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第四話

武器を構え先に動いたのはトウヤだった。

先程の燈夜と違いこちらのトウヤはただ一方的に相手を倒す為に向かっていると千代は瞬時に理解した。

「絶っ対に倒す!!何が何でも倒す!!こんなにも相手を叩きのめしたいって思ったのは中学のあの時以来だぜ!!」

ひたすら鎌を振り回し攻撃してくるトウヤに対し千代はそれをあざ笑うかのようにゆらゆらと躱していった。

「クソが、当たりやがれ、そしてくたばれよ!!」

「当たれと言われてもそんな大振りな攻撃を受けろと言う方が難しいですよ。避けるだけなら小学生にでも出来ますよ」

この言葉にすっかり血が頭に昇ってしまったトウヤはさっきとは比べられない程闇雲に鎌を振り回したがそれをも千代は簡単に避けた。

「いいですか、攻撃の手数が多ければ多い程隙が生まれるのを知っていますか?隙が生まれるという事はつまり、反撃を受けやすいという事です。このように」

千代はトウヤが鎌を振り下ろした一瞬を見逃さずそのままトウヤに斬りかかった。

この攻撃は見事命中しトウヤは動きを止めた。

「分かったでしょう?隙が大きいとどうなってしまうか、今回は、峰打ちにしましたが、次は容赦無く斬ります」

「・・・調子乗った事言ってくれるじゃんかよー、え?千代さんよー」

千代が振り返ると余裕の表情で立っているトウヤの姿があった。確かにさっきの峰打ちは決まったはずと思っていた千代は顔には出ていたが内心動揺していた。

「峰打ちでしたがあれを受けて倒れないなんて以外ですね」

「驚いてるよな、せっかく綺麗に決まったのにどうして立っているんだろう?って思ってるよな。あぁ別に言わなくてもいいぜ、だって顔にそう書いているんだからなー」

トウヤは嫌味を交えながら的確に千代の思っている事を見抜いた。

「あっちゃー、トウヤの悪い癖が出てるな。こりゃ倒れるまで暴れる予兆だな」

雨龍はトウヤともある意味付き合いが長いからこの後何が起きてどういった結末になるのかが嫌でも予想出来ていた。

この間にトウヤはゆっくりと一歩、また一歩と千代に近づいていった。

「さあ、来いよ。またさっきみたいに峰打ちをやれよ、それともなにか?次はしっかり斬りに掛かるのか?あ、すまんさっき斬るって言ってたな。いやーお前の考えてた事を当ててそれに反応した時の顔を見たらお前の言った事なんかすっかり頭の中から吹き飛んだからさ」

明らかな挑発に表情一つ変えなかった千代だが、その顔からは静かな怒りが込み上げているようだった。そう、それは嵐が来る前の様な静けさだ。

「いいでしょう、そこまで言うのなら行きましょう」

千代は刀を一度鞘に納め腰を低くし居合いの構えを取った。その時の千代の目は餌である草食動物を仕留める時の肉食動物と同じような目だった。

「いいぜ、その目、それでこそ倒し甲斐があるってもんだ!!」

トウヤは距離を詰めた状態から一気に加速し一瞬で千代の前まで近づき、ジキルを振り上げた。

それに対して千代は、トウヤがジキルを振り上げるまで微動だにせずそのままの体勢を取りジキルを振り下ろす時に千代は動きを合わせながら長太刀を抜いた。

「東條流抜刀術一ノ技・・・閃迅」

千代はジキルがコンマ数センチで避けれる程の幅だけ身体をずらし、トウヤに居合いは誰もが分かる程綺麗に決まりそれを受けたトウヤは操り人形を吊るしていた糸がプツンと切れたかのようにそのまま前のめりに倒れた。

