ダオの提案。
本日一回目の更新です。
「ネマ!」
ダオとマーリエがやってくると、マーリエが飛びかかってきた。
「さらわれたと聞いて心配したのよ!」
ぎゅーっと抱きしめられて、マーリエの声が微かに震えているのがわかった。
「心配かけてごめんね。でも、けが一つしてないから」
なんだかんだ言っても、そういうところは紳士だったな、ヘリオス伯爵は……。
つか、ヘリオス伯爵もかぶっている猫の皮が分厚いというか、ロスランの部分をよく隠しておけたよね。
私なんか、まあまあ前世の部分が出ることあるのに。
今さらながら、ヘリオス伯爵の猫かぶり能力の凄さを実感する。
「ヘリオス伯爵があんなことをするなんて……最低だわっ!」
陛下が罠を張るために開催した宴とはいえ、ヘリオス伯爵やアイセさんが私をさらったところを目撃した者は多く、またあの場にいた多くの貴族が捕らえられたこともあって、ある程度のことは公表したようだ。
とは言っても、ヘリオス伯爵がクーデターを企んでいたがそれを阻止した的な、嘘でも真実でもない曖昧なものだったけど。
「でも、陛下が軍部を動かしてくださってよかったわ」
マーリエは軍部が動いたから、無事に救出されたと思っているようだ。
まぁ、それも間違ってはいないので、適当に相槌を打つ。
「あれ?マーリエも軍部が動いたことを知っているの?」
陛下は、国境付近まで進軍させると言ってはいたけど、ヘリオス伯爵への脅しなので、実際の戦闘は想定していなかったはず。
なので、内々で済ましたのだとばかり思っていた。
「帝国軍が国境を越えるときは、すべての皇族とその伴侶と子にも伝えられる決まりなんだよ」
ダオが教えてくれたものの、なぜ全員に知らせる必要があるんだろうね?
疑問に思ったので質問してみると、ダオは言葉を選びながらも答えてくれた。
「法学の先生は、皇族の安全を守るためと確実に血を残すためだと言っていたけど、僕は効率を重視しているからだと思うんだ」
なるほど。理由は一つじゃないってことね。
ライナス帝国の皇族は、幼少期よりどう振る舞うべきかを叩き込まれる。
叩き込まれるといっても、自ら考え、選び、行動することに重点が置かれているのだ。
知らせを受けた皇族は、そのとき自分がいる場所と状況を考慮して動くだろう。
例えばルイさんが外交に出ていて、国外でその知らせを受け取ったのであれば、国外から多角的な情報を得ようとするはず。
皇族がどう動くのかを早めに決めることができれば、警衛隊だって護衛の方針を決めやすくなるし、臣下たちもある程度は仕事がしやすくなると思う。
まぁ、そういった力量がない皇族がいないとも限らないが、今の皇族はそんな心配はいらない。
そして何より、皇族が率先して動くことによって、帝国に住む人々は安心するよね。
皇族の利点、臣下たちの利点、帝国民たちの利点。それぞれを考慮した結果、早々に知らせておいた方がいいよねってことになったのだろう。
つまり、ダオの効率重視っていう感想も正しいということだ。
まだ他にもありそうだけどねー。
「マーリエは軍部が動いたって聞いて大丈夫だった?」
マーリエは気の強いところもあるけど、暴力的なことには慣れていないから、怖かったんじゃないかな?
