原竜くらべ。
結局、ワジテ大陸のことはソルが頑として語らせようとはしなかった。
仕方ないので、別の話題……というか、先帝様たちを紹介する。
「ご拝顔の栄に浴し、恐悦に存じます。わたくしは青天馬サチェの契約者、バルガディーノ・ヴィ・ライナスと妻で、地虎カイディーテの契約者であるアイデリーナ・パスディータ・ライナスでございます」
先帝様が恭しく挨拶をする。
皇太后様は先帝様の横で綺麗な礼を取った。
こういう光景を見ると、ソルが凄い存在なんだと感じる。
『あぁ、会うのは初めてだな』
『水と地の契約者!初めましてだね!』
風竜はあれとして、ソルがまともに返事をしているのはちょっと珍しいかも。
風竜が二人に顔を近づけようとすると、即座にカイディーテが間に入って威嚇する。
『そんなに怒らなくても……地虎は本当に嫉妬深いなぁ』
風竜はカイディーテ以外の地虎にも会ったことがあるような言い方をした。
地虎が他にもいるって聞いたことないけど、ワジテ大陸にいるのだろうか?
先帝様たちが挨拶を終えると、次はヴィの番。
ソルには久しぶりって挨拶して、風竜にはラース君の契約者ですって自己紹介をする。
次はお兄ちゃんとディーの番なんだけど、お兄ちゃんが自己紹介をする前に風竜がディーを見て驚いた。
『お前さん、もう契約したのか!?早すぎるだろっ!いろいろと面白い場所に連れていってやろうって思ってたのに……』
と、最後はしょんぼりしてしまった風竜に、ディーも申し訳なさそうに一鳴きする。
「契約者がいたら、その面白い場所には行けないの?」
契約者がいたら行けない。つまり、契約者にとっては危険な場所ってことかもしれないけど、聖獣が側にいればどうにかできそうな気もする。
『そういうわけじゃないが、契約者の側を離れたがらない奴が多いからな。契約者がいなければ、あちこち遊びにいけるだろう?』
契約者抜きで遊びたいってことだったのか。
確かに、契約者を持つ聖獣とでは難しいと思う。
「ソルや他の原竜さんとは遊ばないの?」
『火のおやっさんが遊ぶと思うか?地の兄貴も寝てばっかりで相手してくれないし、水のちびはまだこちらに来られないよ』
まぁ、ソルは遊びそうにないけども。地竜も聞いた限りでは地中に引き篭もりっぽいし。……水のちびって水竜のことだよね?
私がライナス帝国に来てちょっとくらいのときに、水竜が神様のもとへ帰っていった。その後、新たな水竜が来たとは聞いていたが……。
「水竜さん、こちらに来られないってどこか違うところにいるの?」
『水のちびはワジテ大陸の湖を住処にしてんだが、前の奴と違って気が弱くてな。住処から出たがらないんだ』
神様から与えられた知識があっても、いきなり知らない場所で生活しろって、今さらだけど結構な無茶振りだな。
「ディーが離れても大丈夫だと思ったときは、遊びにいってもいいからね。僕もヴィルと一緒にいる時間がそこそこあるし……」
お兄ちゃんがディーにそう伝えると、ディーは淋しげな声でグルグル鳴き始める。
「でも、ディーは外で遊ぶのが好きだったでしょう?せっかく飛べるようになったんだし、前みたいにいっぱい遊んで欲しいなって」
『契約者は話がわかるいい奴だな!』
「でしょ!私のおにい様なのよ!」
私がドヤ顔をつけて自慢げに言うと、お兄ちゃんは苦笑しながら風竜に名乗る。
「ディーは以前の記憶があるので、聖獣としてまだ未熟な部分があると聞いています。他の聖獣殿たちの力の使い方を見ることもディーには必要だと思うので、よろしくお願いいたします」
お兄ちゃんは風竜に頭を下げた。
『新しい光の、契約者と離れるのが不安なら竜玉を作ればいい。獅子光の場合は陽玉だったか』
風竜曰く、その陽玉とやらも竜玉と同じで、形を変えられるし、聖獣の許しがあれば聖獣の力も借りられるそうだ。
『聖獣が作る玉は契約者以外に与えても問題ない。愛し子にもわたしの竜玉をあげようか?』
あげようかって言った次の瞬間には、ソルの尻尾で殴られていた風竜。
そういえば、竜玉は原竜が気に入った相手に渡すこともあるんだった。
ソルが不機嫌そうなので、風竜の竜玉は遠慮しておいた。
また暴走したら困るし……。
「教えてくださり、ありがとうございます。ディー、戻ったら試してみようか?」
――ぎゃう!