トウヤは今までの行動からして、この後直ぐに起き上がるのではないかと多少の警戒をしたもの、起き上がる気配が無かった事を確認し太刀を鞘に納めた。

一方居合いをまともに受け倒れたトウヤは気絶しておらず能力で表に出ていない燈夜と心の中で会話をしていた。

「(あまり無茶は良くないよ、この体は君のモノであり、僕のモノでもあるんだから)」

「(後の事なんかその時になってから考えればいい。だってよ、あれだけ散々言われて悔しくねーのかよ?)」

トウヤは燈夜の話を聞かず暴君のように振る舞った。

「(トウヤよく聞いて、これから言う事は東條さんに一泡吹かせる事が出来るかもしれない作戦だ。君の性格上これを聞かないって訳ないよね?)」

「(面白い事言うじゃねーか、お前にしてはまともなもん考えたんだろうな?)」

手のひらを返しトウヤは燈夜の作戦を聞くことにした。

燈夜は作戦を提案し、興味本位で聞いた作戦はトウヤにとってストライクだったらしく、気に入ったようだ。

「(でも、さっき言ったようにこれは僕たちの今の能力(ちから)で出来るかは分からない上手くいけばいいってレベルだ)」

「(俺はただやるだけだ。それでアイツに一泡吹かせられれば俺は満足だ)」

お互いが了解し、最初にこの体で千代に話しかけたのはトウヤの方だった。

「スマンな、ちょいと作戦会議をしててな、退屈だっただろう?だから、今からお前に披露してやるよ」

「そうですか、では、こちらもカウンターではなく攻めに入らせてもらいます」

「おー怖い怖い、そんな殺意を向けられちゃうと困るなー」

トウヤは百パーセントの冗談で千代を煽り、それに対して千代は、無言でトウヤに迫ってきた。

「これだ、これを待っていた!!」

直進してきた千代に合わせてトウヤは鎌を振り下ろしたが千代は直ぐに急停止し、簡単に避けた。

「作戦とはこれですか?酷すぎて笑えませんね」

「まだまだ、これからが本番だ」

一定の距離を取ったまま、トウヤは千代を中心として走り出した。

「いくら私の周りで動いてもあなたの以上な殺気で後ろから攻撃してもさっきのように躱されるのがオチですよ」

「試してみるか?俺はいつでもいいんだぜ?」

再び挑発し、次の行動を窺った(うかがった)。

「いいでしょう、来るならいつでもいいですよ。結果は変わらないでしょうけど」

相変わらずの余裕の表情で対応した。

「へっ、じゃあ遠慮なく!!」

トウヤは千代の後ろから斬りかかったがそれを知っていたかのように後ろに振り返り簡単に避けた。

しかしここからが二人の作戦だった。

攻撃を外したトウヤの体からこれを待っていたかのように魔鎌ジキルを構えた燈夜が黒く霧のような姿になって現れた。

千代は既に回避行動を最初の攻撃で取ってしまってこの攻撃を避ける事が出来なくジキルの一撃を受けてしまった。

しかし、その攻撃は千代の体をすり抜け無意味な一撃を当てることの出来た燈夜は霧が晴れるかのように姿が薄れそして消えていった。

「げっ!?失敗じゃねーかよ!!こんな博打やらなきゃ良かったぜ!!」

その場で地団太を踏み悔しがるトウヤを見て千代の顔には今までの余裕が消え負けたと思っていた。

「それがあなた方お二人が考えた策でしたか。もしさっきの燈夜さんの一撃を受けていたら致命傷になっていたでしょう」

そして、この場で千代の他に驚いていたのがまた一人、そう、雨龍である。

雨龍も二人の燈夜が考えた作戦を見て唖然としたのと同時に体中が震えていた。それは、もし自分が受けていたらなどといった恐怖での震えではなく、それとは逆の自分も戦ってみたいと言った好奇心から来た武者震いだった。

「おい!!その技、今考えたってのは嘘だろ?教えてくれよ」

観客席でポツンと立っていた雨龍が興味津々でトウヤに問いかけた。

「さっき言っただろう、作戦会議をしたって。それで倒れている間にオレと燈夜で考えたのがアレだ」

「お前にそんな器用な事出来る訳無いだろ!!前々からこの技について作戦を練ったんだろ?」

「お前と一緒にするんじゃねーよ!!少なくともオレには燈夜っていうお前より数倍も優れたブレインがいるんだからありえねーっての」

「うっ・・・」

雨龍は自分の学力などといった部分で燈夜に一度も勝ったことが無い事を十分に知っていたので文句を言うどころか言葉すら失っていた。

「ギャラリーが黙ったし、続きをやろうぜ?」

再び挑発を行ったが、トウヤへの対応は変えずに千代は構えた。

「倒れないのなら倒れるまで斬ります」

「お?次はどんな技をするのか楽しみだぜ!!」

「では・・・二ノ技、舞鶴」

千代はジグザグに進みトウヤとの距離を詰め、近づいてくる千代に対し、タイミングを合わせ避け安心したと思った刹那、目の前に千代の姿があった。トウヤは急いでジキルで防ごうとしたが、千代の太刀に弾かれ手元から離れ無防備となった。

