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第二十三話 相性が良かったアリア達とこれからも冒険できることになった

 俺たちはさっそく素材を売りに来ていた。


「お、おい、何だこりゃ」

「何って見れば分かるだろ。50層の素材だよ」


驚いた顔で俺がカウンターに置いた素材を見る男にそう答えた。


「50層ってあんた、最近は50層のものですら満足に手に入らないって聞いたのにどこからこんなに」

「ん?普通に登って取ってきた」


そうとしか言いようがない。実際俺はこれを登って取ってきたのだから。


「あんた作戦に参加してたか?見覚えがないが」

「いや、参加してない」

「この素材偽物なんじゃないのか?今の冒険者が単独パーティで50層まで辿り着くのは相当厳しいと聞くが」

「いや、行ったんだって」

「ちょっと時間をくれ」


そう言って道具を取り出した親父。

ただ黙ってその作業を見る。


「こいつぁ本物だな」


しかしその作業も暫くすると終わりそんなことを口にした。


「だから言ったろ?俺が持ち帰ったもんだって」

「兄ちゃん名前は?」

「フレイ」

「あ、あんたがフレイか」


親父は酷く驚いたように顔を歪める。俺の名前に何か思い当たることでもあるのだろうか。


「今あんたの名前で持ち切りだよ。最強のスキルを持って50階層を突破して転移結晶の生成にも成功した化け物だって」

「そうなのか?」


厳密に言うと転移結晶を生成したのは俺じゃないんだがな。まぁ細かいものか。


「それで?いくらで買い取ってくれるんだ?」

「全部で100万ルプスは出せる」

「100?!」

「悪いな。量がもう少しあればまだ付けられたんだがこんなものだ」

「いやいや、十分だ」


100もあればかなり長い期間暮らせるくらいの大金だ。

それに俺とミーシャがいるならばまた登って回収できるものだ。それだけの値段が付くなら上々だ。


「なら、少し待っていてくれ。金を取ってくる」


店の奥へ入っていった男。


「100もあれば何でもできるな」

「そうだねー。100なんて私の今までのお給料何年分かなー」


ガックリと肩を落とすミーシャ。

俺と同じでほぼ貰えていなかったらしいな。


「ほら、これで買い取らせてもらう」


そう言って皮袋を持ってきた親父。彼からそれを受け取ると中身を見た。

中には見たことの無い量の金貨が所狭しと詰め込まれている。


「また何かあったら持ってきてくれるか?新時代の鬼神フレイ」

「新時代の鬼神だなんて凄いですね!フレイ!」


その言葉を聞いて飛び上がるリオ。


「そうだね。私のお父さんと同じ呼び名で呼ばれるなんて凄いことだよ」

「確かに。それは光栄だな」


ルーシーの親父さんは冒険者として凄く名を馳せていた。その実力は本当に凄いもので彼は人類初めての80層への到達を成功させたと言われている。


そんな人と同じ呼び名を貰えるなんて。

でもこれで立ち止まるつもりはない。もっと上へ。


「ありがとうな。また何かあれば持ってくるよ」


店主にそう言って店を出ることにした。

次はアリア達の話を聞かないとな。




「え?」

「だめですか?」


適当に食事を済ませた俺に聞かされたのは正式に自分たちをパーティに迎え入れて欲しいというアリア達の願いだった。


「いや俺は構わないが」


むしろ俺達のパーティに入ってくれるのなら嬉しいくらいだし。


「まさかそう言って貰えるとは思わなかったな」

「そうですか?」

「あぁ」


元々俺達のパーティは人数が少ないし、それに入ってくれるというのならこれ以上に有難い話はない。

特にイルダのスキルは俺のスキルと相性が良かったのは確認している。

アリアやルイズ達にもスキルがあるのなら俺はその効果を伸ばすことも出来る。


「単純に俺のスキルって人が多ければ多いほど使えると思う。だからそうやって入ってくれるなら本当に嬉しいよ」


そう伝えるとアリア達は微笑む。


「じゃあ、これからもよろしくお願いしますね」

「あぁ。よろしくな」





アリアの話を聞いた後行く場所があったため一人でそこに向かった。


「先ずは、おめでとうと言っておこうかフレイ。よくやってくれた」


俺はルーシーの親父さんと2人で会って話していた。

鬼神ヴァリアスだ。


「急かしたようで悪かったな」

「いや別に。それに俺の方もそろそろ借りを返そうと思っていたところだし、俺を信じてくれていたんだろ?俺が帰るってことを」

「いつから気付いていた?」

「ついさっきだよ」


ルーシーは俺を殺すつもりだって言っていたが、初めから彼は俺が無事に戻ってくることを信じてくれていたと思う。

そしてそれはどうやら当たっていたらしい。


「あんた俺が帰ってきて1回も驚かなかったよな?それで確信したよ。この人は俺が戻ってくるのを信じていてくれたって」


俺が戻ってくるのを確信していたからこそ驚かなかった。そう考えるのが普通だろう。


「驚くのは想定外の時が起きた時だ。しかしあんたは驚かなかった、ということは俺が戻ってくることを想定してくれていた、というわけだろ?間違ってるか?俺の推理」

「鋭いのは先代譲りというやつか。その通りだフレイ。流石の頭の回転だな」


右手で顔を軽く抑えて豪快に笑う親父さんの姿が目に入った。


「流石あの人が育てただけはあるな。その鋭さ。確かに受け継がれているように見える」

「いや、普通だろ?これくらい」

「そこまで言ってみせるとは末恐ろしい奴だ」


別に大した考えじゃないと思うんだがな。


「それと、これ。滞納していた分の金だ。きっちり払わせてもらおうと思う」


皮袋を手渡した。


「お前から返済に来るとは思わなかった」

「借りたもんは返す。そういう主義でね。これからもそういう主義かは分からないが今は返す」


皮袋を受け取った親父、鬼神ヴァリアスは俺の目を見た。


「ルーシーを連れて行ってくれ。私が見れなかった90層以上の景色もお前なら見ることが出来るだろう?新時代の鬼神フレイ」


黙って頷く。


「いい目だ。お前にならルーシーを預けられる」

「任せてくれ」


もう一度最後に旧鬼神ヴァリアスと視線を交わして別れることにした。



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