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本当に神様がやってきた!?

大変お待たせいたしました。

どこかの遺跡に連れていかれたと思ったら、聖獣を呼び出すよう言われたり、いつの間にかパパンやヴィが来たと思ったら精霊王までいたり、ヘリオス伯爵がロスランの生まれ変わりだと判明したりと、物凄い情報量と濃密な時間だったのに、それを上回る出来事が起きようとしている!

遺跡の御神体みたいな大岩に、土の精霊王の生首が登場したのち、精霊王が揃ったことで、神様降臨の条件がコンプリートされてしまった……。


灯明(とうみょう)皿の中で燃え盛っていた炎も、プールを満たしていた水も、突然吹き荒れた風とともに大岩が吸い込んだように見えた。

そして、大岩から転移魔法が発動するときのようなキラキラが発生したと思ったら、サラサラと砂のように崩れる。

大岩があった場所には人の形をしたものが残った。


「創造主様の降臨だ!!」


興奮した声で誰かが叫ぶ。

こっそり周囲を見回すと、騎士や信徒の中に呆気に取られたまま固まっている者もいたが、ほとんどは思い思いに頭を下げている。

ソルは建物に頭を突っ込んでいる状態なのでアレだが、精霊王たちもあのカイディーテすらもだ。

そんな中、ヘリオス伯爵だけが、一点を凝視している。

先ほどの声も、ヘリオス伯爵だったのかもしれない。


『ずいぶんと騒がしい呼び出しだね?まぁいいか。皆、顔を見せておくれ』


静まり返った場に、衣擦れの音だけがする。

私もしっかりと正面を見やると、大岩があった場所に見覚えのあるものが鎮座していた。

女神様の像に似ているけど、豊満なお胸も腰のくびれもなく、顔全体がのっぺりした印象を受ける……ルノハークが拝んでいた像にそっくり!


そういえば、女神様も自分の像を依代(よりしろ)にしていたっけ。

ってことは、あの大岩に神様が憑依して像になったってこと?


ガン見していたら、神様の像と目が合ったような気がした。

神様の像が動き、やっほーとでもいうように手をヒラヒラさせているので、気のせいではなかったみたい。

え?これ、私が手を振り返すまで、ずっと手を振っているつもり??

神様が一向に手振りをやめないので、仕方なく私も手を振り返した。

それがきっかけになったのか、サチェがふんすふんすと鼻息荒く、神様の像のもとまで行き、頭を像に擦りつける。

サチェも先帝様にはよく甘えたりしているので、神様への挨拶的なすりすりなんだろうなぁって思っていたら、とんでもない光景が!!


「か……カイディーテが……」


神様の足元でごろにゃ〜んってしてる!!皇太后様にしかデレない、あのカイディーテがっ!!

あまりの衝撃映像に、テオさんも口が半開きのまま固まっている。


『カイディーテ、寝そべっていては撫でられないよ?』


神様がそう言うと、カイディーテはごろにゃ〜んをやめて、すちゃっとお座りからの、自ら頭を神様の手に擦りつけた。

神様はゆっくりと手を動かして、カイディーテを撫でる。

ふむ。元は大岩だから、神様の動きに制限があるのか。

それにしてもカイディーテ、尻尾を立ててくねくねさせているってことは、めっちゃ嬉しいんだなぁ。


そんなカイディーテを見たからか、カルヴァも動き出し、ディーを鼻先で押しながら神様に近づいていく。

ディーはきゅぅきゅぅと、カルヴァに何かを必死で訴えているが無視された。

ラース君がそんなカルヴァに近づき、ガウガウと何やら話し始め……一緒になってディーを鼻先で押し始める。

ディーを助けにいったんじゃなかったんかい!

ラース君に裏切られたディーは助けを求めるように私たちの方を見た。


「ディー、ごめん……」


お兄ちゃんが小さく呟く。

さすがのお兄ちゃんでも、この状況では動けないようだ。

というか、神様と聖獣たちの邂逅(かいこう)を邪魔するなんて、畏れ多くてできないといったところか。


『カルヴァ、ラース』


神様が名前を呼ぶと、ラース君はサチェを、カルヴァはカイディーテを押し退けて、神様の側に(はべ)る。

サチェとカイディーテは不満そうな鳴き声を上げるも、少しだけ場所を譲った。

ネコ科が多いはずなのに、飼い主に群がるわんこのようだ。


『ディーもおいで。君はよく頑張ったね』


ディーは、獲物に近づくときのライオンのように、身を低くしてゆっくりと近づいていく。

神様を狩る気満々……なわけなく、耳と尻尾の様子から怯えているのがわかる。

神様、怖がられてやんのー!

