保護者面談?
本日、二回目の更新です。
第一回ラーシア大陸主要首脳会議はだいぶ長引いているようで、パパンとお兄ちゃんは夕食の時間になっても帰ってこなかった。
私はというと、ヴィの言質を以てしても、パウルのおやつ制限を解除することができず、その反動で夕食を食べ過ぎて早々に寝てしまった。
なので、パパンに会えたのは朝食のときだ。
「おとう様、ちゃんと約束を守ってくれた?」
「当たり前じゃないか!怒らなかったし、魔法も使っていないよ」
パパンは自信満々な様子。
お兄ちゃんに確認してみるとパパンの言葉を肯定し、格好よかったとまで言う。
息子に格好いいと言われて、パパンはさらに上機嫌になった。
「精霊さん、おとう様は昨日の会議で約束を守ってくれた?」
そこら辺にいるであろう精霊に問いかける。
精霊を見聞きできるお兄ちゃんが笑ったので、何か面白いことでも言っているのかな?
「時折怖い顔をしていたが、怒ったり、魔法を使ったりはなかったそうだ」
森鬼が通訳してくれたけど、面白い要素は少しもない。
「他には何か言ってた?」
「ん?聖獣が一番格好よかったと言っているな。一番格好いい聖獣はどれかで喧嘩しているぞ」
一番格好いい聖獣!?
それは確かに喧嘩になってもしょうがない。それぞれ推しが違うようだからね。
お兄ちゃんが笑っていたのはこれかな?ディーを推す精霊も多いだろうし。
「ひとまず、精霊さんは達成したことにする。へいかとヴィは……」
「ネマ、食事のあとになさい」
ママンに言われて、すでに朝食が配膳されていることに気づく。
昨日の夕食をお腹いっぱいに食べたのに、料理の美味しそうな匂いにお腹が鳴った。
今日の朝食は、パパンのリクエストでガシェ王国風の料理らしい。
郷土料理とかじゃなくて、あくまで風なのは、我が家の料理人たちの創作料理だからだ。
なので、知らない料理ばかり出てくる。
オレンジ色の果物と白い……魚の身かな?の薄くスライスされたものが交互に並べられていて、見た目は華やかだ。
上にかかっている粉は、乾燥した香草だって。
最初は別々に食べてみた。
オレンジ色の果物は甘くて、どっかで食べたことがある気がする。
白い方はコリコリ食感で、魚じゃなかった。サザエやアワビに似た食感なので、たぶん貝だと思われる。
味は……なんか薄い?わさび醤油が欲しくなるね。
二つ一緒に食べてみても、異なる食感を同時に楽しめるだけで、味はほとんど果物の味だった。
「ネマのお口には合わなかったかな?」
私の微妙な反応を見たパパンが聞いてくる。
「別々に食べるのは美味しいよ」
素直に答えたら、材料の正体を教えてくれた。
オレンジ色の果物は、あの皮がめっちゃ渋くて果肉は甘い、柿もどきだったよ。
貝っぽいのは、ジグ村の近海で漁れたトトスらしい。あの岩みたいに超でっかく育つ貝だ。
そういえば、ジグ村の人が美味しいって言ってたような?
次は、ガシェ王国の朝食の定番といえばコレ!なキッシュみたいなタルトだけど、中身の分量、間違ってない?
小さく角切りにされた野菜が卵生地より多い気がする。
これ、いつものキッシュもどきのように食べたら、野菜がポロポロ落ちるんじゃ……。
小さく切って、フォークの腹に乗せるしかない!
「ほら、お口を開けて」
キッシュもどきにナイフを入れようとしたとき、口元に香ばしいお肉のにおいがするものを差し出される。
パパンに促されというよりは、においに釣られてそれを頬張る。中身はキッシュもどきだった!
