王宮に行くことになりました。
お母さんがお仕事で王宮に行かなければらならないそうです。でも、お家にはお父さんも仕事でいないし、お兄ちゃんとお姉ちゃんは学校でいない。
ちゃんとお留守番できるよって訴えたけど、受け入れてもらえなかったよ。
この前、ディーの目盗んで池に行って落っこちたのがいけなかったか。
一人にしたら何しでかすかわからん、みたいな扱いになってるな。
ということで、お母さんと王宮にお出かけすることになりました。
今回ディーはお留守番。王宮にペットはダメなんだって。
あ、当たり前か。
「ネマ、お母さんがお仕事してる間、いい子にできる?」
「あい!」
もちろん。お母さんの邪魔はしないよ!
馬車で向かった王宮はでかかった。んで、すっごくキラキラしてますよ!
王様とか住んでるし、内政機関とかもあるから、国の象徴として派手なんだろうね。
お母さんが仕事の間、私は王宮の一角にある宮廷魔術師の塔の部屋に放置プレイです。
ちぇっ、すっごい魔法をこの目で見れると思ったのにな。
あまりにも暇すぎるので、窓開けて鳥さん呼びました。
この羽毛の感触タマラン。
鳥さんたちも気持ち良さそうに目を細めてる。カワユス!!
そういえば、ここ一階なんだよね。
お外出たいなぁ。この庭のだけでも散策したいな。
………ごめんよ、ママン。
この部屋の周辺だけだから、許しておくれ。
部屋にある椅子を足台にして、窓枠を跳び越える。
ボテッ―――
着地失敗。
いーたーいー!!
でも我慢。ここで泣いたらバレてしまう。
鳥さんたちの案内で散策開始。
リスに似てるがミミが垂れてるポテ(動物図鑑で名前が判明)や小さい山猫みたいなリアとかいっぱい動物がいた。
私のことに気づいた子たちは、警戒もせず近寄ってきてなでなでさせてくれる。
動物たちの毛並みを堪能していると、みんなが一斉に逃げてしまった。
どうしたんだろう?
人でも来たのか??
周りを見回すと、あっちの世界ではかなりレアな動物がいた。
キタコレーーー!!
白虎だよ!白虎っ!!
何かあっちのサイズよりでかすぎるけど、レア猛獣キターーー!
もうすでにターゲットロックオン!
触りたくて、もふもふしたくてジッとなんかしてられない。
異様な気配を察知したのか、白虎が私を認識した。
そしたらのっそのっそとこちらに向かってくるではないかっ!
触ってもいいんですね?
いいともー!!
手が届く範囲まで来てくれた白虎は、フンフンと私の匂いを嗅ぐと、ベロンと顔を舐められた。
遠慮なく、白虎の首にしがみついてギューッとね。
うっは~。ナニコレ!!
固いかと思いきや、さっらさらのフワフワ。
ちょー気持ちいいんですけど!!
上質の毛皮をたんまりと堪能して、白虎さんも私のことを嫌がらず、ちゃんと相手してくれた。
白虎さんと仲良くなると、お庭を案内してくれるというので、背中に乗って一緒にお散歩しました。まる。
………あっれー?
ココドコ??
何かよくわかんないとこに来ちゃったぞ。
うー、お母さんに見つかったら、確実に説教コースだな。
見つかる前にかーえろっ。
「ラース、何を乗せてる?」
うをっと、ビックリしたぁ。
人がいたよ。
声がした方を見ると、お兄ちゃんに負けず劣らずの美少年がイター!
「ラースは大人しいが猛獣だ。危ないから降りろ」
えー、やだー。
と愚図ってたら、強行されました。
美少年に抱っこ…。
お兄ちゃんで耐性はついてるが、恥ずかしい!
この美少年、まず目が行くのが瞳だ。円な瞳は紫水晶の如く、目の輪郭は綺麗なアーモンド形。
目力ハンパねぇです!
髪は癖っ毛がいい感じの無造作ヘアーに決めていて、藍色の色合いといい、柔らかそうな髪質といい、触ってみたくなる。
そして、各顔のパーツが左右対称なこと!シンメトリーであればある程美しいって本当だったんだね。
つか、なおさら恥ずかしいわ!!
「だっこやっ」
おーろーせー!
ジタバタと藻掻いていると、美少年は面白そうに笑ってやがりますよ。
この鬼畜がっ!!
