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学校へ行こう。お兄ちゃん編

今日はお父さんとお母さんと一緒にお出かけです。

お兄ちゃんとお姉ちゃんが通う学校で、授業参観みたいなのがあるんだって。

珍しい動物とか飼ってないかなぁ?


お兄ちゃんとお姉ちゃんが通う学校は、王宮から少し離れた所にあった。

王立学院-初代の国王が創立した学校で、代々の国王自らが学院長を勤める、国内で唯一「王立」が付く学校だ。身分に関係なく、試験に合格すれば入学でき、卒業すればエリートとして、どこでも優遇されるらしい。

学科も騎士、魔術師、獣騎士、侍女、文官などなどいっぱいあり、就職先は王宮と各領地や貴族の屋敷だ。王宮は国家公務員で、領地が地方公務員ってとこかな。

あと、貴族しか入れない、上級仕官とかもあるんだって。

お兄ちゃんとお姉ちゃんはこの上級仕官のクラスだよ。

なんてことをパパンから教わった。


お兄ちゃんのクラスはグラウンドでやるんだってさ。

グラウンドに行くと、雛段式の客席が組んであった。

だけど、貴族用に特別席が用意してあり、それも階級に応じて対応が違っていた。

我が家用に用意されていたのは、ふかふかのソファーにティーセット。それと、世話係として侍女科の上級生が付いてくれていた。

屋外でソファーってどうよって突っ込みたいっ!

でも、パパンもママンも気にした様子はなく、当たり前のようにお茶をお願いしているし。

よし。郷に入っては郷に従えというから、私も気にしないでおこう。

ソファーに座って、ほっと一息。

美味しいお茶を頂いて、何気なくグラウンドを見て唖然。

すっごいジオラマがあった。

パパン曰く、数人の教師が魔法で作ったんだって!

どこかの風景を切り取ったとしか思えない山と川があり、ちょっとした平地の先は岩場になっている。

本物と比べると、何百分の一っていうスケールなんだろうけど、山に至っては、5階建ての校舎と同じ高さだ。

これを使うの!!いいないいな、私もあれで遊びたいっ!

そのジオラマの両端に、20~30cmの兵士が沢山いた。幻影の一種で、この兵士たちを生徒が指揮して勝敗を競う、戦術シミュレーションだね。

兵士の種類も、歩兵、部隊長、獣騎隊、魔術師とかいっぱいあって、将棋やチェスのリアルなやつって感じ。


「しゅごいねー」


ファンタジーな世界ならではの光景に、テンション上がる!


笑顔満開で両親に話しかけたら、ママンにギューされた。

パパンにはその後抱っこ。

いやー、我ながら甘やかされてますな。


ようやくお兄ちゃんの出番!

戦術とか、まったくもってわかんないけど、歩兵の一部を山に潜伏させてみたり、開けた所では魔法の罠を仕掛けてみたり、素人目でもお兄ちゃん圧倒的に強い!!


さほど時間かからずに、お兄ちゃんが勝ちました。


「にーにしゅごいしゅごい!!」


興奮している私を、お兄ちゃんは抱っこしてなでなでしてくれた。

もっと撫でてー。


お姉ちゃんの出番まで時間が空くので、校内を見て回ることになった。

この学校、元は王宮だったんだって。だから無駄に広いのか。


…おっと、自然の摂理が私を呼んでるぜぃ。ってことで、


「にーにおしっこー」


お兄ちゃんに抱っこされたままお手洗いへ。

介助はいらないよ!!

いくら兄でも恥ずかしいからやめて!


お兄ちゃんを説き伏せ、無事個室へ。

スッキリして戻ると、お兄ちゃんが派手な人に捕まってました。


「にーに?」


「妹が戻ってきたのでこれで…」


「妹?まったく似てないな?」


なんだこいつ?初対面なのにえらく失礼なやつだな!


「妹の世話など、使用人にやらせればいいだろ」


おっ?もしや、テンプレの雑魚キャラか?

