準備は進んでおりますよ。
ただいま、みんなでまったり足湯中だ。
そんなまったり空気の中で、ポツポツと今後のことが話し合われていたりする。
温泉会議とは、お気楽だなぁって自分でも思っちゃったりして。
でも、気持ちいいんだから仕方ない。
グラーティアも出てきて、お風呂のときのように糸で筏を作り、ぷかぷか浮いている。
その姿にセイレーンのお姉様方がはしゃぎ、小さな波を作ってグラーティアを翻弄する。
グラーティアはその小さな波を上手く乗り越えている。
楽しんでいるようなので、そのままにしておこう。
「ここ、ゴブリンたちも使ってもいいかな?」
お姉様にお伺いをたてると、快諾してくれた。してくれたのはいいけれど、外から入ってこれるかが問題だ。
「どこかに穴があったはずなんだけど…」
穴と言われても、洞窟の中には見当たらない。
「あ、ごめーん。昔、私が塞いじゃった」
テヘペロの軽いノリで言ったセイレーン。
「あんたは…」
「だってぇ、風が煩かったんだもん」
どこか幼いというか、あざといというか、こんな言葉遣いが似合っているから、またタチが悪い。
可愛いじゃないか、コノヤロウ!
「確かねぇ、あの岩だったと思うんだ」
セイレーンが指した方向に、程々な大きさの岩があった。
「山の頂上の小さな洞窟に繋がっているはずだよ」
と言うことで、土の魔法が使える騎士さんたちにお願いしてみた。
岩をどけてもらうと、ギリギリ人が一人通れるくらいの穴があった。
そこから、ブボーっと不気味な音が聞こえてくる。
セイレーンの姉さんが言っていたのはこれか。
確かに煩い。
山に吹きつける風が洞窟内で反響しているのか、ドラゴンの鳴き声のような音がしているのだ。
あまりに煩いので、ラース君にお願いして、音が鳴らないようにしてもらった。
ラース君がガウと一鳴きするだけで、風の音がおさまるんだから凄いよね。
中を調べてみると、緩やかな勾配があるようだった。
頂上から来るとしたら坂道は危ないので、階段にしたい。段の幅が広く、段差も低いものがいい。
それなら、おちびさんたちが転がり落ちることもないはず。
子犬にとっては、階段も危ないからね。ヒョコッヒョコッと階段を下りる姿は、絶対にプリチーだと思う。見誤って転げ落ちる姿も、可哀想だけど可愛い!
再び、騎士さんたちにお願いすると、一時間ほどかかって完成した。
騎士さんたちによると、この温泉から山の頂上まで一色かからないらしい。
一色は地球時間で三十分くらい。細かい時間を表す祝いの六色の一つ分の時間を言う。
徒歩で三十分と考えると、結構な距離ではあるが、利用するのがコボルトたちなので大丈夫だろう。大きな怪我をしても、ハンレイ先生がいるのだ。動けなくて来られないということはないと思う。
そしてもう一つわかったことが。
この温泉、消費した魔力を回復する効果もあった。
階段を作って、ヘトヘトになった騎士さんたちが足湯に戻ると、徐々にではあるが魔力が回復したとか。
つまり、治癒魔法を使った癒しの氏や魔術師の賢者の氏たちにもご利益があるってわけだ。
さて、再び足湯での温泉会議だ。
議題は人事の配属ってことかな?
しかし、今回ついて来てくれた、班長さん率いる王国騎士団も、ヴィの護衛にあたっている宮廷近衛師団もオスフェ家の権限では動かせない。
「ある程度、シアナ計画が形にならないと、彼らは動かせないだろうな」
「建前としては、魔物が逃げ出さないよう監視、警備を常駐で行うってことで騎士団を置けるだろうけど」
「近衛の方は、この件で俺が動くときの専任にすることしかできないか」
「このオンセンってやつを麓まで引くには魔術研究所の技術提供が必要だし、入浴施設を作るには大工組合に依頼しないといけないね」
お兄ちゃんとヴィだけで、ぽんぽん意見が飛び交っているが、私も仲間に入れてくれ!
