第二話
騒動があった日の放課後、俺は生徒会室に向かった。
理由は選挙の為のポスターなどを取りに行くからで、勿論燈夜もそのための準備で先に生徒会室に向かった。
「すいませーん、さっきまで寝てましたー」
俺は悪びれる事も無く堂々と扉を開けた。
「知ってるよ、優秀な副会長候補の二人が教えてくれたよ。いい部下を持ったな橘」
中に入って最初に声を掛けたのは現生徒会長だ。
「会長、二人って何ですか?燈夜は分かりますよ、あと一人は?」
「おいおい、冗談を言うなよ。いるだろ?もう一人の候補がさ。おっと、噂をすれば何とやらってやつか」
俺は後ろを振り返ってみると、あの東條千代が立っていた。
「おい、何で来てるんだよ。それと何しに来た」
「何って選挙の準備ですよ。それに何事にも準備を怠るなと家訓にあるので」
「流石だな東條は、これなら次期生徒会を安心して任される。じゃあ二人でそこの危なっかしい会長を頼んだぞ」
生徒会長は俺達を見て笑いながら自分の役目は終わったと言わんばかりのセリフを言った。
「そうだ、会長!!一つ聞きたい事があるんですけど、どうしてそこにいる東條が立候補してるんですか?」
俺の言葉を聞いて生徒会室にいた三人は唖然とした顔で俺の方を見ていた。東條に至っては溜め息をつきあきれ果てた様子だった。
「橘、冗談だろ?やっぱ寝起きだからだよな?」
「?、俺は正常ですよ。それにさっき東條が来たときに嫌でも目が覚めましたよ」
「その言葉についてどう思う?友人の灰戸」
その話題を燈夜に振ると、東條と同じような反応をしていた。
「流石の僕でも言葉が出てきません。まさかあの時の話を全然覚えてないなんて」
あの時の話?それって、どの時の話だ、いつの日だろう、思い出せん。
「あの時っていつですか?ちょっと教えてくれよ」
「ほら、去年の三学期にここで次の生徒会について話し合ったじゃん。それで、雨龍が会長、僕と東條さんが副会長に立候補するって決めたじゃん」
やっと思い出した!!確かあの時は自分が決まったら適当にうなずいたりしてたりしてたからな、覚ええてないのも当然か。これを言ったら絶対に全員に袋叩きにされるかそれ以上に
キツイ何かをされるに違いないから言わないでおこう。
「やっと思い出したよ。そんな事もあったなー」
「いやー、思い出してくれてよかったよ。もし、思い出せなかったら急いで病院に投げ込もうと思ってたからさ」
厳しいな先輩は。そこまでバカではないから俺は。
そういえば、今思うと学校行事の時に一緒に並んで開会式とかやってる時にいたような無いような。
「そんなにボロボロになるくらいまで言わなくてもいいじゃないですか。そこまで言うと流石の俺だって傷つくから」
「すまんすまん、思った事がつい口に出てしまってな。それと俺はもう帰るわ、これからはお前ら三人でやっていかなきゃいけないもんな。元生徒会長なんかが居れば進むものも進まなくなるし、俺が何か言ったら絶対それに流されてうまくいかなくなると思うし、役目の終わったヤツは直ぐに退散して後輩に継がせるのが先輩ってもんだろ?だから俺行くわ、じゃあな」
「・・・会長」
会長の言葉は今までにもなく会長としての威厳があり、どこか悲しげな風に見えてきた。
調子が狂うじゃねーか,こんなセリフ言われると。
「会長!!今までありがとうございました。俺達、先輩達の代よりもいい学校作っていくので見ていてください」
「言うじゃねーか、いいだろう、だったら見ようじゃないのお前らの活動を。とりあえず、卒業するまでは俺がどっかで喝入れに来るかもしれないから覚悟してけ」
その言葉を言って会長は部屋を後にした。
「燈夜!!選挙の紙残ってるか?ちょっと貼ってくる」
「残ってるけど、貼った箇所うろ覚えだから貼れてない所どこか覚えてないよ」