「わたくしだって一応準皇族なのよ?それよりも、ネマを連れて戻らなかったら、総帥を引っ叩いていたわ!」
「それはそうすいさんが可哀想だからやめてあげて!」
ああ見えていいパパだから、年端もいかない女の子に嫌われたってなったら、総帥さん泣いちゃうかも……。
総帥さんへの矛先を逸らすため、私がいかに恵まれた誘拐児童であったかを話し、ちゃんとテオさんを始め、帝国軍や飛竜兵団の皆様が助けにきてくれたということを語った。
神様降臨の遺跡内での出来事は箝口令が敷かれているため、端折りに端折ったけど、さらわれていたときのことは特に言われていない。
「ネマ、貴女……たくましすぎない?オスフェ家の教育、どうなっているのよ……」
なぜか二人にドン引きされた……。
私からしたら、皇族の教育の方がどうなってんのだわ!あの陰険鬼畜腹黒王子なヴィだって、悪戯できるくらいには余裕を持った教育をさせてもらってたらしいのに。
「じゃあ、その子は遺跡で見つけたの?」
ダオがルクス様に興味を示した。
ライナス帝国の皇族は代々契約者を出すくらい神様のお気に入りだから、何か感じ取っているのかもしれない。
「先にさらわれていたドワーフ族の子からゆずってもらったのよ。かわいいでしょ!」
ルクス様のことは本当に秘密なので、ダオとマーリエに話すわけにはいかない。
あの遺跡にいた騎士や軍人さんたちはみんな名に誓っているし、捕らえられたルノハークから漏れることもないとテオさんが断言していたほどなので、知ってしまうと二人が危ない可能性もある。
「ネマは本当にふわふわしたものが好きね」
ふわふわだけではない、もふもふも、すべすべも、ぷにぷにも……それ以外の感触だって、その子でしか得られない癒やしがあるのだ!!
せっかく転生したのだから、満喫しないともったいない!
私の近況報告が終わったところで、次はダオとマーリエの番。
私がさらわれていた間のことを聞くも、マーリエは母親から外出を禁止され、お家でお勉強していたとか。
「僕も、進軍の報告を受けて、東翼から出ないようにしていたから……」
ダオは自発的に、周囲へ負担をかけないようにしていたようだ。
テオさんは私の救出チームにいたし、クレイさんとエリザさんは進軍した部隊を率いていたらしいし、アイセさんはあの通りだし……。
兄姉がいなくて、心細かっただろうに。
「もうクレイ様とエリザ様はお戻りになられたの?」
クレイさんならダオを気にかけてくれると思って聞いてみた。エリザさんも、この状況ならダオの相手をしてくれるかもしれないし。
「それが、クレイ兄上は戻ってきたけど、すぐにどこか向かったみたいで……」
ちなみに、エリザさんはまだ戻ってきてないらしい。
ダオの警衛隊隊長が教えてくれたところによると、進軍した部隊はまだ一部が帰路に就いているさなかだとか。
人数がそこそこいるため、何陣かに分かれて戻る予定になっていると。
今現在、二陣までが帝都に戻っていて、エリザさんは最終陣になるそうだ。
「そんなに時間がかかるものなの?」
「転移魔法陣の魔力を貯めるのに時間が必要なんだと思うよ」
あ、そうでした。
結構な頻度でホイホイ使ってたから、魔石に魔力をチャージするのが大変なことを失念してたわ。
つか、クレイさんもなかなかにこき使われてるね。
器用になんでもかんでも熟すのと、身内に甘いのもあるんだろうなぁ。
「クレイ様もエリザ様も、早く帰ってくるといいね」
それから、話題は次に遊べる日に何をするか問題に移っていった。
「みず……」
「却下よ」
まだ水までしか言ってないのに、マーリエによって瞬殺される。
宮殿にはいっぱい水があるんだから、水遊びでもいいのに……ユーシェも加わってくれるしさ。
それに、水遊びが嫌いな子供がいる?いや、いないでしょ!!
水鉄砲でも水風船でも、なんならホースだけでも延々と遊べますけど??
「室内でできることにしようよ。まだ全部の部隊が戻ってきていないし」
ここはダオの言う通りにしておいた方がいいだろう。
ダオが皇族の自覚をもって、自発的に決めたことだしね。
「じゃあ、図書館に行く?あそこなら、警衛隊員の場所もあるよ」
ここ最近、いろいろありすぎて本を読めてなかったし、おすすめの本を紹介し合うのもありだなぁ。
「図鑑を持ってきて、変な動物ばかり見せるんじゃないんでしょうね?」
変な動物じゃなくて、希少種だから!
「じゃあじゃあ、好きな物語の好きな場面をダオに描いてもらうとか?」
挿絵がある物語もあるけど、シンプルなイラストが多い。
なので、ダオの精密なタッチで物語の場面を描写するのは、凄く映えるんじゃないかな?
「それだと、僕が絵を描いている間、二人が暇になるよね?」
まぁ、私たちはおしゃべりしていれば時間を潰せるが……。ダオの気が散るかも。
「僕、やってみたいことがあるんだけど……三人で絵本を作ってみない?」
「「絵本??」」
私とマーリエの声がハモる。
ダオがそんなことを提案するのが意外で、マーリエも驚いているではないか!