無防備なトウヤに容赦なく斬りかかり、一撃は重く、二撃、三撃となるにつれ威力が軽くなっていくが攻撃の手数がだんだんと増えていき体をゆらゆらと揺らしながら斬り、千代の斬撃は目で確認するが出来るが、動きがまるで異国の踊り子のような動きだった。

「こんなラッシュ聞いてないぜ」

トウヤは上を向いたままオブジェのように固まり動かなくなった。

「また気を失いましたか。このまま終わってほしいですが」

千代はじっくりと気絶しているトウヤを見た。しばらくして安心したのか深呼吸をして入口に向かった。

しばらくするともう一度確認も兼ねてトウヤを見た。しかし、変わった様子はなくあの状態だった。

「気にし過ぎですか。会長、灰戸さんをお願いします」

「分かってるよ、もう少ししたら保健室にでも投げ入れておくよ」

千代が雨龍と軽い話をし終わった後に前を向くと気絶していたトウヤが立っていた。

「あなたはゾンビか何かの類ですか?しつこ過ぎですよ」

トウヤは握りこぶしから親指だけを立てて、首の前で横に動かし煽り始めた。

後ろを向くと真っ赤だったトウヤの目は普段の青色に戻り燈夜になっていた。

「東條さん、何で僕とトウヤは立ち上がると思います?」

「分かりません、こっちからしてはしつこくて散々ですよ」

「じゃあ教えますよ。それは、親友があれだけ目の前であんなひどい言われ方したんだ怒らない訳ないでしょ?それが許せないから僕とトウヤは立ち上がるんだよ」

「それだったら謝りますよ。それでは駄目ですか?」

「副会長ー、今のコイツに何しても聞く耳待たんぞー。一度こうやって怒ると自分が倒れるまでか相手が倒れるまで暴れる闘牛みたいになるから」

雨龍の話を聞くと千代は大きなため息を漏らした。

「(ま、俺はこの後の展開が目に見えてるがあえて言わないどこ)」

雨龍も燈夜程ではないが頭にきたらしく、最後まで言わなかった。

「燈夜に目が行って俺の存在を忘れるなよな!!」

後ろにいたトウヤが千代に向かって走り殴りかかろうとしたが、それを簡単に避けられバランスを崩した。

「トウヤ!!こうして欲しいんだよね」

燈夜は持っていたジキルを勢いよく投げ、トウヤは回転しながら迫ってくるジキルを掴みその反動を使い横に斬りかかったが紙一重で避けらてしまった。

「結局最後まで駄目だったか・・・」

トウヤは霧が晴れるかのように消えていき、それに続くかのようにジキルも消えていった。

「無理しすぎたかな?体が動かないや」

そのまま燈夜は倒れゾンビみたいに起き上がる事は無かった。

千代は何度も立ち上がった燈夜を見ていたからなのか倒れた燈夜をじっと見て警戒を怠らなかった。

「大丈夫だよ燈夜は今の出ダウンしたよ。つまり、勝負は千代ちゃん、アンタが勝った」

「そうですか。会長、最後に一ついいですか?副会長の言葉を聞いて少々度が過ぎた事をしたと思いました。反省します」

千代が心を入れ替えたのか急に素直になり雨龍は戸惑った。

「お、おう。今度は燈夜じゃなくて千代ちゃんと戦いたいもんだ。ま、勝つのは俺だし、優勝するのも俺だからな」

「いいですよ、ランキング戦でと言わずいつでも相手をします。でも、その時は容赦なくダメなところを言いますから。では、失礼します」

そのまま千代は去り、この場所には雨龍と燈夜だけが残った。

「さーて、コイツ担いで帰るか」

雨龍は気を失ったままの燈夜を背負い所々よろめきながらスタジアムを後にした。

バトルって難しいですね。書いてて試行錯誤の連続でした。

でも、書き終わった後の達成感は今までの比じゃないですね。

それと、二重人格のキャラを書いているとごちゃごちゃになるから大変。

話は変わりますが次回は早めに出します。きっと出す。

誤字脱字等ありましたら教えてください。

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