「つまり、すぐには人を集められないってこと?」
「そうなるな」
「それに関しては、問題ないですわよ」
お姉ちゃんが自信ありげに答える。
「各組合には、お母様が動いています。優秀な人材もすぐに集まりますでしょう」
おぉ、ママンまで動いてくれているのか!
まさにオスフェ家総動員だな!!
「ならば、心配はなさそうだな」
「となると、ジグ村に誰を残すか…。ヒールランにお願いするしか選択肢はないけれどね」
もともと、ヒールランは現地に残るのを希望していたからね。
ただ、正直不安だ。ヒールランには謎が多すぎる!
「そうですね。必要な情報をすぐに集められる者がいた方がいいと思います」
「でも、きけんもあるかも。ゴブリンやコボルトが集まるってことは、てきにも目をつけられやすくなるだろうし…」
「心配していただいて、ありがとうございます。ですが、こう見えても、戦闘の心得はございますので」
本当だろうか?言っちゃ悪いが、ヒールランは典型的な魔術師タイプだ。戦っている姿なんて想像できない。
「すでに殿下はご存じでしょうが、監査部の前には情報部隊の方におりましたので」
なんですと!?
王国騎士団情報部隊と言えば、情報収集、情報操作に始まり、潜入や工作、果ては暗殺までこなすスペシャリスト集団である。
王国の闇の部分を担う部隊と言っても過言ではない。
つか、ヴィは知っていただと!!
「まぁな。勝手に調べさせてもらった」
「殿下についている影にとっても、重要なことですので構いません」
影って、王様の私兵のことかな?
まぁ、身元もわからないような人を、護衛対象には近づけたくないわな。
「でも、どうしてじょーほーぶたいからかんさぶへ?」
「…弟が亡くなり、気が抜けたとでも言いますか。情報部隊では使い物にならなくなったのです」
地雷踏んだー!!!
「ごめんなさい」
思いっきりアウトな地雷を踏みぬいてしまった…。
「お嬢様が謝ることはございません。隊長に監査部への異動を勧められ、こうして皆様とも関わることができるのですから」
「情報部隊でも優秀だったそうだ。彼ならここに残っても大丈夫だろう」
「何だったら、俺たちも残ろうか?」
フィリップおじさんがそう申し出てくれた。
大変ありがたい。やはり、ヒールラン一人だと、何かあったときが不安だからね。
「おじ様いいの?」
「おう。洞窟も多いし、冒険するにはもってこいだな」
「貴重な魔石もあるみたいだし、楽しそう!」
エリジーナさんを始め、紫のガンダルの面々は洞窟探検に好奇心を刺激されたようだ。子供のように、目がキラキラしている。
と言うことで、ヒールランと紫のガンダルがジグ村に残ることに決まった。
あとは、コボルトたちの到着と、ジグ村の人々がシアナ計画を認めてくれるかだ。
さて、温泉も満喫したことだし、村に戻りますかね。
赤ちゃんスライムたちが、腹減ったと騒ぎ出したので、ご飯を与えないとヤバいのだ!
村に戻ると、夕食の準備をしているお家から、いい匂いが漂っていた。
干物を焼く匂い、麦飯が炊ける匂い。そんな匂いにつられて、お腹がグーと鳴る。
紫のガンダルは、村長さんのお家に負担がかかるからと、野宿をするといって山に残った。
いいなぁ。キャンプみたいで楽しそうなだぁ。
この一件が落ち着いたら、王都に戻る前に、みんなでバーベキューするぞ!
