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第二十四話 知らない間に最強の冒険者になってしまったらしい

 塔から帰ってきた翌日きっちり家賃を払った俺は久しぶりに家でゆっくりしようとしていた。

しかしスノウが家まで来たので彼女に言われるまま俺はギルドへとやってきた。


「おい、あれってさ……」

「あぁ。新時代の鬼神。最強の冒険者だろ?」

「まさか、今の50層を突破するパーティがいるなんて思いもしなかったな」


俺がギルドに入った瞬間そんな声が聞こえてきた。

俺を見て言っているから俺の事を言っているのだろう。

それにしても随分出世したものだなこの俺も。

FランクからSランクで最強の冒険者か。


「お待たせフレイ。噂と違わないように君のランクをSランクに更新してたら思ったより時間かかっちゃって」

「いや、構わない」


いきなりそこまで上がるのだから色々面倒なことでもあったのだろう。


「それとフレイをここに呼んだのはジェガルの件について」

「どうするつもりなんだ?」


あいつのしてきた悪行というのは許せるものではない、それ相応の罰というのは必要だろう。


「それを今から考えるところ。何かないかな?」

「本人はあの状態だし適当な牢にでもぶち込んでおけばいいんじゃないか?」


未だにジェガルは隅の方で体を震わせていた。

狂ったように同じ言葉ばかり繰り返して。

それにしても、ざまぁないという言葉以外出てこない。


「なら、そうしようか。他のメンバー達は?」

「あんたに任せるよ。俺はもうそこまで興味が無いんでな」

「分かった。ならばあとは私たちに任せてくれて構わない。それと何かあったら言って欲しい」


そう聞いてジェガルの方に歩くことにした。

そして今まで俺に浴びせてきた言葉を返す。


「おい、ゴミ」

「俺は悪くない俺は悪くないんだ」

「ちゃんと俺の目を見ろ」


胸ぐらを掴んで俺の目を見させる。

だが焦点が定まらない、目を泳がせている。

おまけに奴の体中には傷跡があった。


被害者に今までの鬱憤を晴らされたというところか。

勿論同情する余地なんてものはない。


「フレイか?頼む助けろ。俺は悪くない。無罪を証言しろ」


奴の頬を思い切りぶん殴った。


「な、何なんだよ」

「現実を見ろ。全部お前の自業自得だろうが」

「俺は悪くないって言ってんだろ?!」

「いや、お前が悪い。私がお前が私怨で暴力を受けているのを咎めなかった理由について分かるな?」


やはりスノウも許すつもりは微塵もないらしい。


「ジェガル。俺からも1発お見舞いしてやるよ」


そう言って名も知らない男がジェガルを蹴りつけた。


「な、何をしやがる!」

「お前奴隷を突っ込ませ囮にしてそいつらを巻き込む前提で黒魔法を使っていたらしいな?」


黒魔法。面倒な準備と引き換えに強大な魔法を放つもの。

間近で囮をしていたのならその効果範囲内からは出られないはずだ。


「当たり前だろ。あいつらは俺たちに食い潰されるためだけに生まれてきたんだからよ。ゴミの有効活用、分かるか?」


もう1発膝蹴りを顔にぶち込まれていた。


「てめぇ………」

「やめろ」


男を手で制して壁に背をつけて座り込んだジェガルの髪を掴んだ。


「言ったよな?死ぬより恐ろしい目に合わせてやるって」


スノウの顔を見る。


「毎日拘束したこいつを外に連れ出して国民に石でも投げつけさせてやればいい。恨んでるやつは多いだろうし」

「それが通るかは分からないが検討しよう。確かにこいつには死では生温いからな。それくらいしなければ民の溜飲も下がらないだろう」


一応俺の考えを彼女に告げてからギルドを出ることにした。






 あの後俺はまた工房を借りていた。

そのうち自分のものをもう一度持てればいいなとか思ったりしているがまだ金がない。

今は借りるだけで我慢しよう。


「出来た」

「早くない?!」


これは天の塔を攻略する準備だ。

あそこのダンジョンを攻略するために必要なものはとりあえず仲間。

そして仲間に必要なのが装備。

そう考えた俺は早速持ち帰った素材で色んなものを作っていた。勿論俺のスキルを使ったものだ。


「相変わらずやばいスキルだなそれ」


俺のスキルを見て苦笑している店主。


「そうですよねー。私も初めてこのスキルを見た時何をしたのか理解できませんでしたから」


おっとりと笑って受け答えするマミ。今は彼女の装備を作っていた。


「俺が1番驚いたと思うけどな。まさかイルダが不可能とされてきた転移結晶の生成に成功するなんて」

「あ、あれはフレイのおかげだから。私なんか全然だよ」


そう言いながらも褒められて嬉しいのか少し微笑んでいるように見えた。


「それよりお前本当に天の塔を登るのか?」

「当たり前だろ。俺は誰も辿り着けなかった頂上を目指すつもりだよ。今の俺達なら可能なはずだ。勿論爺ちゃんと鬼神が登った更に上の階層も夢なんかじゃない」


そう言いながらマミに杖を渡した。

これで全員分の武器は作れたことになるはずだ。


「工房貸してくれてありがとうな」


今回は多めに渡しておくことにする。

今までのことの感謝も含めてだ。


「いいのか?多いが」

「取っておいてくれ。世話になった」


金も素材もあの塔に登ればもっともっと手に入るから。


「ありがとう。今の俺達があるのはあんたのおかげでもある。この恩は忘れない」


もう一度口にして今度こそ俺達はここから去ることにした。




 「おい、あれが鬼神ってやつだろ?」

「あんなガキが、か?冗談だろ」


俺の名はかなり広まっているらしくそんな言葉が街を歩いているだけで聞こえてくる。


「何だか私まで鼻が高くなっちゃう」


ミーシャが俺の隣でにやけていた。


「むしろ鬼神の名前はお前の方が似合うはずなんだがな」


俺が鬼神と呼ばれているのはあの人型の大型ガーディアンを倒してしまった、それだけのせいだろう。

実力で言うならば俺より神刀を持ったミーシャの方が強いはず。

だからその呼び名は俺よりミーシャの方が似合うはずだ。


「でもよくない?あの伝説の冒険者、ヴァリアスと同じ呼び名で呼んでもらえるなんてそれだけで嬉しくない?私はフレイがそうやって呼ばれてるの見てるだけで嬉しいもん」


ニッコリと笑ってくれるミーシャ。


「そんなものかね」

「そんなものですよ。私も嬉しいですよ。私たちのリーダーは優しくて強い。そうやって認知されるのは嬉しいことです」


アリアの言葉に少し恥ずかしくなった。


「もっと自信を持ってください。ミーシャも確かに強いですけどフレイもすごく強いですよ」


ルイズはそう言いながら俺の右腕に抱きついてきた。


「あ、ずるいですよー」


それを見たアリアは何を張り合ってるのか知らないが俺の左腕に抱きついてくる。


「お、おい二人とも………皆見てるからやめてくれ………」


俺の言葉に気付いたのか俺の腕に引っ付いていた2人は周囲に目をやった。


「外れスキル野郎が!地獄に落ちやがれ!」


ほら見ろ。物騒な声が聞こえてくる。

それを聞いて恥ずかしそうに俯いた2人。

俺から見ても二人とも美少女だと思うレベルの女の子たちだ。そんな2人に抱きつかれている外れスキルを見て内心穏やかな者など少ないだろう。


「ごめんなさい」

「そのごめんなさい」

「別にいいって。次から気をつけてくれ」


2人の反応を見てから俺は目的地に向かう足を早めることにした。

まだこれから向かうところがあるから。



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