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学校へ行こう。お姉ちゃん編

お兄ちゃんたちに連れてこられたのは、まさにコロッセオだった。

ていうか、なんで学校にこんなのがあるんだよ!

え?王宮時代の名残??

いやいや、それでもおかしいよね?


コロッセオの入り口で、お父さんとお母さんが待っていてくれた。


鬼畜王子ことヴィに抱っこされていたので、二人は驚いていたんだと思う。

でも、表情には微塵も出さず、恭しく家臣の礼をとる。

お父さんは左膝を着き、右手を胸に当て上半身を折る。

よく中世ヨーロッパが舞台の映画とかに出てくるね。

お母さんはスカートを両手で持ち上げ、中腰からのお辞儀。

すっごく優雅な仕草だけど、絶対辛い!だって、許可が出るまでずっと態勢をキープしなきゃいけないんだよ?

そろそろ私も礼儀作法とかやらされるんだろうけど、もはや心が挫折してるよ…。


「今日は王太子としてではなく、学院の一生徒として参加している。お前たちも臣下ではなく卒業生として、俺たちを指導してもらいたい」


言ってるとこは凄く立派だが、上からってのがやっぱり王族って感じで少し可笑しかった。


クスクス笑ってる私に気づいたヴィが、目線だけで「どうした?」と聞いてくる。


「ないちょー」


だって、正直に答えたらまた弄られちゃうしね。


コロッセオの中は何もなく、高い壁の上に座席が設けられてるだけだった。

ただ異様なのが、中の一部に魔法陣が描かれていること。


ヴィの説明によると、あの魔法陣からランダムに魔物を呼び出して、魔法で倒すんだって。


んな残虐なこと、子供にヤらせるなよ!それとも、この国は本気で戦争でもする気か??


ゔぅーと唸りながら考え込んでいたら、お姉ちゃんが出てきた。


「ねーねっ!」


相変わらず、10歳とは思えない、大人びた美貌の姉が凛と立っていた。

しばらくすると、魔法陣が白い光を放ち出す。光は一際強く輝くと、徐々に収まっていく。


完全に光が収まると、魔法陣の中に召喚されたモノがいた。


それは大きな…とても大きなモノだった。


「嘘だろ…」


お兄ちゃんの呆然とした呟き。

その隣ではお母さんがか弱い声でお姉ちゃんの名前を呼んだ。


んーアレ、どう見ても竜だよね?しかも火属性の炎竜に見える。

お姉ちゃんと相性悪いよね?

お姉ちゃん、火属性は上級だけど水属性は下級に近いよ?属性の理はあっちの世界と一緒だから、火属性と闘うなら水属性が欠かせない。

お姉ちゃんのレベルが炎竜より上なら………。


って、そういうことじゃなーい!!

炎竜は立派な聖獣でしょうが!!

教師なにやってんの?聖獣を魔物扱いってダメでしょうが!!

お姉ちゃんに闘わせるなんて、死ねって言ってるのと同じだよ?


すぐに異常事態に気づき、騎士とか魔術師とかが駆け付けてるみたいだけど…。


お姉ちゃんが危ないよ!

一番近くにいるんだよ?

てか、お姉ちゃんもヤル気満々な顔してないで、避難しようよ!!

え?ちょっお母さん?なぜ貴女まで戦闘態勢なのですかぁ!?

さっきまでの儚げなママンはどこ行った!


この雰囲気だと、炎竜ヤられそうなんだが…。

だって、ママンはパパンと同じくらいの特級魔術師で、水魔法では国一番って我が家の侍女たちから聴いたことある。

ヤバい…マズい…どうしよ!?


ヴィの膝の上から降りて、中に入れそうな場所を探す。

客席から入れるようにはなってないのか、出入り口への階段しか見当たらない。

さて、どうするか?

壁の部分から飛び降りれればいいんだけど、どう見ても3mはありますねぇ。

でも考えてる暇もないんだよね。ヴィが追っかけて来てるから…。


よっしゃっ!女は度胸!!