ディーは嬉しそうに、尻尾をゆっさゆっさと揺らしている。
ちょっと羨ましいなって思ったけど、考えようによっては陽玉があればディーは一人でもライナス帝国に遊びにこられるというわけで……。
つい、顔がニヤついた。
「ネマ、炎竜殿に新しいお友達を紹介したら?」
お兄ちゃんにそう言われてウルクに視線をやると、なんかビシッと固まっていた。人間で言うなら、気をつけをしている状態に近い気がする。
そんな緊張気味のウルクを呼び寄せ、ソルと風竜に紹介する。
「この前行った遺跡にいたムシュフシュのウルクだよ!それで、尻尾の先についているのがスライムの紫紺」
――元は南の荒れ野を住処にしていた名もなきムシュフシュ。火の原竜様にお許しを得、竜の娘に侍しております。
ウルクは頭を低くして、堅い感じの挨拶を述べる。紫紺は短くむっと鳴くだけだったけど。
これ、ウルクの言葉がわからなければ、ウルクが降服しているようにも見えるな。
ソルは、私の相手は大変だとかなんとかウルクに声をかけた。風竜は、自分には関係ないと思ったのか、一言もなくスルー。
その沈黙の間が重く感じたので、私はお姉ちゃんから葡萄を受け取り、ソルと風竜が見やすいように両手に乗せて高く掲げる。
「あと、スライムの赤ちゃんで葡萄も来たの!」
『お主はまたそうやって……』
『へぇ、火と毒の混ざりかけは初めて見るな』
ソルには呆れられ、風竜は物珍しそうに葡萄を見つめた。
紫紺と葡萄はウルクの毒針対策係だから、いつもみたいにうっかり増やしたわけじゃないと、ソルにはしっかりと説明しておいた。
みんなの挨拶タイムが終了したので、ここからはなでなでタイムだ!
「風竜さん!なでなでさせてください!」
『おれに触りたいの?いいよー』
率直にお願いすると、風竜はあっさりと許してくれた。
お礼を言って、いざ!なでなで開始!!
るんるん気分でまずは顔から触れてみる。
ソルと同じように表面はひんやりすべすべ。首元も、お腹も同じくすべすべ。
ふむ、この肌触り……ソルとほぼ一緒だな!
ソルとの違いを探すべく、ソルと触り比べをしながら背中も尻尾も翼も、なんなら爪の先まで全部触ってみた。
結果、全部ソルと一緒!!
同じ原竜という種類だとしても、ここまで個体差がないのってどうなの!?
ラース君とカイディーテは、あんなにはっきり違うのに!
神様の手抜き?それとも、同じであることに何か意味があったりするのだろうか?
「ソルと風竜さん、そっくりだね……」
『そりゃあ、おれも火のおやっさんも原竜だしな。違うのは自我と属性くらいしかないだろうよ』
原竜ってそんなに個体差がないのか。ってことは、水竜も地竜も一緒ってことで……。ちょっと残念。
神様、そこはもっとこだわって欲しかったなぁ。
『あ!でも、鱗はちょっと違うかもしれん。愛し子、おれの鱗を剣か何かで叩いてみな』
急にそんなことを言われてびっくりした。
いや、さすがに剣とか持ってないし、警衛隊に借りられたとしても持ち上げられないと思う。
待てよ。叩くだけなら短剣とかでもでいいのでは?
