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第二十話 前例のない生成に成功してしまった

 調整した杖を早速イルダに渡す。


「何をするかは分かってるよな?」


改めてになるがイルダに訊ねておく。勿論分かっているだろうが。


「転移結晶の生成、だよね?」

「そうだ」

「本当にできるのか?」


スノウはやはり信じられないのかそう聞いてくる。

確かにそうだろう。転移結晶を生成スキルで生み出せたという前例はない。

この天の塔、ここで採取したという入手法しか今のところないのだ。


「成功すれば前人未到の領域へ、失敗すれば普通のことだよなで終わりだ。失うものなんてない。一気にやってくれイルダ」

「前人未到…」


1度呟いてしっかり杖を握りしめるイルダ。


「出来るわけねぇだろ転移結晶の生成なんて。無駄無駄。出来るわけねぇよ。なんせ俺達ですら成功してないんだからよ」


そこで現れたのはやはりジェガル。


「人のやる気を無くす天才だなお前は」


思ったことをそのまま口に出す。人が今から誰も成し遂げられなかった偉業に挑戦しようとしている時にわざわざ口を出すなどどういうセンスをしているのやら。


「クソガキがお前失敗したら俺がぶっ殺してやるからな?」


胸ぐらを掴んでそう凄んでくる。相変わらずだな。


「せいぜい失敗することを願ってるんだな。お前らの無能っぷりを証明してやるからよ」

「言うようになったなぁ?雑魚?みんなの前で口にする遺言の100個くらい考えておけ?」


そう言って下がるジェガル。


「頼んだぜイルダ」


全てを彼女に託し俺もスノウも下がることにした。

彼女の目の前にはさっきの階層で討伐した大型ガーディアンのコアを置いている。素材としては今用意できるもので最高の物だ。


「最強の賢者と呼ばれ最高の鉱石生成スキルを持った人でも転移結晶の生成は成功しなかった。その意味、馬鹿でなければ分かるな?」


俺の方を見もせずにそう問いかけてきたジェガル。


「まぁ見ておけ」


そう言ってそれ以降のこいつの言葉は無視することにした。


「…」


イルダが息を吸って吐いてそれからコアに手をかざした。


「精霊よ、我が声に答えて」


そうして彼女の口から流れるように飛び出てくる詠唱の数々。

止まることを知らないように、その口からは既に何十の単語が出てきている。


「我はここに汝を生み出さん」


彼女が杖を振り下ろし魔法を発動させる。

その瞬間だった。


「どわっ!」


凄まじい爆発が起きた。


「な、何が起きた?!」


隣のジェガルも何やら言っているようだが爆煙が凄くて何も見えない。


「おい、ゴミ!失敗してんじゃねぇか!」


しかしあいつはこんな時でも俺に文句を言うのを辞めないらしい。その精神力は見習いたいな。


「答えを見てからだ」

「あぁ?」


数秒後辺りを包み込んでいた爆煙はやがて形を失っていき薄れていった。


「…や、やったのかな…」


そしてその前方杖を投げ出して尻もちをついているイルダの姿があった。

その彼女の視線の先。

そこには


「おいおい冗談だろ」


虹色に輝く鉱石が確かに浮かんでいた。


「転移結晶…だと…?有り得ねぇ!有り得ねぇよ!」


イルダに近付こうとした俺の腕を握るジェガル。


「有り得なくても目の前で起きてるんだ。受け入れてくれ」


手を振り払って前に進む。これでみんな助かるし体勢を立て直せる。

暗雲が立ち込めていた現状に光がもたらされた。


「ありがとうイルダ」


まだ目の前の結晶を見つめて動かないイルダに手を伸ばす。


「…これ私が?」

「あぁ。イルダのお陰だ」


そう伝えるとその顔に喜びの色が浮かんだ。


「フレイのおかげだよ。私一人じゃ絶対に出来なかった。ほんとすごいよねフレイの作った武器。私でもこんなの作れちゃうなんて」


そう言って転移結晶を見つめるイルダ。

これは間違いなく史上初の成功例。


「あぁ。俺とイルダで生み出したものだ」


足音を鳴らしながらスノウが近付いてくる。


「これが…フレイのスキルの力…ありえない強さだな。これは…」

「やっぱり強いのか」


俺もこのスキルは実は最強クラスではないかと感じ始めていた頃だ。

そしてその考えは多分当たっている。

しかし、ジェガルはそれを認められないらしい。


「お前のスキルはハズレだ、ゴミだろ?何を言ってやがる」

「ジェガル、フレイのスキルは間違いなく最上位に食い込むものだ。それはその目で見ただろう?」

「あれは何か仕掛けがあるんだよ。有り得ねぇだろ!あんな大型のガーディアンを1発、それから今度は転移結晶だと?信じられるわけがないだろ」


そう叫んで俺のやったことを否定しようとしているジェガル。


「見苦しいぞ」


しかしそれらの言葉も全てスノウに一蹴されてしまっていた。


「Sランクパーティ紅蓮団リーダーのこの俺が出来なかったことをそいつが出来るわけないだろ?!そうだ。きっと何かの間違いに決まっている。こんなゴミに俺が負けるわけがない」


そう言ってどこかへ消えていくジェガル。


「あいつ……」

「そのうち戻ってくるだろ」


スノウが心配そうな目で見ているが、あの手のヤツに限ってすぐ戻ってくると思う。


「そうだな。それよりあれだけ言われても怒らないんだなフレイは」

「俺があいつのパーティにいた時は確かに役立たずだった。だから別に言い返そうとは思わないよ」


ふふっと笑うスノウ。


「人間としての器が大きいんだな」

「そうでもないと思うけど、まぁいいや」


俺たちの近くにやってきたアリア達ミーシャ達に視線を移す。


「俺達は一旦戻るつもりだ」


スノウにそう告げる。

元々アリア達は下に送り届けるという約束だったし俺達もとりあえず50階層というのが目標でそれは達成出来た。

一旦戻り装備を整えもう一度登りたいとそう考えている。


「いや、我々も一旦戻るよ。今回の塔は危険になっている。もう一度作戦を考え直したい」

「それもそうだな」


確かにスノウ達もこれ以上続けるのは危険かもしれない。

ならその決断は正しいと言えるだろう。


「やっと戻れるんですね」


その言葉を聞いて胸を撫で下ろすアリア達。

それを見てからもう一度スノウの顔を見た。


「そうだね、戻ろう。用意してくれたこの転移結晶を早速使う時が来た」

「俺達は後でいい。他の人たちを先に」

「了解した。全員返したら声をかけるよ」


俺達はとりあえずこの階層の素材を回収することにしよう。


明後日サブタイトル追加予定です。


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