第二十二話 街に帰ってきた、女の子たちにすごい感謝されてしまった
眩いばかりの光に包まれたと思ったら神殿にいた。
古くからこの地にある神殿だ。
荘厳な雰囲気を放つこの神殿は柱や天井何から何までもが失われた古代文明の凄さを感じさせる。
ここは何かの儀式に使われていたのか真ん中に台座がある少し開けた場所だ。
背後を見るとあの時に見たもの同じように台座の上で転移結晶がそこで輝いていた。
「戻れたな」
自分の手足を見る。
帰ってこられたようだ、あの地獄から。
何を見ても成功した以外に考えようがない。
あのダンジョンで転移結晶を使うとここに帰ってくるというのは決まり事だから。
「ほら、早く歩く!」
「ひ、ひぃぃ!!辞めてくれ!!」
ジェガルがスノウにしっかりと拘束されていた。
「あ、帰ってきましたね」
その一方で俺の方へ近付いてくる奴らがいた。
近付いてきたのはアリアやミーシャ達。
「ありがとうございます。フレイ、帰れたのは貴方のおかげです」
いきなり抱きついてきたリオに少し驚きを隠せない。
「そうですね。凄く不安でした」
いつも温和な顔をしているようなマミまでもが、少し疲れていると言いたげな表情をその顔に浮かべている。
「すごく不安でした。いつもと違う天の塔。そこに閉じこめられて、いつ帰れるか分からないし心身共に休める場所はなくて本当に不安でした」
アリアはその場で泣き始めた。
「そうですよ。ここまで帰れたのはフレイのおかげです。本当にありがとう」
ルイズも目から涙を流し始めた。それだけ帰ってこられたのが嬉しかったみたいだ。
「フレイ、ありがと」
彼女たちの中でイルダだけはいつも通りの感情の読めない顔をしていたが、それでも礼を言ってきた。
「いや、どっちかと言うと俺よりイルダの功績だろ?感謝なら俺よりイルダにしてやってくれ。俺はしょせんイルダのサポートをしただけだし」
結局俺がしたのは装備の改良だけだ。
それを使いこなして転移結晶を生み出したのは他の誰でもないイルダの力。
「イルダ…ありがとう」
「イルダ…」
「ありがとうございます」
俺がそう伝えるとイルダに抱きついて感謝し始める3人だった。
「ちょ、ちょっと?」
珍しくいつもの表情を崩して狼狽えているイルダは新鮮だった。
「私もちょっと怖かったかな。いくらミーシャとフレイがいてもやっぱりちょっとは怖かった。でも、ありがとうフレイ」
「そうですよね。私も不安でした。でも…ありがとうございます。フレイ」
ルーシーと笑顔のリオが言ってくれた。
「フレイ私からもありがとう」
ミーシャも嬉しそうな顔をしている。
「いや、俺こそ皆に感謝しなくちゃならないと思ってるよ。悪かったな。最初は何も出来なくて」
途中からは俺も前線に立ったがそれまでは何もしていない。
女の後ろでバトルの解説をしていただけの情けない男だった。
でもこうして帰ってきた今は自分がかなり強いことを自覚できた。
「ううん。仕方ないよ。でも凄いよねフレイのスキル。私でもこんなに強くなれちゃったし」
俺のフォローをしてくれてから自分の剣を手に取ったミーシャ。
「あんな錆びた剣がこんなになるなんて思いもしなかったよ」
俺の顔を見て微笑んでくれている。
「俺も最初は思わなかった」
苦笑して返す。まさか追放された奴が持っている武器が超一級品だなんて俺も思わなかったくらいだ。
というより知っていれば追放されなかったか。
「ま、何はともあれありがとな。着いてきてくれて」
「うぅん。私こそ拾ってくれてありがとう。あの時拾ってくれなかったらどうなってたかな」
そう言って微笑むミーシャ。
その時だった。
「俺は悪くない俺は悪くない。全部奴隷が悪いんだ」
「まだそんなこと言ってるのか」
「俺の輝かしい未来のために人類の未来のために俺は要らない命を盾に前に進んだだけだ!それの何が悪い!」
ジェガルとスノウの会話がここまで聞こえる。
「貴様にはきちんと罰を受けてもらう」
「………」
そう言ってジェガルを連れていこうとするスノウだが、神殿を出る前にこちらを向いた。
「フレイ達にはまた話を聞くと思う。そのつもりでいてくれ。紅蓮団の残りのメンバーについてもこちらで拘束するつもりだ」
「分かった」
神殿を出ていく彼女とジェガル、それからマリー。
流石に所属していたせいかやはり直ぐに解放されるわけではないみたいだ。
「さよならじゃないよ。フレイ、今度は君と冒険したいから」
にっこり微笑んでからスノウに続き神殿から去っていった。
「とりあえず一件落着ということだ。俺達も降りようぜ」
改めてアリア達とミーシャ達に目をやった。色々と話もあるし何よりも。
「それ持ち帰った素材だよね?」
にんまりと笑って近付いてきたルーシー。
「ん、あぁ。そうだ」
「家賃、きちんと返してくれるんだね?」
「まぁな。俺は爺ちゃんとは違うしルーシーの親父さんが俺にいつまでも部屋を貸す筋合いはない。これは俺なりのケジメだ」
いつまでも偉大だった鍛冶屋の息子というだけで部屋を借りているつもりもない。
「金に変えればちゃんと返すよ」
先に酒場で食事、にでもしたいがそもそもの金がない。先ずは換金だな、それから食事、滞納していた家賃も支払おう。
「これで終わりなんですね。いつか終わるって分かっていましたがいざこうなると寂しいものです」
イルダに抱きついていたはずの3人はそれを辞めいつの間にか俺の近くまで来ていた。
その中のマミがそう呟いていたが日常に戻るだけだし永遠の別れという訳でもない。
「あぁ、そうだな。短い間だったが世話になった。俺達はこれからやることがあるから帰る。お前達はお前達で好きにしてくれ」
ミーシャを連れて神殿を出ようとした時だった。
「あのフレイ」
ルイズが意を決したように俺を見てきた。
いや、それはルイズだけではなかった。マミもアリアも、あの表情の読み取れないイルダまでもがそんな顔をしていた。
「話があります。私達も付いていっていいですか?」
「あぁ。構わないが」
何の話かは俺も知らないが話があるのなら聞こう。
「だが俺達は1文無しだ」
そう言って皮袋を取り出す。少し大きめなものだ。その中に入れられた資源。
「先ずはこれを金に変えてからだ。それまで待ってくれ」
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