聖獣たちに囲まれている神様に対して、嫉妬を抑えられず、つい心の中でそんなことを思ってしまう。


しかし、神様に撫でられたとたん、ディーは警戒心を解いて、尻尾を大きく振るようになった。

おのれ神様っ!うちのディーを(たぶら)かすとはけしからん!!


「おにい様、聖獣は伴侶みたいなものなんだよね?」


小さな声でお兄ちゃんに問いかける。


「そうだね。伴侶、半身、契約者の一部でありながら独立した存在……言葉で言い表すのは難しい感覚だけど」


「じゃあ、あれって浮気なんじゃ……」


神様にべったりな聖獣たちの姿は、契約者にとってもショッキングな光景ではなかろうか?


「どちらかと言えば、里帰りに近いんじゃないかな?実親との再会は、嫁いだ者にとっては嬉しいことだからね」


そう言われればそうか。

神様は聖獣を創った存在だし、聖獣たちからしたら親も同然。慕うのも当然である。

私もそうだからわかる。親には勝てない。


神様が聖獣たちを()でているのを見て、私はハッと後ろを振り返った。

建物に頭を突っ込んだままのソル。彼にとっても神様は親同然。

他の聖獣たちが神様に甘えているのに、ソルはその体の大きさから近づくこともままならない。


――ソル、大丈夫?


――ふむ、動くと壊しそうでな。致し方ない。


いや、そうじゃなくて……。体勢のことも心配だけど、自分だけ仲間外れな状況を心配したんだけど。


――ソルって、聖獣の中では一番長生きなんだよね?前にも神様に会ったことあるの?


――長生きではなく、長くこちらの世界にいると言う方が正しいな。創造主様にお目見えするのは、こちらの世界に遣わされたとき以来となるか……。


そうだった。聖獣の認識では『神様のもとへ帰る』んだった。

お役目を終えて、お家に帰るくらいの感覚らしい。

神様のもとへ帰ったあと、聖獣たちに自我が残っているかわからないが、契約者の魂と再会できたら素敵だなと思った。

ん?今何か思い出したような?

聖獣に関係する何かが思い浮かびそうで浮かばない!何かを忘れているってことだけはわかるが、その何かがわからない!!


これだけ聖獣が揃っているなら、そのうち思い出すだろうと、今はソルのことに集中する。

神様ー!ソルのことも忘れないでー!ソルもここにいるよー!!

心の中で神様に訴えると、神様が笑ったように見えた。わかっているよ、と。

神様、もう少し表情がわかる顔にしてくれたらよかったのに……。

女神様があれだけ美人さんなんだから、父親である神様も超絶美形なんでしょ?

なんでのっぺり顔にしちゃうのさ!


『ソルもずいぶん大きくなったね』


『創造主様にあれだけ力を与えられてはな……』


神様とソルのやり取りの内容に首を傾げる。

聖獣って、生まれたときから完成体だから、成長はしないんじゃなかったの!?


『大きい方が格好いいだろう?ねぇ?』


同意を求めるように私に振ってくる神様。


「確かに、竜種は大きいと迫力があってかっこいいけど……小さいのも可愛くて、それぞれのよさがある!」


特に、赤ちゃん期のちっちゃい子たちでしか得られない可愛さがある!あのポテポテした可愛さは異常だと言っても過言ではない!


『小さいものも可愛いか……ふむ』


もしかして、神様に小さい子たちの可愛さをアピールすれば、小さい聖獣が爆誕したりする?

それならばと思ったけど、今一緒にいる魔物っ子は白とグラーティアだけ。小さくて可愛いのは確かだが、スライムと特異体のフローズンスパイダーだ。神様の好みかどうかが問題だなぁ。


『小さいのであれば、ホギラ火山に住まう火の奴がおる』


『そういえば、火猿(かえん)氷猿(ひえん)はなるべく小さくしたっけ』


小さな聖獣はすでにいると言うソルの言葉に、神様はそうだったと納得する。

火猿と氷猿といえば、まだ一度も見たことのない聖獣!