「ネマっ!」


ていっ!!

って飛んだのはいいけど、こーわーいーぃぃぃ!!!!!!!

これ、ベチャッて確実だね!

考えなさすぎたーーーたーすーけーてー!!!!


後悔先に立たずとはこのことなんだ…と実感していたら、身体が暖かい風に包まれた。

こう…フワッてな感じで地面に降ろされたんだけど………。

魔法ともちょっと違うような…って魔力ないからよくわかんないけど。


「ありあとーごじゃいましゅ!」


誰が助けてくれたのかわかんないけど、お礼はしっかりと言っておく。命の恩人だもんね。


テトテトと走ってはいるんだけど、大人が歩く速度と変わらない速さで、炎竜のもとへ急ぐ。

え?お姉ちゃんじゃないのかって?

普通はそうなんだろうけど、能力的に私が炎竜と話つけた方が早いからね。

一応、「人間以外の生き物」が対象だから、竜もイケると思うんだ。


突然現れた子供に驚いてる大人の制止をかいくぐり、炎竜の視界に入る所に着く。

炎竜は飛行機くらいの大きさだから、足元は死角で危なさそうだし。

プチッといっちゃいそうだもん。


周りを見回して、大人たちに向かって大きい声で言う。


「めーなのっ!このこいじめちゃめっ!」


明らかに狼狽する大人たち。

私の訴えなんざ聞いちゃいないが、攻撃は止んでいる。まぁ、幼い子供がいてはできないよね。それでも直ぐに攻撃はできるよう、炎竜の気配を伺うプロフェッショナルたちだった。

さすが、王立は伊達じゃないねと感心していたら…。


『子供の出る幕ではないぞ?』


竜がしゃべった!!

ってことは、寿命が長い正統派だ!!

いやね、この世界、ワイバーンとかトカゲのでっかいのとかも亜種として竜の仲間なんだよね。

でも、しゃべれるなら好都合。


「えんりゅうしゃんもめっなの!」


『強制的に呼ばれ、謂れのない殺気を向けられては、黙ってられぬ』


そりゃそうだ!

ある意味生存競争だもんな。

てか、すでに攻撃されてるけどね!

殺気というよりは【殺す気】ですね。


「だっていたいたいよ?」


ここで闘ってしまったら、双方痛いどころでは済まないけどな!

それにもし、我が家のチートどもに炎竜が倒されでもしたら…。


「うりょこなでなでできない…」


『ほぅ、汝、我に触りたいのか?』


あっ!ヤバッ!本心だだ漏れだった!!

いやだってね、炎竜の見た目ときたら、ゲームに出てくるドラゴンそのものなんだもん。『竜』って表現してるけど、西洋のドラゴンなんだよね。

鋭い牙と爪。おおきな皮膜型の羽。爬虫類と同じ黄金の目と赤い鱗。

撫でたいに決まってるじゃないか!!

つか撫でさせろっ!!


「うん!なでなでしゅる!」


『我が恐ろしくはないのか?」


「ない!」


即答!恐いどころかかっこいいよ!

是非ともその背中に乗っけておくれ。


『変わった子よの』


そう言って炎竜は私に顔を近づけてきたので、遠慮なく。


なでなでーーー


おぉ、熱いのかと思いきや、冷んやりすべすべ!!

本当に爬虫類の感触だ。ただ硬いけど…。ヘビとかトカゲみたいな肉の柔らかさはないな。デカいからか?


「きもちーね」


調子こいて鼻面をギュッとね。

夏場に欲しいな、こんなベッド!


『汝が大きくなり、まだ我を必要とするなら、そのときは汝を主と認めよう』


そう言って、炎竜は大きな羽を羽ばたかせる。


「かえりゅのやー」


大きくなったらっていつだよ?

それより、今その契約とやらをして、お家で飼いたいよ!