「おいしー!」
お肉の正体はペパロニみたいに香辛料が入ったハムで、魔法で炙ってあるのだろう。口から鼻に、お肉のいいにおいが通っていく。
咀嚼すると、卵生地の柔らかさや野菜のほくほく感が伝わってきた。
っていうか、卵にハムとかの加工肉を合わせると、なんでこんなに美味しいんだろうね?
ベーコンエッグにハムエッグ。バターたっぷりでも醤油でも、トーストに載せても美味い!
キッシュもどきはパパンに食べさせてもらった方がいいと判断し、次の一口をおねだりする。
お兄ちゃんもお姉ちゃんにお願いして、ペパロニもどきを巻いたやつを炙ってもらっている。
あとはスープにパン、デザートまで平らげて、朝から満足!
食休みしながら、精霊を通して陛下にパパンのことを聞かせてもらう。
「オスフェ公はよくやっていたと言っていると」
森鬼から伝えられた陛下の言葉で、ようやく安心した。
陛下がああ言うなら、失礼にあたることはなかったってことだから。
「よし!最後にヴィの意見も聞こう!」
精霊によると、ヴィは宮殿の自分の部屋にいるそうなので、このまま突撃するべし!
部屋を出るとき、ママンが午後には戻るようにと言ってきた。
それに元気よく返事して、森鬼と一緒にヴィに突撃をかける。
「たのもーっ!」
森鬼にバンッて扉を開けてもらったら、中にいた侍従さんがめっちゃ驚いてた。
私も侍従がいるとは思ってなかったから、誰!?ってなったけど。
「普通に入ってこい」
寝起きなのか、どこか気怠げな様子のヴィ。
「今起きたの?寝坊??あ、ラース君、おはよう」
ヴィに続いて、ラース君がのっそりと顔を出す。
「こっちは深夜まで働いていたんだ。朝くらいゆっくりさせろ」
どうやらヴィは、主要首脳会議のあともいろいろ動き回っていたようだ。
これから朝食を摂るとのことで、だから侍従がいたのかと納得した。
「食べながらでいいから、昨日のおとう様の様子を教えてよ」
ヴィは少し間を置いて、ニヤリと笑った。
悪どい顔だなぁ……。
「来い」
ガシェ王国の様式と違うこともあって、ヴィの部屋を観察しながらついていく。
食堂は私の部屋の方が広いのは、二人部屋だからかな?
「それで、昨日のデールラントの様子だが……」
食事するヴィの隣に座って話を聞く。
「ヘリオスの処分については、明らかに顔に出ていたな。奴の向かいに座っていた神官の顔色が悪くなってたぞ」
顔に出るくらいならセーフだよね?
「お前との約束を守ると、歯を食いしばって耐えていた。デールラントの苦しむ顔が見られて、俺は楽しかったがな」
本当にいい笑顔で、サラッと鬼畜なことを言いやがったよ。
「そんなにおとう様が納得のいかない処分だったの?」
「陛下がお伝えするだろうから、俺から言うわけにはいかない。もう少し我慢していろ」
私の気を逸らすためか、ヴィは朝食の果物を私の口に突っ込んできた。
お腹いっぱいだが、好物のペシェだったので黙って食べる。
やっぱりペシェは美味しい!
それからラース君と少し遊んだあと、仕事があるからといってヴィに放り出された。
ママンから早く戻るよう言われていることもあり、素直に自分の部屋に戻る。
「おかえりなさいませ、ネマお嬢様。旦那様と奥様がお待ちです」
パウルにそう言われて首を傾げる。
朝食のあと、パパンは自分の客室に戻ったので、仕事をしにいったと思ったのに。
パパンとママンはリビングではなく、なぜか応接室にいた。
「ネマ、少し込み入った話をしよう」
パパンの真剣な表情に、ビビりながら向かいの席に座る。
私、怒られるようなことしたっけ?心当たりしかない!!
どの件について怒られるのかとビクビクしていたら、ママンが苦笑しながら言った。
「これからのことを話すのよ。ネマの意見も聞いておかないといけないでしょう?」
これからのこと……まさか!?