そう心に決め、村長さんのお家に行くと、相変わらずのご馳走が用意されていた。
急に増えたお姉ちゃんにも、笑顔で対応してくれた村長夫人。今更だけど、大所帯ですみません。かかった経費はオスフェ家に請求してください。
赤ちゃんスライムたちが満足するまで、ガッツリご飯を食べたあと、村長さんが真剣な面持ちで今日の話し合いの結果を伝えてくれた。
「ジグ村はシアナ計画に協力することに決めました」
村長さんの言葉に、一同ほっと一安心した。
「ただ、一つお願いがあるのですが」
「何でしょう?」
「今のままの生活を望む者もおります。ですので、村人が住んでいる場所は手をつけないでいただきたいのです」
うんうん。魔物の問題がなければ、穏やかな村だもんね。その雰囲気を壊したくないのもよくわかる。
「大丈夫ですよ。施設を作るのは山の麓の部分に集中するでしょうし、今の住居地区を開発禁止にし、移住者も制限しましょう」
通える範囲であれば、別の場所に住居エリアを作ればいいのだ。
協力してくれるという村人たちの希望はちゃんと叶えてあげたい。
「他にも要望があれば言ってください。遠慮はいりません」
「ありがとうございます。これから、よろしくお願いいたします」
村長さんが頭を下げる。
私もつられて頭を下げてしまい、ヴィに頭を叩かれた。
そうでした。貴族が平民に頭を下げるようなことをしてはいけないのだった。
平民に恩があるのであれば、態度ではなく行いによって示さなければいけないのだ。
貴族が平民に軽んじられることがないようとはいえ、日本人だったころの感覚がたまに出る。お願いしたのはこちら側だからなおさらだ。
私たちは頭を下げない分、ジグ村の人たちが望む生活を叶えてあげなければならない。
よし、魔物を受け入れてくれるという、奇特な村人たちのためにも頑張るぞ!
これで、コボルトの到着を待つだけとなったが、ゴブリンたちをどうしよう?
場所だけ伝えても、お馬鹿なあの子たちが無事にたどり着けるとは思えない。
「森鬼がむかえに行ってくれる?」
「…できるだけ、主の側は離れたくないのだが」
私も行くとなると、結局お兄ちゃんと騎士団のみんなもついて行かなければならない。
フォーべからアーセンタに飛び、そこから針霜の森へ。丸一日あれば到着するだろうが、そこからジグ村へ徒歩での移動となるとかなりの日数がかかるだろう。
正直、今の私がそんな旅について行けるとは思えない。面白そうではあるが、体力面から言って、大いに足手まといである。
「ネマには徒歩での旅は無理かな。コボルトたちが到着したら、王都に戻したいしね」
案の定、お兄ちゃんが却下した。
ですよねー。私もそう思います。
「王都は安全だから、シンキが思うような危険はないよ?」
「そうか。ならば、ナノたちに守らせておく」
つまり、ソルの火の精霊とラース君の風の精霊の他に、森鬼の全属性の精霊が私を守ってくれるということか…。私ってば、チートじゃね?
いや、私の力ではないから、チートとは言わないか。
と言うわけで、森鬼がゴブリンたちを迎えに行くことになった。
森鬼曰く、三、四日あれば針霜の森に着くらしい。そこから、ゴブリンたちを連れて旅をするとなると、十日くらいはかかるだろうと。
ならば、私たちは一度王都に戻り、ゴブリンたちが着いたら、またジグ村に来るということで話はまとまった。
森鬼は何も持たず、すぐさま村を出ていった。
ご飯は現地調達するそうだ。
まぁ、森鬼なら多少のことなら自分でどうにかするだろう。精霊たちがついているのだから、大丈夫でしょ。
その夜は、お姉ちゃんと一緒に寝ることになった。
お姉ちゃんに離れていた間に起こったことを話しているうちに、つい睡魔に負けてしまう。
スピカや星伍、陸星の気配が近づいているのがわかったので、明日にでも到着するかもね。
お姉ちゃんのフローラルな香りに包まれて、ぐっすり眠った。
「…ネマ。起きて。ネーマ!」
うーん。あと三十分寝かせて…。
「朝ご飯、食べられちゃうわよ?」
それはダメ!!
お姉ちゃんの一言に、がばりと起き上がる。
今の私には、ご飯は死活問題なのである!
「ふふふ。おはよう、お寝坊さん」
お姉ちゃんの美しい笑顔攻撃をくらいながらも、素早く身支度を整える。
早くご飯に行きたいのに、お姉ちゃんとお姉ちゃんについてきた使用人のシェルが、髪を弄りだした。
「この髪飾り、ネマに似合うと思ったのよ!」
「せっかくなので、編み込みにしましょうか?」
「えぇ。お願いね」
私そっちのけで盛り上がる二人。
ご飯は…?
