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第十五話 異変が起きているようだが、ミーシャ達がいれば余裕だろう

 あの後何事もなく迷路を攻略し抜けた俺達。

階層を上がった瞬間緊張の糸が解れたのか4人は抱き合い始めた。


「ありがとうございますぅ…」


そうして落ち着いた頃リーダーが代表して頭を下げる。

最初に拾った少女を含め4人のパーティだった。


「そういえば、何かおかしくないですか?」


リーダーが俺にそう質問してきた。それは俺も考えていたところだ。


「さっきのフロアでガーディアンの目撃例は確かにない。何かおかしいというのは分かるがそれで決めつけるのもまた早急だと俺は考えている」

「…」


自分の左腕を右手で掴む目の前の少女。

確かにこの子の言い分も分かるには分かる。しかし俺達は進まなければならないのもまた事実だ。


「悪いが俺達は先に進む。何かおかしいのかもしれないが時間が無いんだ」


ここはまだ低層と呼ばれるエリア。

正直な話こんなところで手に入る素材を持ち帰ったところで、俺があちこちで作った借金や踏み倒してきたツケがチャラになることなんて相当数を積まなければ無理だ。


そんな事をする余裕も時間もないからこの上に登り、上層の素材を回収しなくてはならないし、それを攻略出来るだけの武器や防具も必要になる。


「しかしここで見捨てるのもまた違うかもしれないな。次のセーフエリアまで同行するか?そこで別れよう」


セーフエリアにはこのダンジョンから離脱する用の装置がある。

それを起動させることで一気にこのダンジョンから抜け出すことが出来るのだ。

それを使用して彼女達だけ帰すということも可能だ。


「私達はその後も勿論登るんだよね?」


ミーシャの質問に頷く。一緒に行動するのはそれまでだ。

俺達は先に進まなくちゃならない


「嫌な予感がするんですが…大丈夫ですか?」


そう聞いてくるリーダーの少女。


「俺達もある程度登ったらその段階で切り上げる。そう心配することでもないだろう」

「そうなのですか?」

「あぁ。俺達が今日ここに来たのは踏破するためじゃない。素材を回収するためだよ」


40や50階層その辺まで登ることが出来ればそこそこの素材が手に入る。今の様子だともっと上に行くことも出来そうだが今のところはその辺で考えている。

最低限その辺まで登って素材を回収し一旦帰る。これが今回の流れだ。


「そうだ。俺の名前はフレイ。よろしくな」


そう言って少女達を見た。


「私はルイズ」


そう言ってリーダーの少女が挨拶をしてくれた。


「マミです」


おっとりと微笑むピンク髪の少女…というよりお姉さんがそう名乗る。


「イルダ」


名前だけ眠そうに口にした黒髪の少女。

それから


「ア、アリアです」


俺達が最初に出会った黒髪の少女が最後にそう名乗ってくれた。

それからミーシャ達が順番に挨拶することによってお互いの紹介を終える。


「ねぇ、次のセーフエリアっていつなの?」

「21階層。ここだ」


ミーシャの質問に答える。


「ここなの?!」

「だから短い付き合いとなる。まぁ、それまではよろしくな」


驚いているミーシャを横目にアリア達に目をやる。


「はい!」

「なら行こうか」





 少し歩き回ってセーフエリアを発見した俺達。

無事にセーフエリアを発見出来たのだが…。


「…」

「な、何これ…」


隣にいたミーシャもこの惨状に思わず驚いていた。

無理もない。


「ここセーフエリアなんですよね?」


パーティを代表して俺にそう質問してきたルイズ。


「セーフエリアだ。間違いない、俺は以前ここを利用したし」


ここがセーフエリアなのは間違いないのだが。


「何かの間違いじゃないんですか?だって…セーフエリアにガーディアンが近寄ることはないって…」


疑いたくなる気持ちは分かる。ガーディアンはセーフエリアに近付かない。その話が本当ならばこんなことにはならないから。


「酷いですね…」


マミも顔を歪めてそう口にしていた。


「…」


セーフエリアの象徴である小屋が崩壊していた。

どうやって壊されたのかは分からないが原型を止めてはいなかった。


「…兎に角…帰還装置が生きてればいいが…」


呟きながらその残骸に近付くと帰還装置を探す。


「どうですか?」


不安を押し殺しているような必死な声でそう聞いてくるアリア。


「…」


答えは言いたくないが最悪な結果だろうな。


「死んでる」

「じゃあ何?帰れないってことですか?」

「現状な」


帰還装置は高度な技術で作られたものだ。

俺一人の力で直せるものでもないしここにいるやつ全員が力を合わせて直せるものでもない。

となると


「上に登ろう。他の帰還装置を探す」


辺りを見回して思う。幸いと言っていいのか分からないが、ここが壊れた時に休んでいた冒険者はいなかったのか死体も怪我人も転がっていない。


「セーフエリア…ここが壊れている以上ここが安全と言い切れるわけじゃない。上に上がろう」

「嫌ですよ…」


ルイズが自分の体を抱く。


「私たちじゃ…無理ですよ…」

「そうですね…私達は20階層を突破したら戻ろうってそう決めて今回はここにきたんです。それをまた当初の目的より上に上がれだなんて…」


流石に参っているのかマミも弱音を吐いていた。イルダだけは表情は変わっていないが。

そんなことはどうでもいいか。


「フレイ」


その時だった。


「囲まれたよ」


ミーシャの声で周りを見る。彼女の言った通り獣型のガーディアンに周りを囲まれていた。


「ひっ!」

「ここまでなんでしょうか…」


ルイズ達の悲鳴にも似た叫び声。


「やれ、ミーシャ」


しかしそれを聞かずにミーシャに指示を出した。


「…」


ミーシャがその場で空を切るだけの一振り。

そうしてから鞘に剣を戻す。

すると掠ってすらいないはずのガーディアンの体全てが真っ二つになった。


「こうしているとまた囲まれる。上がろう」


マミは何が起こったか分かっていなさそうだがそれでも立ち上がる。

それとは逆に口を開いたルイズだった。


「あれだけのガーディアンを一瞬で…?あなた方何者なんですか?」

「ただのFランク冒険者パーティだ」


そう答えてルイズの手を取り立ち上がらせる。


「もう少しの辛抱だ。上に行こう」


セーフエリアがここにない今、上に上がる事しか俺たちに選択肢は残されていない。


「…下ればいいんじゃないんですか?」

「悪いが俺達には時間が残されていない。同じ時間をかけて20階層分を降りるなら40階層まで上がりたい。その辺まではミーシャが1人で何とかしてくれる程度だろう。俺たちを信じてくれ」

「…ごめんなさい。助けて貰ってるのは私たちなのに…弱音吐いちゃって。分かりました。フレイ貴方を信じます。だから…助けて…」


何が起きているのは分からないが次のセーフエリアが生きていることを今は願おう。

それにその気になればミーシャだけで踏破もできるだろうし、そんなに心配することでもないだろうが。


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