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第十二話 ミーシャがフロアボスをワンパンしていた

 似たような構成の層を駆け上がってきた俺達は今10階層にいた。

思ったより簡単に抜けられて拍子抜けなくらいだった。

ルーシーの魔法もかなり効果がアップしており、走る速度も上がっているのもあって本当に上がるのが楽だ。


「ここはフロアボスがいるはずだ。見つからないように抜けるぞ」


しかし、ここはそうもいかないかもしれない。

フロアボス、ボスとも呼ばれる厄介な存在がいるという話だ。

そしてここのフロアボスを倒せるようになればようやくスタート地点に立てるらしいが、それを満足に倒せる冒険者というのは意外と少なかった。


「フレイ!フレイ!」

「何だ?!」


ミーシャが俺の名を呼んできて驚いたため大きな声を出してしまった。

敵襲か?


「見てこれ見てこれ」


そう言って岩の陰を指さしているミーシャ。

どうやら敵襲ではないらしい。


「何してるんだ?行くぞ?」

「凄いのあるから見てよー」


見た方が早そうだと判断してそちらに向かった。


「これなに?」

「あーこれは」


その岩陰には鉱石が落ちていた。


「低層の鉱石だな。拾っておくか?」

「強いの?」

「強いかどうかで言うなら別に強くはない。それに鉱石に強いも弱いもない」


使えるかどうかとか便利かどうかとかそういう話ならあるが、強いか弱いかはない。


「持っていってもいいかな?」

「別にいいだろ。とは言え低レアの鉱石だ。投げて陽動に使うくらいしかないだろうが」


ガーディアンにだって聴覚はあるらしいし投げて音を出しそちらに引っ張り出すくらいの使い道はあるだろう。

それでもいいなら持っていてもいいと思うが。


「せっかく、見つけたし持ってくね」

「分かった」


大事そうに皮袋に鉱石を入れるミーシャを待ってから移動を再開する。

それにしても…暑いな。このフロアは所々に岩があるだけの砂漠のフロアだった。

真上には遮るものもなく直接日差しが俺達に当たっている。そりゃ暑いに決まっているな…。


「暑いよぉ暑いよぉ…」


ミーシャもブツブツ文句を言い始めた。さっさと抜けて別のフロアに行こう。この暑さならボスもどこかの日陰で休んでいるだろう。

そう思いたいところだ。


「フロアボスも寝てるはずだ。さっさと行こうぜ」


遥か前方に見える階段を目指し俺達は歩みを続ける。

そしてもう少しで階段というところまでたどり着いた。


「…疲れた…」


ブツブツ言いながら皆で階段を登ろうとしたその時だった。


「キシャァァァァ!!!!!!」


突如砂飛沫を上げながら地中から龍型の巨大なガーディアンが出てきた。


「フロアボス!」


こんなにも暑い中出てきてくれたフロアボスを前に辟易しながらもルーシーも杖を出し始めた。

しかし


「もう…出てこないでよ邪魔だから」


空に浮かび上がっていたそれをミーシャが適当に振った一振で撃ち落としていた。

これもまた一撃だった。到底当たるはずのない距離から振るわれた剣は確かにあのガーディアンを斬り裂いていた。


「…」


これには流石に俺も驚いた。俺もこの剣はやばいと思っていたが…まさかここまでだとは思わなかったな。

なんと言うかこの武器があれば負ける気がしないレベルだ。


「…暑いよぉ…早く行こうよぉ…」


一方でこんなものを見せた当の本人は剣を収めて呻きながら歩き始めていた。

しかしそれを呆然と見るリオとルーシーの姿を見ていると別に俺の反応がおかしい訳では無いらしい。


「どうしたの?」

「いや、…凄いなと思って」

「そうですよ。フロアボスを一撃で倒す人なんて聞いたことないですよ…」


3人がそんなふうに話していた。しかし彼女たちを見るでもなくミーシャは俺を見た。


「フレイ良かったね。フレイの剣が凄いって褒められてるよ」


俺の剣ではないが、まぁいいか。


「とりあえず先に行こうぜ。暑すぎて…もうだるい…」


そう口にすると皆同じ気持ちだったのか着いてきてくれた。早く上を目指そう。



 そうして次の階層に上がってきた俺達。


「暑い…あー、でもここ涼しい…」


そう言って寝転がろうとしていたのを無理やり立たせる。


「寝るな」

「もうだめ…あと1日寝かせて…」

「こんなところで寝たらガーディアンの飯だぞ」

「鬼!鬼!もう無理ぃ!」


そう言ってくるが本当に餌になる。少なくともこんなところで寝かせるわけにはいかないのだ。こいつは俺の生命線なのだから。


「もう少し頑張ってくれ。次のセーフエリアで休もう」

「セーフエリア?」

「知ってるだろ?人間が手を加えた安全なエリアだ。所々にあってそこにはガーディアンが寄り付かない。そこまで頑張ってくれ」

「うん…」


弱った犬の鳴き声みたいな声を出して返事をしたミーシャ。


「無茶させて悪かったな…。初めて使う武器だから疲労もあるかもしれない。出来るだけ戦闘を避けて移動しよう」


神刀というものがどの程度のものか分からないが、余分に疲れるかもしれない。一旦休憩させようか。


「セーフエリア行くんですか?やったぁ…」

「丁度…休みたかった」


リオもルーシーもそう言っている。もっと気を使ってやるべきだったかもしれない。

このフロアには前も来たことがある。記憶を頼りにしてセーフエリアを探すことにした。




 そうしてグルグルと森林エリアを歩き回ってやっとセーフエリアを見つける。

このフロアのセーフエリアは森の中にあった。白い壁に囲まれた小さな小屋がセーフエリア。

ここには色んな備蓄があって最悪ここで数日は過ごしたりも出来る。


「はー疲れたぁ…」


ミーシャがグチグチ文句を言いながら歩き続ける。その速度は俺たちの中で1番早いものだった。

さっきまでの疲れはどこへ行ったのだと突っ込みたくなるほどの速度で歩いていく。


「疲れたんじゃなかったのか?」

「別腹なんですー」


訳の分からないことを言いながら歩いていく彼女に俺達も続く。


「あれ?中に誰もいないよ?」


セーフエリアの中への扉を開けながら俺を見てくる彼女。


「この階層で休憩する奴は少ないからな。まぁミーシャも初めて登るんだろうし、何にせよ俺達は初めて共に行動するパーティだ。休憩は多めに取っておこう。何があるか分から…」

「はぁ…涼しい~。生き返る~」


俺が話しているのにも関わらずベンチに身を投げ出して寝転ぶミーシャ。

余程疲れていたらしいな。


「ま、思う存分休憩してくれ」


ルーシー達にもそう伝え俺も装備を外して休憩することにする。

相変わらず何も出来ない俺は荷物持ちをしているが重い…。

ようやく肩の荷が文字通り降りたと言ったところだ。

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