お兄ちゃんのこと、一方的にライバル視してたりする身の程知らずかにゃ??

そこそこイケメンなのに残念だ。


「それとも、俺に負けたときの言い訳にでもするつもりか?」


カッチーン。こいつコロス!


「にーにちゅよいもん!まけないもん!」


「ふんっ。お子様にはわかるまい」


こいつ鼻で笑いやがりましたよ。

精神が幼稚退行してるかもなぁって最近思わなくもないが、こちとらアラサーだ!

貴族ってことで、変にプライドだけ高くて、ダメな意味で甘やかされて育った、典型的なクズ人間だろ。


「みぶんをりかいしゅてないばかよりましだもん」


お兄ちゃんビックリですよ。

そうですよね。ごめんよ、お兄ちゃん。貴方の妹はすこぶる口が悪いです。

でも、満面な笑みですか…そういうとこはパパンにそっくりだね!


「…このクソガキ!!」


お??こんないたいけな幼児に暴力ですか?クズ以下だな、おい。

パパンに言いつけてやろう。そして、本当の意味で身分の恐ろしさを味わえばいい。

公爵家といえど、パパンもお兄ちゃんも王位継承権持ってる王家の血筋だもんね。ひいお爺様が王弟だったんだって。基本王様の兄弟姉妹は他国の王族と婚姻を結び、自国の王位継承権を破棄するのが慣わしになってる。

でも、ひいお爺様はひいお婆様のために臣籍降下したの。

だから我が家は貴族の中でも王家に次ぐ権力持ちって話なんだけど…。パパンがアレじゃあね…。はぁ…。


「何をしている?」


大きくはないのに、やたらと威圧感漂う声が………。

嫌な予感。


「殿下っ!!」


あーやっぱり…。

お兄ちゃんの後ろに隠れておこう。


お兄ちゃんとクズ人間はお辞儀をしてる。許可がでるまで拝顔はできないの。私は俯いて、目が合わないようにしてる。

私も大概無礼なやつだ。


「構わん」


殿下の許可が下りると、二人は顔を上げたみたい。

私は相変わらず、お兄ちゃんを盾にしてる。


「トリスタン・ディスドールが子供に手を上げるように見えたが?」


「なっ!そんなことは決して」


うーそーつーきー!

怒りに任せて、手が出そうになったくせに。


「そうか?では、ネフェルティマはなぜ隠れているんだ?」


別に叩かれるのが恐くて隠れてるんじゃないやい!

鬼畜王子に捕まるのがヤなんだい!


「殿下は妹をご存知で?」


「以前、王宮で迷子になってた所を保護してな」


「まいごじゃないもん!」


あったー。つい口が出ちゃった…。


「ほぅ。俺に口答えするか…」


ぎゃーーー鬼畜王子がこっちくるー!

に、逃げなきゃ。


走り出そうとした所を、力強い腕にグイッと引っ張られた。

強制抱っこ…。


「やーおりゆ!」


王子を嫌がる幼女に楽しそうな王子という、変わった光景に呆気にとられるお兄ちゃんとクズ人間。

助けれ!!


「相変わらずお前は面白いな。俺の玩具になるか?」


ガーン…人の顔見て面白いって………。玩具扱いって…。どんだけ鬼畜なんだこの王子!!


「にーにぃ…」


半泣きでお兄ちゃんに助けを求める。

我に返ったお兄ちゃんだけど、鬼畜王子が離してくれないから、どうしようもできないみたい。


「王宮に自由に出入りできるようにしてやるぞ?」


鬼畜王子の一言で、私はピタッと抵抗をやめた。

王宮フリーパス=ラース君と遊び放題!

私の考えは顔に出てたのか、鬼畜王子は笑うのを堪えてらっしゃる。


「そんなにラースが好きか?」


「ラーしゅくんはおともらちらもん!」


この滑舌の悪さ、なんとかしてくれ!!


