獣王様の番さんとご対面?
本日、二回目の更新です。
夕食のときに、パパンから獣王様がお会いしたいと言っていると伝えられた。
私も番さんがどうなったのか気になるので、すぐに承諾する。
「ルクス様がいらっしゃるから大丈夫だと思うが、ラルフと一緒に伺うように」
パパンはまだ、獣王様を完全には信用しきれていないようだ。
獣王様は、番さんを利用されたせいでヘリオス伯爵に加担していただけっぽいし、大丈夫だと思うけど念には念を入れてってところかな?
お兄ちゃんが一緒ならディーもいるので、聖獣相手にどうこうできる獣人はいないだろう。
獣王様からのお呼ばれではあるけど、番さんのお見舞いも兼ねてということで、手土産を用意することにした。
鵬族の食性を知らないので、ルクス様に聞いたら、植物性のものならなんでも食べるとのこと。
それならばと、ライナス帝国北部の伝統菓子クレデュールとナッツ飴もどきの詰め合わせを選ぶ。
クレデュールは栄養価の高いクレ草を練り込んであるクッキーで、ナッツ飴もどきはいろんな食べられる植物の種を固めたものだ。
ナッツ飴もどきは種子食性の祖を持つ獣人に大人気らしい。
ルイさんおすすめの、帝都の有名店のお菓子で、どちらも美味しかったよ。クレデュールは油で揚げたか焼いたかのクッキーなので、カロリー爆弾だったけど……。
手土産をお兄ちゃんに持ってもらい、獣王様たちが滞在している別宮に向かう。
別宮の門や周囲を警備している軍人がいるのだが、前より多い。
私たちが来ることは事前に知らされており、顔パスで通れた。
別宮は初めて入るが、元々賓客用の建物なので、中はどこもかしこも煌びやかだ。
内装は宮殿と様式が違っており、どこか異国的な雰囲気がある。
ライナス帝国のどこかの地方の特色を取り入れたのかな?
建物の装飾を見ながら進んでいくと、だいぶ奥まった部屋に案内された。
その部屋の前に人が立っており、見覚えのある顔……いや、もふもふだ。
「あ、キトーさん!」
以前、羽子板で遊んだときに、すんばらしい尻尾で怪我を治してくれた獣人さんだ。
「二の姫様、お待ちいたしておりました」
私を待っていたと!?
獣王様の護衛官であるキトーさんだから、警備のために扉の前に立っているもんだとばかり。
ここで案内してくれた人とキトーさんがバトンタッチする。
「二の姫様がお越しになりました」
キトーさんは扉をノックしたあとそう告げ、中から返事がくる前に扉を開けてしまう。
いいのかな?って思ったけど、そういえばミーレも勝手に入ってきていたことを思い出す。
獣人であれば、部屋の中で返事をしても聞こえるだろうし、獣人が多いイクゥ国ならではの文化なのかもしれない。
キトーさんに続いて部屋の中に入る。
部屋の中も同じように異国的だけど、観葉植物がたくさん置かれているのが目を引いた。
南国っぽいっていうか、アジアンリゾートのホテルみたいな雰囲気だ。
「ネマ嬢、呼びつけて申し訳ない。よく来てくれた」
「こちらこそ、ご招待ありがとうございます。もうご存じだと思いますが、私の兄、ラルフリードもいっしょにおじゃまします」
獣王様は神様降臨の遺跡にいたので、お兄ちゃんに会っているかもしれないけど、念のため紹介しておく。
「先日の協議では我が国の者が失礼した。申し訳ない」
獣王様は謝罪すると、改めて、お兄ちゃんを歓迎する旨を述べた。
お兄ちゃんが落ち込んでいた原因は、イクゥ国の人か!?
もし会ったら、そのときは……。
「ほら、ネマ。そんな顔しないで」
お兄ちゃんは困ったような笑みを浮かべて、私に手土産を差し出す。
無意識にパパン譲りの悪どい顔をしていたようだ。
「これ、番さんが元気になったら、いっしょにお召し上がりください」
持ってきた手土産を獣王様に渡す。
元気になったらとつけたのは、油で揚げたクッキーが胃もたれするかもしれないと思ったからだ。
油でギトギトしているとかじゃないんだけど、油を吸っているぶん、やっぱり重たいんだよね。それでも味は美味しいんだけどさ。
「ありがとう」
獣王様は手土産を侍女に預けると、私たちを席へと促す。
「今日来てもらったのは他でもない。ネマ嬢に正式にお礼を述べたくて、失礼を承知ながら来ていただいた」
本当は獣王様が出向きたかったって言っているけど、番さんから離れられる状態ではないらしい。
「お礼は先日いただいたので大丈夫ですよ?」
「それでは私の気がすまない。こちらを受け取ってくれ」
獣王様に何やら紙を渡された。
紙には、金額とか、なんちゃら宮とか、なんとか鉱山とか、よくわからないものが書かれている。
よくわからなかったので、お兄ちゃんにも見てもらった。
「これは……もしかして、ネマへの恩賜目録でしょうか?」
「そうだ」
え?なんて??