二人に弄ばれ、やっと髪が整い、食事に向かう。
リビングではすでに食事を始めており、私は慌てて席に着く。
「おはよう、ネマ。その髪飾り、とても似合っているよ」
「おはようございます。おねー様からもらったの!」
お姉ちゃんはとてもセンスがいい。
私の赤茶色の髪でも映える、深緑の花と純白のレースが可愛い髪飾りなのだ!
編み込みも、どうやってやるんだ?ってくらい複雑だけど、それがレースとマッチしていて可憐な仕上がりになっていた。
出来上がって鏡を見せてもらうと、その素晴らしさにテンションが上がったのは言うまでもない。
「そう。じゃあ、僕も王都に戻ったら、ネマに似合うものを贈るよ。うさぎさんとお揃いも可愛いだろうな」
お兄ちゃんの言葉に、お姉ちゃんがしまった!って顔をした。
…兄妹で何を張り合っているんだ?
朝ご飯を堪能したあとは、何もすることがなくなった。
コボルトたちももう少しかかりそうだし。
そうだ!海に行こう!!
お兄ちゃんたちを引き連れて、砂浜の綺麗な海に来た。
波も穏やかで砂浜も白く、ちょっと足を伸ばせば磯もあるという、遊ぶにはもってこいの場所だ。村長さんお勧めなだけある。
早速、靴を脱ぎ、波打ち際へ。
ざばーと打ちつける波に、砂が持っていかれる感覚。わずかに足が埋まり、砂が肌をくすぐる。
このこそばゆい感じがなんとも言えない。
波打ち際ではしゃいでいると、ノックスが何かを持ってきた。
脚でしっかり掴んでいるのは、魚だった。しかも、ノックスより一回り小さいくらいの。ノックスにしたら大物だ。
それを私の目の前に落とし、肩に留まる。
ピュイと鳴いて、褒めてーと頭をすりすりしてくる。
「ノックス、すごいねー」
魚を落とした際に、水飛沫がかかったが、ノックスの可愛さに比べれば些細なことだ。
さて、この魚をどうしようかと悩んでいると、一羽の大きな鳥が飛んできた。
バギャーという、小憎たらしい鳴き声と共に。
以前、干物を横取りしていた、バンなんちゃらだ。正式名称は覚えてない!
ハシビロコウのような悪どい顔が、じっと魚を見ている。
お腹空いているのかな?
「ノックス、このお魚、あの子にあげてもいーい?」
「ピッ」
どうぞとでも言うように、ノックスが返事をした。
私はその魚を持ち、ゆっくりとバンなんちゃらに近づく。
「お腹、すいてるの?」
「バギャッ」
肯定のようだ。
魚を両手で持ち、バンなんちゃらが食べやすいように高く上げる。
バンなんちゃら…もう面倒臭いからバンでいいか。バンは大きな嘴を広げた。
「あーん」
魚を頭の部分から嘴の中に突っ込む。
バンはそのまま、器用に丸呑みしてしまった。
鳥だから仕方ないが、丸呑みだと味なんてわかんないよねぇ。
「よしよし。いい子だねー」
バンの頭をなでなでする。
今まで触った鳥の中では一番固い感触だ。
水鳥であることから、表面の羽は撥水に優れ、中の羽は保温に優れていると思われる。
頭から首、翼のつけ根と移動させて行くと、バンが嫌がる素振りをした。
「ん?ここ、痛いの?」
右の翼をよく観察してみると、風切羽の一部が抜けていることに気がついた。
確か、風切羽にもいくつか種類があるのだが、胴に近い部分の風切羽が歯抜け状態になっている。
なるほど。これでは長距離を飛ぶことはできないな。
風切羽の役割は、主に推進力や揚力を得ることだ。時期がくれば、自然と生え変わるだろうが、換毛はかなりのエネルギーを使うと聞いたことがある。
餌も満足に取れていないこの子が、換毛できるか怪しいな。
しかも、痛みがあるということは、骨か筋肉にもダメージがあるとみた。
お兄ちゃんの治癒魔法で治るだろうが、風切羽はどうかな?