「……帰るの?」
「あぁ。ルノハークは壊滅状態だし、ネマを狙っていた聖主ヘリオスも捕まえた。もう安全だと思っていいだろう」
パパンは安全だと言いながらも、悔しさが隠しきれないでいる。
本当にヘリオス伯爵の処分に納得がいってないんだな。
「カーナは学術殿での学習が中途半端になるからと、一巡ほどこちらに残ると言ってきたわ」
お姉ちゃんらしいね。
今まで私のこととか、オスフェ家の私設魔術研究所とか、やることがたくさんあって大変だったと思う。
これを機に、思いっきり勉強したいんだろうな。
「それで、パウルとシェルはこのままカーナについてもらおうと思っている」
パウルまで!?
スーパーマルチな使用人であるパウルがいなくなったら、痒いところに手が届かなくなるではないか!!
「ネマはどうしたい?屋敷に帰るのが一番望ましいが、こちらに残るのであれば、私から皇帝陛下にお願いすることもできる」
なんという究極の二択!
こっちでダオとマーリエと遊び暮らすのも楽しそうだけど、お家に帰ってのんびりもふもふライフも絶対楽しい!
ぐぬぬぬ……どっちを選ぶか……うーん。
「ガシェ王国、ライナス帝国、どちらを選ぶにしろ、入学する準備は進めていますからね」
あ、学校……。そんなのもあったな。
でも、この成長していない体で入学して平気?いじめられそうなんだけど。
それなら、王立学院の方がまだいいのかな?さすがに自国の公爵令嬢に喧嘩吹っかける人はいないでしょ。
明るみになったら、パパンが一族郎党滅ぼしそうだし。
「こんなことは言いたくなかったが……国に帰れば、ラース殿にいつでも会える。……くっ」
パパンの父親としての矜持か、私の好きなもので釣るようなことはしたくなかったのだろう。
ラース君に嫉妬しているとかはないはず。たぶん。
でも、ラース君に毎日会えるのはありだな。
「仲良くなったダオルーグ殿下方や聖獣様方と離れがたい気持ちもわかるの。でも、ディーが元の大きさに戻れば、ライナス帝国に遊びにいくこともできるかもしれないわよ?」
ママンは凄く魅力的な提案をしてくれたが、隣のパパンはめちゃくちゃ反対しているよ?
つか、ママンがいくつか提案をして私を誘惑するんだが、私の悩む姿を見て楽しんでいる……なんてことはないよね??
「駄目だ。絶対に駄目。ディーに乗っていくだなんて、危ないじゃないか!」
「まぁ!デールはディーのことを信用していないのね」
ママンがわざとらしく驚いた表情をした。パパンはそんなことないと言うも、ママンは言葉を続ける。
「ディーが知ったら悲しむわ。それに、ラルフはよくて、ネマは駄目だなんて……ラルフのことを大切にしていないと勘違いされたらどうしましょう?」
パパンは一生懸命に否定するが、ママンはまたもわざとらしい困り顔をして、思わせぶりなため息を吐く。
「私はラルフもカーナもネマも、子供たちのことはみんな愛している!」
熱烈な愛の告白をされたけど、それは十分身に染みて感じているよ。
「なら、ネマがディーに乗ってお出かけしても大丈夫よね?それに、すぐにではないわ。ディーが元の大きさに戻るのには、時間がかかるのでしょう?」
そういえば、ルクス様がそんなことを言っていたな。
って、ルクス様ここにいるんだから、直接聞けばいいじゃん!
「ルクス様、けいやく者がいると早く元の大きさに戻ったりする?」
『ディーは元より蓄えていた力が少なかったからね。他の子たちよりは早く戻るはずだよ』
元の大きさに戻るまでの時間は、世界中に散っている神様の力を吸収する量によるのだとか。それでも二、三巡はかかるらしい。
「ディーに乗れるようになる頃には、ネマも大きくなっているのではないかしら?」
ママンたちにはルクス様の声は聞こえていないのに、会話が成り立っている。
ルクス様の答えを予想してたのかな?