「やーっ!」
尚も拒否してやると、ラースと呼ばれた白虎が助けてくれた。
助かったー。
白虎に咥えられ、地面に降りると、癒しを求めて白虎にくっつく。
白虎もさりげなく美少年との間に立ってくれた。
「俺以外に懐くなんて珍しいな」
あぁ、白虎のご主人様でしたか。
「で、ガキがどうしてこんな所にいる?親はどうした?」
ここってどこよ。
王宮なんてわかんないよ。
「おかあしゃんはしゅごとなのー」
くそぅ…呂律が!
おのれ鬼め悪魔め!顔は笑顔でも、目が馬鹿にしてるー!!
「名前は?」
「ネふぇルてぃま・オしゅふぇでしゅ」
うわーん、噛んだー!
自分の名前噛んだー!!
あんだけ練習したのにぃぃ。
「オスフェ公爵家の者か…来い」
って、戻らないとお母さんに怒られるぅ。
おい、こっちの意見はシカトかいっ!
白虎のラース君が再び背中に乗せてくれたけど、行きたくなーい!
美少年、どんどん王宮の奥に向かってるようだがいいのだろうか?
そして、なんか無駄に豪華そうな部屋の扉の前で止まったけど…。
警備っぽい兵士が二人扉に張り付いているけど…。
なんか恐いんですけどーー!!
扉を開けたら、書斎っぽかった。
扉は豪華だけど、中普通。つか、本棚と机しかないね。
そういえば、ラース君入っちゃっていいの?
そっかー、いいのか。
「どうした、ヴィル?その子供は?」
机に座ってるおじさんが尋ねた。
美少年、ヴィルっていうのか…ん?
どっかで聞いたような??
「オスフェ公爵、迷子のようだったので連れてきた」
迷子じゃないやい!ちゃんと戻れたもん!
…はえ??
「ネマっ!」
あっれー?
なんでパパンがいるの?
「庭でラースと遊んでいたので保護した」
「「はぁ??」」
おじさんとパパンの声がハモった。
んー、なんかよくわかんないけど、パパンに押し付けとくか。
「おとーしゃん」
ラースから降りて、パパンに抱っこをねだる。
「ネマっ」
ギューッとされました。
パパン、顔が崩れてるよ!残念なイケメンになってるよ!
「どうしてここにいるんだい?」
ココがどのかは知らないけどさ。
「おかあしゃんといっちょなのー。しとりでさみちかったら、ラーしゅくんがあしょんでくえたのー」
笑顔で答えてやった。パパンならこれで叱れまい。
「淋しかったか。ごめんな?」
優しいパパンは大好きです。
「殿下、ありがとうございます」
ちょっ!!
今なんつった!この鬼畜のこと、なんて呼んだパパンよ!!
聞き間違いに違いない!!
「ネマも殿下にお礼を言いなさい」
死亡フラグ立った!!
殿下ってアレですよね?俗にいうオウジサマってやつですね??
うわぁ、イーヤーダー。
顔はいいけど性格悪しって………ある意味これもテンプレか?
「…ありあとーごじゃいまちゅ」
パパンから降りて、ちゃんとお辞儀も付けてやったぜ。
呂律が怪しいのは愛嬌ってことにしとけ。
お辞儀やめたら、頭わっしゃわっしゃされた。
首痛す…。
「やーなの」
とりあえず、パパンの側に逃げておこう。
「末の娘か?」
机のおじさんが話しかけてきた。
てかさ、公爵のお父さんがいて、王子様がいるってことは、おじさん王様なんじゃね?
パパンの上司だね。ちゃんと挨拶しとかないと、パパンの顔に泥塗っちゃうね。
「ネふぇルてぃマ・オスふぇでしゅ。さんしゃいにないました」
よーし!
発音は怪しいが、噛まずに言えたどぉ!!
「お利口さんだね。わたしはガルディー・ラス・ガシェ。この国の王様をやっている」
ですよね。
王子と同じ、目力ハンパない紫水晶ですもんね。
パパンの好感度上げるために、一丁ヤッとくか。
「あい、おーちゃま」
にっこりスマイル¥0だ。
もふもふには劣るが、幼児の笑顔も侮れないだろ。
うんうん。王様も笑顔を返してくれた。
…パパンの顔が気持ち悪いのはどうしたらいいんだろうか?
結局、お父さんとお母さんと一緒に帰った。
もちろん、お母さんにはメタクソ怒られましたよ。
なぜかパパンも一緒に。
ほんと、お母さんの説教は精神にすっげー打撃くらうから、もう勘弁。
ディーは新しい友達ができて良かったねって言ってくれたよ。
えっ?
あの鬼畜のことじゃないよ!ラース君のことだよ!!