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目から鱗がいっぱい落ちた!

私のやらかしを神様に冤罪をふっかけていたことを少しばかり反省したところで、本題について考える。

神様が淋しい思いをしないよう、この世界の種族と関わりを持てるようにするにはどうすればいいのか。

女神様は世界の根幹から変える必要があると言ったが、そうすると世界そのものにも大きな変化を与えてしまう。

それがよい変化であれば問題ないが、ラーシア大陸が真っ二つになったり、人間が絶滅する可能性もあるかもしれないのだ。

私が人間を滅ぼさないと決めたのに、別の理由で滅びそうになるのは勘弁して欲しい。


世界の根幹……おそらく、世界の理の中枢となる部分のことだと思うけど、それを変えずに干渉できるようにしなければならない。

ようは、理を(だま)さないといけないわけだ。


「神様、何か種族に変化できたりしないの?」


『外見は変えられるが、本質は変えられないよ』


動物に化ける神様とか、人間に化ける妖怪とかいるから、神様もできないかなぁって聞いてみたら、中身は変えられないときた。

まぁ、当然か。


「じゃあ、他にも神様をいっぱい創って、神様の力を分割するのは?」


『それもできなくはないが、私が殺されるかもしれないな』


あー、神様同士の争いが勃発するのか……。

そういえば、兄弟の力を合わせて父親の神を殺すっていう神話があったな。

あれは父親の神がめっちゃ悪逆非道だったから、退治されたって内容だったが。


「じゃあじゃあ、神様自身が分身というか、分裂できないの?」


『分裂?』


イメージは神社の分社だ。

日本各地に同じ系統の神社が存在する。有名なところではお稲荷様や天神様だろう。

お稲荷様では、キツネ……ではなく、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)という五穀豊穣の神様が祭神だし、天神様は受験のときにお世話になる菅原道真公が祭神だ。

これは主観だが、本社と分社で御利益に多少の差はあるように思う。

つまり、神様が分身を創ったとしても、本来の力の十分の一とかでもいいのではなかろうか?


そんなことを説明すると、神様も女神様も考え込んだ。

異世界の神、この場合、日本の神々ができるなら、神様にもできるかもしれないが、分身を世界に留める入れ物が必要だと。

入れ物……ようはご神体をどうするかということか。


これはいくつか候補を思いついている。

一つ目は山だ。山岳信仰のように、山そのものをご神体とする。神様は山に住む動植物たちや登山で訪れる人々と関わりを持てるようになる。

二つ目は剣や宝玉などの道具系だ。愛し子や聖獣の契約者に身につけてもらい、人々の暮らしを身近で観察できる。聖獣や精霊たちが分身の神様とも意思疎通できるようにすれば、悪用される心配もないと思う。

三つ目は究極の現人神だ。人間か獣人の赤ちゃんとして生まれてもらうのだ!ぶっちゃけ、関わるならこれが一番確実なのは言うまでもない。


さすがに現人神はやりすぎだったのか、三つの候補を告げたら重たい静寂が訪れた。


『異なる世界の神々はそんなことをなさっておいでなのか……』


女神様が信じられないと(おのの)いていたので、慌てて本当かどうかはわからないと付け加える。

ほら、神々の世界のことは、地上で暮らす人間には知りようがないからさ!

とはいえ、人間に化けたり、新たに神様を創る案よりはマシということになった。

これが一番、世界に影響が少ないだろうって。


「それならば、私の弟として生まれてきてはいかがでしょう?母上はまだ若く健康ですし、事情を知る私が手助けできます」


「いや、ぜひライナス帝国へお越しください。我が帝国では、聖獣も兄弟も多いですので、いろいろお力になれるでしょう」


なんか、ヴィとテオさんが売り込んでいるけど、まだ赤ちゃんで生まれるって決まったわけじゃないからね?もしかしたら、剣になる可能性だってあるんだよ??


