ラース君のもふもふに癒されたい!
えーっと、私は何の怪獣映画の話を聞かされているのかな?
爆発に氷漬け、全焼…何があったの!?
「おとう様はわかるとして、おにい様とおねえ様もやったの?」
「えぇ、そうよ。ラルフはよくやったわ」
オリヴィエ姉ちゃんの顔が、苦虫を潰したようになっているが、何か思い出したくないことでもあったのかな?
「…それで、創聖教はどうなったの?」
何とかという神官が帰ったあとのことが聞きたい。
「あら。私とユージンが失敗するとでも?」
結局、創聖教は組織の一部が犯罪集団に乗っ取られていたと公表し、正式に謝罪したようだ。
そして、組織の浄化と称して、犯罪集団に関わっていた者をすべて粛清したと。
で、オリヴィエ姉ちゃんたちの思惑通り、古代創聖派を追放しちゃったんだって。
追放された古代創聖派の人たちは、半数がガシェ王国に、残りの半数はライナス帝国に保護されているらしい。
なんでライナス帝国?って思ったけど、ジーン兄ちゃんの説明では、聖獣がいるおかげか、精霊術師もわずかながらいるからだろうって。
「お詫びのお金ももらったし、カリヤス神官を神官長にしてもらえたし、あとは聖主とやらを捕まえるだけね!」
やっぱり国を動かしているだけあって、強かと言うかなんと言うか、凄いなぁって思う。
「けっきょく、ルノハークの目的ってなんだったのかな?」
「彼らは、人を頂点とする世界を作りたいようだ。そうすれば、すべての人が幸せになると言っていたな」
パパンが教えてくれたけど、それって創聖教の至上派ってやつと一緒じゃない?
過激派ってやつ?
でも、宗教観の違いで、戦争を起こそうって……なるか。
そういえば、他の種族はどう思っているのかな?
まぁ、魔族は享楽的というか、今がよければそれでいいみたいな感じっぽいけど。
獣人やエルフはどうなんだろう?
もし、人間に反感を持つようになり、争いが激化したら目も当てられない。
獣人が人間を嫌うようになってしまったら、私の夢が叶わないじゃないか!
「それで、他のしゅぞくの反応は?」
「ん?特には変わってないと思うが」
パパンはそう言うが本当だろうか?
私が疑いの目を向けたせいか、ジーン兄ちゃんがパパンの言葉を肯定した。
「獣人やエルフとは、よくも悪くも関係は変わっていないよ」
悪化していないだけよかったと思った方がいいのか。
「大丈夫。ネマが心配するようなことにならないよう、僕たちが動くから」
大臣である彼らが動くということは、それだけ大掛かりなことをするということだ。
他の種族との関係が悪くならないよう、情報操作でもするのか……。
「ネマはこれから忙しくなるが、困ったことがあれば頼ってくれていいからな」
サンラス兄ちゃんも私に言葉をくれたが、間違ってないか?
忙しくなるのは兄ちゃんたちでしょうに。
「忙しくなる?」
「えぇ。しばらくは、ネマの予定は詰まっていますよ」
ママンに言われるも、私はその予定とやらをまったく知らない。
「明日はオリヴィエからの申し出で、古代創聖派の面々とお会いします。シアナ特区の視察も数日かかるでしょうし、ミューガ領特区からも来て欲しいと要望が上がっています。他にも、面会を希望する者が数名。あとは…」
まだあるの!?
まさか、一人でこなせとは言わないよね?
「…おかあ様もいっしょ?」
「えぇ、もちろんよ。わたくしが行けない場合は、デールが側にいるわ」
パパンかママン、どちらかがいてくれるなら安心だ。
うっかり何かやらかしちゃっても、フォローしてくれるだろう。
それよりも、うっかりやらないよう、気を引き締めねば!
…本当は、現状についていくだけでいっぱいいっぱいなんだけどさ。
「そろそろ時間みたいだ」
サンラス兄ちゃんがそう言うと、応接の間の扉をノックする音が聞こえた。
分厚い扉の向こうの気配を察知するとは…。
サンラス兄ちゃん、やるな!