「そんなんいいよ、自分で探して行くから」
俺は長机に置いてある張り紙とテープを持って走った。
俺が去ってからの生徒会室では二人が話していた。
「雨龍はさ、確かにバカで何考えてるか僕にも分からない時もあるけど、これだけは言えるのが、誰よりも努力して人一倍誰かのために頑張ろうっていうのが分かるんだ。だから、いざ活動するときに、雨龍を事を全否定するとかはしないでくれないだろうか」
「私は副会長という役柄ですし、基本会長の支持には従います。まあ明らかにおかしいと思う行動をしたら直ぐに止めますから安心していいですよ」
「ありがとう、東條さん」
「お、副会長同士仲良くしてんなー」
俺が行った数分後に先ほどいなくなった会長が再び来た。
「会長!?帰ったんじゃないんですか?」
「説明するとだな、あの後帰ろうとしたら、たまたま副会長と出くわしてな、案の定副会長も俺と同じ考えでさー、だからまた来たって訳さ」
「そういうことー、二人とも元気してたー?」
会長の後ろから声が聞こえ、三つ編み眼鏡の生徒が顔を出した。彼女は前副会だった。
「副会長まで、今日はどうしたんですか?ここに未練のある幽霊みたいに」
「幽霊だなんて酷いよ灰戸君、ただ、最後に見に来ただけだよ」
「それを未練と言うのではないのですか?副会長」
いかにもと言わんばかりの千代の言葉が副会長に突き刺さった。
「千代ちゃんまでー、そこまで言わなくてもいいじゃん」
「あれ?さっきまでいたおバカな会長はどこにいった?」
「雨龍でしたら選挙ポスターを貼りに今学校中を駆け回っています」
「あれか?途中で副会長にあった時に後ろで妙に騒がしい走る音が聞こえたのは橘だったのか」
手をポンと叩き納得した会長と急に笑みを浮かべる副会長。副会長に至っては何か怪しい。
「可愛い後輩を見れたから私帰るね。次期会長に戻ってきたら伝えて、前副会長が遊びに来てさぼってる姿を見たらしめるって言ってたって」
笑顔で言うのは反則である。これにはこの場にいた三人もドン引きである。
「分かりました。しっかり伝えておきます」
「ありがとう!!二人も頑張ってね。じゃあねー」
「今度こそ俺も帰るよ。ま、頑張れよ」
二人は生徒会室を離れ去っていった。
「さて、僕らも選挙の準備をしようか」
「そうですね、あの人だけでは何が起きるか分からないし、直ぐに見つけて作業をしましょう」
「でも雨龍さ、東條さんに喧嘩売ったのに一緒に作業して支障起きない?」
「大丈夫です。校内ランキング戦で戦うまでの時間は短いので」
「あはは、大人の対応ってやつだね。僕もランキング戦までに鍛えておかなきゃな。もしその日に戦うことになったらお手柔らかに」
「こちらこそ、ですが、勝つのは私なので」
どこまでも強気な千代に燈夜は少々戸惑い、言葉に詰まった。
「・・・どうだかな?その時になってみなきゃ分からんだろ。今の言葉絶対に忘れんなよ?分かったか。・・・・・さあ雨龍の所に行こう東條さん」
一瞬だが燈夜の口調が大きく変わり千代は目を疑ったが、気のせいだと思いそのまま二人は雨龍を探し始めた。
その後、選挙活動は順調に進み、何事もなく選挙が行われ、選挙に結果三人は見事当選し無事会長、副会長になることが出来た。
「おめでとう、無事に生徒会長になれたね雨龍」
「当然!!俺が生徒会長になれば学校がよくなるとみんな分かってるんだ」
「不信任にすればまた新しい生徒会長候補を探さなきゃいけなくなるのが嫌だからあなたにしたのではないのかしら?」
「何だとー!!黙っておけばいい気になりやがってー、絶対に勝ってギャフンと言わせてやるから覚悟してろ」
「この後の放課後に練習試合をしてもいいんですよ。私が勝ちますが」