びっくりしたとはいえ、ダオの案は悪くない。
前に、ロスラン計画の塔のミニチュアを三人で作ったことがあるけど、作ったミニチュアは鍛冶組合の長さんに貸し出し中で戻ってきていないんだよね。
つか、戻ってくるかも怪しい……。
それなら、新しく別の物を作った方が、思い出になっていいかも?
「ネマとマーリエで文章を考えて、僕がその場面を絵にする。僕が描いている間に、次の場面の文章を考えれば、時間も無駄にならないよ」
「私はいい案だと思うけど、マーリエはどう?」
ダオのやりたいことなら反対しないだろうと思うけど、念のため意思確認をする。
「ネマも気乗りしているようだし、わたくしもやってみてもいいわよ」
マーリエは、私を理由にして賛同した。
ここでツンを発動しなくてもいいのにね。マーリエの乙女心はなかなか素直になれないようだ。
「じゃあ、決まりね。すぐに取りかかれるよう、決められることは今日決めちゃおう!」
「絵本の内容ってこと?」
ダオに尋ねられ、ジャンルだと答えようとして言葉が出なかった。
ジャンルってなんて表現すればいいんだ?区分?分野??
数秒悩んだもののわからなかった。
「大きなくくり?冒険とか恋愛とかのやつ」
「あぁ。じゃあ、登場人物もだね」
ダオはそれだけで、私が決めたいと思っていることを理解したようだ。
「あとは要素とか?三人が好きな要素を一つずつ出すの」
さすがに要素は理解できなかったようで、例えば?と聞き返される。
「私だったらもふもふしたもの一択ね!ダオは冒険たんとか好きだから、勇者の剣とかはどう?」
「登場人物が使う道具が要素なの?」
マーリエはいまいちピンと来ていないようで、顎に手を当てて考え込んでいる。
「もっとあいまいなものでもいいんだよ。登場人物の関係性、片思いとか、幼なじみとか……」
それを聞いて、マーリエは顔を赤らめた。
マーリエが好きそうな要素を告げたつもりだったが、無意識にマーリエから連想される要素を口にしていたことに気づく。
ヤバい……これはさすがにデリカシーなさすぎるでしょ!私!!
「ネマぁぁぁ……」
マーリエに肩を掴まれ、ガクガクと前後に揺らされる。
「ごめんなさぁぁい!」
私とマーリエでそんなことをしている間、ダオは真剣な顔をしていた。
これは……もしかして……。
「ネマの言う要素かはわからないけど、テオ兄上みたいに強い魔物を倒すのがいいな」
真剣に考えていたのはそっちでしたか……。
マーリエの方を窺うと、ホッとしたような、それでいて少し悲しげな表情をしていた。
気持ちを変えて、絵本の話し合いに集中する。
ジャンルを決める前に、登場人物と取り入れたい要素を決めた方がいいとなり、それぞれ発表することになった。
「僕は男の子が格好よく魔物を倒すお話にしたいと思っている」
「わたくしは女の子がいたらいいと思うわ。男の子が登場するなら、女の子と仲良くなるのも素敵じゃない?」
ダオとマーリエは二人とも、自分と同じ性別、同じ年頃の登場人物を挙げてきた。
自己投影できるキャラの方が、没入感があっていいのかもしれない。
「私はもふもふがあって……登場人物は……うーん、ポテとか?」
私がそう告げると、二人の視線はルクス様へ。
「見本があると描きやすいけど……ポテを出すならもふもふの要素も満たしているよね?」
ダオに指摘されてハッとする。確かに!と。
ポテを登場人物にして、別のもふもふ要素を取り入れるとしたら…………。
ダメだ。なぜか今は布団しか思い浮かばない!
しかも、布団はどちらかと言うとふわふわの方だし。
ポテは変えたくないんだよなぁ。
ルクス様のことは言えないけど、二人にはルクス様がいたことを覚えていて欲しいし……。
ポテをもふもふ枠にしたら、登場人物を考え直さないといけないのか。
じゃあ、ここは一つ……もふもふをさらに足す!