……これに書かれているものを獣王様がくれるってこと!?
「とは言っても、イクゥ国内にあるものを管理するのは大変だろう。離宮も鉱山も所有権はネマ嬢に譲渡するが、管理などは引き続きこちらで行ってもよい。別荘と小遣いができたと、気軽に受け取って欲しい」
いやいやいや!いくら貴族でも、離宮と鉱山を別荘とお小遣い扱いはしないでしょ!全然気軽じゃないからね!!
「失礼ですが、これらのものは、これからのイクゥ国に必要になるものではないのですか?」
お兄ちゃんは目録が書かれた紙をテーブルの上に置いた。
「これは、私の私財と一部の臣下から献上されたものだ。ネマ嬢に与えても問題はない」
獣王様の言葉に、おや?と首を傾げる。
お兄ちゃんは、目録にあるものがイクゥ国に必要なものだと言う。
でも、獣王様は個人の持ち物だから大丈夫だと。
つまり、イクゥ国所有のものだったら、問題ありってことだよね?
その問題が何かってことだけど……わからん!
通例だと、国の要人を助けたりしたら、国から褒賞が渡される。要人の身分が高ければ高いほど、価値の高い褒賞が与えられるし、国王から直接下賜されることもある。
これは、感謝の面もあるけれど、本当の目的は見栄や面目を守るための意味合いが強い。
助けられた要人が直接お礼や褒賞を与えたから、国は何もしなくてもよい、というわけにはいかないのだ。
あそこの国は要人を助けてもらったのに褒賞も与えないケチ臭い国、貧乏な国だと思われないためにも必要なこと。
それを考えると、イクゥ国は見栄を張る余裕もないということになる。
旱魃や水害といった災害があったから、国庫がすっからかんなのかもしれないけど……。
だったらなおさら、獣王様や臣下の人たちが身銭を切るのはおかしくない。
なんでお兄ちゃんは必要だと言ったんだろうね?
考えれば考えるほどわからなくなったので、あとでお兄ちゃんに聞くとしよう。
「そうですか。ですが、今すぐ受け取ることはできません。当主の判断を仰ぎますので、恩賜の件は当主よりご連絡させていただきたく存じます」
「元よりそのつもりだ。ネマ嬢に不要なものを押しつけることはしない」
よかった!離宮や鉱山をもらっても困るもの。
パパンにお願いして断ってもらおうっと。
その代わり、少し多めにお金をもらって、イクゥ国の病院や孤児院に寄付するとか、人道的支援に使えばオスフェ家の株も上がるはず!
そして、お兄ちゃんを困らせた奴をぎゃふんと言わせるのだ!!
「ところで、番さんのお加減はよくないのですか?」
先ほど、番さんから離れられない状態だと言っていたので、よほど悪いのかもしれないと少し不安だった。
ヘリオス伯爵に囚われていたときに偶然見かけたが、怪我はなかったようだけど、ずっとボーッとしていたので心の病いの可能性もある。
というか、あんなところに閉じ込められて、片割れである獣王様と引き離されていたんじゃ、そりゃあ病むよね。
「ハオランは……」
獣王様は声を震わせ、俯いてしまう。
聞いてはまずいことを聞いてしまったのかと、私の内心は冷や汗ダラダラ状態だ。
そして、私が次の言葉を出しあぐねいている間に、獣王様の方が先に口を開いた。
「言葉で説明するより、見てもらった方が早いだろう」
獣王様は、私たちが入ってきた扉とは別の扉へと向かう。
扉の位置的に、隣の部屋と繋がっているっぽいな。
番さんのことが気になるので、お兄ちゃんの手を引いて獣王様についていく。
隣の部屋も先ほどの部屋と同じように、異国風の装飾で、観葉植物がたくさんあった。
そして、またもや見知った顔の獣人を発見する。
忘れもしない、熊族のオッサンさん!
