そうですね!天の塔だって何回も登れちゃいますね!」


そう口にして何故かはしゃぐのはアリアとルイズだった。


「おいおい、ヴァリアスはもう引退してるんだぞ?無茶言うなよ」


まぁ、あと何回か入るつもりなのは確かだが。

あそこは可能性の塊だ、色々な可能性が眠っている場所。


「いや、お前が同行を望むのなら付き合えるぞ」


しかし不敵に笑って予想外にそう返事をしてくるヴァリアス。


「いいのか?」

「いいも何も私の力が必要なのならお前のために使おう。老いぼれの身だがそれでも人々の役に立てるのならお前の横に立ってあの時のように剣を握り振ろう」


遠い過去を思い出すように目を細めるヴァリアス。


「お前の親父さん、先代には数え切れない恩を受けた。その恩を返したいとこれまで生きてきたつもりだった。それをお前を手伝うことで少しでも返せるのなら。ここでお前に受けた恩もあるしな」


そう言って俺の目を真正面から見るヴァリアス。

これくらいは別に忘れてくれても構わないんだがな。


「お父さん、大丈夫なの?」

「お前に剣を教えていたくらいだ。今ならあの時のように戦場に立つこともできるはずだ」


相変わらず不敵な笑みを浮かべるヴァリアスは力こぶを作って俺たちに見せる。


「人類の未来のためになら私はお前の横に立ち言われるままに剣を振ろう」

「なら、その時は宜しく頼む」


そうまで言ってくれるのなら今一度ヴァリアスと握手を交わすことにした。


「これから、よろしくな」

「あぁ」



 「先代は偉大だったよ」


一通り話を終えた俺達はヴァリアスと雑談していた。

もっとも奴の口から出てくるのは先代、俺の爺ちゃんの事ばかりだ。


「私等ではあの人には到底及ばない程先代は偉大だった」


ヴァリアスが俺の爺ちゃんの凄さを語っている。

俺の事ではないが俺の事を褒めてくれているようで何となく嬉しくなるものだ。


「そんなに偉大だったんだな」


俺は爺ちゃんからその手の話を聞いたことは無い。

だからどれだけ凄かったのかとかいう話はこうやって伝聞でしか知らない。

でもそれでも十分だった。


「この辺りのSランク冒険者達の装備の点検をしていたのは全部あの人だ。それだけ塔の攻略を支えていたし必要不可欠な人だった。そして、その特性はお前にも出ているみたいだな?」

「どうだか」


俺は爺ちゃんみたいに凄腕の鍛冶屋じゃない。

単純に腕の話だけならだが。


「あの人が今のお前を見れば嬉しく思うだろうな、自分の横に並んでくれるのが自分の育てた子なのだから」

「勘違いしてないか?ヴァリアス。俺は爺ちゃんの横に並ぶんじゃない。超えるんだよ」


そう言うと面食らったように口を開けたヴァリアス。しかしそれも数秒直ぐに破顔した。


「確かにお前ならあの人を超えることも不可能じゃないかもしれないな」

「あぁ。夢じゃ終わらない。俺はあの人を超える」


そう宣言する。

俺は伝説の冒険者となって爺ちゃんを超える。

勿論鍛冶の方も超えるつもりだし今の段階でも総合的には超えているのではないかと思う程だ。


「誰もなし得なかったスキルインストール。俺はこれを使いこなして更に上を目指すよ」

「しかし、これ以上目指す上はあるのか?あの塔は最難関のダンジョンだ。あれ以上はない」


苦笑するヴァリアス。


「むむ、確かにそうかもしれないな」

「なら、やっぱりフレイが1番ですね!」


そう言って俺の右腕に抱きついてきたルイズ。


「そうですよ!フレイがダントツで最強なのはもう決まってますよね」


左腕にはアリアが抱きついてきていた。


「信頼されているのだな。フレイ。流石はあの人の育てた子だ」


そう言って優しく笑うヴァリアスだった。




 ヴァリアスと別れた俺達はもう一度ギルドに戻ってきていた。

色々と話をしたかったために来た。


「スノウ。話したいことがある」

「何?」


カウンターに寄りかかって中で何かしていた彼女を呼ぶ。


「どうしたの?」


小走りでこちらまで来てくれた彼女に会釈して話を進める。


「言い忘れていたが紅蓮団のヒーラーは死んだよ」

「死んだ?どういうこと?」

「ガーディアンに食い殺された」

「そうか。分かった」


俺があいつを見殺しにしたことについては何も言ってこないところを見るに何も言うことなんてないのだろう。


「あのヒーラーはヒーラーの役割をしていなかったという話は聞いた。同情する余地などない」


スノウですらそう厳しく切り捨てる程だった。


「あぁ。それとな」


続きの話をすることにした。


「何だ?」

「明日また塔に登りたい。付いてきてくれるか?」


時間を開けないうちに登っておきたかった。

塔の中も不動という訳ではなく時間が経つと様子が変わっていたりするからだ。


あの時の頂上はあの時はあんな感じだったが変化しない保証はない。

しかし頭のどこかではあの頂上だけは変化しないのではないかと理解してもいた。


「分かった。そのつもりで準備しておく。そちらの準備が終われば呼びに来て欲しい」

「了解だ」


そう答えてからミーシャ達に視線を戻し確認の意味を込めた視線を全員に送ったところ、全員何かしらの反応で問題ないと返事をくれた。


「明日迎えに来るよ。よろしく頼む」


スノウにそう言ってギルドを後にすることにした。

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