「聖獣か獣人とかはどうかな?」
「ネマ、もふもふは一つだけよ。わたくしたちは登場人物も要素も一つずつなのに、ネマの場合だと二つずつになってしまうでしょう?」
マーリエは、ポテと聖獣もしくは獣人を出した場合、どちらとも登場人物ともふもふを兼ね合わせているから不公平だと言いたいのだろう。
でも、ポテは出したいし……。
私の手の上でずっとぬいぐるみのふりをしているルクス様を見やる。
……あ!そうだ!
「じゃあ、もふもふはポテで、登場人物を女神様にする!」
ルクス様をモデルにしたキャラを出すなら、女神様を出せばいいじゃないか!
「女神様……さすがに畏れ多いのではなくて?」
マーリエは女神様を登場させることにおよび腰だが、女神様が登場する物語はたくさんある。
それに、世間に公表するわけでもないし、女神様に『絵本に女神様を出します!』ってお祈りしておけばいいと思う。
というふうに説明すれば、マーリエは納得してくれた。
ダオが、女神様を綺麗に描けるかな?って心配していたけど、女神様は気にしないと断言できる!
だって、ルノハークが女神像を削って神様に見立てていたのに、神罰がくだっていないからね!!
こうして、私の分の登場人物は女神様に決まった。
次は大きなくくり、ジャンル決めだ。
登場人物は、男の子、女の子、女神様、そしてポテ。
私のもふもふはポテで叶えられているので、ストーリーには取り入れないものとする。
ダオは格好よく魔物を倒すで、マーリエは男の子の女の子が仲良くなる……というか、仲を深める感じか。
「魔物を倒すなら、やっぱり冒険ものだよね?」
「冒険以外にくくりがあるならそれでも構わないよ?」
冒険もの以外に当てはまるジャンルといえば……アクションバトルとか?
これなら、ヒーローがヒロインを助けるために戦ってってできるけど、上手く女神様を出せるかが問題だ。
女神様から力を授かって俺ツエーをやっちゃう?
そういうことを伝えたかったのだが、アクションバトルをどう言えばいいのか詰まる。
「冒険じゃないんだけど、戦いの場面が多くて……」
私のしどろもどろの説明はなぞなぞ……いや、クイズか?ともかく、言葉から連想するものを当てるゲームになった。
「歴史とかかしら?戦のお話も多いわよね?」
マーリエの言う通り、剣と魔法の世界だからか、戦記ものの物語は多い。
でも、戦記ものもちょっと違うんだなぁ。
「主人公が強敵と戦って世界を救ったりとか、人質を救出に行く主人公とか」
「うーん、ネマが言っていることに当てはまるのは活劇とかかな?」
活劇と聞いて思い浮かべるのは、時代劇や西部劇なんだけど……殺陣や大立ち回りがあるので、アクションと言えばアクションか。
「そんな感じ」
ということで、ジャンルを活劇にきめたら、なぜかダオがさらにやる気に満ちた。
あとマーリエも何やら黙り込み、ちょっと不安だ。
「まだ時間もあるし、大筋の流れを考えてみる?」
私がそう提案すると、二人は思い思いに妄想した話を語り始めた。
ダオの妄想はこうだ。
男の子は女神様の神託を受けて、大量の魔物に襲われていた街に向かう。女神様に授けられた力と御使いのポテとともに、大量の魔物を退治していく。
そのさなかに、魔物に襲われていた女の子を助け、女の子をお家まで送り届ける。女の子は実はその国の王女様だった。
魔物を退治し、王女様を助けたことで、男の子は勇者となる。
なんか魔王が出てこないのが不思議に感じるんだが?