そういえば、フィリップおじさんが氷猿はファルファニウスに似ているって言ってたな。

古代ローマの偉い人みたいな名前のファルファニウスは、ガシェ王国の獣舎でも飼われているお猿さんで、とても賢い! パッと見はキツネザル科のようだが、地上を横跳びで移動する姿はベローシファカに似ている。

ベローシファカは白くてふわふわした体毛を持ち、赤ちゃんをくっつけて横飛びする姿が超可愛いのだが、そんなベローシファカに似ているファルファニウスも超可愛い!

獣騎士の肩に乗って頭にしがみついたり、だっこちゃん人形みたいに獣騎士の腕にくっついているのを何度も見かけた。

じゃあ、ファルファニウスに似ているという氷猿も、同じように四六時中一緒にいられるってこと!?

さらに言えば、火猿と氷猿がラース君とカイディーテのように対の存在だとしたら、火猿も超可愛いお猿さんの可能性が高い!

ホギラ火山は確か、ディルタ領近くの小国家群のところにあったっけ。うん、行けない距離ではない。

それに、火山周辺には珍しい動物や魔物が生息しているし、これはぜひとも火猿に会いにいくツアーを実施しなければ!

ソルから氷猿の居場所が出なかったってことは、今はこちらにいないのかな? あれ、フィリップおじさんから氷猿の話を聞いたのって……。


「あっ! 思い出した!」


ライナス帝国において、長く語り継がれる聖獣がいる。

その聖獣は初代皇帝ロスランと契約し、ロスラン亡き後、その息子とも契約し、長きにわたってライナス帝国を守護した。いまだ多くのライナス帝国民が慕っている水の聖獣が氷猿だった。

アリさんと出会ったドトル山で、その聖獣はロスランの生まれ変わりが会いにきてくれるのをずっと待っていたという。

フィリップおじさんはアニレーを採取したあと、極悪甲種の巣から逃げるのに失敗し、その聖獣に助けてもらった。そのときに聞いたそうだ。


私が大きな声をあげたので、周りからの視線が集中する。


「あ……えーっと。ロスランと契約した聖獣のことを思い出して……。神様もロスランもいるから、会いたいだろうなぁって」


ロスランと契約した聖獣のことを知っている人と知らない人で、反応が違うのが見てわかる。


「……なぜジェイリンが?」


その中でもヘリオス伯爵の反応は顕著(けんちょ)だった。

ヘリオス伯爵は知らなかったようだ……。

もしかして、公表してない?言ったらまずかった??


「ジェイリン様はずっと、ロスランの生まれ変わりを待っていた」


「ジェイリン様はロスランの願いを叶えたのち、

ロスランと出会った山に、ライナーシュの花とともにこもったんだ」


「創造主様のもとへ帰らねばならぬのに、無理をしてでもこちらの世界に留まろうとしたのじゃ。憐れに思った先代の精霊王たちが創造主様に願い、精霊王の力でジェイリン様が可能な限りこちらの世界に留まれるようにしたのだが……」


「もうすでに限界が来ている。それに、今、創造主様のもとへ帰っても……ジェイリン様という存在は保てないと思う」


精霊王様たちが順に言葉を繋いでいく。

彼らの目には憐れみがあった。それは、ロスランに対してなのか、ロスランと契約した聖獣、ジェイリンに対してなのかはわからない。


「契約者が死ねば、聖獣は新たな契約者を選ぶんじゃないのか?セオドアはそうだっただろっ!」


セオドアって誰?


『聖獣の役目はこちらの世界にいることのみ。別に契約者がおらずとも困らぬ。契約者とは、創造主より与えられた褒美(ほうび)のようなものだ』


そうソルが告げると、神様もソルの言葉を肯定した。

こちらの世界を実体験してもらうために、聖獣が好む資質を持つ者を定期的に選んでいるとかいないとか。

つまり、引きこもり防止策が契約者ってこと?

私はチラリとソルを見た。

ここに、ん百年も北の山脈に引きこもっていた聖獣がいるんだが?


