第二十五話 マリーが仲間になった
俺達はギルドマスターであるスノウにまた呼び出されていた。
「何度も何度も呼び出してすまないな。単刀直入に言ってこれから再度行う作戦に参加してもらいたい」
「いや、気にしないでくれ。ギルドからの呼びかけとあれば俺達も光栄なくらいだ」
本来であればギルドがこうして1つのパーティを呼び出すことなんてないのだから。
増してや前回のような作戦に参加して欲しいと声がかかることは本来はありえない。
それだけギルドは俺達の力を信頼してくれているということになる。
それはとても光栄なことだ。
「フレイは今のところ攻略についてどう考えているんだ?君達だけで挑むつもりか?一応私たちの再考した作戦に参加してくれると嬉しいのだが」
「どうしようか悩んでいる」
当然ギルドの計画した作戦に参加すれば塔の攻略難易度は格段に下がるだろう。
しかしその分報酬も下がるだろう。それに自由に行動もできなくなるか。
「勿論無理強いはしない」
「なら、俺達はこのまま単独で攻略させてもらう」
そう答えたらこのギルド内にいた他の奴らがざわめき出した。
「今の塔を単独で攻略だと」
「今の塔はかつてないほど攻略難易度が高いはずなのに。それを1パーティで?」
「ありえない。できるわけが無い。そんなこと」
聞こえてきた多くは否定的な言葉だった
「それが答えでいいんだな?私達はフレイが参加してくれないという前提で作戦を組み始める。後から参加表明されても困るぞ?」
「あぁ。1度断られた作戦だ。正直気持ち的な話をするなら参加はあまり気が進まない」
あの時は無理だったのは理解出来る。
でも参加したい時に決まりだから、と切り捨てられたから気乗りはしない。
「勿論突破した先に得たものがあるなら決まり通りある程度は共有するよ。それが筋ってもんだからな」
俺達はギルドに所属することで様々な情報や施設の利用ができる。
しかしなにか新たなものが見つかったりした際にはそれを共有しなくてはならないという決まりがある。だからこそ俺はその筋は通そうと思っている。
「分かった。ならお互い頑張ろう」
それ以上食い下がることなく直ぐにそう口にしたスノウ。
「あぁ。塔の攻略を目指してな」
最後に別れの挨拶をしてから俺達はギルドを後にしようとした時だった。一つの考えが頭をよぎった。
「なぁ、スノウ」
「ん?」
「一つ質問したいんだが、俺は今のところ頂上まで辿り着きたいって考えてる」
そう伝えると再びギルド内が騒がしくなった。
「いやいや、それこそ無理だろ。まだたどり着いた奴すらいないんだろ?」
「そのはずだが。それどころか誰も最終フロアまで辿り着けていないと聞く。あんな子供にそれが出来るのか?」
「いや、しかしあの男は鬼のような強さでガーディアンを屠り続けると聞くが」
しかしその声の殆どはやはりそんな否定的なものだった。
顔こそ見えないが俺達が攻略出来るとはとても思っていないような、そんな顔をしていることは想像出来る。
「頂上、踏破を狙うという認識で間違いないかな?」
スノウの質問にただ黙って首を縦に振る。そうだ。俺はあの塔の踏破、それこそを見ている。
「死ぬ覚悟は出来ているのか?余りの難易度の高さ故に帰って来れない者が多いダンジョンだ。そのクリアを狙うならどれくらいの難易度なのかは想像もできないほどだ」
結局俺の両親は帰ってきていない。それからもどれくらいの難易度なのかは何となく分かる。
でも彼女は一つ思い違いをしているな。
「何を言ってる?死ぬつもりなどない。故に覚悟などない。言ったろう?俺は人類初の踏破者となるって」
誰にもなし得なかった偉業を俺が成し遂げる。
これ以上に気持ちのいいことなんてないだろう。
「それは分かったが質問というのは?」
「転移結晶の配置は自由にしていいのかどうか」
「勿論構わないが、そんなにいくつも置けるものでは無いだろう?」
イルダの顔を見ると相変わらず変化はなかった。
威張ったりするタイプには見えないから予想の範囲内だった。
でも彼女ならばいくつも置いてくれるだろうと俺は信じている。
「恐らくかなりの数が置けるだろう。イルダの杖に更にいくつかスキルを導入した。転移結晶の生成はしやすくなり設置もしやすくなったはずだが」
これにより先日は1つ作って満足していたあれの量産が恐らく可能になるはずだ。
「そんなことできたら歴史が覆るな」
「覆しても構わないんだろ?」
「それはまぁ」
よし、決まりだ。
なら善は急げというやつだ。
「さて、ならさっさと攻略することにするよ」
「くれぐれも気をつけて」
「分かってるよ」
待っていろ。天の塔。
今まで誰も踏破したことのないお前を俺が全部攻略してやる。
そして何があるのかその先に何が待っているのか、全部明かしてこの攻略合戦に終止符を打ってやる。
長い期間不思議ばかりだったあのダンジョンを俺が全部解明する。
「フレイ」
その時だった。後ろから声をかけられた。
振り向かなくても誰の声かは分かる。忘れられるわけがない。
「私も連れて行って欲しい」
振り向いてそいつの顔を見る。分かってはいたがそこに立っていたのはマリーだった。
「私は、フレイと冒険したい」
そう言って近付いてくる彼女。それから俺の両手を取った。
「だめ、かな?」
「ダメなわけないだろ。歓迎するよ」
そう答えると彼女はこれ以上ないほどの笑顔を浮かべてくれた。
「うん」
また新たな仲間が増えてくれたな。
「それよりもういいのか?」
スノウに問いかける。
「うん。聞きたい話は全部聞いたから。彼女の力今度はフレイが正しく使ってあげてほしい。それは君にしかできないことだって思っている」
「当然だ。彼女の力は正しく使うよ」
もう一度マリーの顔を見る。
「これからよろしくな」
「うん。これからはフレイのためにこの力使わせて」
彼女はそう言って笑顔を浮かべてくれた。頼もしい仲間が増えてくれたな。
これでダンジョンの攻略も確実だろう。
誤字報告ありがとうございます。
それとブクマや評価などもとても嬉しいです。ありがとうございます。




