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第三話

選挙が無事に終わり、雨龍達は南善学園生徒会として正式に活動を始め数日が経ち校内ランキング戦の日が少しずつだが近づいてきた。

実際の授業でも体育ではランキング戦のための実習も行われている。

生徒は各々の武器を手に男女強さ問わず練習をする。

そしてこの空間で嫌でも目立つ存在が一つ、それは生徒会長の橘雨龍である。

身長わずか162センチで自分の身長を超える大剣を使い授業でも成績も残している。少なくともこのクラスでは一番の強さだろう。

「やっぱり雨龍は強いな。この調子だと優勝間違いなしだな」

「当然だ、俺はアイツに勝ってこの学園で最強になるんだ。まあ、俺には、コイツがいるから余裕余裕」

雨龍は右手に持っている大剣を見ながら誇らしげに話している。

この学園は入学時に生徒一人一人に武器が配布されているが、教師が生徒に合った物を選ぶのではなく、生徒自身が選ぶことになっている。

中には、学園で配られる物を使用しない生徒も数人いる。

雨龍の剛剣空割は入学時に雨龍自ら選び、今まで共に学園生活を過ごしてきた相棒のような存在である。

「今更な事聞きたいんだけどさ、どうしてこのデカブツを選んだ?お前の見た目なら素早く動けるダガーとかあったはずだけど」

クラスメイトの言った言葉はいつ聞かれてもおかしくない質問だった。

他の生徒に比べ身長が低い雨龍が自分よりも大きく重量のあるこの大剣を使うのを不思議がるのは当然だった。

「話すとだな、俺も結構迷ったんだよな。色々な種類の武器があって、ダガーもいいなとか思ったけどパッと目に入ったのがコレだった」

空割は両刃の剣をそのまま大剣にしただけのようなシンプルなデザインだが、攻撃範囲は上位に位置し、威力も怪力の持ち主なら相応の威力を出すことが出来る。

「パッと目に入ったって、それ以外に理由は?」

ざっくりとした答えに開いた口が塞がらないクラスメイト。それを見て頭の上にはてなマークが浮かんでいる雨龍。

「理由だろー、最初に空割を見たときに思った事は、カッコいい、強そう、これ使っていたらインパクトありそうとか?それ以外出てこなかったぞ」

「・・・・はあーーー!?」

あまりにも小学生レベルの答えにその場で聞いていたクラスメイト以外のその会話がたまたま耳に入った別のクラスメイトまでもが大声で叫んでいた。

「冗談だろ?ほら、燈夜も何か言ってやれよ」

苦笑いのクラスメイトに対して燈夜は普段と変わらない様子だった。

「雨龍は昔からカッコいい物とかに目がないし、後は、誰もがやったことが無い事を自分が一番になる、つまり、自分が最初の試みをしたとか言ったものが大好きでね、これもその類だよ」

「燈夜が言うと説得力がある」

雨龍の事を少なくとも人より知っている燈夜が言うとクラスメイトは納得をしたようだ。

「やっぱり、原点になれるって良くね?だって俺が卒業してもこの学園には昔こんな生徒がいて伝説の話があってとかで俺を知らない後輩が俺の存在を知ってくれるかも知れないじゃん」

