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第二十七話 誰も見たことすらない90階層まで来てしまっていたようだ

 俺達は道中でフロアボスのガーディアン達と戦ったり転移結晶を設置しながら、何の障害も無く楽に90階層まで登ってきた。

それにしてもこんなにあっさり来られるとは思わなかったな。

俺が考えていた通りミーシャがいてくれたのもあるし、皆がいてくれて俺はほぼ何もせずにここまでこられた。


「俺の両親はいなかったな」

「この先に進んだのかな?」


ミーシャの考えているパターンもなくはない。

実力のある冒険者なら先に進んだり、どこかで詰まったとしてもこの塔の中で生活しているという可能性もある。


ここは資源の宝庫。

だからこそあり得る可能性だ。

そしてこれより先は完全に未知の世界。


「伝説の冒険者鬼神ヴァリアスが進めなかったのはこの辺りか」


彼の強さは歴代のギルドマスターが呆然とするほどだったらしい。

当然それについて行ける仲間のレベルも相当高かったはずだ。

でも登れなかった。


だが俺達はその上を行くと自負している。

こんなところで終われない。


「それよりあのデカブツは何なんだろうな」


ここは砂漠のエリアらしく砂以外はほぼ何も無い。

たまに砂丘のような小さな丘が見えるがそれくらいで大小様々な傾斜があるだけで基本はそれで出来上がった砂漠。


しかしそれだけはこの広大な砂漠の遥か先にポツンと存在していた。

この砂漠には到底似合わないだろうと思われる異質な存在こそがそれだった。

それ故に初めて見た時もその存在感を訴えてきていた。


「あれってやっぱ見たことあるな」


どこかで見た覚えがあるでかい人型のガーディアンがこれまたでかい椅子に座っている。

まるで王様のように座っていた。


「ここの王様とでも言うつもりか?」


まぁ、何だっていいが。

俺達はあれを倒して前に進む。


「ミーシャ、行くぞ」

「うん」


後ろからの援護はこれまで通りアリア達に任せる。

彼女たちは後方支援役だ。

そうしていつも通り俺達が近付くとじっと座っていたガーディアンがその瞳を開けた。


「人間よ」


それから声を発した。


「しゃ、喋った?」


これまで喋るガーディアンは確認されていない。

だからこそ驚いた。

ガーディアンが言葉を話すなんて聞いたことがなかったからだ。


「立ち去れ。人間如きがこの先に踏み込むことは許されぬ」

「悪いが俺はこの先に進まなくちゃならんのでな」

「ならば死ね」


どうやら言葉を話せるようだが会話は出来ないらしい。

会話をしようと思っていたのだが向こうはその気は無いらしく、いきなりその手に構えた棍棒を振りかざしてきた。


「フレイ!」

「効かねぇよ雑魚」


ミーシャの声が聞こえると同時にその棍棒は振り下ろされた。

しかし俺の体に傷一つ付けることはできない。


「フレイ!今!」


ずっと防御魔法を使ってくれていたルーシーが叫んでくる。


「言われなくてもなぁ!」


奴の腕をよじ登り肩まで駆け上がる。

体長は7メートルと言ったところか。

かなりでかい。

しかし


「デカいだけの図体じゃ何にも出来ないんじゃないか?」

「ぐぅ!」


俺がその首に剣を突き入れるとガーディアンが苦悶の声を漏らした。


「馬鹿な!この完全なる体に傷を付けるだと?!」

「俺の武器はどんな硬さでも関係なく断ち切れるスキルを持っている。問題は無い。それどころか俺が武器を振るとどんな軌道を描こうと必ず急所に命中するというおまけ付きだ」

「何てデタラメなやつだ」


そう言葉を漏らしながらその巨体は崩れ落ちた。

確かに自分でもそう思う。

俺が剣を振るだけで全て終わるのだからデタラメ過ぎる。


「しかし、勝ちは勝ちだ。眠ってな」

「見事なり」


それ以上は物言わぬ古代文明の塊。

それを横目に見てからアリア達に声をかけて次の階層へ向かうことにする。


「ほんと、デタラメなんだから」


そう呆れたように言いながら近付いてくるミーシャ達。


「また私たち何も出来ませんでした」


アリアやルイズは活躍できなかったのを残念に思っているみたいだ。


「悪いな。前に出るとつい剣を振りたくなる。次は任せるよ」


今までこんなにサクサクガーディアンを倒せたことなんてなかったからついつい振りたくなってしまう。


「私たちにもちゃんとさせてくださいね?」

「あぁ。分かったよ」


もう一度約束してから次の階層へと繋がる階段を登ることにする。

そうして階段まで残り数メートルというところでミーシャが口を開いた。


「ここから先が、完全なる人類未踏のエリア」

「そうなるな」


ここより上の階層はギルドの情報でも誰も入ったことの無い未知のエリアだとされている。

それは周知の事実。

もしかしたら既に誰かしらは到達してその先から帰ってこられていないという可能性もなくはないが。


「本当に私たちなんかが入っていいところなのかな?さっきのガーディアンも言ってたけど」

「ここまできて引き返すつもりか?」

「そんなつもりはないけど」


何か言いたいことがあるのだろうか。


「この先に入って帰ってこられるのかな?」

「心配し過ぎですよミーシャは」


しかしそんなミーシャを励ますのは、前まで不安がっていたアリアだった。


「私たちなら行けるでしょ?そうですよね?フレイ」

「あぁ。無理そうなら戻ればいい。それだけだ」


今まで通りだ。

ここは砂漠のエリア。

急に橋が落ちたりなんてことは無いし登ってみて、無理そうなら前に置いた転移結晶まで戻ってそれで街に帰ればいい話だ。


「そ、そうだよね。ごめん。心配し過ぎだよね。みんな行こう」


自分たちの力を信じられるようになったらしいミーシャの一言。それを受け俺達はもう一度気持ちを固めて人類未踏破のエリアへと進むことになった。

いや、そう思った時だった。


「フレイ、何か迫ってきます!」


緊迫した顔をしたマミがそう俺に伝えてきた。

後ろを振り返りそちらを見てみると確かに黒い点のようなものが沢山こちらに近付いてきていた。


「人か?」


暫くそれを確認していると視認できるくらいにはなってきた。

近付いてきたそれは人の形をしていた。

1つ分かるのは


「スノウ達ではないんだろうな」


そうしている間にも人間達は迫りきていた。俺達に向かって。

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