『赤子に生まれて一生を体験するのも惹かれるが、何か起きたときにすぐ元に戻れる方がよい。さすがに人の体を捨てるわけにはいかないだろう?』


確かに!

神様が戻らないといけない状況って、世界が滅びるくらいしか思い浮かばないけど、世界征服を企むやっべー奴に捕まったり、創聖教に神様だとバレて監禁……なんてこともあるかもしれないしね。

となると、剣とか宝石とか装身具をご神体にすることになるんだけど、それもそれで狙われそうだよね?神様が宿りそうにないものを選んだ方が安全なのでは?


というわけで、今度はどんなご神体が神様に似合うか話し合う。


「ネマが持っていてもおかしくないものの方がいいと思うが?」


早速ヴィが提案してくれた。


「なんで?」


「ネマの側は理から外れているのだろう?創造神様の分身がいる影響をさらに弱めることができるのではないか?」


目から鱗!青天の霹靂!それくらい衝撃を受けた。

世界の理はシステムみたいなもので、私はチートプログラム。

じゃあ、この世界は運営(かみさま)が用意したアプリケーションといったところか?

ならば!書き換えればいいんだ!!

システムの一部を書き換えて、神様の分身を運営用のアバター?テストアカウント?みたいにできないかな?

ただ、チート機能を意識して使ったことないから、本当に書き換わるかも不明なんだよなぁ。

森鬼や星伍たちがそうだったから、ただ側にいるだけで書き換えられるかもしれないけど……。

そもそもまず、書き換える方法自体も謎だよね?

実はどこかにソースコード的なものが隠されていたりして!

ソースコードがあったとしても、プログラミング的なことは門外漢だったわ……。

パソコンとともに育ったヲタク世代なので、かろうじてHTMLが少しわかる程度だ。

ヘリオス伯爵、詳しかったりしないかな?


「ヘリオス伯爵はプログラミングに強かったり……」


「するわけねぇだろ」


食い気味で否定された……。

さすがにそう都合よくいかないか。


「ネマに似合うとなると、やっぱりぬいぐるみかしら?」


お姉ちゃんの発言に、全員の視線がうさぎさんリュックに集まる。

え?やだよ!うさぎさんは私の体の一部なんだから、神様のご神体にはしないよ!!