「夢のまた夢だよ。流石にそれは不可能に近いよ」

無駄に壮大でほとんどありえない夢のような話をし始めた雨龍を見て燈夜はさらりと雨龍の夢を否定した。

「いや、俺は何言われようとなってやる!!そしてこの学園に俺を目標に頑張る後輩が沢山現れてくれればいいと思っている。」

「安心してよ、そういった未来は無いし、そうなったら世も末だよ」

周りはこの言葉を聞いて大爆笑した。

「燈夜が言うんだから確実だな!!これでこの学園は生徒会長の恐怖から逃れるってことだな」

「はあー!?まてまて、そんなに嫌か!!」

さらりと毒を吐く燈夜に対して雨龍はただツッコミを入れて対処するしかなかった。

そして時間は過ぎて行き放課後になり、雨龍と燈夜は教室に残っていた。

「暇だな。今ってスタジアム誰もいないっけ?」

「どうだろう?多分いないんじゃないかな。でもどうしたの?急にそんな事聞いて」

「いやさ、そろそろ意識しなきゃなとか思ってさ」

雨龍は何だかんだ言って例の事を意識し始めたのだった。

「なるほどね、いいよ付き合うよ。どうせ、断っても強制的に連れて行こうとか思ってるだろうし」

雨龍はにっこりと口角を上げて嬉しそうな顔をした。

「バレてたか、それじゃあ行くか」

二人はそのままスタジアムへ向かって行った。

このスタジアムは普段は授業などで使われる事は無いがランキング戦で使用され日が近づくごとに生徒が練習に使う機会が多くなる。

そして生徒同士の練習も出来るが学園が予めプログラムされたデコイを使用した演習を行う事も出来る。

スタジアムに到着するなり、雨龍は制服の上着を脱ぎYシャツ姿になった。

「やっぱり制服は動きずらくて嫌だね。お前も上着くらいは脱いだらどうだ?」

「僕はいいかな。当日も制服なんだしこれで動けるようにする練習にもなるし」

「そうかい、じゃあちょいとドンパチやりましょうか!!来いよ、俺の相棒、剛剣空割!!」

掛け声と共に雨龍の手元に大剣が現れ、その小柄な体で空割を構えた。

「じゃあ僕も、そろそろ来てくれ、今回は僕がやるけどいいよね?魔鎌ジキル」

右手を横に伸ばし燈夜の手には大鎌が現れ、柄の部分には鎖が巻き付かれていた。

「見るたびに中二病心がくすぐられるデザインだな」

「ありがとう、でもね、もうすぐそんな事言える余裕は多分無くなると思うよ」

燈夜はそのまま雨龍に向かって直進し、距離を狭めてきた。

「それはどっちのセリフだよ!!」

対する雨龍はその大剣をゆっくりと振りかぶり攻撃の体勢を取った。

雨龍と燈夜の距離は1、2メートルの距離までになり、武器を一振りすれば余裕で攻撃が当たる状態だった。

「先手はもらうよ雨龍。・・・・・!?」

燈夜は攻撃を当てずにそのまま横に逃げた。それと同じタイミングで雨龍の大剣は勢いよく振り下ろしていた。

燈夜はこのまま攻撃していたら必ず先ほどの攻撃を受け、防げたとしても相当のダメージを追っていたと確信した。

「これを狙っていたね?」

「さて、どうだろうな?教えてはやらんけどな、俺はこのまま畳み掛けさせてもらうぜ!!」

雨龍は、大剣の重さを感じさせることのないような程の力で攻撃を仕掛けた。

そして燈夜は、その力技とも言える攻撃を一つ一つずつ躱し(かわ)攻撃のタイミングを伺った。

攻撃の最中に一瞬の隙が生まれ、燈夜はそれを見逃さずジキルで攻撃を試みた。

「危なっ!!俺の首を刈り取る気かよお前は!!」

隙をついた攻撃に雨龍はとっさにブリッジをするかの体勢になり、無事に躱すことが出来た。

「雨龍だってあんな早い一撃を喰らったらその時点で勝負は決まっていたよ」

二人は笑いながら相手の攻撃の感想を言い合った。

「お前だってさっきの不意打ちはヒヤヒヤしたっての」

「それは良かった。じゃあまたしてあげるよ!!」

燈夜は先ほどのように真っ直ぐに雨龍との距離を詰めるのではなく、ジグザグ方向に進み出した。

「こんなのタイミングが合えばドンピシャだっての」

雨龍は空割を横に構え燈夜の動きに合わせ薙ぎ払いをした。

しかし、その攻撃を知っていたかのように躱し、雨龍の後ろに移動しジキルを構えそのまま切りかかった。

空振りをした雨龍は空割の遠心力でジキルの攻撃を防ぎお互い後ろに下がり再び距離を取った。

「いやーさっき合わないで今タイミングが合うって奇跡だな」

「相変わらずの能天気だね。自分がついさっきまでピンチだったかもしれないのに」

燈夜の言い分は至って適切なものだった。

先ほどの攻撃に対して雨龍本人も言っていたように奇跡的に防御できたが本来だったら躱したり防ぐ事が難しかった状態だったのだから。

「よし!!今からお前に大技決めるから覚悟しろ。これ喰らってベソかいても知らんからな」

急に雨龍は堂々とし、燈夜に指さし謎の宣言した。

「大技って、そんな口だけの約束はやめてよね」

「じゃあ喰らえ、言ったからには本気で行くからな」

雨龍の目がいつにもまして本気だったことを今この瞬間燈夜は気づきジキルを構えなおした。

雨龍はゆっくりと歩き出し少しずつ燈夜に近づいてきた。

この行動に燈夜は少々驚いたが雨龍が何か隠しているというのは承知で正面からの真向勝負を試みた。

近づいてくる燈夜を気にする事も無くそのまま歩き続けた雨龍に鎌を振り上げ襲い掛かった。

「だと思ったよ。大体の動きの予測は出来ていたがここまでうまくいくとは俺も予想できなかったがやってやるよ、今から大技決めるから避けるなよ?」

攻撃を防いだと思ったら空割を床に突き刺しそのまま燈夜の懐に潜り込み右ストレートを決め後ろによろけた所に後ろに回り込み、それに反応し反撃を行おうとしたが一発目の影響で防ぐ事が出来なかった。