「畏れながら殿下。そのような子供に王宮で自由にさせるのはいかがなものかと」


クズ人間がクレーム付けてきやがった。

私とラース君の逢瀬を邪魔するとはけしからん!


「ネフェルティマなら問題あるまい。父上も気に入っておられたしな」


「おーしゃま?」


「そうだ。父上にも顔を見せてやれ」


おぉ。また王様に会ってもいいのか?


「あい!」


「父上には懐いてるな。どうして俺のときは逃げる?」


えぇー、そんなの決まってんじゃん!


「きちくおーじらから」


即答してやりました。悪口言うときは滑舌はマシになるみたい。人のこと言えないくらいには、私も性格悪いようです。新発見!


「そうか。そんなに俺に弄られたかったのか」


すっげー意地の悪い笑みになってますよ、おーじ…。


むにゅぅぅぅ―


「ひらいぃぃー」


ほっぺた抓らないで!

もう泣いていいですか?いいよね?


「殿下、申し訳ございません。そろそろカーナの発表がありますので、ネマをお返しいただけますか?」


お兄ちゃんナイス!!

抓り攻撃から解放されたけど、鬼畜王子の腕の中じゃ全然安心できない。

早く私を解放してくれ!と、心の底から願う。


「ならば俺も行こう」


ガーン…。

い、いえ。結構です!!

あ、断るときに「結構です」は使っちゃダメなんだっけ?


「しかし、そのままでは不敬にあたりますので…ご容赦下さい」


お兄ちゃん頑張れ!もう頼れるのは貴方しかいないんだ!!

しかし、子供でしかないお兄ちゃんが、王族に逆らえる訳もなく。


「大丈夫だ。コレは既に俺の玩具だ。お前は気にしなくていい」


そう言い切る鬼畜王子に、不安気なお兄ちゃんの顔。

あぁ…ひょっとして私、選択肢間違っちゃった??

お兄ちゃん、ごめん。


「トリスタン、ネフェルティマは俺の庇護下にある。今後このようなことは控えろ」


鬼畜王子の威圧にクズ人間は驚き、そしてようやく己が不興をかったことに気付き青ざめた。

ご愁傷様。


鬼畜王子に抱っこされたまま、私たちはお姉ちゃんの会場に向かった。


てか、私はいつまで抱っこされてればいいんだろう?

大人ならまだしも、お兄ちゃんと同じくらいの子供には重いんじゃないかな?

いや、私が太ってるとかじゃないよ!!…たぶん……。


「おもたい?あるけりゅよ?」


「修練には丁度いいな」


ちょっ!おまっ!!

自分から聞いといてなんだが、乙女にはもっと気を遣え!

モテないぞ!!

…あーうん。イケメンで王子で俺様?で、将来超有望物件だからモテないわけないか。

とか考えながら、鬼畜王子の顔をまじまじと観察してみる。


「ネフェルティマの瞳は黒か?」


藪から棒になんだ!

そうか、ガン見してたからか。

まぁ、この近距離で視線が合えば気付くわな。


「どちらかと言うと、黒に近い青ですね」


黒と表現すると何かマズいみたいだから、一応青だと言い張るんだよね、家族が。

その理由はまだ教えてもらってないけど、とりあえず話しの流れは変えとこうか。


「ねまでいーの」


ネフェルティマって長いからさ、愛称でいいよ。てか、最近気付いたんだけど、ネフェルティマだと愛称は「ネフェル」とか「ルティ」じゃね?

最初と最後だけって、どんだけ省略してんだよ!って思う今日この頃。


「ネマか…。では俺のことはヴィルと呼べ」


「ヴィう…」


あー、すみません。まだサ行とラ行は上手く発音できないっす。


「………ヴィでいい」


あ、鬼畜王子が妥協してくれた。

優しいと何かありそうで恐いんですケド…。

あれ?結構私、鬼畜王子に侵されてる??



今回はもふもふが出来ませんでした(T_T)


ヴィルを鬼畜だと表現してますが、まだ甘いですかね?3歳児に対してどこまでやっていいものやら(悩)

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