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第十六話 自分用の武器を作った、かなり強そうなのができた

 「…ごめん。もう寝かせて…無理無理無理…だよ…」

「お、おい?!ミーシャ?」


地面に向かって倒れそうになっていたミーシャを何とか支えて背中に背負う。


「…すぅ…」


こいつ…静かに寝息を立てて本当に寝始めやがった…。

本格的に不味いぞ。

しかし落ち着いて現状を確認する。俺達は40階層を突破した。いや…突破するしかなかったと言うべきか。


「悪いな。あの時戻ってればよかったな」


結果ピンチになっていた。

あの後もセーフエリアを訪れたが全部壊されていた。


「私達大丈夫なんでしょうか?」


アリアが泣きそうな顔をしている。

仕方の無い話だ。ここまで来てしまえば恐らく登り続けるしかない。


「何か異変が起きているのは間違いないだろうな。あの橋が崩れるなんてこと今までになかったはずだし聞いたことがない」


直前の40階層にあった深い谷を渡るために架けられた橋があるのだが、俺達が渡り始めて途中まで来た時背後から崩れ始めたのだ。

だから今は戻ることすら出来ない。


「…悪かったな…でも終わらせるつもりは勿論ない」


これからどうしようかと考えていた時近付いてきたルーシー。


「フレイ」

「どうした?」

「…テントを持ってきた。どの道このまま動くのは危険だと思う。一旦ここで休まない?」

「テントを持ってきたのか?」


俺の質問に頷く彼女。


「テント…って高級アイテムですよね?」


そう聞いてくるルイズ。

テント…セーフエリアと同じような効果があり使用すると小屋が出てきてそこで過ごせるというアイテムだ。

ただし使用は1度きりで耐久値もそこまで高くないため継続しての使用は無理だ。


「どのみち私たちの主力であるミーシャがその様子ではね…」


そう言ってミーシャを見るルーシー。

確かにここまで俺達はミーシャに頼りっぱなしだった。

ルーシーもリオもアリア達もミーシャをサポートするだけで彼女1人に全部押し付けてしまった。


「そうだな。このまま進むのは危険だ。頼めるか?ルーシー?」


そう言うとルーシーは1つ頷いてアイテムを使ってくれた。

前方に現れるのは白い小屋。いつも目にしてきたセーフエリアと差ほど変わらないものだった。


「入ろうか」


みんなを促してテントに入る。

本当に簡易的なセーフエリアで備蓄はないし快適ではないがそれでも外敵に襲われても多少は持つということを考えれば気も休まる。


「…お疲れ様」


ミーシャをそう労ってから寝かせる。


「…フレイ…」


前髪が張り付くほどに出ていた汗を拭いてやると俺の手を取ってきたミーシャ。一瞬起きているのかと思ったがそうではない。無意識にやったことみたいだ。


「…無理させて悪かったな」


そう呟くとアリア達を見た。みんな疲れているようだった。

しかし


「…?」


イルダだけは平気そうだった。相変わらず眠そうにこちらを見ていた。

いや…よく見ると表情が少ないだけで疲れているようだった。今溜息を吐いたからそうだと思う。


「お疲れ様。ここまでありがとうなみんな」


その姿を見ているとそう言いたくなった。


「…少し外に出てくる」

「馬鹿なの?」


俺の腕を掴んでくるルーシー。


「そうですよ…ミーシャなしで出かけるなんて死にたいんですか?」


アリアもそう言ってきた。

どうやら今日出会ったばかりなのに俺達がミーシャを中心に上がってきたのを理解しているみたいだ。


「だから、こそだ。ここからは俺も前に立ちたい」

「どういう意味ですか?」


厳しいが何処と無く穏やかさを感じるマミの声。


「俺が前に出る。それだけだ。元々今回はそのために来た。俺が武器を手に入れるために」


そう。何にせよ俺はミーシャの隣に立って戦おうとそう思っていたところだ。それが少し早くなった、それだけだ。


「今から素材を集めてくる。それで…俺だけの最強の武器を作る」

「…外にはガーディアンがいるんですよ?ミーシャが目覚めるのを待つべきです」


ルイズもそう言ってきた。彼女の言っていることは正しい。確かに待った方が確実だ。


「…余計な手間をかけさせたくない。それに必要なものは既に分かってるんだ。すぐ戻るさ」


俺の名を呼ぶ声がいくつか聞えたが無視して外に出る。

時間との勝負だ。



 「はぁ…はぁ…」


薄暗い森の中を走り回ってようやく帰ってきた。

運良くガーディアンとは出会わなかったのは不幸中の幸いか。

塔に入る前に一応防具にインストールした、エンカウント率ダウンのスキルが効いていたのかもしれない。


「フレイ、取って来たのはすごいけどどうやってスキル使うつもりなの?」


当たり前の質問をしてきたルーシー。たしかにここは工房ではない。どうやってスキルを使うのか疑問に思うのは普通だろう。


「簡単なものなら工房がなくても出来る」


そう伝えるとテントの中の机に拾ってきた素材をゴトっと置いた。

よし。問題ない。

素材も流石この辺りのものだ。そこそこのものが出来るだろう。


「…」


素材に魔力を流す。

頭にはちゃんとした設計図がある。

それを俺の手を通して現実に持ってくるだけ。そんな普通の鍛冶スキルを使った。


「導入スキル…攻撃力アップ…防御力アップ…絶対回避…他…」


声に出して確認する。

目の前の素材で作られる武器はそれだけのスキルを導入しても耐えることの出来るものだ。


「融合せよ…」


それを俺の魔法で剣の形にしていく。


「何この…スキル…」


いつも眠そうにしていたイルダが感情を隠せないようなそんな声を漏らした。


「こんなスキル始めて見ます…何ですかこれ…」


それはマミも同じようだった。

目を見開いて俺の手の動きをじっと凝視しているようだった。


「これが…ミーシャの武器を作った…スキル…」


ルイズも驚愕に顔を歪めていた。

俺以外にこんなスキルを使えるやつはいないと思うので初めて見るのだろう。


「私を…助けてくれた力…」


最後にアリアもそう声を漏らしていた。

彼女を救ったミーシャが持つ剣を使えるようにした俺の力。


「…完成だ」


そうして魔法を終了させる。そこにあるのは白く光る銀色の剣。

目で見てみるが各スキルは正常に導入出来ている。


「…これでミーシャの横に立てる…」


そう呟いて剣を同時に作っておいた鞘に収めた。


「いつも驚かせてくれるよね」


ルーシーは少し笑っていた。


「全くですよ…私の杖も凄いものでしたが…これはさらに凄いんでしょうね」


リオもその横で微笑していた。


「帰ったら2人の武器も強化するつもりだ」


俺だけじゃ意味が無い。だから


「一緒に登って一緒に帰ろう」


明日に備え俺達は眠ることにした。

まだ登らなくてはならないのだから。





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