オリヴィエ姉ちゃんが対応している間に、私はサンラス兄ちゃんとジーン兄ちゃんにお別れをする。
「屋敷の方に会いに行くよ。ネマへのお土産が溜まっているんだ」
「妻にも、ネマの元気な姿を見せてやってくれ」
ジーン兄ちゃん、サンラス兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
家族ぐるみのお付き合いなので、兄ちゃんたちの家族にも挨拶行かないとだね。
挨拶回りだけでも大変だな、こりゃ。
「儂があげた短剣は、役に立たなかったようだから、次はもっといい物をやろう」
ゴーシュじーちゃんに高い高いされながら言われたんだが…。
……短剣なんて存在忘れてたよ!!
「わすれてた…」
「いや、儂も使い方を教えていなかったしな。気にするな」
つか、果物ナイフとしてしか使ったことないわ。
さすがに、人に向けるのは、なんか怖いしさ。
それを伝えると、ゴーシュじーちゃんは考え込み、パパンへ提案を告げた。
「ネマに自分を守る術を与えてはどうだ?儂があげた短剣でもいいし、他の魔道具でもいいが」
「あぁ。それは考えていた。何かいいものがあったら教えてくれ」
ゴーシュじーちゃんから解放されると、パパンとゴーシュじーちゃんが話し込んでしまった。
この流れでいくと、私は護身術みたいなのを習うことができるのかな?
体を動かすことは好きだから、ぜひともやってみたい!
「ネマ、明日を楽しみにしていてね!」
オリヴィエ姉ちゃんは明日も会えるみたいなので、ウインク付きで手を振るだけというあっさりしたお別れだった。
パパンや大臣ズはお仕事に戻り、森鬼は訓練場で時間を潰すと言って、ゴーシュじーちゃんについていった。
ゴーシュじーちゃんも上機嫌で森鬼に付き合うと言っていたので、またド派手にやり合うのだろう。
そして、私とママンは侍女に連れられて、王妃様のお茶会へと向かった。
案内されたお庭では、季節の花々が見事に咲き乱れ、その中で美人さんたちが談笑していた。
実に眼福な光景である!
「お待たせいたしました」
ママンと一緒に礼をすると、王妃様が笑顔で席を勧めてくれた。
「ルイとテオがお土産にお菓子を持ってきてくれたの。ペシェーネ、ネマちゃん大好きでしょう?」
おぉ!大好きです!!
ライナス帝国が発祥のペシェーネは、一口サイズの黄色いお菓子なんだが、口当たりはふわっとサクッとなんとも言えず、ペシェの上品な甘みが楽しめる一品だ。
テーブルの上のペシェーネに釘付けになった私に、王妃様が一つ摘んで差し出してきた。
「はい、あーん」
たまにある王妃様とのお茶会で、餌付けされまくっている私は、つい条件反射で口を開けてしまった。
「ネマ…」
ママンの呆れを含む声音にビクッとなったが、王妃様が間に入ってくれた。
「少しくらいいいでしょう?」
表情を隠すことなく、ママンに向かって拗ねてみせる王妃様はめちゃくちゃ可愛かった!
「…姉上、夫人が困っておいでです。少しは自重なさっては?」
「ルイ、ネマちゃんはライナスに行ってしまうのよ!今可愛がらなくて、いつ可愛がるの?」
今度は弟さんを恨めしそうに見つめる王妃様。
「すぐにというわけではないのですから、オスフェ卿にお願いして、時間を作っていただいたらどうです?」
「そうね!そうしましょ!」
王妃様は楽しそうにしているが、隣りの席にいるヴィの呟きが耳に入ってきた。
「また、衣装を作るつもりだな…」
「えっ!?」
以前、新年のパーティーの際に、ヴィがデザインしたという恐ろしいドレスを王妃様からいただいたことがあったが…。
いろいろと恥ずかしいやら、心臓に悪いやらで大変だから遠慮したい。
「まぁ、頑張れ」
気持ちのこもってない励ましをもらっても、なんも嬉しくないわ!
