第二十六話 女の子全員に感謝されてしまった。どうやら気付かないうちに救ってしまったらしい
まとめて行った改稿ですが、場面の切り替えに使用し始めた※とスペースの追加だけです。
読み直していただく必要はありません。
もう一度街の神殿に集まった俺達はそこで一旦待機していた。
再開位置は前回配置した転移結晶、あの場所からなのだが心配なことがあった。
転移したはいいがガーディアンに囲まれていては困る。
まぁ万が一そうなっても問題はないだろうが念のため万全を期す。
「マミ、大丈夫そうか?」
「えぇ、問題なさそうです。転移結晶も問題ありません」
マミは遠くの音や遠くの景色を拾う魔法の使い手だ。
だからこうやって魔法を使うことで塔の内部の様子を知ることができる。
「よし、なら転移しようか」
「ここは私に任せて」
新たに仲間になったマリーが名乗りを上げると魔力を結晶に注ぎ込んだ。
※
次に目が覚めた時はあの時の結晶の前だった。
「戻ってきたか」
あのダンジョンに。
周りを見回してもガーディアンらしき奴らもいなければ影も形も見えない。
「ルーシー魔法を頼めるか?前に使ってくれた移動速度アップの魔法だ」
「うん、いけるよ」
俺の頼みに直ぐに頷いて俺達全員に魔法をかけてくれる彼女。
「すご、消費魔力軽減だっけ?やっぱり本当に軽減されてるみたいですごく楽だよ」
俺の両手を取ってはしゃいでいるルーシー。
今回の杖は作り直したものなのだが、実際に杖を装備した状態で魔法を使うことでどの程度の効果なのかを実感出来たらしい。
「今回は色々と導入してみた。結構違うんじゃないか?」
「結構違うどころじゃないよ、生まれ変わったみたい」
自分が使ったはずの魔法なのに未だ信じられないような目で自分の手を見る彼女。
「そんなになのか?」
「うん。今なら何でも出来そうな気がするし」
そう言って柔らかく笑う。
そこまで言ってくれるなら俺も頑張って作った甲斐があるというやつだ。
「なら、俺も期待に応えないとな。この塔の頂上にいこうぜ」
塔には入った。登る準備もしてきた。ならば後は登るだけだ。
「さぁ、行こう」
※
「何階層ですかぁ?ここ」
登れど登れど景色が変わらない事に飽きてきたのかそんなことを聞いてきたアリア。
「56だな」
「うへぇ、まだまだ先は遠そうですね」
いい加減疲れてきたのか泣き言を漏らしている。
俺も同じ景色ばかり見飽きたから気持ちは分からないでもないが。
それより、そろそろやっておきたいことがある。
「イルダ」
「どうしたの?」
「この辺りに転移結晶を設置したいと思う」
素直にそのまま考えていたことを伝える。
「転移結晶を?」
「あぁ」
前回転移結晶があったのは51階層。俺達がこの塔に入ってきた階層だ。
それから考えてもこのあたりにとりあえず置いておいてもいいかもしれないと思った。
どれだけレア度が高くてもどうせ作れるんだからもう惜しむ必要なんてない。
「でも、ガーディアンに壊されないかなぁ?」
今まで壊されてきたセーフエリアを思い出しているのか苦い顔をするミーシャ。
「それについては対策を考えてる」
そう言ってからマリーの顔を見た。
「マリーあそこに簡単な神殿を作ってくれるか?」
そう言って指さしたのは周りよりは少し高くなっている丘。その上だ。
マリーの魔法は攻撃的なものではなく守備に使うもの。
主に砦や壁を作ったりしてガーディアンからの攻撃を防ぐ用途のものだ。
もっとも俺は利用したことがないのだが。
いつも使っていたのはジェガルのような偉そうな連中だけだ。
「あそこに?」
「うん。ガーディアンからの転移結晶への攻撃を防ぐために置いて欲しい」
転移結晶を置いたはいいが壊されたのでは意味が無い。
そのためにマリーの魔法を使う。
「フレイ頭いいね。分かった今から作るよ」
いつも人を守るためにしか使ってこなかったからか、そういう使い方が思い浮かばなかったのだろうか。
「あぁ、頼んだよ」
そう言って見ていると彼女は直ぐに魔法を使って丘の上に簡単な神殿を作ってくれた。
街にあるような立派なものではなく、それよりも小さい石造りの神殿。
本当に転移結晶を置くためだけにあるようなそんな神殿だ。
だがそれで十分だ。
「いつもガーディアンを避けるために使ってる神殿を用意したよ」
それならば問題ないだろう。
とても気が利く事をしてくれたようだ。
「ありがとうマリー」
彼女に礼を言ってから今度はイルダに目を向けた。
「あの中に転移結晶を作れるか?」
「うん」
そう頷いたイルダにここに来るまでに抜き出したガーディアンのコアを渡して見守る。
「出来たよ」
暫くすると神殿の真ん中に転移結晶が現れた。
「ありがとうイルダ」
「ううん。こっちこそありがとうだよフレイ」
あのいつもの顔を崩して微笑んでくれるイルダ。
「私ずっと生成スキルは要らないって馬鹿にされてきて、でもこうやって有効活用させてくれるフレイに会えて本当に嬉しい」
恥ずかしそうに目を伏せてそう言ってくれた彼女。
「私もだよ。フレイ。この力みんなのために使わせてくれて本当にありがとう」
先に神殿を作ったマリーも笑顔でそう口にしてきた。
「それを言うなら私もですよ。フレイ?遠くの音や景色を拾うスキルなんてずっといらないって言われてきたのに、こうやってみんなの役に立てるようになれてフレイには感謝しています」
おっとりとした笑顔を浮かべてそう感謝してきたマミ。
何というか姉に褒められているような感覚を覚えたが悪くはないな。
「私もまだ活躍できてないけどこれから頑張りますしフレイには感謝していますよ?」
「私もです。フレイに必要とされるように頑張りますから」
流れに乗ったのかアリアもルイズも俺に感謝してきた。
「私もだよフレイ。お父さんの夢を私が叶えるチャンスをくれた事感謝してる」
「わ、私もみんな強くて、あまり役に立ててないけどこれからヒーラーとして頑張りますし、仲間にしてくれた事本当に嬉しかったです」
続いてルーシーやリオも俺にそう言ってくれた。
「みんなフレイに救われたんだね」
最後に嬉しそうにそう呟くミーシャ。
「私もフレイには感謝してもしきれないよ。ありがとうねフレイ」
「そ、そうか」
それにしても全員にそう真正面から言われると恥ずかしくなってくるな。
「とりあえず先に行こうぜ」
そんな照れを隠すように俺は先に歩き出す。前へ、前へと。