うさぎさんリュックを下ろし、中からゴーシュじーちゃんにもらった短剣を取り出す。
風竜が抜き身の方がいいと言うので、鞘から抜いた。
そして、おそるおそる短剣を風竜に当てると、コッと小さく音がした。
『もっとガッとやらないと』
傷つかないとわかっていても、生き物に刃物を振るうのは恐ろしい。
覚悟を決めて、えいやっと勢いをつけて短剣を叩きつけると、予想外の音が響く。
――リーーン……。
涼やかで伸びのある音が鱗から発生したというのか?
『次は火のおやっさんを叩いてみろ』
目を見開いていたら、風竜は楽しげに言う。
さすがにソルを叩くのは……とソルに視線をやれば、好きにしろと言わんばかりに尻尾を私の前に置いた。
ソルと風竜の周りを走り回っていた星伍と陸星も、いつの間にか側に来ており、わくわくと私を見つめている。
ならば遠慮なく!
ソルの尻尾に短剣を振り下ろす。
カーーンッと、どこかで聞いたことあるような音がした。
「んー?」
なんの音に似ているのか思い出せない。思い出したい。
もう一度、叩いてみる。今度は連続で。
カーンカーンカーンとリズムを刻めば、あるものが閃いた!
結婚式のときの鐘の音!!
鐘といっても形状などで音は異なるが、お寺の鐘のような低音ではなく、小さめの鐘が発する高音に似ているのだ。
思い出せてすっきりしたけど、今度は風竜の音が何に似ているのか気になってきた。
「風竜さん、もう一回やってもいい?」
『どうぞー』
じゃ、遠慮なく。
リーン、リリーンと、ソルのときとは違うリズムで叩いてみた。
するとどうだろう。どこか懐かしい音になった!
前世の実家で、夏が過ぎてもそのままで、秋が深まった頃にしまわれていたガラス製の風鈴。
その音にそっくりだ!
「どっちもきれいな音がするけど、さっきソルが尻尾で風竜さんを叩いていたときには鳴らなかったよね?」
『威力の差だろ。火のおやっさんは容赦ねーから』
この前、森鬼とウルクがやり合ったときみたいな感じってことかな?
鱗で受け止められる衝撃のときは綺麗な音が出て、体の内部に伝わるような衝撃のときは普通の打撃音みたいになると。
……ソル、風竜に手加減なしで叩いてたんだな。
「ほとんど同じなのに、うろこの音が違うのは不思議だね」
『なんで違うのかまでは知らないけどな』
風竜が知らないなら、ソルはどうかと聞いてみても、知らないと返答された。
水竜と地竜はどんな音なんだろうか?
会ったときの楽しみが増えたぞ!
そういえば、地竜のことはソルから聞いたけど、風竜は地竜のことをどう思っているのかな?
せっかくだし聞いてみようとしたら、パウルにそろそろ戻る時間だと声をかけられた。
なでなでに時間をかけ過ぎてしまったようだ。体感ではまだ来たばっかりって感じなのに、楽しい時間はあっという間だね。
「風竜さん、また遊んでくれる?私、今はライナス帝国の宮殿にお世話になっているんだけど……」
『ライナス帝国か……あいつ次第だね』
と、風竜は尻尾でカイディーテを指す。
そういえば、ユーシェもソルがライナス帝国に来たときに怒ってたな。
縄張り意識みたいなものがあるのだろう。
「ユーシェもいやって言うかな?」
『……あぁ!新しい方の青天馬か!』
風竜、ユーシェの名前を忘れてたの!?それはユーシェが可哀想だよ。
「ユーシェやサチェとは遊んだりしないの?」
青天馬も空を飛べるので、風竜と一緒にお出かけもできるよね?