「母上、先に視察の日程を決めた方がよいのでは?」
ヴィの言葉に、王妃様は上品に笑うと、とんでもないことを言ってくれた。
「それが終わらないと、ヴィルがネマちゃんを独り占めできないものね」
あー、王妃様の中で、ヴィのお相手はまだ私なのか…。
いい加減、婚約者の一人や二人……。
ん?
「ヴィ、こんやく者いないの?」
「あぁ。それどころではないからな」
「なんでっ!!」
うっかりしていたが、ヴィもお兄ちゃんと同じ17歳になっている。
つまり、ガシェ王国では準成人。
準成人とは、大人とも子供とも見なされる、ある意味猶予期間みたいなものだ。
18歳になると、成人として扱われるのだが、王族がそんな歳まで婚約者がいないってのもおかしい。
お兄ちゃんもいないみたいだけど。
「今は、婚約者に時間も、金も、人員も割きたくないんだよ。理由はあとで話してやるから」
あ、うん。すまん。
客人の前でする話じゃなかったね。
つか、王妃様。その笑顔やめようぜ!
「視察では、何を重視してご覧になりたいのでしょうか?」
ママンが二人に質問することによって、場の雰囲気が変わった。
「魔物についても知りたいですし、オンセンというものも大変興味深いです」
「私は紫のガンダルと手合わせ願えたら嬉しい」
ルイさんは当たり障りのないというか、ざっくりしたものだったが、王妃様の甥のテオさんははっきり言い切った。
にしても、このテオさん。
ずーっと無表情なんだよね。
王妃様に似た中性美人さんに、無表情でひと睨みでもされたら、さぞ迫力があることだろう。
「わかりました。紫のガンダルには、こちらからお願いしておきましょう」
ママンがそう言うってことは、フィリップおじさんたち、まだレイティモ山にいるのか。
さすがに、ずっと野宿してたってことはないよね?
「ご都合がよろしければ、四日後ということでいかがですか?」
ママンが提案すると、二人はすぐに承諾してくれた。
それまで、王都見学や大臣ズと会談したりするそうな。
それから少し世間話をして、というか、私が質問してみた。
「水の聖獣って、あの天馬のお姿なんですか?」
「水の聖獣様にお会いしたことがあるのですか?」
弟さんに、質問で返されてしまった。
ライナス帝国の聖獣ではないが、旅興行の一座にいた聖獣なら見たことある。
あるどころか、めちゃくちゃ触りまくった。
「あぁ。以前、ジューベン一座のタータ殿とお会いしている」
なぜかヴィが答え、弟さんもタータ殿でしたかと相づちを打つ。
つか、ライナス帝国の皇族に、そんな言葉遣いでいいのか?
「水の聖獣様は、サチェ様とユーシェ様とおっしゃって、美しい天青馬なのですよ」
それはもう、弟さんは熱く語ってくれました。
天青馬という種類の聖獣で、その名の通り、空を駆ける青い馬。
でも、水の聖獣だから、水に融けて移動もできるらしい。
そして、サチェ様は陽が昇る前の空のように、深く美しい青を持ち、その色のように皇族の者に慈しみをもって接してくれるとか。
ユーシェ様は、澄み切った青空のように清廉な青で、一見冷たくも感じるがとてもお優しい心を持っているとか。
心酔しているのがよーくわかった。
王妃様も相変わらずねぇと言っていたので、これが素なのかもしれない。
「よかったな、お仲間がいて」
「ん?」
首を傾げるも、ヴィは意地悪そうに笑うだけ。
お仲間…って、弟さんのこと!?
ちょっと、待って!
私って側から見たらあんな感じなの??
今なお、聖獣について熱く語っている弟さんを見つめる。
その姿は、女性アイドルの素晴らしさを語るドルオタ…いや、推しを語るオタクそのものかもしれない。
つまり、崇拝とか尊い!とか、共感できる部分もある。
しかし、私はどちらかといえば、愛でる、触る、堪能する方だ。
目の前にあるもふもふを触らずして何をする!!
例えるなら、握手会に行って、手の柔らかさや匂いなんかを堪能したい派だろうか?
…まぁ、もふもふに関しては変態の域に入っていることは認めよう。
何が言いたいかって、同類は同類でも、少し種類が違うんだと言いたい!