名前のインパクトが凄くて、キトーさんよりはっきりと覚えている。
「オッサンさんもいらしたんですね」
「二の姫様に覚えていただけているとは光栄です」
オッサンさんはぺこりと頭を下げた。
そのときに、少しだけお耳がピコピコ動いていたのを見逃さなかったぞ!
「オッサン、だれかきた?」
オッサンさんの後ろの方から、なんとも可愛らしい声が聞こえてきた。
「ハオラン……」
獣王様が番さんと思しき名前を呟く。
その声がどこか淋しそうなのは気のせいじゃない。
獣王様の視線の先には、見覚えのある卵型の椅子と、色鮮やかな大きな翼があった。
「ハオラン様、このお方は……」
オッサンさんは、私たちをどう紹介していいものかわからないのか言葉を詰まらせる。
彼は言葉を続けることなく、卵型の椅子から翼の持ち主を下ろし、背もたれのない椅子に座らせた。
獣王様とまったく同じ色合いを持つ少年は、あどけなさが残る顔つきをしている。
それと、ガリガリとまではいかないにしろ痩せすぎではあった。
栄養不足だからなのか、外見は十四、十五歳くらいに見える。
獣王様と並ぶと、歳の離れた姉弟にしか見えないが、獣王様が番だと呼んでいるので、番さんで間違いないだろう。
お兄ちゃんに視線で合図を送ると、お兄ちゃんはすぐに理解して頷く。
「お会いできて光栄です。私はガシェ王国オスフェ公爵家が嫡男、ラルフリード・オスフェと申します。そして、こちらが妹のネフェルティマです」
「はじめまして、次女のネフェルティマです」
私たちが自己紹介すると、番さんは少し怯えた様子を見せた。
「お二方は、聖獣の契約者でもあらせられます」
「えっ!?」
先ほどの怯えた様子はどこへやら、番さんは驚いた顔をして私たちを見つめる。
改めて思うけど、兄妹で契約者っていうのもかなり珍しい事例なんだろうね。
ライナス帝国にいると失念しがちだけど。
「聖獣様!どこ!?」
番さんはキョロキョロと周りを見回す。
聖獣を見られると興奮しているのか、オッサンさんが宥める声も聞こえていないみたいだ。
――みぎゃぅ。
お兄ちゃんの足元で、ちょこんとお座りしていたディーが鳴いた。
番さんがすぐに気づけなかったのが不服なのか、ちょっと不機嫌そうな鳴き方だ。
まぁ、聖獣は大きいイメージがあるからね。縮んでいるなんて、あの場に居合わせない限り、誰も思わないよ。
お兄ちゃんはディーを抱えて、番さんによく見えるようにした。
「光の聖獣で、名前はディーと申します」
「光の……」
番さんはとにかくディーをガン見する。
私なら触ってしまう場面だが、やはり獣人。聖獣は敬うべき存在なので、決して手を伸ばそうとはしない。
ディーはというと、番さんからガン見されるのを嫌がり、お兄ちゃんの肩によじ登ると背中に移って、トンッと床に着地して逃げた。
「きみの聖獣様は?どこ?」
やっぱり、しゃべり方や仕草が見た目より幼い感じがする。
「私は北の山脈に住む炎竜と契約しているので、ここにはいないんです」
「えんりゅう様と……すごい……」
番さんだけでなく、オッサンさんも一緒に驚いているが、獣王様に教えてもらわなかったのかな?
「そうだ!ネフェ……るてぃま様はぼくとおなじくらいだよね?リーファって子にあわなかった?」
「んんん??」
番さんが放った内容を理解できないでいると、番さんはリーファはね……と、探しているであろう子の特徴を並べ立てる。
私より少しお姉さんで、番さんと同じ色の翼を持っていて、とても可愛い女の子だと。
いや、それ……獣王様のことだよね?年齢は違うけども。
どういうことだと獣王様を見やれば、獣王様は目元を手で覆っていた。
ももも、もしかして泣いていらっしゃる!?
混乱を極めたようなこの状況、どうしたらいいんだ!!
「ネマ、落ち着いて」
お兄ちゃんに頭を撫でられて、ハッとお兄ちゃんを見上げる。
「ハオラン様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
お兄ちゃんは片膝をついて、椅子に座っている番さんと視線を合わせた。
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。妹と同じくらいと仰っていましたが、ハオラン様はおいくつになられたのですか?」
お兄ちゃんに何か考えがあるのだろう。二人のやり取りを見守る。
「ぼくもリーファも六さいだよ」
……うぇぇぇ!?