背中のうさぎさんリュックを、みんなの視線から隠す。


『創造主様のお力を受け入れられるほど強くはないぞ?』


ソルも竜玉(オーブ)に神様が宿るのは気まずいのか、うさぎさんリュックはご神体には向かないと私を擁護してくれた。


「ネマのお気に入りのぬいぐるみがあっただろう?」


「お父様、さすがにあれは大きすぎますわ」


パパンの提案は、お姉ちゃんが即座に却下した。

たぶん、ハンレイ先生の等身大ぬいぐるみのことだと思われる。

一応、シアナ特区には小さいハンレイ先生のぬいぐるみが売ってはいる。

しかし、素材が特殊なこともあり、確か一年くらいは予約でいっぱいだったはず。


「屋敷から適当なものを転送させますか?」


ジョッシュがお姉ちゃんに尋ねると、お姉ちゃんは悩んだのち断った。


「ネマのぬいぐるみって、希少な子が多いでしょう?かえって目立つと思うの」


私のぬいぐるみコレクションはそこまで多くはないが、どの子も有名老舗店のフルオーダーメイド品だったりする。

プレゼントでもらったものと、私がこの動物のぬいぐるみが欲しいとおねだりしたもので、コレクターが見れば喉から手が出るほど欲しがるだろう。


「あの……保護したドワーフ族の子供がポテのぬいぐるみを持っていたので、譲ってもらえないか交渉してみましょうか?」


隊長クラスの軍人さんが、恐る恐るといった様子で進言する。


「ドワーフ族の子供ってどういうこと?」


さっきテオさんもドワーフ族の子供を人質にどうとかって言っていたけど……。

あのときはドワーフについて聞ける雰囲気ではなかったので、今聞いてみることにした。


「ヘリオスは、ドワーフ族の子供たちを人質に取って、大人のドワーフに言うことを聞かせていた。ここへは数人だけ連れてきて、残った者を牢屋に放置していたんだ」


お兄ちゃんは憤りを隠せないほど怒っていた。

きっと、ディーの力でその光景を見てしまったのだろう。

移動休憩のときに聞いたあの泣き声。連れ去られた子供たちのものだったのか……。


「そんなつらい思いをした子から取り上げるのは心苦しいな」


だから別の物にしたかったけど、神様たちがいられる時間も限られているからと、聞くだけ聞いてみようってことになった。

返ってきた返事は予想外のものだった。


「炎竜様のぬいぐるみをくれるならあげてもいいと……」


「はい?ソルのぬいぐるみ??」


そんなのがあったら私が欲しいんだが!?


「えぇ。どうも炎竜様をいたく気に入ったようでして」


なんか意外だなぁ。

ソルはあの巨体だし、子供には怖いと思うんだけど、気に入ったのかぁ……。


「オスフェの全力を以て、炎竜殿のぬいぐるみを作らせよう!」


パパンがそう宣言したため交渉成立となり、そのぬいぐるみが届けられることとなった。


「こちらです」


女性の軍人さんが届けてくれたぬいぐるみは、大人の両手サイズほどのようだ。


「ドワーフの子供が自ら作ったものだそうです」


なんと手作り!!


「ほぉ。子供が作ったものとは思えないな」


ヴィがぬいぐるみを見て感心する。

ちょっと私も見たい!

いまだ神様の膝の上なので、ぬいぐるみが豆粒のように小さくにしか見えない!


「みーせーてー!」


お願いすると、ヴィが風魔法で私のところに運んでくれた。

一番便利なのは土魔法だけど、風魔法も便利だな!


手元に届いたぬいぐるみは、本物のポテと同じくらいの大きさだった。

少し汚れてはいるけど、大切にされていることがわかる。

縫い目は見えないよう処理されており、中綿もたっぷりでへこたれていない。

そして何より!このふわっとした感触の表面!!

起毛加工された生地のようだが、肌触りがいい!

あと驚きなのが尻尾だ。本物よりふわふわで、毛足が長い!

尻尾の毛、どうやって作ったの?動物の毛じゃないよね?

毛の質感が生地と似ているので、同じ繊維から作られていると思うんだが……。

これを子供が作ったの!?天才じゃない??

将来有望なぬいぐるみ職人を見つけたぞ!

今のうちに唾をつけておかないと、ラグヴィズのときみたいに横からかっさらわれてしまう!!


『ほぅ。これは見事な毛並みだ』


もふもふ好きな女神様も食いついた。

女神様、こういうのが好きなら、ハンレイ先生のぬいぐるみ小をお供えしようか?


「神様、この子にしよう!」


『それは構わないが、分身をどのように移す?』


んー、やるなら一度、神様は戻った方がいいと思うんだよねぇ。


「ヴィの許容範囲の話が本当なら、こちらでやるより神様が普段いる場所でやった方が成功するんじゃないかな?」


『ふむ。では再び降臨の儀を行うと?』


あれ、再現できるのかな?

土の精霊王がやってきたから、偶然条件が揃った感じだったけど??


「それをやらないと、分身の神様もこっちには来られないの?」


『無理であろうな。我がいる場所は精霊王の力と聖獣の力があれば通じるが、父神様のところはそれでは足りぬ』


じゃあ、なおさら条件が揃っているうちにやらないと!まだ判明していない条件が知らないうちになくなって、降臨できなくなったら困る!!


「そういうことだったのか!」


ヴィが突然大きな声を出した。

大きな声を出すヴィが珍しいから、みんなびっくりしているよ?


「ヘリオスが入手した古地図に書かれた言葉だ。八つと白と黒の力を集めるといった意味の単語があった。四つの属性の精霊王と聖獣の力でクレシオール様をお呼びできるのであれば、それに白と黒の力を足して、創造神様をお呼びできたのだろう」


なるほど。でも、白と黒の力が何を示すのかはわかってないよね?


