表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/39

第二十九話 最難関ダンジョンをクリアしたみたいだ。簡単だったな

 ヒーラーの男を見捨てて進んだ俺達は何の問題もなく100階層までこれた。


「にしてもすごいなマミの魔法は」


こうやってスムーズに進めたのは彼女の魔法があったからだった。

マミの魔法はこうした未知のエリアでも何処に階段があって、どのように進めばガーディアンに見つからずに進めるかを教えてくれる。


「褒めすぎですよフレイ。こうやって私が存分に魔法を使えるのはフレイのお陰ですし。褒めるのならご自分を褒めてあげてください」


謙遜してから微笑む彼女。


「それにしてもここ何なんでしょうか?」


ルイズの呟き。それは俺も気になっていたことだった。

ここ、100階層は他の階層と明らかに違っていた。

簡単に言うとここは1つの村のように見える。

田畑があり川があってそして家がある。しかし人の気配はない。


「すごい発見だよねこれ」


ミーシャが呟いた。

確かにそうだ。こんなものがあったなんて誰も知らなかったのだから。俺達が初めて知ったことだ。


「あれって転移結晶だよね?」


俺達が気になっていたことを口にしたイルダ。

広場のような場所の真ん中に神殿が置かれ、その中では転移結晶が宙に浮いてクルクルと光を放ちながら回っていた。

俺達が設置したものでは無い。初めからあったものだ。


「あれは後で、にしておいてとりあえず他のところを探索してみないか?何か見つかるかもしれないし」


そう提案したところみんな頷いてくれた。



 「何も無いな」


何も無かった。

家はある、人の生活していた残滓はある。

しかし人がいない。死体すらもない。


「どこに行っちゃったんでしょうね」


不安そうに呟くのはリオだった。


「分からない。でも転移結晶があるってことは何処かに移動したのかもな。それこそこのダンジョンって大昔からあるんだろ?なら、転移結晶で地上に降りてそこで生活してその祖先が俺達って可能性もあるんじゃ?」

「どうなんでしょうね。兎に角1度街に戻りませんか?」


そう提案したのはルイズ。確かにそれはいいかもしれないな。


「ここにいても何の解決にもならなさそうなのは同感だ」


そう思ってあの転移結晶を見る。

あれが俺たちの知っている転移結晶と別物という可能性も否定はできない。


ここは新しくイルダに用意してもらうのが安心できるか。


「そんなことよりルーシー」

「どうしたの?」

「どうしたのじゃなくてその手に持っているのは何なんだ?」


この村を探索している途中から彼女はその手に何かを持っていた。


「あー、これ?それが分からないんだよね。多分何かの木の実だと思うけどそれ以外のことは分からないんだよね」


俺に手渡してくる彼女。


「あ、これ」


それを見てリオがそう呟く。


「何か知ってるのか?」

「いえ、間違ってたら悪いんですけど、これ神話に出てくるどんな怪我でも病気でも治す果物では?」

「言われてみれば確かに似ているな」


神話にそういう果物が出てくることは聞いたことがある、しかも確かに見た目は似ているように思う。


「だが、神話は神話だろ?」

「そうなんですけど、」

「フレイ。リオを責めるんじゃなくて1度持ち帰ってみたら?」


別に責めている訳では無いがミーシャの言うことは確かに正しいか。

俺もその考えには賛成だ。


「そうだな。1度戻った方がいいかもしれない」

「そうですね。この村の件もありますし一旦戻って情報の共有がいいかもしれませんね」


それはルイズ達も同意見だったようで誰も反対はしなかった。


「よし、なら一つ階層を下がろう。ここは他の階層とは雰囲気が違いすぎる。何かあったら嫌だし下でイルダに転移結晶を作ってもらってそれから街に戻る。それでいいか?」


俺の考えた案に反対する人はどうやらいないらしい。

ならこの案で行こうか。



 塔の中は外の世界とは違う時間が流れている。だからこそ俺達が何日、何時間塔にいたかというのは分かりにくいものだ。


「早いな。1日で帰ってくるなんて。もう少しかかると思っていたが。途中で中断したのか?」


スノウに言われて初めて俺達があのダンジョンに1日いたことに気付いた。

本当のことを言うならもう少し早く帰ってきたつもりだったが1日かかったらしい。


「そんなことより、これについて調べて欲しい」


ゴトっと音を鳴らしてカウンターにあの果実を置いた。


「見たことがないものだな。これは何処で?」

「頂上で見つけた」


色々と探したがあの階層には上に繋がる階段というのはなかった。それから考えて俺は100階層が頂上ではないかと考えた。

つまり踏破を果たしたわけだ。


「まさかあの天の塔を踏破したのか?!1日で?!」


スノウが叫ぶ。


「1日で天の塔を踏破だと?!」

「嘘だろ?!何かの冗談だろ?!あの伝説の塔を踏破したって本当なのか?!ギルドが総出で行った作戦ですら80階層にすら辿り着けなかったって話だよな?!」

「冗談に決まってるだろ?!天の塔だぞ?!あんな最難関ダンジョンを踏破なんて、それどころか1日なんて無理に決まってる!」


瞬間ギルドの中がざわめき始めた。

一瞬にして喧騒に包まれたギルド内。


声の多くは俺達が踏破したのを信じられないような声ばかりだった。

無理もないか。彼らの言う通りギルドが総力を上げて、精鋭だけを集めた作戦ですら踏破どころか今の天の塔の80階層にすら到達できなかったのだから。


「本当なのか?踏破したというのは?」


再三のスノウの確認に頷く。


「多分踏破したと思う。あの階層以降も何かあるようには見えなかったから」

「話を詳しく聞かせて貰えるかな?」


スノウは傍に来ていた女の人に果実を渡した。


「アーニャこれを調べてくれ」


それを真面目な顔で受け取るアーニャと呼ばれた少女。どうやら研究員のようだ。


「かしこまりました。お待ちください」


そう言って隣で作業を進め始める。

結果を待つことにしたのかスノウはそれを凝視し始めたので俺も気長に待つことにした。


どちらにせよ天の塔から持ち帰ったものだ。何も無いということは無いだろうし俺も正体を知りたい。

そう思って黙ってその作業を見つめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