同類じゃないとわからない違いかもしれないが…。
否定したいのをぐっと我慢して、弟さんの話が終わるのを待つ。
「叔父上、そろそろおやめになられた方がよいかと」
甥さん…なんか変だな。
甥御さん?しっくりこないな。
テオさんでいいか。
テオさんは私の方をチラリと見てから、弟さんを止めた。
弟さんも、もうルイさんでいいか。
つか、なんで私を見たんだろ?
「愛し子が、触りたいのを我慢しているようだし」
そこかー!!
勘違いだけど、触りたいのは触りたい!
「いえ、お気になさらずに」
そうは言ったものの、ルイさんは天虎殿とお会いになるのでしたねと、話を切り上げてくれた。
「では、お言葉に甘えて、ネマを借りていく」
「あぁ。叔父上の話に付き合わせるのは可哀想だ。ヴィル、時間があるときにでも、手合わせしよう」
「わかった」
おや?
なんだか親しげな雰囲気。
いや、まぁ、従兄弟だから仲がよくてもおかしくはないか。
「…テオ様と仲良し?」
「そうだな。他の皇子よりかは付き合いがある」
ヴィの答えに、テオさんも頷いている。
深く突っ込む前に、行くぞと言われてしまったので、王妃様たちに挨拶をしてから、ヴィを追いかける。
すると、すぐにラース君が来てくれて、背中に乗せてくれた。
「ラース君、ありがとう」
走っても追いつけないかもと思っていたので、凄く助かった。
あの、無駄に長い脚が憎い!
うぅぅと唸りながら、ラース君にしがみつく。
はぁ、このほっぺたに当たる感触も堪らん。
うりうりと顔全体をもふもふに埋めてみた。
息苦しくはあるけれど、どんな極上枕よりも優しく包んでくれる。
苦しいけど…我慢っ!
息苦しさが限界になり、ぷはぁっと新鮮な空気を求めて顔を上げた。
すると、ヴィが残念な子を見るような、生暖かい目で見ていた。
「少しは人目を気にしたらどうだ?」
「…うーん、今さら?」
ラース君にべったりなのは、前からのことだし。
たぶん、王宮で働いている人の半数くらいは知っているんじゃないかな?
「それもそうか」
いや、それで納得されるのも、なんか納得いかないんだけど…。
乙女心は複雑だなぁ。
ヴィの部屋に着くと、お茶はどうするかと聞かれたので、もういらないと断った。
お腹たぷんたぷんになっちゃうし。
久しぶりに来たヴィの部屋は、相変わらず広いわりには物が少ない。
お茶を飲む場合は、テーブルのある部屋でのんびりするのだが、ラース君と遊ぶ場合はラース君専用の部屋に行く。
ヴィの部屋の中にあるラース君専用の部屋には、毛の長いふかふかの絨毯が敷いてあり、ラース君よりも大きなクッションが鎮座している。
そして、人間用の小さなクッションがいくつか置いてあった。
私はラース君から降りると、ラース君はクッションの上で寝そべりながら背伸びをした。
手脚を伸ばして、寝そべっているラース君のお腹をクッション代わりにして私が座ると、ヴィがブランケットをかけてくれた。
…ヤバい、いつものお昼寝スタイルだ。
「寝るなよ?」
「…がんばる!」
ヴィもクッションを敷いて、お行儀悪く絨毯に足を伸ばした。
「さて、どこから話すか…」
「こんやくの話から!」
聞きたいことはいろいろとあるが、一番気になるのはこれだな!
「まず、俺に婚約者ができたとする。すると、次期王妃として、俺に割り当てられている予算から、必要経費が引かれる」
例えば、パーティーに着ていくドレスや装飾品。王妃教育にかかる人件費などなど、結構たくさんあった。
そして、次期王妃を守るために、近衛師団から護衛が派遣される。
もちろん、婚約者の家がつけている護衛もいるだろうが、それとは別でだ。
あと、定期的に婚約者が次期王妃に相応しいかを会議にかけるらしい。
その人員の構成は、過去、王族に嫁いだことのある家から選ばれるとか。
王妃教育の進み具合や、問題行動がないかとか、婚約者はいろいろ監視されるみたいだね。
つまり、それだけの人員と時間も割かれるというわけだ。
「それが嫌なの?」
「あぁ。お前が眠りこけている間、忙しかったし、今も忙しいんだ」
いや、私が寝てたのは不可抗力だから。
「忙しいの?なんで?」
王子としての仕事なら、余裕でこなしていた気がするのだが?
