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最終回:今日もおつかれさま、マスター

 まず動いたのは、言わずもユウだ。短く脚部バーナーを噴射しながら、コウジの“リヴェル”をアサルトライフルで撃つ。

「ふん!先制攻撃はくれてやるぜ!」

 命中はしなかったが、もう既に一度撃たれていることを忘れたのか、言いながら銃弾を軽く避けるコウジ。

「まだ!!」

 トリガーを絞ったまま、アサルトライフルを撃ち続けるユウ。

「当たらん!」

 それら軽やかにを避け続け、“リヴェル”は機を見て急接近してきた。さらに銃口をこちらに向けて来る。まずい。バーナーを噴かせているこちらの機体では、反応が遅れ、直撃してしまう可能性が。考える間もなく“リヴェル”のライフルが火を噴く。ユウは、

「弾を読めばぁあ!!」

 とわけのわからないことを叫びながら、バーナーを止めるが、やはり直後には止まらない。地上からわずかに浮遊して水平に移動している。が、“スティズ”は腰をかがめ、地上に手をつき、側転の勢いでライフルを避ける。

「なにぃ!?ならば!!」

 再びライフルを撃つコウジ。数発の弾丸が“スティズ”に迫る。

「何のぉお!」

 側転の起き上がりざま、足で思い切り車道を蹴りつけ、同時に背と足のバーナーを噴かす。瞬時に陸から十数メートル浮き、アサルトライフルをすぐさま構え、コウジに連射する。

「っらああぁぁ!」

「くそっ!」

 コウジは舌打ちして、ビルの後ろに隠れた。

「逃がさぁん!!」

 一旦陸に降り、再び飛び上がって、ビル群を跳躍しながら彼が隠れるビルへ。

「ユウ、ジャンプでの移動は危険よ!“リヴェル”が移動して待ち構えていたらどうするの!」

 と言うか、普通にそうだと考えていいだろう。敵も相当の手だれなのだ。

「しゃらくせあぁぁ!」

「いい加減聞けぇ!」

 全く聞く耳を持たないユウに青筋をたてたように怒るシラホ。と言ってもイメージ画などないが。

 跳躍しながらの移動は、空中で一時止まってしまう瞬間がある為、非常に危険なのだ。加えて跳躍時、滞空中、さらに着地時も機体を一瞬だけ無防備に晒す。そんなこと、普段はユウも理解しているはずなのだが、熱くなりすぎて忘我しているようだ。

「マスター、負けても知りませんからね!?」

 と言ってもやはり聞いていない様子のユウ。相変わらず跳躍し、とうとう“リヴェル”がいるであろうビルの前まで来た。

「とうっ!」

 跳躍し、ビルの奥の路面を見下ろす。

 ここの“どこか”にヤツが!

 その時である。

 ガンッ!ガガアン!

「ぐあっ!?」

 突然機体が横から殴られたような衝撃と振動を受けた。

「右肩を被弾!あ、機体制御が…」

 その衝撃で、“スティズ”はバランスを失い落下。

「ぐはっ!」

 落下し、地上にぶつかった衝撃で、体を打ってしまうユウ。

「マスター!大丈夫ですか!?」

「…問題ない!」

 内心安心して、シラホは被害報告をする。

「右肩被弾、関節に異常。及び右足のバーナーを損傷。右サブカメラも損傷」

「チィッ…やるな」

 機体をフラフラと起こす。右足のバーニアから、確かにぶすぶすと煙があがっている。それにアサルトライフルを持つ手が、動かない。そこへ足音を隠しもせず近づいてくる“リヴェル”。油断なく銃口も“スティズ”を睨んでいる。

「おいおい、随分間抜けだな。お前はトーシロじゃないだろ」

「…ちっと熱くなりすぎたか」

 …言われて初めて気がついた。敵の姿を確認せず、大胆になりすぎたのが敗因だったのは間違いない。右手も使えないし、この距離じゃ弾は避けられない…くそ、一撃も浴びせずにやられることになるとは…。

「そのようだな。じゃあ、今回は俺の勝ちってことで」

 トリガーが絞られる。ゆっくりと、いや、そう見えた。

 ……待てよ。諦めるには、まだ早い、早すぎる!!

