第一話:人型兵器“スティズ”&相棒『詩羅歩』
どうもこんにちは、おはようございます、あるいはこんばんは、オニです。
適当に綴ってしまった感たっぷりの作品ですが、どうかどうか最後までお付き合い下さいますようお願い致します(切実)。
それでは、ごゆるとお楽しみ下さい^^
可愛らしい女性の声が、「腕部、脚部、胴体部、頭部、各装備、及びエンジンに異状なし。システム、オールグリーンです」と告げる。
続いて、ギュイイイ、と言う耳にうるさい機体の起動音。
「よぉーし。今日も調子、良さそうだな!シィ!」
ぼやぁ、と光る各情報を伝えるウィンドウだけが体や顔を照らす、暗いコックピットの中、高校の制服のまま乗り込んでいる少年、辰野木 ユウが、この人型兵器、“スティズ”に搭載されているAI、『詩羅歩』に言った。
「はい、今日も元気ですマスター!」
彼女は、元気な彼同様に、元気に答えた。
「ふっ。今日の一戦も軽く片づけてやるぜ!いや…油断は禁物だな!」
「と言うことは、今日も任務を遂行されるのですね?」
ここのところ“珍しく”、彼は毎日任務についている。マスターに会えるシラホにとっては嬉しいことなのだが。
「いや。今日の一戦も〜とは言ったが、今日は一体一のガチンコ勝負をするつもりだ」
「カチンコ勝負ですか?」
シラホは脳裏に、敵機とスティズがカチンコを持って勝負しているのを想像した。
不毛な砂漠で風が荒れ、砂が舞う…。次の瞬間、瞬時7メートル長の鋼鉄の巨体の手に握られたカチンコが構えられる!!
「うおおおおお!!!」
とユウが叫び、
「うあああああ!!!」
と敵機も何故か叫びながら、カチンコを鳴らして、
「カットオオオオオオオオオオオ!!」
と喚き散らす。
うあー。なんだこれ。とてつもなく変な勝負だよ。て言うか、
「機体いらなくね?」
「いやいやいや!直にやれって言うのか!?」
「いや、やれとは言いませんけど…」
カチンコ勝負。最早スケールの問題なのだろうか?まあ、AIでは分からないフクザツな理由が、人間にはあるのだろう…。
「人間て、たまにわけわかめですよね〜…」
呆れた様子でそう零す。ユウはそれに笑って返し、
「お前こそ大分人間らしくなったじゃねーかよ」
「ですかねー」
「おう。んじゃ、相手もお待ちかねだろうから、さっさと出るぞ!」
「あ、はい…えーと」
カチンコはまだ装備されてないみたいだけど、などと思いながら、シラホは格納庫のシャッター開閉パスを呟く。
「俺の魂は今、熱く燃えたぎっている〜!」
途端、シャッターがガガーと音を立てて開く。ハズなのだが…。数秒待っても開かない。
「あれ?」
「あれ、じゃないぞシィ。パス間違ってる」
「へ?」
まるで記憶にないシラホ。
「そのパスは昨日までのだ。でも女のお前に『俺』って言わせるのも悪いからほら、昨日女版にして」
「あ…ああ、そういえばそうでしたね…」
そう言えばそんな話、した…でもって、恥ずかしいながらもパス“変えた”のだ。
「…言わなきゃダメです?」
「ダメって言うか、じゃないと出れないだろ」
「ですよねー…」
シラホは溜め息をついてから、力を込めて言い放った。
「美少女戦士、『詩羅歩』が今、あなたたちの悪を打ち砕く!希望の扉が!今開かん!」
と、次はしっかりとシャッターが開いた。因みに“希望の扉”とは、無論このただのシャッターである。そのシャッターが開くに従い、光が格納庫に満ち、コックピット内も、メインカメラ、サブカメラが光を拾って、徐々に明るくなって行く。
「おお!上出来だぜシィ!!」
「っ〜…」
さっきの、半ばやけで力を入れたけど、我ながら美少女戦隊ものばりに格好良くは出来た。しかし、思った以上に恥ずかしいことに気付いた。
「あの…やっぱりパス変えません?」
「?何でだ?変えなくていいだろ。熱くてカッコいいし」
「う、う〜ん…」
毎日これを叫ぶのは恥ずかしい、恥ずかしすぎる。羞恥心でいかれてしまそうだ。何とかならないだろうか?
あ、こういうときは人間の知恵を拝借して…
「ご、ご主人さま〜☆今日何かカッコいいですね!♪」
「お、そうか?サンキュー!」
嬉しそうに親指を立てるユウ。
「お召しものも素敵!」
「いつもの制服だけどな!」
「今日は素敵な一日になりそう☆ですから、気分を変えてパスも変更しましょう!」
「いや、その必要はない」
ぐはぁあ。やっぱりだめか〜…。
そんな思いでいるシラホなぞ露知らず、ユウはいつもの如く叫んだ。
「それじゃあ、いっくぜー!」
「はい!メインエンジン、脚部エンジン起動!ぜんかーーい!!」
背中と脛部に内蔵されたバーナーが開き、燃料と空気を燃焼して“スティズ”は地を滑るようにして飛んだ。




