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第十四話 紅蓮団のガルドを始末した。お似合いの最期だ

 「誰かと思えば外れスキルのゴミじゃねぇか」


20階層を走り回っていたら探していた奴を見つけた。

しかし、傍に誰かがいるような感じはしない。少女の仲間は逃げられたのか…?


「ガルドだな」

「そういうお前はゴミスキルである鍛治スキルを押し付けられたフレイちゃんだったっけ?」


そう口にして顔に手を当てて大声で笑う男。


「にしてもほんとに天の塔の攻略に挑むなんて馬鹿なんじゃねぇのか?またいじめられに来たのか?」


俺を見て汚い顔で嘲笑する。


「しかも見てのところ弱そうな女ばっかり。そんなんで天の塔に来るなんて死ににきたんでちゅかー?」


何が面白いのか笑い続ける男。

今のルーシーなら遠く離れたところからでも魔法を使える。離れてから魔法を使わせて訳の分からないまま復讐しよう。


「笑いたけりゃ笑え。先を急いでいるんでな」


それに俺としてもいちいちこんな奴を相手にしている暇はない。そう言って横を通り抜けようとしたところ。


「まぁ、待てよ雑魚。あれは目に入らなかったか?」


そう言って次の階層に繋がる階段を指さすガルド。

そこには大きめの獣型のガーディアンがいた。こちらに来る様子は見えない。それにしてもここにもいたのか。


「まさか、あれにびびってここで立ち往生してんのか?お前」

「誰が。面白いもんを見せてやるつってんだよ」


そう言ってガルドは右手の通路を指さした。


「…?!」


そこにはロープで体を縛られた少女3人がいた。


「あいつらゴミ共をあれの前に放り出して餌にする。そして俺は悠々と横を抜けるって戦法さ。いやぁ不幸な事故だなぁ」

「み、みんな…」


途中で拾った少女が悲鳴に似た声を上げていた。


「このクズが…」

「ゴミを有効活用して何が悪い?おい、お前ら仕事だぞ。さ、俺の代わりに食われてこい。お前らの代わりはいくらでもいるけどこの俺様の代わりはいない。光栄に思え」


そう言って少女達の方に近付こうとするガルド。

こいつ…本当にクズだ。もう生かしておこう等という気は起きなかった。全力で潰す。


「ルーシー。あいつにターゲット集中の魔法をかけてくれ」


彼女に指示を出した。


「で、でも、私デバフ魔法は使えないよ?」

「そうだぞー馬鹿なフレイちゃーん。それに俺は『デバフ無効』スキルを持っているのを忘れたのか?俺のスキルは最高ランク。どんなデバフだって弾くぜ?」


俺達の会話が聞こえたのかガルドはそう声を出した。

しかし、2人の言っていることは見当違い。


「いや、あいつはタンクだ。タンクに関してはターゲット集中魔法はバフ扱いになる。お前タンクなのにそんな事も知らないのか?まぁ、知ってるわけないよな?今までに1度だってマトモにタンクとして仕事をした事がないんだから。そしてこれからもするつもりなんてない」


