第十八話 強敵を一撃で倒してしまったらしい
しばらくフラフラしてみたが何も無い。
この先に進むにしても何をするにしてもとりあえずあのガーディアンをぶち抜いて先に進むしかないのだが。
「突破しないのか?」
「相手がどんな奴かも分からないのに仕掛けられるわけないだろ頭使えゴミスキルが」
俺はスノウと話していたつもりなのだが、気に食わないのか暴言を吐きながら混ざってくるジェガル。
「黙ってくれないか?最強のジェガル様?もっとも今は最弱である俺と同じ階層で止まっているようだが。それに俺は今スノウと話している」
「おま…」
拳をワナワナ震わせ始める。
そうしてその拳を開いて俺の胸ぐらを掴んできた。
「舐めるのもいい加減にしろよ?お前」
無視してスノウと話すことにする。
今更こいつの機嫌を気にする必要など今の俺にはないのだから。
「どうなんだ?このままここにいても仕方なく無いか?」
俺達がこの後どのような動きをするにしてもあのガーディアンをどうにかしてこの先に進む必要があるのは変わらない訳だ。
「話聞いてんのか!てめぇ!」
「ジェガル!今は仲間割れしている場合じゃない!」
ジェガルが俺に怒鳴ってきたのを咎めるスノウ。
「ちっ…」
そう言われては何も返せないのか俺から手を引く。
ざまぁ見やがれ。もういっちょ煽っておくことにしよう。
「という訳でよろしくな、仲間らしいからな。あぁ光栄だなぁ、あの最強の紅蓮団ジェガルさんの仲間になれるなんてなぁ」
「後で殺す」
小さく呟いて去っていくジェガル。あそこまで怒りを見せる姿というのは初めて見る。よっぽど俺の言葉が効いたようだ。
「で、現段階でどうするつもりなんだ?俺としてはさっさと先に進みたいのだが」
改めて聞き直す。
「どうにかして倒したいのだがな…」
あれは避けては通れないだろう。文字通り階段を守るように陣取っているからだ。
「既に1度迎撃されている。それにあれは本来ここにいていいレベルのガーディアンじゃない」
そう呟いてあれを見るスノウ。
「ミーシャ」
ミーシャを呼ぶ。返事をして俺の横に並ぶ彼女。
「俺とミーシャであいつを崩す。それでどうだ?」
「可能なのか?」
「俺とこいつで突破出来ないなら一旦諦めた方がいいだろうな」
そう思えるくらい今の俺とミーシャは強い。
「しかし、フレイ達はランクが低い。…私としては任せるという訳にもいかないのだがな」
「ここまで登ってきた俺たちを信じてはくれないか?」
「…それもそうだな。フレイ達はどうやってここまで?」
今更疑問に思ったらしい。
「別に難しい話じゃない。ただガーディアンをぶちのめして進んできただけだ」
「でも、それだとフレイ達のランクがFだったのが説明が付かない。ここまで登れる実力があるなら…」
「それは俺達のスキルや装備によるものだろうな。当時の俺はただの鍛冶スキルを持っただけの奴だったし、ミーシャは錆びた剣を持っていただけ。他2人は言うまでもない」
全員一流どころか駆け出し冒険者そのものだったのだ。
しかしそんな俺たちでもこの俺のスキルがあったからこそここまで登ってこられた。そしてここからも登れるという訳だ。
そう考えるとやはり俺の力は最強なのではないか?と思う。
「俺のスキルは特殊らしくて普通は人間しか持てないスキルを武器に導入出来る、というもの。これで俺達はここまで登ってきた」
「…スキルインストール…を?」
「よく分からないが多分それだ。俺は武器にスキルを持たせることが出来る」
スノウが目を見開く。
「スキルインストールはまだ実用化されていないどころか目処も立っていない机上の空論のはずだよ。それを…成功させたの…?」
「よく分からないがそうだな。成功はしたよ。俺の今のこの剣も色々スキルを持っている」
そう言うと信じられないような目で俺を見るスノウだった。
「それならば…確かに行けるかもしれない。正式にあのガーディアンの討伐を頼めるかな?どのみちここは突破しなくてはならないし」
そうこなくっちゃというやつだな。
「分かったよ。俺たちであれは何とかする。その代わりもしやばそうならフォローに入って欲しい。俺達もまだ戦い慣れているわけじゃない」
「分かった。あのガーディアンの討伐を受けてくれて感謝する」
俺は直ぐに鞘から剣を抜いた。
頭に思い描くのはあの人型のガーディアンが真っ二つになる光景だけ。
「ミーシャ。先に俺がやる」
「うん」
返事が聞こえたし俺は一振り。剣を振ることにした。左から右に…動かしたのはそれだけだ。
勿論空を滑る剣先。
しかし
「な、何だあれ…」
スノウが口を開く。
剣はガーディアンに触れたわけじゃない。だがそれでも上半身と下半身の真っ二つに別れてその場に崩れ落ちた。
「馬鹿な…この距離で…何をしたんだ…それよりもデタラメすぎる何だあれ…」
一気にまくし立ててくるスノウ。
しかしそれは彼女だけではなかった。
「嘘だろ?何時間も戦って傷一つ付けられなかった謎のガーディアンが倒れた…?」
「おい、誰だよ!あれを倒したの?!あんなの倒せるやついたのかよ!」
周囲があの残骸を見てざわめきだした。
そしてその中の1人がこんなことを口にしていた。
「鬼神だ…鬼神が帰ってきたんだ!」
その声を皮切りにそういった声は増えて行った。
「ルディアが世界に誇る…鬼神。ルディアの鬼神が復活した!」
「鬼神の再来ですね!」
「スノウ様今のは…」
そんな声が飛び交う中1人の女が俺たちに近付いてきた。
「今のはこの男…フレイがやったものだ」
俺をそう紹介したスノウ。しかし女は目を細めるだけだった。
「紅蓮団ではなく、この男が…?それにフレイ?聞いたことも無い名前ですね」
「それはそう。フレイは元は鍛冶屋だったから。それに名の知れるような冒険者じゃなかったから」
「では何故…」
そう言って俺を見る少女。
俺があれを倒せた理由が分からないんだろう。
「彼は誰にも真似出来ないスキルを持っていた。そしてそのスキルは誰も真似出来ない、持っていないからこそ活用法が分からなかったもの。でも彼は自分で使い方を見つけた。本当はSランクの実力があるのにFランクの冒険者になっていた。だからこそ誰も知らない影の住人となってしまった」
そう言ってから今度は俺を見るスノウ。
「勿論、君の適正ランクについては戻ってから1度検討し直したいと思っている。流石にここまで登ってきた君たちを今まで通りの評価というのは心苦しいのでね」
「それは助かる」
ランクが上がるのは俺にとって都合がいいことだ。
それから一先ずの事として気になることがあった。
「これからどうするつもりなんだ?」
「あぁ。このまま続行するのは危険だと判断している。1度立て直す必要がありそうだが…とりあえず上に上がろうか。ガーディアンはどういう訳か一定時間経過で復活するみたいだし。ここでグズグズしていては意味の無いことになる」