そして二発目にはみぞおちに掌底を決めた。

抵抗出来ないまま攻撃を受け続けた燈夜はその掌底で後ろに飛ばされ先ほど床に突き刺した空割に叩き付けられた。

飛ばされると同時に燈夜に向かって雨龍は走り、空割にぶつかった瞬間に、燈夜にドロップキックを決めそのまま燈夜は倒れ込んだ。

「これはちょっとやり過ぎたか?大丈夫か燈夜?」

燈夜に近づいてみると雨龍の攻撃をまともに受けたせいで悶え苦しんでいる。

「ごほっ・・・はぁはぁ、雨龍、本気出し過ぎじゃないか?さっきの掌底に至っては息が出来なかったよ」

「すまん、決め終わってから思ったそれ」

何とか起き上がりやっとの状態で話し苦笑いを燈夜はした。

「立てるか?手、貸すよ」

「ありがとう、お言葉に甘えて借りることにするよ」

差し出された手を握り燈夜は多少ふらつきはしたが立った。

「やっぱり勝てなかったか、本当に雨龍は強いね」

「俺はあいつに勝つ為に強くならなきゃいけないからな」

「さっきの試合、勝手ながら二人の動きを見ていました」

スタジアムの入場口から聞き覚えのある声が聞こえ二人は声の聞こえる方を見ると東條千代がスタジアム内に入ってきた。

「見たってどの位からだよ。そして何しに来た」

「ここに来た理由はデコイを使った演習をしようと来たらあなた達が先に居て私は副会長が攻撃を仕掛けた所から最後までずっと見ていました」

千代は二人の練習が始まった直後にここに来てそれから終わるまで見ていたようだ。

「で、何で俺達に話しかけてきた。何か言いたそうな顔してるけど」

「言いたい事ですか、そうですね・・・二人の動きを見て思ったことが幾つかありますがまず副会長から」

スタジアム内には戦いとは違った緊張感が漂い始めた。

「動きが単調です。それに、会長だからといって甘い所がいくつかありました。このような事が続くと実践で影響し勝てる試合で勝てなくなりますよ。もっと相手の動きを分析し闘った方がいいですよ」

淡々と指摘していく千代に燈夜は何も言えないまま黙り込んでしまった。

「そして会長ですが、最初の動きは何ですか?あんなに遅く振り上げていたらもっと素早い相手だったらいい的になるだけですよ。それに動きに無駄があり過ぎです。それに、動きを見るとまぐれな部分が目立ちました。これでは私を倒すどころか決勝に行くこと自体が危ういですよ」

あまりにも容赦のない指摘に唖然としている。

「そこまで言わなくてもいいだろ、千代さんよー」

雨龍の言う事はいかにもだった。千代の言い方には毒があり過ぎる。他の生徒がこの場にいたら皆が思うだろう。

「ただ本当の事を言っただけです。それとも、私の言っている事は間違っていますか?」

雨龍はその言葉に複雑な表情をし言い返すことも出来なくなり、燈夜はずっと黙ったままだった。

黙り続ける燈夜を見た雨龍は複雑な顔から何か嫌な予感がこれから起こるのではないのかと察したかのようにゆっくりと千代の顔を見た。

「副会長さんよ、これから面倒な事が起こりそうだ」

「面倒?どういう事ですか?教えてください」

千代は頭にはてなマークが浮かんでいるかのようにに首を傾げた。

「さっきから黙って聞いてたらうだうだと文句ばかり言いやがってお前に言われる筋合いはないんだよ!!」

千代はこの口調に覚えがあった。そしてあの時の感覚を体が覚えていたらしくとっさに燈夜の方を見ていた。

「こうなった燈夜は話を一切聞かないからな力でどうにかしなきゃだな」

「雨龍、俺を止めんなよ、その時はお前でも許さねーからな」

「分かってる、止めたらどうなるかこの場の人間で俺が一番知ってるからな」

燈夜は千代を睨みつけたまま雨龍に警告した。

その時の燈夜の目は普段の青色から変化し、赤色に変わっていた。

「あの時の灰戸燈夜さんですか」

「お、嬉しいなほんの一瞬しかお前の前に出てきてないのに覚えてるとは感心だ」

皮肉めいた言い方で燈夜は千代を褒めた。

「で、私は何かいけないことをしましたか?」

「覚えなしか、じゃあ教えてやろう、毒舌おバカ副会長さんにな。お前は俺や雨龍に散々ボロクソ言ったのを忘れたって言わないよな、え?」

「あれは思ったままを言っただけです。私は嘘を言っていませんから」

その言葉に燈夜は怒りをよりあらわにした。

「訂正しろ、もし否定するんだったら、このハイドトウヤがお前を全力で叩きのめし、謝るまでこの魔鎌ジキルで痛めつけて一生癒えないような傷を負わせてやるよ」

「話し合いは無理そうですね。それではこちらもこの黒影でその口無理矢理にでも閉じてもらいます」

トウヤと千代は武器を構え戦闘の体勢に入った。

遅くなりました。今回は前回前々回と違う表現で書いたため予想以上に制作が難航し納得のいくまで時間が掛かってしまいました。

そして初めてのバトルシーンをかいて言葉に表現するという事の難しさを痛感しました。

次もバトルシーンありなので時間がかかりそうですが気長に待ってくれるととても嬉しいです。

それではこの辺で。

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