タンクは本来仲間に向くような攻撃をその一身に受ける職だ。

そのタンクに必要とされるのはターゲット集中魔法。

本来これは敵に付与することによって敵の攻撃を敵に流すというデバフとして使われることが多いのだが…タンクに限ってはデバフではない。


「己の職と相性がいい魔法はバフ扱いになる。この意味が分かるよな?ガルド」

「デタラメ言ってんじゃねぇよ!」

「デタラメだと思っているのなら何でそんなに焦っている?」


その焦りこそが今の奴の心情を表しているのだろう。


「ここにいるルーシーはバフに関する魔法ならば、何でも使える。ターゲット集中の話と今のこの話をした意味は、お前の悪い頭でも流石に分かるよな?」


そう言ってルーシーに視線をやる。


「ルーシー、頼めるか?他の魔法と使い方はさして変わらないはずだ。あいつに全てのターゲットを集中させるそんなイメージでいい」

「おいゴミが!いいのか?こいつらやっちまうぞ?!」


ついに余裕が無くなったのか男は少女達に剣を向けた。

しかし、遅かったな。


「無駄だ。お前程度の剣で傷を付けることは出来ない。既にその子達には防御力アップの魔法がかかっている。だよな?ルーシー」


俺の問いかけにコクっと頷くルーシー。本当に仕事が早いな。

それを見て顔を青く染め上げていく男。


「…辞めてくれ…冗談だろ?そうだ。俺は…ジェガルの奴に言われてタンクをやっていただけ。悪事は全部あいつがやった事だろ?!後ヒーラーのあいつだ!」

「俺からしたらどっちも変わりない。それにしてもお前、いつもいつもよく蹴ったりしてくれたよな?人をゴミみたいに扱いやがって」


俺からしたらこいつも他2人も何も変わらない。俺が手を下すに値するクズだ。


「お前はいつも自慢していたよな?自分の防御力の高さ。Sランクタンクのご自慢の硬さ、どうか底辺の俺に存分に見せてくれ」


やれ、そう言ってルーシーに魔法を使わせた。

俺の考え通りきちんと奴に対してはターゲット集中魔法はバフとして働いたようだ。きちんと付与されている。


「グルゥゥゥ…」


それを証明するように今まで黙って伏せていた獣型のガーディアンがその体を起こした。

その目は黙ってガルドだけを捉えている。


「く、来るな!来るな!助けてくれ!ゴ…フレイ!悪かった!悪かったって!だからその女に魔法を解除させろ!な?皆で上の階層に行く手段を考えよう!な?!」

「それが人様に物を頼む態度か?」

「た、助けてください!お願いします!」


人は窮地に陥ればこんなにも心を変えられるものなんだな。


「そうだなぁ…仕方ないなぁ。ルーシー?」

「あ、ありがとうございます!フレイ様!」


涙を流して俺に感謝の言葉を吐いてくる男。しかし俺は知っているこの男が本当に心を入れ替えることがないのを。


「耐久力アップの魔法をかけてやってくれ。ガーディアンの攻撃をより沢山受けられるようにな。長い時間をかけて苦しんで……死んでいくがいい」

「そんな………話が違………」

「喜べよ?お前に初めてタンクとしての仕事を与えてやったんだ。感謝に咽び泣け。ゴミ。俺たちの代わりはいないけどお前の代わりはいるんだよだっけ?」


動けずにいるガルドを冷ややかな目で見てから拘束された3人に近付く。


「さ、地獄の鬼ごっこの始まりだ。検討を祈るぜSランクタンク様よ。生きてりゃまた会いたいな。もっともお前はここで死ぬだろうが」


そう言って男の顔面を思いっきり殴ってガーディアンの前に突き出す。

見事にふらついて倒れこんだ男の顔を踏みつけた。


「待て!待て!頼む助けてください!俺はお前の仲間になるから!皆で上に登ろう!そのための方法を…それに俺はSランクだ!こんな事ギルドが黙っていないぞ?!今なら黙ってやるから!」


必死だな。最後にさっきの台詞を丸々お返ししてやることにする。


「俺達はお前をあいつの餌にして横を抜けて悠々と上に登る。みんなで登る方法はもう考えてるよ。いやぁ悪いねぇガルド。仲間に入ったばっかだけど不慮の事故で死んじゃうもんな。不幸な事故だった。ギルドも悼んでくれるだろうよ?」

「た、頼む……フレイ……お前だけが……」

「しつこいね。黙って死ねば?」


そう言いながらミーシャが厳しい顔をしながら俺の方に近づいてくる。

その後ろに続くルーシーやリオも似たような顔をしていた。


「ここにお前の味方はいないらしいな?」

「た、頼むよ……」

「やだよ。黙って死んでくれ汚物が」


奴の顔から足を離す。


「グルァァァァ!!!」


するとその瞬間今まで止まっていたガーディアンが疾走を始めた。狙いはもちろんガルド。俺達など初めからいないかのように奴だけを捉えて失踪するその姿は本物の飢えた獣のようだった。


「ひ、ひぃいい!!!!来るなぁぁぁぁ!!!!!!」


そうして始まった地獄の鬼ごっこにはもう興味はない。

ロープを全て断ち切り拘束されていた女の子たちを全員解放すると俺に泣きながら抱きついてきた


「お、おい?」

「怖かった…」

「ありがとうございます…」

「命の恩人ですよ。貴方は…」


そんな事を言われた。


「何でもいいがとりあえず上に上がろうか」


泣いている全員を促して上に登ることにした。

階段を登っている最中迷宮を走り回りながら叫び声を上げているタンクの姿が目に入った。

どうやら最後はきちんとタンクとしての仕事を全うしてくれたようで嬉しい話だ。

そして今掴まっていた。大きく開かれたガーディアンの口がガルドの足に食らいつく。


「ぐぁぁあぁぁ!!!!!!辞めろ!!!辞めろぉぉぉお!!!!!!」


俺達が次の階層へ入ったと同時に下から断末魔が聞こえてきた。

奴にはお似合いの結末だろう。



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