聖獣に乗る練習もするとなると、やっぱりガシェ王国の方が最適だろう。
獣舎にはネコ科の大型動物もいっぱいいるし、練習に付き合ってくれるはず。
結局、私は将来を見据えて、ガシェ王国に帰ることにした。
ディーが元の大きさに戻る前に、私が一人でソルに乗れるようになるかもしれないからね。
「そうだ!ヴィにも確かめてきたけど、おとう様がちゃんと約束を守るためにすごくがんばってたって。ありがとう、おとう様!」
ヴィがパパンの苦しむ姿を面白がっていたことは黙っておこう。
つか、将来的にヴィが王位を継いだあと、まだパパンが宰相を続けている可能はあるよね?
パパン、ヴィにいじめられるんじゃ……。
「ネマ!」
感動してぎゅーぎゅー抱きしめてくるパパン。
パパンの将来がちょっと不安になった。
◆◆◆
パパンとママンの面談を終えたあと、陛下とも面談すると言われた。
パパンとママンも一緒なので、私のことだけではなく、お姉ちゃんのこととかも話すのだろう。
東翼の応接室の一室で待っていると、陛下が一人で入ってきた。
さすがに警衛隊員くらいつけようよ。
ルイさんやアイセさんは性格がアレなので、警衛隊の人たちは大変そうって思ってたけど、これだと陛下のところの警衛隊もだいぶ振り回されていそうだわ。
「時間がないので本題に入るが、その前に一つ。これから話すことについて、名に誓ってもらう必要がある」
陛下は柔らかく笑っているものの、目の奥は鋭いままだ。
どうもパパンを警戒しているようだけど……やっぱりパパン、何かやらかしてた!?
「この場で聞いたことを公言しないと、デールラント・オスフェの名に誓います」
「同じく、セルリア・オスフェの名に誓います」
「はい!ネフェルティマ・オスフェの名に誓います!」
元気よく誓ったところで、陛下に告げられたのはヘリオス伯爵の処分についてだった。
「フランティーナ・ヘリオスは、これまでの伯爵としての貢献を鑑み、毒杯とすることにした」
確か、皇族の命を狙った場合、最高刑が公開処刑で、減刑された場合は非公開の斬首刑、もしくは毒杯というのがライナス帝国の法律だったはず。
我が国でも死刑はあるが、公開処刑はない。たとえ王族殺しであってもだ。
その代わりに、死刑の執行方法が残酷なものになっている。
これは初代国王のギィが考えたものではなく、五代目か六代目の王様が決めたもの。当時は治安の悪化が問題だとかで、刑罰を重くしたために残酷な方法になったらしい。
「ただし、表向きは……だ」
「どういうことでしょうか?」
パパンの苛立ちが伝わってくる。
たぶん、パパンもわかっていたのだろう。陛下が……ライナス帝国がヘリオス伯爵を殺すわけがないと。
「ヘリオスを毒杯で死んだことにし、彼女には他の身分を与え、ある隠れ里に住んでもらうつもりだよ」
やっぱりね。
私でもヘリオス伯爵を殺すのは惜しいと思うもん。
だって、ロスランの生まれ変わりだよ?絶対面白い知識を持っているに違いない!
失われた財宝の在処とか、失われた魔法を蘇らせる方法とか、記録に残らなかった真実とかとか。夢があるってもんじゃないぞ!!