「人の奴隷売買の事件を追っている」
「ひょっとして、オリヴィエねえちゃんが言っていた事件?」
お兄ちゃんが襲撃したルノハークの隠れ家のことを話していたとき、被害者がヴィの事件と繋がっていたとかなんとか言っていた。
よくわからなかったから、その場は流したけど、大きな事件ってことだよね?
「以前、レニスにいたときか。ヒールランが、人をさらう騎士を目撃した」
「きしが!?」
民を守ることが仕事の騎士がなぜ!?
ヴィの説明によると、レニスの貧民街で、大人が次々と姿を消していたようで、その原因が騎士による人身売買だったらしい。
イクゥ国の奴隷商人が、大人なら男女問わず、年齢も関係なく買い取っていた。
それに目をつけた騎士が、金に困っている騎士たちを仲間にして、駐屯先の貧民街で誘拐を繰り返していた。
そして、その売られた人たちは、一度イクゥ国に連れていかれ、そこでルノハークに売られたと考えられる。
「今は、奴隷商人のところに情報部隊を潜入させ、証拠を集めている最中だ。我が国の民を奴隷にしているという証拠をな」
確か、イクゥ国は奴隷が合法だったっけ。
でも、奴隷を禁止している国の人間を奴隷にすることはできない。
つまり、さらった人を一度イクゥ国に連れていったってことは、イクゥ国の人間に仕立てたってことか?
「ルノハークの件もあって、捜査に時間がかかっている。これ以上、どうでもいいことに煩らわされたくない」
いや、次期王妃の選定は、どうでもいいことではないと思うぞ。
「王様には何も言われない?」
結婚も早いこの世界では、やっぱりヴィの歳になってもお相手がいないというのは問題になると思うんだ。
「あと二、三巡は好きにしていいそうだ」
王様が許してんならいっか。
でも、ヴィのお相手、気になるよねぇ。
こんな変態鬼畜腹黒王子のお相手、大変そうだし。
きっと、凄くできたお嬢様に違いない!!
「まぁ、結局、ラースが許さなければ、結婚はできないがな」
「は?」
なんでラース君の許可がないと、ヴィは結婚できないの?
「聖獣の契約者とは、それだけ聖獣との繋がりも深い。そして、真名の誓約ともなれば、相手にも関わってくる」
真名の誓約って、不貞は許さんぞコラーってやつでしょ。
「真名で繋がると言った方がわかりやすいか?ようは、ラースは相手のことも守ろうとするってことだ」
ヴィの命令がなくとも、ヴィのお嫁さんを守るのか。
「つまり?」
「契約者の資質とまではいかないにしろ、聖獣との相性が求められる」
なるほど。
だから、ラース君が許可しないと結婚できないのか。
「お前もこのままだと、ソル殿が許す相手でないと結婚はできないぞ」
私は別にいいんだけどね。結婚できなくても。
「下手したら、ラースの許しも必要になるかもな」
軽く笑っているけど、ラース君が鳴いたら、さらに腹を抱えて笑い出した。
珍しいこともあるもんだ。
つか、ラース君よ。ヴィに何言ったの!!
『愛し子の伴侶ともなれば、それこそ神に選ばれし者だろう。自分だけでなく、炎竜や精霊の王たちも認めなければ許さん』
『ラース、それだとネマは結婚できないぞ』
『必要あるまい』
可哀想と思いながらも、オスフェ家の面々と聖獣たちの守りを破れる強者がいるわけないと、大いに笑ってしまった。
たぶん、俺でも無理だ。
もし、ネマが結婚できたら、相手は正しく神に選ばれし者だな。
ラース君を出したとたん、筆の進みが10倍くらい上がりました(笑)