獣人なので、成長が早い可能性もなきにしもあらずだけど、さすがに獣王様が六歳なわけないから、番さんの言うリーファと獣王様はやっぱり別人だったりする??
『……あの子は時を止めたようだね』
「とっ……」
ルクス様に問い返そうとして、ちょっとだけ声が出た。
すぐに止めたからバレてないと思う……セーフ!
ルクス様、さっきの発言めっちゃ気になるんですけど!ここで聞き返せないのが歯がゆい!!
「いつもリーファ様と遊ばれているのですか?」
「そうだよ。うたをうたったり、お空でおいかけあったり、たのしいよ!」
空で追いかけっこって、ナニソレ楽しそう……じゃなくて。
六歳のときにはもう空を飛んでったってこと!?
鳥の獣人は種族によってばらつきはあるものの、五歳から十歳までには飛ぶことを覚えるらしい。
宝探しゲームで仲良くなった鸇族のユアン君が言っていた。
猛禽類のような、肉食性の鳥類の特性がある種族は飛べるようになるのも早いのだとか。
とはいえ、やっぱり六歳で追いかけっこができるほど飛べるようになっているのは凄い!
「最近のことは覚えておいででしょうか?」
「おぼえてないけど、さらわれたんだよね?」
お兄ちゃんが番さんから聞き出している内容で、ルクス様が言っていた『時を止めた』という意味が薄々わかってきた。
「はい、妹もさらわれまして。ネマを探しているときに、ハオラン様を見つけました」
「……もしかして、リーファもさらわれたの?だからぼくにあいにこれないの?」
今にも泣き出しそうな番さんを見て、獣王様とオッサンさんが動揺するのがわかる。
それくらい、悲愴感のある、悲しげな声だったからだ。
「リーファ様はご無事ですよ。今は、ハオラン様が元気になることが大事ですから、お会いしたいのを我慢していらっしゃいます」
「ほんと?」
「本当です」
はっきりと断言するお兄ちゃん。
「お元気になられたら、妹とも遊んであげてください」
お兄ちゃんにそう言われて、番さんはうるうるした目で私を見る。
本当に遊んでくれるなら願ったり叶ったりなので、私は小さく手を振って、仲良くしたいことをアピールした。
それにしてもお兄ちゃんは、私とお姉ちゃんの兄をやっているだけあって、年下の扱いが上手いな。
「うん……早く元気になる」
「それでは、ハオラン様が少しでも早くお元気になられるよう、治癒魔法をかけさせていただいてもよろしいですか?」
「ラルフリード様はちゆじゅつしなの?」
お兄ちゃんは肯定すると、私に一緒に祈るよう言ってきた。
もし、番さんの言動が心の病いから来るものだったら……。ルティーさんとは違い、番さんは完全なる被害者だから、女神様が慈悲を与えてくれるかもしれない!
お兄ちゃんが詠唱すると同時に、女神様に届くよう、めっちゃ祈った。
女神様!ここに可哀想なふわふわ……じゃなかった、恋人たちがいますよー!!
羽根心地は極上であることを、私が保証しますからっ!!
これまでの経験から、女神様はもふもふと可愛いもの好きな可能性が高い。
だから、美しく触り心地も抜群な翼を持つ鵬族の番が苦しんでいると知れば、女神様なら手を差し伸べるんじゃないかなぁ……たぶん。
いっぱい祈ったけど、目に見える変化はない。
むー、ふわふわアピールが足りなかったのかな?
まぁ、怪我に治癒魔法をかけたときみたいに、一瞬で治るのかどうかもわからないし。
ルティーと一緒に、番さんの回復も毎日祈ってみるか。
番さんが眠くなったところで、最初に通された部屋に戻った。
消沈している獣王様の姿に、こちらも心が痛む。
「ハオラン様の症状は記憶喪失とも違うようですが……」
前世でもそうだったように、こちらの世界でも心の病いの症状は千差万別。
特に犯罪被害に遭った人、冒険者や騎士などの戦闘職で危険な目に遭った人は、心の病いになりやすいと言う。いわゆるPTSDってやつだ。
そういった人たちの中で、記憶喪失はままあることらしい。
つらい記憶を忘れることで心の平穏を保とうとしているが、忘れた記憶と類似した状況に置かれると錯乱することもある。
過去には、錯乱状態に陥った人が周囲にいた人を襲った事件もあったとか。
番さんが記憶喪失なのであれば、今後、そういったことにも注意をしなければならないけど、お兄ちゃんの診断は違うようだ。
「ハオランは……私のことを認識できなくなっている。隣にいても、だ」
獣王様は、番さんの症状を詳しく教えてくれた。
番さんの記憶は六歳頃までのものだが、何者かによってさらわれたことは認識している。
番さんの中では、さらわれたのは数十日程度の感覚であったこと。さらわれた間に何をしていたのかは、ぼんやりとして覚えていないこと。
そして、獣王様の存在を認識していないこと。
声をかけるといることには気づくそうだが、番さんには別の鳥の獣人に見えているらしい。
「こちらの軍医が言うには、統合性を取るために認知を歪めているのだろうということだった。人には稀に起こるのだろう?」
記憶の改竄とかは聞いたことあるけど、目の前にいる人を認識しないなんて……幻覚とかってこと?