「あれだけのことをしておいて、なんの処罰もなしということであれば、承服いたしかねます」
パパンは怒りからか、魔力が漏れ出ている。
まだ完全ファイヤー状態じゃないので熱くないけど、時間の問題かも……。
「デール、落ちついて」
ママンが冷気を少し放って、パパンの周りの熱気を払う。
「あいつが起こした事件で、亡くなった半数近くが我が国の国民だった。たとえ貧しさから今日明日の命でも、殺される理由にはならない……」
人の血液から魔力を抽出する。魔石を手っ取り早く作る方法らしい。
レニスの貧民街で起こっていた行方不明事件も、ルノハークが魔石を作るために、イクゥ国の奴隷商人と結託して起こしたものだ。
お金に釣られて、我が国の騎士がそれに加担していたという、胸くそ悪い真実も判明した。
パパンは宰相として、領主として、ずっと憂いていた。
もちろん、私を狙ったことに対する怒りはあるだろう。でもそれ以上に、ガシェ王国の国民に手をかけたことにパパンは激怒していたんだ。
浮かれていた自分が恥ずかしい……。
「オスフェ公の怒りも、旅立った者たちの無念も理解しているつもりだ。ヘリオスの処罰は、片脚切断」
陛下が言うには、片脚を切断する痛みと片脚で生きる苦しみ、不便さ、それらすべてが罰だと。
また、片脚の場合、わずかな希望がある。上級の治癒魔法が使える者が誕生するのではないかという希望が。
「この時代に、ロスランの生まれ変わりである者が縁の深いライナス帝国に生まれた。愛し子が作った国に愛し子である者が生まれた。この奇妙な一致がある以上、大聖女の生まれ変わりが、ミルマ国に生まれてないと言い切れるだろうか?」
つまりヘリオス伯爵は、欠損も回復できるという上級の治癒魔法が使える者がいるかもしれないと思っているってこと?
「ルクス様、そんなことあるの?」
『生まれ変わりはクレシオールの権能だから、私にはわからない。ただ、治癒術の本質にたどり着いた者に、大きな加護を与えることはあるだろう』
……よくわからなかったけど、ようはあるってことでいいんだよね?
「その希望が絶たれたとき、ヘリオスは絶望を感じるだろう。旅立った者たちと比べると小さなものかもしれないが、それを知らないまま殺すよりはよいと思わないかい?」
今、すっごくヴィとの血の繋がりを感じた。そして、ロスランとも……。
ヴィの腹黒陰険鬼畜さの大本はここだったのか!
「でも、人はそれを克服できる生き物ですよ?」
テレビを通してだけど、前世ではそういった困難を乗り越えて、日々努力を重ねている人がたくさんいた。
地球での記憶を持つヘリオス伯爵が知らないわけがない。
ヘリオス伯爵は克服する可能性が高いし、それだと罰の意味はないと思う。
そして今度こそ、人間が一番凄いみたいな思想に染まったら……また皇族に害をなそうと企てるかも。
その心配を口にしたら、陛下はさも楽しいとばかりに笑った。
「ネフェルティマ嬢、人は窮地に陥ったとき、果てない絶望を感じたとき、かけがえのない幸福を得たとき、本質から変わることがある。ヘリオスがその機会を活かせないのであれば、私の祖とはいえ、その程度の人物だったということだ」
あ、実は陛下もヘリオス伯爵に激おこだったのか。
自分たち子孫の能力不足だと言って滅ぼそうとしたのだから、先祖として自分たちより優れている姿を見せてみろと。
大口叩いておいて情けない姿を見せたら、今度こそ闇に葬るぞってことであってる?
「なるほど。陛下のお考えは理解できました。陛下が在位しておられる間は奴を御することができるでしょうが、それ以降はどうお考えでいらっしゃいますか?」
ヘリオス伯爵に怒っている者同士で、何か通じ合うものがあるのだろう。
ヘリオス伯爵が死ぬまで……いや、死んでも許さんという気概を感じる。
「どの子が聖獣に選ばれるか次第ではある。エリザやアイセならば、彼女を上手く使えるだろうが、他の子たちでは無理だ。幸い、私は先祖返りで寿命も長い。ヘリオスより先に旅立つことはないよ」
ヘリオス伯爵、骨の髄までしゃぶりつくされそうだなぁ。
つか、テオさんはヘリオス伯爵というかロスランを結構気に入ってたみたいだけど無理なのか。
「陛下を信じましょう。ですが、今の言葉に偽りがあれば、オスフェが奴を消すことをお忘れなく」
ロスランの知識が欲しいからと、ヘリオス伯爵を甘やかしたらタダじゃおかねぇぞっていう脅しですね。
でも、陛下にそんな脅しが利くかな?