「痛いの、おにー様になおしてもらおう?」
「ギャッ」
おっと。お兄ちゃんを出したら、警戒心まで出てきたぜ。
「だいじょうぶだよ。私もそばにいるからね?」
宥めまくって、ようやく承諾してくれた。
お兄ちゃんを呼び、怪我をしていることを説明した。
「うーん。僕も鳥に治癒魔法をかけるのは初めてだからね。羽が生えるかまでは自信ないな」
ですよねー。
最近のお兄ちゃん、獣医さんみたいになってるけど、基本は人に対してしか使わないもんね。
とりあえず、お兄ちゃんが治癒魔法をかけるときに、女神様にこの子の羽が生えますようにと祈っておく。
体調が万全であれば、水鳥のこの子は素晴らしい羽毛の持ち主に違いないからだ!
地球でもガチョウやアヒルの羽毛は布団に使われるくらいふわふわしている。
ガチョウよりも一回り大きいバンであれば、より素晴らしいダウンを持っているだろう。
女神様よ!もふもふ好きなら、この子にふわふわを与えたまえ!!
「バギャーッ」
どうやら、治癒魔法をかけ終わったみたいだ。
バンの目には生気が戻ったように見える。
助けてくれたのがお兄ちゃんだと、ちゃんと理解しているのか、バンはお兄ちゃんの足にすりすりしている。
お兄ちゃんは大きな鳥に懐かれて、やや困惑気味だが、大きな動物が懐いてくる姿っていいよね!
さてさて、風切羽はどうなったかな?
ゆっくりとバンの翼を広げると、風切羽は見事に復活していた。
お兄ちゃん、さすがである。
他の部分はどうだろうか?
お目当のダウン。胸の部分を触ってみると、ふわっふわである。
これですよ、これ!!
密集した綿毛が、手のひらを包み込む。バンの体温で温かく、新雪のように柔らかい。
翼の内側や胴体の下にある羽は、サラッとしつつも弾力もあり、羽をたどるとふわっとなる。
これが、フェザーのつけ根部分にある綿毛のようなものか。
ダウンほどのふわふわ感はないにしろ、指先をくすぐる感じがなんとも言えない。
これで羽毛布団作ったら最高なんだろうな…。可哀想だからやらないけど。
でも、肌触りと言えば、ナイトアウルに勝る鳥はいまだにいない。
ナイトアウルの羽毛はまさしく極上だ。
それを上回る存在がいるのか?可能性としては、鳥タイプの聖獣くらいかもしれない。
「これで、なかまにも会えるね!」
時期としては多少ずれてはいるが、今から渡れば仲間の群れに合流はできるだろう。
「バギャーバギャーッ!」
私の言葉に激しく拒否するバン。
…なんか嫌な予感がする。
「わたらないの?」
「ギャッ」
「ネマについて行きたいのかもね」
お兄ちゃんが言うと、それを肯定するようにバンがすりすりしてきた。
「さすがに、大きいとむりかも?」
「せっかくネマに懐いているのだから、お家に連れていったらどうかしら?大きな池もあるから、飼うことはできるでしょう」
お姉ちゃんの言う通り、我が家には池がいくつかある。しかも、渡り鳥たちの憩いの場になっていたりもする。
今さら、一羽増えたところでどうってことないとは思う。
「どうやってつれてかえるの?」
「一緒に転移魔法で帰っても問題はないわよ」
そうなのか。転移魔法は動物もOKなのか。
「本当にいっしょに来る?」
「バギャー!」
というわけで、バンはお持ち帰りすることになった。
鳥マニアの庭師が喜んで世話をしてくれるだろう。飼い主として、私の仕事が奪われないことを祈ろう。
それにしても、ネマと愉快な仲間たちが自重しない(笑)
バンドゥフォルヴォステを飼うとか、初耳ですよ?