私が帰すまいとしてしがみつくのを、炎竜は面白気に目を細めた。


『ならば汝にこれを授けよう』


私の目の前に、赤い光が浮かび上がる。炎竜の身体から発せられる赤い光は、ぐるぐると渦を巻き、一カ所に凝縮され、丸い形になった。

そして、赤い光の玉はゆっくりと私の手の中に落ちてきた。


あったかい…。


手の中で光は霧散する様に、静かに消えていく。

手の中に残るのは赤い玉。

ルビーよりも濃く深い、不思議な赤だった。


「こりぇなぁに?」


竜玉(オーブ)だ。汝と我を繋ぐ物だ。肌身離さず持っておれ』


なんかレアアイテムGET!!

肌身離さずって…子供の手で両手に余るほどデカいんです。しかも球体だから、装飾品としては加工しにくいです。

どうやって持ち歩けと?


『汝が思えば、竜玉は姿を変える』


ほうほう。

変幻自在なのか。

ってことは、子供が持っていてもおかしくない装飾品にすればいいんだな。


んー、ぬいぐるみとか?


某ネズミさんのテディベアを思い出していたら、手の中の竜玉が光出した。


片手で抱えるほどの大きさのテディベアができた。

某夢の国のテディベアそのもの。ただし、赤いからすっごく違和感。某コピー大国の製品にしか見えないと思う。


ってか、ダメじゃん!自分!

元の大きさより大きいよ!!無くさないかもしれないけど、不便だよ!


んー、やっぱアクセサリー系が妥当なのかな?

常に身につけられて、無くさないもの…。あっちにいたときから、アクセサリーとかつける習慣なかったからな。余計なくしそうだ。

あっ!そうだ!アレにしよう!!


アレを思い浮かべながら、テディベアを見つめる。

再び光が現れ、テディベアから思い描いた物へと変化していく。


できた物はテディベアより一回り以上大きかった。

垂れ耳ウサギのぬいぐるみリュック。

もちろん色は赤。


これなら、子供が持っててもおかしくないし、リュックだからなくさないし、両手も塞がらない!!

しかも、お腹の部分のチャックを開ければ、ちゃんと収納もできる。さらに、この大きさなら、抱きぐるみとしても使用できる。

我ながらナイスアイデア♪


「よし!こりぇでいいの」


『ふむ…面妖な人形だの』


面妖って…。

ずいぶん古風な言い回しだな。


「こうしてつかうの」


実際にウサギを背負って見せる。


「これなりゃなくしゃないよ」


満面の笑みを向けると、炎竜も満足気に頷く。


『竜玉には我と持ち主の精神を繋げる作用がある。念話もでき、また強い感情も意思には関係なく伝える。竜玉を通して我が魔法を遣うこともできるゆえ、汝が危機にあるときは力になろう』


うへぇ…。なんか持ってるだけでもいろいろ危なそう。

持ち主ってことは、私以外が持っても使えるってことでしょ?

炎竜との会話はここにいる全員が聴いてるわけだし、強欲な人間が実力行使にでも出たら守り抜く自信はナイ!

うん。それだけは断言するぞ!!


「まもれりゅじしんない!」


『ならば汝の魔力を竜玉に覚えさせるのが良いのだが…』


魔力もナイよ!

言い淀んだってことは炎竜は分かってるんだろうけど。


『汝の血を一滴垂らすのでも良い。それで竜玉は汝にしか使えぬ』


つまり、魔力や血が持つ情報を使った生体認証なわけね。

もっと早く言おうよ。

ウサギリュックに自分の血を垂らすなんて、サイコなことしたくないよ…。

あとで玉に戻してからやろう。


「あい。えんりゅうしゃんおなまえは?」


肝心なこと聞き忘れてたぜ。

長い付き合いになるだろうし、炎竜って呼んでたんじゃ距離も縮まらないしね。


『真名は契約のときにしか教えられぬが、我のことはソルとでも呼べ』


ソル…太陽のことだね。

強大な火を司る炎竜にぴったりだ!