「それに、セオドアはお主がジェイリン様に願ったからだろうて。セオドアが資質を持っていたゆえ契約者となったが、あやつらは……実に母子のようであったぞ」


火の精霊王は、どこか懐かしむように目を細める。

だからセオドアって誰よ?みんな知っている(てい)で話しているけど、私は知らないのですが??


「おねえ様、セオドアって誰?」


「ロスラン陛下の長男で、二代目皇帝になられた方よ」


お姉ちゃんにこっそりと教えてもらう。

二代目かぁ。二代目って、なぜか印象が薄いよねぇ。

いや、頑張っている二代目さんもいるけど、某将軍家のイメージが強いのもあるのかな?


「ならば、愛し子!ここにジェイリンを呼べっ!!」


血走った目で叫ぶヘリオス伯爵。

しかし、パパンとお姉ちゃんの魔力がブワッと広がり、炎がヘリオス伯爵へ襲いかかる。


「よさないか。創造主様の御前だぞ」


水の精霊王が手を一振りしただけで、炎がかき消えた。


「失礼いたしました、水の精霊王。しかし、己の状況も理解せずに、ネマへ命令(・・)するような不届者は処分いたしませんと」


パパンは神様の前だろうが、精霊王様がいようが、強火の姿勢は崩さなかった。

それを見て、神様は心なしか嬉しそう?

パパンは王族の血統であり、仕事もでき、魔力も超大なチート。つまり、神様のお気に入りである。

もしかして神様、自分の人選は確かだったって自画自賛中だったりする?

ちょっとした好奇心で、心の中で神様に問いかけてみたら、神様がスンッて固まった。

帰ってしまったのかと一瞬焦ったが、神様がゆっくり横を向いたので安心する。

言い当てられたのが恥ずかしかったのかもしれない。

心の中で神様に謝っておく。

最初は公爵家なんて大変そう……っていうか、平民に生まれてのんびりもふもふライフの方がよかったって思ったこともあった。

しかぁし!ラース君と気兼ねなく遊べるし、獣舎や竜舎にも行き放題だし、レアなもふもふてんこ盛りなのを考えると、公爵家でよかったと心から思う。

ちょーっと過激な家族だけど、パパンとママンの娘にしてくれたことは感謝感謝だよ。


それはさておき、ジェイリンの気持ちを(おもんぱか)るなら、やっぱりヘリオス伯爵に会わせた方がいいんじゃないかと提案したら、神様陣営――聖獣から精霊王様から、神様本人からも反対された。


『弱ったあの子を呼び出せば、否が応でもこちらに帰らざるを得なくなるが?』


それはダメだ!

しかし、ヘリオス伯爵がドトル山まで会いにいくというのもなぁ……。

テオさんが陛下の勅命を持って、ヘリオス伯爵を捕まえにきていることから、今後、ヘリオス伯爵が自由に外を歩き回れることはないだろう。

もう少し早かったらと思わずにはいられない。


「そういえば、ヘリオス伯爵はいつ記憶を思い出したの?」


転生のパターンとしては、私のように生まれたときから記憶があるパターンと、ある日突然思い出すパターンがお約束だろう。

ロスランのときは生まれたときからだったと思うが、ヘリオス伯爵としてはどうなのか気になった。


「……フランティーナ・ヘリオスとして生まれたときから、ロスランとしての記憶はあった。地球の記憶は半分くらいか。ふとしたときに思い出すだけだ」


それから、何かのスイッチが入ったのか、またブツブツと罵詈雑言が飛び出す。

前世、前々世も男だったのに、女に生まれて苦労しただとか、ご両親に散々女の子らしくしろと言われて反吐が出るだとか、マイルドに訳すとそんな感じ。

確かに、男性として生きた長い期間の記憶を持ちながら、女性として生きるのは大変そうだ。


「記憶があったのなら、ジェイリンのことは調べたりしなかったの?」


ヘリオス伯爵はロスランの能力を引き継いでいるみたいだし、精霊と意思疎通ができるなら、ジェイリンのことも知っていた可能性あるよね?

