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第三話 ミーシャがいるだけで最難関ダンジョンクリアできそうなんだが

 「あぁ…もう邪魔だゴミ」


山積みになったゴミの中から1つの宝石を探し出そうとしていた俺。


「何でこんなにゴミだらけなの?」

「俺は貧乏だから捨てるに捨てられないんだよ。いつか役に立つ時が来るかもって考えたらな」


あるものを捨てるなんて馬鹿らしい。確かに整理整頓は大事なことかもしれないが、いつか必要になるかもしれないとなった時、なければ買わなくてはならない。それでは無駄遣いだ。

だからこそ俺はゴミと断定できるもの以外は他人がゴミと言ったものでも保管している。


「これだ!」


そうして掘り起こした目当てのもの。


「何それ?」

「これは高層から持ち帰られた研磨剤。爺ちゃんが俺にくれた大切なものだ。これならその錆も取れるはずだ」

「…そんな大事なもの…私なんかのために使ってくれるの?もし…これが弱い武器だったら…」

「その時はその時だ。一緒に家賃踏み倒して遠くに逃げよう。生きてさえいればやり直せるわけだし」


既に支払い催促の連絡はかなりの数来ているが全て無視している。しかしそれも終わりだ。俺達は高層へ辿り着き稼いで、きっちり返すものを返してこの生活から抜け出す。

その可能性があるのならこんな研磨剤使ってやる。それにいつまでも使わないのでは宝の持ち腐れだ。ここで使わずに何時使う。


「俺の残りの手持ちは残り少ない。余裕も時間もない。こんな時間だが出かけるぞ」

「何処に?」

「工房だ。その武器をどうにかしたいなら工房を借りなければきつい」

「工房持ってないの?鍛冶屋なのに?」

「冒険者になる時に手放した。もうないから借りるしかない」


そう伝えるとミーシャを促して外に出る。

作戦開始までそう時間は残されていない。それにこれが終わってもパーティメンバー集めに作戦参加の申請もしなくてはならない。



 そうして俺は工房を訪ねた。


「工房を貸してくれないか?勿論代金は支払う」

「壊すなよ…」

「助かる」


強面の親父に頼み込むとすんなりと貸してくれることになった。


「にしてもお前の爺さんは凄腕の鍛冶屋だったのにな…なんだって冒険者なんかに…」


このように爺ちゃんと俺を比べる声はいつも聞こえてきた。でも気にしたことは無い。

俺は俺だから。


「俺は爺ちゃんに夢を託されたんだよ。塔を踏破してくれって。それに鍛冶は教えてくれなかった。だからこそ出来るのは見様見真似のものだけ」


そう返してミーシャの目を見る。


「はい」


ミーシャは俺に大事な剣を預けてくれた。俺を信じて預けてくれた。

全財産を出して購入した大事なものを…預けてくれた。


「お前の信頼に答えるよミーシャ」


そう言って早速作業に取り掛かる。


「高層の…研磨剤じゃねぇか…どうしてそんなもん…ここ何年も市場に出回らなかった代物だぞ…」


俺が取り出した研磨剤を見て驚愕の声を上げている男。


「爺ちゃんがくれたんだよ」

「でも、使いこなせないなら意味ねぇよ?」

「使いこなしてみせる」


元々俺の鍛冶スキルは特殊なものだ。基本である武器の創造はまともにできないが、こういった時には使えるものだった。

数少ないマトモな使いみち。


「━━━━俺は爺ちゃんを超えてみせる…最高の1本をここに生み出す」


そう宣言し研磨を始める。

こびり付いた錆を細心の注意を払いながら削ぎ落とす。


「…」


両手を組んで祈るように見ているミーシャ。それが横目に見えた。

そして何十分もかけてようやく研磨は終わった。


「…できた…」

「マジかよ…こいつ…研磨しやがった…」


俺は出来上がった1本を握り上に掲げてみた。

さっきまで錆びていたとは思えないほどその刀身は光を反射する。鏡面のようなその刀身は俺の顔や辺りの風景すら映している。

一通りの確認をしてから鞘に戻すと驚いている親父の横を抜けミーシャに渡す。


「ありがとう。信じてた」


そう言って微笑んでくれるミーシャ。彼女が剣を受け取った瞬間。剣が光を帯びた。


「これは…馬鹿な…」

「同調…」


こればかりには男も俺も心の底から驚いていた。

剣がミーシャを正しい所有者として認めたのだった。自分を握るべき素質があると剣が認めていた。

やがて収まる光。再度思った、俺はとんでもない奴を拾ってしまったのかもしれない。


「どういうこと?」


しかし何も理解していなさそうなミーシャは首を横に捻るだけだった。


「…とりあえず出ようか。ありがとうな店主」


工房を貸してくれた男に礼を言うと俺はミーシャを連れて家に戻ることにした。




 「同調って何?」


家に帰るなり質問攻めしてくるミーシャ。


「…先に話しておくが、それは神刀と呼ばれる程の業物だ」


高ランクの武器であることは事前に分かっていたが、文字通り他の追随を許さないレベルのものだとは正直思わなかった。

これがあれば、あの塔など一人でも余裕だろうとすら思える代物だ。


「神刀…?」

「あぁ。神が振るったとされるほどの業物だ。実際に振るったかどうかは俺にも分からないがそう言われているくらいの業物だということを理解してくれ」

「要するにすごい武器なの?」


俺も詳しくは説明できるわけじゃないしそういう認識で構わない。


「そうだ。すごい武器だ。この世に同じものは2本はないと言われている。作り手も分からない。どのようにして作られたかも分からないそんな武器だ。間違いなく最強の1本と断言出来るもの。それがミーシャの持ったその武器」

「さっきの光は何なの?」


急に光を発して不安なのか不安そうな顔をして聞いてくるミーシャ。


「別に不安に思うことは無い。その武器は持ち主を選ぶことがあると伝えられている。あの光は剣に所有者として認められたという証だ」


俺が手にした時は光らなかったしミーシャを所有者だと認めたのだろうな。


「認められたなら本来の全ての力を引き出して剣を使える。ここまでくれば踏破も確実だろうな」

「よく分からないけど私はフレイの役に立てるってことでいい?」

「あぁ。それがあれば無能の俺を連れて踏破もできるだろう。それくらい役に立てるぞ」

「なら頑張る!」


両手を握ってそう喜ぶミーシャ。

その顔は本当に嬉しそうだった。しかしこうなってしまえば俺が足を引っ張らないか不安だが。まぁいいか。


「あれ…」


その時ふらつくミーシャ。

体は咄嗟に動いていた。その体を抱きとめると俺の目を見て微笑んでくれた。


「ごめんね。嬉しくなって…疲れが出たみたい…」

「そうか。ならもう寝るといい」


俺は自分のベットにミーシャを運ぶとそこに寝かせた。

ミーシャも寝たことだし俺ももう寝ることにしよう。明日から忙しくなるわけだし。

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