『いや、あいつら契約者の側から離れたがらないし』
そうでした。
ユーシェは私とはよく遊んでくれるけど、皇帝陛下のことが大好きなのは一目瞭然でしたね。
「じゃあ、私がガシェ王国に戻ったら遊ぼう!ラース君、いいよね?」
風竜がガシェ王国に遊びにきてもいいよねって意味でラース君に聞いたら、ちょっと不機嫌そうにガルッて鳴かれた。
「国から出ないか俺が同行するのが条件だと言っている」
「えぇぇー!」
ラース君の言葉を通訳してくれたヴィに対して、私は不満を隠さずに声を上げる。
すると、ヴィが当たり前だろうと返してきた。
いや、ラース君の気持ちはわかるよ?もれなくヴィがついてくることがだね……。
「そんなに俺と一緒が嫌なら、このまま王宮に連れて帰ろうか?ん?」
「けっこーでしゅ!」
ヴィが片手で私の両頬をがっしりと掴んでいるからしゃべりづらい!
無理にしゃべったら、ほっぺの内側をちょっと噛んでしまった……。痛い。
痛みで顔を顰めたことに気づいたのか、ヴィがニヤリと笑った。この腹黒い笑みが憎たらしい!
そんなヴィの手をお姉ちゃんがピシリと叩き落とす。つか、叩いて、ガシッて掴んで、ポイッ!!とかなりの早業だった。
「そう軽々しく淑女に触れるものではありませんわよ、殿下」
「そうだよ。ネマが可愛いから触りたくなる気持ちはわかるけど、自重しようね」
お姉ちゃんとお兄ちゃんに責められ、ヴィは降参だというように両手を挙げる。
「はいはい。俺が悪かった」
悪かったなんてこれっぽっちも思ってないな!
なので、私はささやかな反撃をすることにした。
「ヴィが意地悪するなら、風竜さんと遊ぶときに連れていってあげないからね!保護者ならおにい様とディーでもいいんだし」
私がそう告げると、ヴィはちょっと悔しそうにそうきたかと呟いた。
風竜に憧れているなら、一緒に遊べないのはさぞ悔しいだろう。
「父上も協力してくれるだろうから、風竜殿と遊ぶときは僕を呼んでね」
キラキラな笑顔のお兄ちゃん。どうやら、ヴィを弄るのが楽しいみたい。
でも、遊ぶならみんなで遊ぶのが一番だよね。
「お家に帰ったら、ルルド山のときみたいにみんなでいっしょに遊ぼうね!ソルと風竜さんも呼んでさ。アリさんにも会いにいきたいし」
広い場所なら聖獣や魔物っ子たちも遊び回れるしね。
「あのときお兄様は同行できないと、とても残念がっていたものね」
レスティンの怪我を治すお薬の材料を探すために、砂漠を越えて、海に面する崖まで行ったり、雪山で野営したりと大変だったけど、とても楽しかった!
アリさん、元気にしているかな?
「本当だよ。なのにヴィルだけちゃっかりライナス帝国に行っちゃうし……」
拗ねているお兄ちゃんが可愛い。
お手紙にもヴィが羨ましい、僕と代わって欲しいみたいなことをずっと書いてたもんね。
「ヴィル、名残惜しいがもう戻らないと、午餐会の準備に間に合わなくなるぞ」
先帝様がそう声をかけてきて、私ははっとしてパウルの方を見やる。
懐中時計を開き、時間を計っている様子。
私が見ていることに気づいたパウルは、なんでもないことのようにさらりと爆弾を投下した。
「あと一色で奥様とのお約束の時間です」
先帝様が言っていた午餐会。立太子された第一王女様のパレードが終わって、午後から開催されるので間に合う時間に戻ってくるようママンに言われていた。
もちろん、間に合う時間というのは、衣装チェンジなどの身だしなみを整えるを時間含む。
約束の時間に遅れたとなれば、ママンのお説教待ったなしだ。
私だけでなく、お兄ちゃんもお姉ちゃんも事態の深刻さを理解して、顔が固まっている。
「パウル、急いで戻るわよ!」
真っ先に復活したお姉ちゃんが、パウルに指示をする。
私とお兄ちゃんは、ソルと風竜に急いで戻らないといけないことを告げた。
『おれが送っていこうか?そこの奴らもまとめて、あそこの城に下ろせばいいんだろ?』
風竜の申し出に驚いた。
「みんなを一気に運ぶことができるの!?」
『おれ、風竜よ?というか、天虎もできるけど?』
ラース君もできると言われて、それには納得だ。だけど、ヴィの関係者でもない警衛隊を運んだりしないと思う。
「いいの?知らない人もいっぱいいるのに……」
『いいよ。風で運ぶだけだし』
なんとありがたい!