ラスボス的な魔王はこの世界には存在しないので、ダオもイメージが湧かなかったのだろう。
まぁ、魔族の王としての魔王はいるかもしれないけど。
マーリエの方はというと、こちらもある意味王道パターンだった。
世界の滅亡を企んでいる人物が、とある国のお姫様である女の子をさらってしまう。
男の子がその人物を打ち倒し、女の子を助けるのだが、世界滅亡はすでに始まっていた。
女の子は女神様より滅亡を阻止する力を授けられており、男の子と力を合わせて滅亡する世界を救う。
ラスボスを倒したらおしまいじゃなくて、最後のギミックを制限時間内に解除しないとゲームオーバーになる、ゾンビものとかにありそうなやつだ。
ゾンビものの話をしたらマーリエが怒りそうなので口にしないが……。
「どっちも面白そうな話だけど、頁数がとても多くなりそうじゃない?ダオの方が大変になっちゃうよ?」
二人が考えた絵本の内容を聞いて思ったのが、数ページで収まらないな、だった。
前世での記憶だと、絵本って十ページちょっとくらいしかなかったと思う。
「ダオばかりに負担がかかるのはだめよ。頁数の制限を決めましょう」
マーリエはそう提案して、ダオにどのくらいの枚数の絵を描けるかを聞く。
ダオは時間があればいくらでもと返すが、それではいけない。寝る間も惜しんで仕上げそうだからだ。
とりあえず、暫定的にであるが、絵は十枚、計二十ページの絵本にすることにした。
話の内容を決めていくうちに増えるかもしれないし、減るかもしれないから。
再び大筋の流れについて話し合ったのだが、議論は大いに白熱する。
二人の要望をそのまま取り入れたら、ご都合主義を通り越したとんでも展開になりそうだったからだ。
いくら俺ツエー状態でも、十歳未満の男の子がオーグルを倒すのはやりすぎ感あるし、十歳未満の男女での結婚エンディングは法律上認められません!
「男の子と女の子を村人にするのはどうなのよ?」
とんでも展開を軌道修正するために、登場人物を村人にしようって言ったら、マーリエが難色を示した。
「特別じゃない、普通の子供がかつやくするとワクワクするでしょう?」
パパンがオーグルを一発で倒しましたって話なら、パパンのスペックなら当然そうなるわなって先が読めちゃう。
ヴィが国を救いましたって話なら、一国の王子で、剣も魔法もかなりの腕前で、聖獣の契約者ならまぁ救えるわなって、これも先が読めてしまう。
普通の、どこにでもいるような子供が頑張るお話は、どう困難を切り抜けるのか、予測できないから楽しいのだ!
「そういうものなの?」
マーリエは理解できなかったみたいなので、マーリエの好きな恋愛ものでの展開で例えてみた。
王子様とお姫様が出会って恋に落ちましただと、身分も釣り合っているし、読者的には何も障害はないと思うだろう。
それが、どちらかが平民になると、たちまちドラマティックになる。
ハッピーエンドにしろ、悲恋にしろ、この身分差恋愛がどうなるか、読者は結末が気になるに違いない。
横恋慕するキャラが登場して、三角関係のドロドロ展開ともなれば、なおさらハラハラドキドキするよね!
「ネマが愛憎劇や情念劇を好んでいるのは知っているわ。恋愛のお話では、先がわからない方が続きが気になるのも確かよ」
マーリエは純愛系のお話が好きなので、身分差があるものでも一途じゃないと食指が動かないようだ。
「ダオはどう?」
「僕は村人でも構わないよ。英雄譚の中には、一兵卒から英雄になった話もあるしね」
なるほど。
ダオの中では、男の子は将来勇者や英雄と呼ばれる人物になると想像しているのか。
そんな勇者や英雄の初めての挑戦ってことならありだな。
男の子と女の子が村人ということが決まったところで、タイムオーバーとなってしまった。
肝心の大筋はまだ何も決まっていない。
三人で遊べる日になるまでは、思いついた内容をとにかくいっぱい出した方がいいだろう。
そして、その案の中から選んでいく。
「二人が手紙で送ってきた案をわたくしが一覧にすればいいのかしら?」
「さすがマーリエ、話が早い!」
私がやってもよかったんだけど、多少落ち着いたとはいえ、ヘリオス伯爵の件でゴタゴタしているからね。
「マーリエは字がきれいだから、安心して任せられるよ」
ダオさんや、それは私の字が汚くて見るに耐えないっていうことかい?
まぁ、綺麗とは言い難い字だけどもさ。
綺麗に書けないのは、手が小さいのとこちらの筆記具のせいなのだよ!
「ほめてくれて、ありがとう。ネマは……もう少し練習してみたらどう?」
マーリエにも言われてしまった……。
絵はセンスがものを言うからどうにもできないけど、字は練習すれば綺麗になるし、ちょっと頑張ろうかなぁ。
ルクス様、芸術系のステータスを上げてくれませんかね?
え、無理??