……いや、認知症で、自分の子供を見知らぬ他人だと思い込んだりする症状があったわ。
つまり、脳の仕組みが地球と同じかめっちゃ似ているなら、目の前にいる人でも別人と認識することはあるのか。
「獣人に起きるのは、本当に珍しいことだと思います。獣人は人より本能が強いため、心の病いにはかかりにくいので」
へー、そうなのか。
でも確かに、地球産の動物で番う相手に固執する種類はあまり聞かないかも。
他の動物に比べて、鳥類は生涯同じ個体を番にする……いわゆる一夫一妻性の種類は多いけど。ハクチョウとかそうだし。
どちらかといえば、子供を失っても母親がそれを認めない動物の事例の方が多いと思う。
動物に心の病いがないわけではないが、生きて種を残すという、本能の根幹に子孫繁栄がある以上、心は人よりも強いのだろう。
こちらの世界の人間も、地球の人間と比べたらメンタル強いのかもしれないね。
考えてみれば、ほとんどの人が剣や魔法という武器を持っていて、死亡リスクも高いんだし。強くなくちゃ生き残れない……。
「先ほどハオラン様にかけた治癒魔法は、治癒術師以外が行っても効果がある可能性があります」
お兄ちゃんが例の方法を獣王様に教えた。
「それが本当なら……いや、もはや真偽などどうでもいい。ハオランを治せるのであれば、私は一日中祈り続けよう」
獣王様は藁にも縋る思いだろう。
そして、ほんのわずかな希望でもあるなら、最大限の努力をすると、獣王様の目に光が戻った。
女神様、獣王様のお祈りをできれば無視しないでねー!
◆◆◆
自分の部屋に戻って、まずはルクス様にクレームを入れる。
「ルクス様ー!私がルクス様としゃべれないときに、めっちゃ気になること言わないでよ。うっかり話しかけるところだったよ」
『それはすまないね。私も鵬族の子があんなことになっていると思わなくて』
今ならまだ許されるけど、数年後も人前でうっかりルクス様としゃべったりしたら、私イタイ子だから!
今のうちにしっかりと習慣づけしておかなければ!
「それで、獣王様の番さんのことだけど……」
『あの子は自分を守るために、心の時間を止めたんだ』
ルクス様曰く、鵬族は獣王様と番さんの二人しかいない、特別な種族なんだって。
雌雄一組で一つの個体みたいなもので、どちらかが欠けた状態だと正気を失い、早死にするとか。
「なんでそんな恐ろしい仕様になっているの!?」
『獣人たちが王が欲しいと言ったからかな?獣人を統べるには相応の強さが必要だけど、強すぎてもいけない。少し欠点がある方がいいと思ってね』
確かに獣王様の歌はチートだと思う。
それなら、もう少し弱くすればいいのにって言ったら、祖となる動物の特性だから無理だったって。
『創造の神を刺激するには、それこそ相応の力がないといけないだろう?』
つまり、魔物を凶暴化させたというあの歌は本来、神様の目覚ましみたいなものってことなのか?じゃあ、獣王様の歌は子守歌??
「ルクス様……いや、神様。その祖となる動物の飼い主だった神様が責任を持って、女神様に交渉しようか」
『……いや、治すかどうかはあの子しだい……』
「だから、交渉。ね?」
神様だって可愛がっていた動物の子孫が不憫な目に遭って可哀想だって思うよね?
一緒に、特に神様は必死に女神様にお祈りしようね!
今年一年、もふなでを応援してくださり、ありがとうございました!
残りわずかではございますが、楽しい年越しをお過ごしくださいませ。