「まだ負けてないどいなぁああい!」

「!!」

 弾丸が発射される。それは真っ直ぐ“スティズ”へ。しかしユウはそれを避けようともせず、背と左足のバーナーを噴かせる。

「うおおぉぉおお!!」

 弾丸が右肩に直撃し、右にのけぞる。そして完全に右肩から下が脱落したが、ユウは止まらず、“リヴェル”に全力で直進する。

「くっ!悪足掻きかっ!」

 ライフルを連射する“リヴェル”。腰や胸、足に弾丸が直撃し、機体を揺るがすも、なお“スティズ”は止まらず。

「な、なんだったんだよ!」

 コウジはライフルを捨て、腰に装備されているより強力な武器、巨剣を両手で構え、自らが走り出した。

「来た!シィ!“アレ”を使うぞ!!」

「ええっ!?この状態で“アレ”を!?外したら今度こそ終わりですよ!?」

「外さねぇ!!」

 シラホは瞬時に考えた。どんなに熱くなっていようと、ユウはやると言ったらやる男ではあるし、逆転の可能性がないとは言い切れない。けれど、この技を一度外せば、敗北は免れない。私は、

「うん…分かった!やるよ!」

 ユウを信じることにした。“あの技”はとんでもない技だけれど、まだ負けたわけじゃない。

「何をごちゃごちゃ言ってる!これで終わりだ!!」

 二体は、機体一体分の差まで詰め寄っていた。コウジは巨剣を振りかざす。

「今っ!!」

 ユウが叫ぶと、突如“スティズ”腕部からバーナーが現れ、噴射された。この加速で、敵を攻撃しようと言うのだ。

「おおぉおぉお!」

「はあああ!!」

 すさまじい金属の衝撃が響き、地を揺るがした。次の瞬間には、しんと静まり帰った大気。まるで時が止まったようだった。


「…ダメだったか…」

 そう言ったのは、倒れた“リヴェル”に乗るコウジだった。その胴はひしゃげ、くっきり拳の痕が。巨剣は、足もとの歩道に刺さっていた。

 一方、ユウは。

「勝ったぁああ!やったぜぇ!この戦法、案外使えるじゃねーかぁあ!!」

 感慨げもなく、単純に勝利に酔いしれていた。この劣性からの逆転は、偉業とも言っていいくらいだが…いつも通りである。そんな能天気なマスターに、シラホは、毎度ながら素直に勝利を喜べずにいた。

「あのぉ…さっきの私の一体感とかの感想ないんスか?よくやってくれたー、とか…」

「そうだな〜!よくやった!シィ!」

「むーん。なんだかなぁ…」

 さらに喜べないのは、シラホの家の“スティズ”は右手が落ち、そして今の『超裂爆炎拳』のせいで、左手も押し潰されたように壊れ、スクラップ同然となってしまった。であるにも関わらず、ユウは、“スティズ”の中で、まさか負けるなんてと屈辱に浸るコウジのことなどは全く気にせず、笑い続けたのだった。


「さ、そろそろ帰るかな」

 ようやく笑い終えたユウ。 帰るとは、“現実世界”へ、だ。

「ログオフなさるんですね。了解です」

 ユウは頷いて、

「おう。また明日な」

 最後にニッと笑った。

「はいマスター」

 シラホもそれに応え、最後だけは嬉しそうな声で答えた。

 ヒュウウン…と言う何かが停止する音がしたと同時に、光っていたパネルやウィンドウが消え、コックピット内は真っ暗になる。勿論何も見えないが、ユウは何度となく“これ”に入ったことがあるので、なれた手つきで“ドーム状のこれ”の扉の取っ手を掴み、開いた。

「うわっ、まぶし…しかもうるさいし…」

 そこは、ゲームセンターだった。UFOキャッチャーやらシューティングやら競馬やらメダルゲームやらの音がないまぜになって聞こえてくる。今まで比較的無音だった空間にいたので、尚辛い。

「いつものことだが、なれんなぁ」

 頭をかきながら“バーサスライド”のゲーム機から出るユウ。そう、全ては完成された未来のゲーム内での出来事だったのだ。

「おうユウ、おつかれ」

 周りにもう五台設置されている一つの“バーサスライド”から、先の対戦相手、コウジが出てきた。

「おつかれ。んじゃ俺に負けたことだし…缶ジュース奢れぇえい!!!」

 打ち笑みながら、自動販売機を指差すユウ。そう言われても特に気負う様子もなく、サイフを取り出すコウジ。

「ち、覚えてやがったか」

「あたぼう。さ、どれにすっかーと!」

「それよりさっき、お前すごかったな、また腕あげたんじゃないか?」

「日々精進してるぜ!お前こそ──」

 二人は先ほどの白熱した戦いを思い返しながら、あーだこーだ言いながら楽しげに話し続けた。

 とある未来のお話でした。

『戦えマシーン!!』ここまでお読み下さいまして、ありがとうございます!!正直、内容もオチも微妙ですが、楽しんで頂けましたら幸いです^^

それでは!

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