表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏夕闇日記  作者: big
1/3

深爪さんの噂

「ねぇ…深爪さんって聞いたこと…ある?」


放課後の教室で話す二人組を夕日が照らし始める。


『…えっ?深爪…何?』


戸惑う相方に対して噂好きな方の子が続ける。


「隣町に二子山病院って小さな病院があるじゃない。

なんでも、田日根タヒネさんっていう助産師さんが昔居たらしいのね。

そんで、その助産師さんが子供の爪を切ると必ず深爪だったんだって…」


話を聞かされているクールな方の子は、

またこの手の話が始まったか…と思いつつ話を返す。


『そんなの手元が狂ったとか、

自分の手じゃないから不器用で上手くできないとかそんなオチなんじゃないの?』


「えーと、たしかにそうなのかもしれないけど!

でも話の本懐はそこじゃないのですよ。」


噂好きが得意げに言う。


『………へー……違うならさっさと本懐を言いなさいよ!』


いつもの流れだ。

話を促さないと噂好きはいつまで経っても勿体ぶって話し始めない。


だから若干呆れつつ、クールが話を促す。


数瞬のタメを作ってから噂好きは口を開いた。

「呪われる……らしいの…。」


ポツリポツリと言葉を続けていく。


「その田日根さんに爪を切られた子供は、もれなく、全て。

早死にしちゃうんだって…

みんな中学2年の冬まで生きられないんだって…」


『なんじゃそら、バカバカしい。』


「そう思うでしょ?

でもね…つい最近、例の病院の院長先生の息子さんが亡くなったんだって。

で、噂だと例の田日根さんが隣町で最後に爪を切ったのが院長先生の息子さん…

ね、怖くない?」


一通り話し終えた噂好きがニヤリと楽し気な顔をした。


『他人の不幸を語りながらニヤつくのはやめなさいよ。』


怪談はたしかに怖かったがそれ以上にクールは噂好きの態度が気に食わなかったようだ。


「ごめんごめん。

でもこれは奇怪な噂に対する好奇の笑み。」


『ん、だろうね。

それでもね、その院長先生の事を考えると…ね。』


「わかった。以後気をつけるね。」


『わかってくれればアタシはそれでいい。』


「それで、話の続きなんだけど…数年前から共通点に気づいた人が現れて、

皆まさかーと思いつつも不幸が続くものだから噂は広まるよね。

そんで隣町からとうとうここまで話が広まってきたって訳ね。」


『それが深爪さんの噂…か …巡り会いたくはないわね…。』


「大丈夫!もう隣町にはいないし、遠くに引っ越して行ったらしいもん。」


『そ…っか。そうだね、しかもただの噂だったね。』


「そうそう!まぁ…確かめてみると大概ガセだから今回もそんなとこでしょ。」


『そう言う割にはアンタ飽きずに情報収集続けてるわよね。』


「だって楽しいんだもーん!!」


『はいはい。でも程々にしときなさいよ。

そうゆうのは第三者視点だから楽しめてんのよ?

アンタ自身が巻き込まれたらシャレにならないんだからね。』


「はーい!気をつけまっス。」


ビシッと敬礼のポーズをとる噂好き。

どうやら話を終えて満足したらしい。

『そろそろ帰ろっか…』


クールが噂好きの背中をそっと押す。



噂話を終えて帰路につく背中を、

沈みゆく夕日が照らしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