「構わない。私に何かあっても、オスフェ家がいてくれれば安心だからね」
予想通り、サラッと流された上に、オスフェ家を保険代わりにされた。
万が一のときに首を突っ込める口実ができたので、落としどころとしては悪くないとパパンも判断したようだ。
「オスフェ家とは長いお付き合いになりそうだね」
陛下がそう告げると、パパンは黙ったまま礼を執る。
長い付き合いは望んでいないが、まぁ受け入れるという意思表示みたい。
「へいか、ルティーさんはどうなるのですか?」
ヘリオス伯爵の処分はわかったけど、ルティーさんはどうなるんだろう?
「彼はひとまず終身刑にするつもりだ」
ルティーさんは取り調べができる状態ではないことと、捜査が長期間にわたるであろうことから、一人くらい残しておこうってなったらしい。
でも、ルティーさんは取り調べできないのに?って聞いたら、それこそ使い方次第だって言われた。
ルティーさんが回復して、ちゃんと証言すればよし。回復しなかったら、回復したように見せかけて、証言を偽造するのに使うと。
「なんで偽造する必要があるのですか?」
「被害者や遺族として補償を受けるには、本当に被害者だったという証拠が必要だ。しかし、必ずしも証拠が残っているとは限らない」
虚偽申請などを弾くために、補償を受けられる基準を設けることになっているらしい。
でも、明らかに被害者だけど、その基準に達していないときに、ルティーさんの証言を使って基準にまで押し上げると。
また、明らかに虚偽申請なのに文句を言う人には、ルティーさんの証言で虚偽だと証明する。
もちろん、ルティーさんが回復して、本当のことを証言するのであれば、その限りではないようだが。
「カーリデュベルは覆ることのない死刑だ」
元総主祭、聖職者の仮面をかぶって、かなり好き勝手やってたとかで、満場一致で死刑が決まったんだって。
人間が一番優れていることを証明するために、獣人の子供をさらって洗脳し、自分のボディーガードにしたとか。信者に対する婦女暴行があったとか。
ヘリオス伯爵のせいで、人格形成が歪んでしまったのかもしれない。
ヘリオス伯爵たちの話題のあとは私のことについてだった。
「そうか、帰ることにしたんだね」
「はい」
陛下は、ダオやユーシェが淋しがると残念そうに告げた。
「だが、いつでも遊びにおいで。輝青宮はネフェルティマ嬢を決して拒むことはない」
陛下は立ち上がると、私を呼んだ。
そして、ユーシェの作った水玉のブローチに触れる。
「これでいいだろう」
水玉は淡い光を放ったと思ったら、一瞬で形を変えた。
ブローチなのは変わりないが、ライナス帝国の紋章の形に変化しているではないか!
「これって……」
「これがあれば、この宮殿はもちろん、ライナス帝国内で困ることはないよ」
そりゃあそうでしょうよ。
ライナス帝国を象徴する青い紋章を使えるのは、皇族以外では限られているからね。
どこに行っても特別待遇されるに違いない。
はっ……つまり、ライナス帝国のどこでもフリーパスということか!!
「本当にいいのですか?」
返せと言われても返したくないんだけど。
「構わないよ。言ったであろう、オスフェ家とは長い付き合いになると」
それならば、ありがたくちょうだいしよう!
これでお姉ちゃんにもいっぱい会いにいけるし、ダオとマーリエとも遊べるね!
「ネフェルティマへのご配慮、感謝いたします」
パパンが謝意を伝える礼を執ったので、私もそれに倣う。
「へいか、ありがとうございます!」