早速、先帝様に風竜が運んでくれると報告する。
そして、風竜はみんなを一ヶ所に集め、一定の距離を空けるように言う。
その中にお姉ちゃんが交じっているのは……見なかったことにしよう。
私と稲穂はソルに乗っており、星伍は海、陸星はお兄ちゃんと一緒だ。そして、すでに空中で待機している。
風竜に乗せてもらうのはまた今度だねー。
『じゃあ、いくぞ』
みんなが集まっている周りを風が囲うように吹く。
その風がブワッと膨らんだように見えたと思ったら、スーッとみんなの体が浮き始めた。
無重力状態で物が浮いたときに似ているかも?
ふわふわと浮くものだから、バランスが取れずに隣の人とぶつかる者、二、三人で手を繋いで上手くバランスを取っている人たちもいる。
お姉ちゃんなんか、スピカと手を取り合ってキャーキャー言っているんだけど、めっちゃ楽しそう……。私もあっちに加わればよかった!
無重力体験だったなんて聞いてない!!
全員が浮かび上がったのを確認し、風竜もその大きな翼で浮き上がる。
そして――。
『んじゃ、ぶっ飛とばすぞ!』
宙に浮いたみんなに向かって、力強く翼をはためかせて、風を打ち当てた。
その風に押されるように飛んでいくみんな。
わーとかきゃーとか悲鳴が聞こえるけど、見ている限りでは、そこまでスピードが出ているようには感じない。
たぶん、ゆっくり安全運転の車くらい?
風竜はゆっくりと飛びながらみんなを追っていく。
『風が気持ちいいだろ?』
とか言っているので、ああやって人を運んでいるときのリアクションを楽しんでいるのかもしれない。
「風竜さんって、ちょっと変わってる?気安いというか、他の種族に対して壁がないよね?」
初めはその軽い口調に驚きもしたが、慣れてくるとソルや他の聖獣たちよりも人間に対して寛容なんだと気づいた。
『あれの性質が風だからだろう。風と水は常に流れ、形を持たぬ。ゆえに自由だ』
ソルの言葉はいつも難しい。というか、抽象的すぎて理解できないことの方が多い。
「つまり、自由にあっちこっち行ったり、交流したりしているってこと?」
『そうだ。あれが興味を持てば関わるし、なければ通り過ぎるだけだ』
ようは、ソルや地竜に比べて、コミュ力が高いってことか。
「水竜さんも?」
『あぁ。新しいのはまだこの世界に慣れているさなかだから移動はしていないようだが、慣れればあちらこちらに動き、海上で嵐を呼んだりして遊ぶようになるだろう』
嵐を呼んで遊ぶって……そんなことしていいの?
いや、地竜も寝ぼけて地形を変えたりしているから、嵐ならまだ可愛い方か??
原竜のとんでもない行動について考えていたら、あっという間に王城に到着した。
風竜に運ばれたみんなはあれだけ騒いでいたにもかかわらず、地上に下ろされるとケロリとしていた。ウルクを除いて……。
――気持ち悪い……。
ウルクはくたぁっと地面に横たわり、慌ててお兄ちゃんに治癒魔法をお願いする。
どうやら、酔ってしまったようだ。
砂のスライダーのときもそうだったので、ウルクはスピードが出るものは避けた方がいいね。
ちなみに、お姉ちゃんとスピカは大満足のようで、楽しかったと笑顔で感想を述べていた。
私も体験したかった……。