ふざけやがってー、その挑発乗ってやろうじゃんか!!その自信へし折ってやる。
「二人とも、ストップストップ!!もう少ししたら生徒会引継ぎ式があるんだから騒ぎとか起こしたら必ずと言っていいほどあの二人が説教しにくるよ」
「げっ、それはちょっと、勘弁かな」
あの時燈夜が言ってたのが本当なら俺打ち首よりもヤバい仕打ちを受けるかもしれん。
副会長は怒らしてはいけない人間の一人と俺は思っているからな。
「今回は燈夜の言葉に免じて戦うのはまた今度としよう」
千代は溜め息をつき、前のように呆れている。
「そろそろ、時間ですね。式が始まるので行きましょう」
式のため俺達は体育館へ向かった。
式が始まり、次期生徒会のメンバーが抱負を言うことになった。
最初は燈夜だ。最初にいい言葉を言うんだろうな。
「私は橘雨龍さんと東條千代さんと一緒にこの学園をより良いものへとしていきたいです」
燈夜の抱負が終わり、次は憎い東條千代だ。
「私も灰戸燈夜さんと同じくより良い学校を作れたらと思っています」
何だ、燈夜のほとんどパクっただけじゃんか。
「最後に新生徒会長、橘雨龍さんお願いします」
やっと俺の出番か、でもどうしよう、言葉考えてない。
「えーっと、言葉がうまくまとまっていなくて、なるべく簡潔に言いたいと思います。演説でも言ったように俺はこの学園から退屈というものを全て無くし生徒全員が楽しい学園生活を送ってもらう事をモットーとしたい。だからみんなからの意見が欲しい!!みんなで作りみんなで最高の学園生活を送ろうじゃねーか!!」
俺なんてこと言ってるんだ?まとまらなかったのは確かだ、それでもひどすぎると自分でも思うのだが。
「気に入ったぞ!!賛成だー!!」
少しの沈黙の後、生徒の一人が大声で俺の抱負を賞賛した。
「俺も賛成するよ生徒会長!!」
「私も協力するよー!!一緒に学校を作りたい」
次々に生徒の口からどんどん賞賛の声が上がり俺はどうしたらいいか分からなくなってきた。
視線をどこに送ればいいか分からなくなってきて燈夜の方を見ると笑顔でグッドのサインをしている。
「みんな、こんなぶっ飛んだことを言う生徒会長だけどこれからよろしくお願いします!!」
頭を下げると拍手をする音が体育館中に響き渡った。
俺が壇上から降りても拍手が鳴りやまぬ事は無かった。
「凄いよ!!こんなに支持を集めたなんて雨龍は人を引き付ける素質があるんじゃないか」
「正直私も驚きです、先ほどはあんなことを言った事を訂正します」
「珍しいな、今日は嵐か」
「意地張らなくてもいいじゃんか今回はさ、これから仲良くしていこ、ね?」
「分かったよ、でもあの約束だけは忘れるなよ」
「忘れるわけありません。むしろ忘れろって方が無理なことです」
相変わらずだな、そんな事言えるのはここら辺までだからな。
「ほら、喧嘩はやめてまだ式の途中なんだから」
拍手もだんだんと小さくなり司会が話はじめ式が終わった。
生徒が自分たちの教室に戻っていく中俺達三人はまだ体育館に残っていた。
「それじゃあ改めて、俺達で学校を作っていくぞ!!」
ここに新しい生徒会が誕生し学校を変えるための第一歩が踏み出された。
いかがでしたか、書いてるうちに主人公の雨龍がバカな子になっています。
でも、これは自分で望んで書いているのでバカな主人公ってのもいいでしょ?みたいな、すいません調子に乗りました。
それと、本当にすみませんでした!!
いきなり週1の約束を破ってしまって、以後このようなことをなくしていきますのでよろしくお願いします。
次の第三話はバトルを書こうと思っています。今回初めてバトルを書くので文章があやふやだったり、表現がうまくいかない場合があるのでご了承ください。
それでは第三話で会いましょう。
誤字脱字があった場合教えてください。