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プロローグ
僕は今まで、数多くの女性に会った。魅力的な人も中にはいた。けれど、僕はそのどれにも興味をもてなかった。高値の花だとか、そんな頭のいい理由なんかじゃない。僕には必要ないと思ったのだ。
それなのに、何故だか彼女にだけは。彼女にだけは、僕は、心を奪われた。
彼女は自分を“出来損ない”と言った。そして、“独り”だとも。
僕は、生まれてから彼女だけを求めていたのかもしれない。……今だから言えることだけど。
運命と呼べるほどの大したものじゃない。でも、僕は、あれが運命でなかったとは、どうしても断言できない。あれは運命だったんだと、つい、自分に言い聞かせてしまう。
彼女は、どこか人生に対する脱力感で満ちていた。けれど、内側には、とても大きな優しさを抱えていた。
限られた時間を、彼女は、他人にはわからないような形で、彼女なりに歩んでいた。誰にも真似できやしない、彼女だけの歩き方で。