もし、ジェイリンの現状を知っていて後回し……放置していたとしたら、会わない方がいいのかもしれないと思った。


「調べたに決まっているだろ。ジェイリンはセオドアの死後、ライナーシュの花とともに消えた。それ以降の情報はいっさいなかった。だが、そんな聖獣はジェイリンだけじゃない。人知れず、旅立ったのだろうと……」


そういえば、ライナス帝国の歴代聖獣は、契約者が亡くなったあと、ほとんどが姿を消している。

稀に、数代後の皇族と契約する聖獣もいたそうだが……。

聖獣って、契約者が死んだらみんな神様のもとへ帰るの!?


「創造神様、発言をお許しください」


そう声を上げたのは、テオさんだった。

普段通りの無表情ではあるものの、緊張しているのか手を強く握り締めている。


『許そう』


神様が許可すると、テオさんはゆっくりとライナス帝国の歴代聖獣について語り始めた。


「歴代の聖獣様方については、すべて記録されている。契約者が旅立ったあとどちらに行かれたのか、また新たに契約したのか、いつ創造神様のもとへ旅立たれたのか、すべてだ。その中でジェイリン様だけが、精霊に聞いてもわからないと言われ、いっさい行方がわからなかった。だが、旅立たれたという情報もなかったため、歴代皇帝は密かにジェイリン様の行方をずっと探していたんだ」


歴代皇帝の極秘情報なら、一貴族でしかないヘリオス伯爵ではどう頑張っても知りえなかっただろう。

しかし、ヘリオス伯爵がロスランの生まれ変わりだと認識していた精霊王様たちが教えるんじゃダメだったのかな?

あ、でも、精霊王様たちに会うには、聖獣と契約していないとダメなんだっけ。


「テオ様、先帝様よりも前の皇帝と契約した聖獣もまだこちらにいるってこと?」


「あぁ。先々代の聖獣、カント様は今、トジ大陸でお休みになられている。さらに前のトート様は、新たな契約者と一緒に旅興行をされている」


トジ大陸って……過酷な環境のせいで、獣人と魔物しか住んでいないと言われている大陸だ。

まぁ、各大陸に精霊王がいるんだし、各大陸に聖獣がいないわけないか。


それにしても、歴代の聖獣がまだこちらにいるとなると、水の聖獣ばっかりじゃね?

ソルたち原竜と、ディーとカルヴァは別枠として、水以外は一頭ずつしか知らない。

知らないだけで、実はいっぱいいるのかな?


「神様、聖獣はどれくらいいるの?」


気になったので、神様に聞いてみた。


原竜(げんりゅう)は属性ごとだけで、光と闇は一対のみ、他はそれぞれ三から五ほどいるね』


「そんなに!?」


つまり、ラース君で例えるなら、天虎(てんこ)があと二頭以上いる!?

まだ見ぬレアもふがそんなにたくさんいるのか!!


『トジ大陸にカントがいるように、聖獣が住まうのはラーシア大陸だけじゃない。特に、風や水の子たちはじっとしていられない子が多いから、あちらこちらで楽しんでいるよ』


風はわかる。風竜さんもいろいろなところに行っているようなこと言ってたし。

でも、水の聖獣もっていうのは意外だったな。


「ヘリオス伯爵が水の聖獣と出会えていたら、契約者になって、ジェイリンのことを教えてもらえたかもしれないね」


私がそう告げると、いっせいに聖獣たちから否定された。

みんな同時に首を横に振る動作がシンクロしてて可愛いんですけど!今度またやってもらいたい!


『あの者には契約に足りる資質がない。幼い頃にはあったかもしれぬが、それでも契約する聖獣はおらぬな』


「えぇぇ!?元愛し子だよ!?」


ソルの告げた内容に、私だけでなく、周りからも驚いた声が上がる。

だって、精霊たちもヘリオス伯爵のお願いを聞き入れてたし、愛し子の残滓(ざんし)とやらで好ましく思っているんじゃないの?


『愛し子であることと、契約者の資質を持つことは別物だ』


契約者の資質って、神様に気に入られているだけじゃないの?

私の知っている契約者たちにある共通点といえば、王族や皇族の血を引いている人物ということくらいか。

ヘリオス伯爵家には皇族の血が流れていないから、資質が少なかったとかなのかな?


『その者について少し説明しよう』


神様はそう言って、ヘリオス伯爵……ロスラン?について話し始めた。





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