真名か。やっぱりあるんだ。

こっちの人間では聞いたことないけど、聖獣だけなのかな?

この手のことはお母さんが詳しいから、今度教えてもらおう。


「ネマっていうの。そりゅ…そるよろしく」


おおっと。やってしまった。

何とか言い直せたけど、3回に1回は失敗すると思う。

許せソル。


『では、我は寝ぐらに帰るとするか』


そう言って、再び羽を羽ばたかせるソル。

今度は私も引き留めはしない。

お家で飼えないのは凄く残念だけど、こうして縁を繋げられたから良しとしよう。

あぁ…本当に残念だ…。


ソルの羽ばたきで風が舞い、砂埃が巻き上げられる。風も強く、目は開けられないし、気を抜くと飛ばされかねない。


風が弱くなり、目を開けたときにはソルの姿は遥か上空にあった。

さらに少しして、姿が完全に見えなくなると、周囲に安堵の雰囲気が生まれた。


「ネマっ!」


名前を呼ばれ振り向くと、お姉ちゃんが走ってくる。

そして、そのままの勢いで抱きしめられた。

お姉ちゃん苦しいデス。

ちょっ、息できないから緩めて!!

苦しさのあまり、お姉ちゃんを叩き、ギブの合図を送る。


「あぁ、ごめんなさい」


抱擁が緩まると、ぷはぁっと喘いだ。

はぁ、苦しかった。


「もう、あなたって子は心配ばかりかけて…」


あらま、お姉ちゃんが涙ぐんでる?

心配させたのは悪かったけどさ…。


「ねーねにげなきゃあぶにゃいの!!」


先に心配させたのは貴女ですよ?

いくら両親譲りの強い魔力があるからといって、過信はいけないよ。

治癒魔法はあるけど、あれは女神の加護持ちじゃないと使えないから、数はすっごく少ないんだからね!


しっかりとお姉ちゃんに無茶をしないよう釘を刺していると、またもや強烈ハグをされた。

ハグというか、タックルに近い勢いだった。


「ネマっ!怪我はないか?」


貴族の威厳もあったもんじゃない。猛ダッシュしてきたと思われるパパンに捕まってしまった。

ほっぺスリスリはやめて!


「やーっ」


本気でお父さんの腕から逃げようと藻掻く。

最近、パパンの愛情が重いです。


「あなた…ネマに嫌われますよ?」


お母さんはパパンから私を奪った。

ホッと安心して、お母さんにすがりつく。

やっぱり母親は偉大だ。この安心感パネェっす!

パパンは案の定しょんぼりしてるけど、ちょっと可哀想だったかな?

お家に帰ったら甘えてあげよう。


「お前は…」


そう言って、盛大に深いため息をついたのはヴィだった。

そして、私の顔の方に手を伸ばしたと思ったら…。


むにゅぅぅぅ―――


またかーーー!!!

痛い痛いっ!ホントに痛いから!!


「まぁ、無事でよかったな」


いやいやいや、今無事じゃないから!

なうで現在進行形でダメージ喰らってますよ!

はっ!もしやこれが鬼畜王子の愛情表現ってやつなのか!?

なんてはた迷惑な…。


「オスフェ公爵、この件については宮廷魔術師の方に調べさせるように。そして、王宮はネマを欲する。しっかりと対処を考えておくがいい」


「調査の件は承知いたしました。あぁ、可愛いネマがあの権力亡者どもにいやらしい目で見られるとは…もう抹殺しちゃおうかな?」


パパン、物騒な呟きが聞こえたけど、気のせいかな?

周りの顔を見ると、ヴィは呆れてるし、お兄ちゃんは苦笑してるし、お姉ちゃんは笑顔だけど目が笑ってないし、お母さんにいたっては考え込んでるし。

なんで誰もパパンを止めないの??


んー面倒臭いことになったぞ。

どうしよう?



いきなりの大物登場という話でした。

お姉ちゃん編と言っておきながら、ほとんど出てこなかったとゆーwww

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