「だがそれは、あくまでも当時はそうだったにすぎない。あの古地図も、製作者が当時の情報を元にしたものだと考えると、参考にしたであろう文献はもっと古いものだったに違いない」


つまり、めっちゃ古い情報だってことだよね?

だとしたら、今とは条件が異なっている可能性があるってことか!


「ヴィは、神様降臨の条件が全部わかったの!?」


「あぁ。白と黒の力というのは、当時にいた種族のことだと思われる。創始の時代、この世界にはまだ魔族とエルフ族しか種族はいなかったからな」


またもや目から鱗である。

白と黒と言うからには、神様の創造と破壊の力のことだと思っていたのに。


「つまり殿下、八つの力の他は、すべての種族が揃うことが条件だというのですか?」


パパンが要約してくれたが、ヴィの言っていることが本当ならそういうことになる。


「ということは、こちらに魔族の方がいらしているのですか?」


ひょっとして、お姉ちゃんも魔族と顔見知り?

お姉ちゃんの言い方だと、本来なら違う場所にいるはずなのにここにいるのかって意味に聞こえるよね。

え……まさか、本当に魔族の人がいるの!?


「誰が魔族であるかは秘匿されているため告げることはできないが、今回同行した者の中に魔族がいたことは確かだ」


正体不明の魔族とか、正体を隠して活躍するヒーローみたいじゃん!

有名な作品の赤いマントのヒーローとか、コウモリなヒーローとか、めっちゃロマンあるなぁ。

ぜひとも空を飛んで欲しい!


「ライナス帝国軍にはエルフ族も獣人もいる。そして、外には保護したドワーフ族の子供と獣王の番が。創造神様がこの世界に授けたすべての力(・・・・・)が揃っているというわけだ」


ヴィ曰く、ラース君が言っていた、すべての力はそのときで数が変わるというのも、種族の数が増えていったからだろうって。

それに、この遺跡……というか、土地自体も降臨には欠かせない条件の一つだと言う。

まぁ、あれだけ仕掛けがしてあったし、神様を呼ぼうと頑張った人たちがいてもおかしくないよね。


『本当にヴィルヘルトは聡明に育ったな。そなたが言う通り、この土地は少し特殊でな。すべての種族の始まりの場所。密かに父神様が降り、種族をお創りになった土地よ』


……つまりそれは、ガチの聖地……ガチの聖域ってことじゃないの?

もはや驚きすぎて声も出せない面々の中、ヴィだけが女神様の答えを予想していたようだ。


「では、再び創造神様をお呼びすることは可能です」


はえー。場所まで条件に入っていたら、そりゃあギィも呼べなかったはずだわ。

つか、愛し子でも揃えられなかった条件をある程度まで揃えたヘリオス伯爵がやばい!いくら前世が愛し子だったとしてもだ。


「これであとは、ネマがどう理から創造神様を外すかです」


いや、ほんとにね。どうしようかね。なぁんにも方法が思い浮かばないんだなぁ。


「名付けるのでは駄目なのか?俺は(あるじ)に名を与えてもらったことで、この姿になったが」


「その手があった!!」


魔物っ子たちが謎の進化を遂げてるの、考えてみれば名付けした子たちばっかりだ。

魔物の性質もあるのだろうけど、ノックスも獣舎の子たちと比べるとかなり賢くなっているし、影響は受けていると思う。

プルーマも、渡り鳥なのに今はお庭番みたいになっているし。

ウルクは……今のところ名付けの影響より、竜種だからって方が強いんじゃないかな?


これは、ほんとにほんとにできちゃうんじゃない?

とんとん拍子に進みすぎな気もするけど、もしかしたら、それも愛し子のチート機能のおかげなのかも。

ふむ。これはマジで気をつけないと、いつの間にか私が大陸統一していたり……さすがにそこまでチートじゃないよね?




いつも誤字報告ありがとうございます!

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