原竜はみんな仲良し?
ソルと風竜の姿を仲良しだなーって眺めていたら、徐々に様子がおかしくなっていく。
風竜がソルに近づくと、ソルは大きな口をグワッと開けて威嚇しているように見える。
そんなソルを嘲笑っているのか、はたまたソルの照れ隠しだと思っているのか、風竜は気にせず体を寄せる。
そして、ソルの尻尾攻撃を受けてよろめいた。
このままでは怪獣映画のようなバトルが勃発してしまうのでは!?
火炎放射器のように炎を放つソル。竜巻を起こして炎を蹴散らそうとする風竜。
炎は風で勢いを増し、辺り一面焼け野原。……という最悪な状況が想像できてしまった。
おめでたい日にそれはダメだ!!
――ソルさんや!風竜さんと遊ぶなら海の上がいいと思います!
――遊んでなどおらん!此奴が勝手に絡んでいるだけだ!
ここまで不機嫌なソルも珍しい……。
実は仲が悪いのかな?
ここからではわからないが、ソルが避ける動作をしたので、風竜が何か力を放ったのかもしれない。
風の魔法は目に見えないから厄介だよね。
――じゃあ、地上に被害が出る前にどこかに下りよう!ソルが下りれば、風竜さんもついてくると思うし。
――とっとと此奴を帰せばいいだろう。
――それは嫌!私がなでなでを堪能してからにして!
ソルの鱗と違いがあるのか、すっごく気になるので帰られると困る。
――ちっ……致し方ない。
上空のソルは大きく旋回したあと、王城の近くの砦の方へ高度を下げていく。
あ、しまった!私も乗せていってもらえばよかった……。
「おとう様、私たちもソルのところに行きましょ!風竜さんを紹介してもらわなくちゃ!!」
「今はお披露目行列が行われているから、馬車は動かせない。行くとしたら……」
パパンは空を見上げる。空から行けってこと?
空を飛べる聖獣がいるので、送ってもらえば……。
お姉ちゃんの目がキラキラしてる!必死に一緒に行きたいって訴えてきてる!!
お姉ちゃんを乗せてくれる聖獣はディーしかいない。ラース君もお願いしたら乗せてくれるかもしれないけど、その場合、もれなくヴィとタンデムだ。
ヴィは気にしないかもしれないが、お姉ちゃんは絶対に嫌がるだろう。
私としても、お姉ちゃんをヴィに任せたくないので、お兄ちゃんとお姉ちゃんはディーで確定だな。
「ワンッ!」
「ワンッ!」
星伍と陸星が呼ぶので視線を二匹の方にやると、こちらもお目めをキラキラさせて訴えてくる。
ちょっと前までウルクに怯えていた二匹だが、ソルのことは平気……というか、遊んでくれる相手と思っている節がある。
仮とはいえ、ソルが私と契約しているからなのか?
稲穂にいたっては、属性の相性からめっちゃソルに懐いているし。
――俺も炎竜様にお会いしたい。
竜種にとっては憧れの存在だもんね。会えるなら会いたいよね!
でも、ウルクを運ぶ手段がない!!
どうしたものかとうんうん悩んでいたら、先帝様がこちらにやってきた。
「もう炎竜殿は帰られたのかな?」
どこか残念そうな先帝様。
ソルと風竜のことを説明すると、先帝様はとんでもない発言をした。
「儂も行く」
その直後に、後ろに控える警衛隊隊長さんが深いため息を吐いた。
先帝様はサチェに乗ればいいけど、護衛の警衛隊はどうするの!?
ライナス帝国からワイバーンを呼ぶつもり?
「けいえい隊の皆さんはどうするのですか?」
「アイデリーナに拝み倒す!」
皇太后様を拝み倒す?
意味がわからず困惑していると、皇太后様もやれやれって顔をしているのが見えた。
「わたくしが同行しなければ、カイディーテは他の方の面倒はみませんよ」
ふむ。ひょっとして、カイディーテは人を運ぶ能力があったりするのだろうか?
超便利な土魔法だもの、空を飛ぶなんてこともできるのかもしれない。
でも、聖獣だから契約者以外は運ばないと。
「アイデリーナは原竜を見たくないのか?めったにお目にかかれない風竜も一緒だぞ?」
ワクワクが抑えきれない先帝様の様子に、私はなるほどと頷いた。
「急に納得したような顔をして、どうした?」
私がうんうんと頷いていたのを目撃したヴィが聞いてくる。
「ヴィとの血のつながりを感じるなぁって」
ソルと一緒に風竜が登場したとき、先ほどの先帝様のように落ち着きがなかったし。先帝様にしても、大きな男の子みたいだ。
「少年レヴィンの冒険を読んで、風竜に憧れない男はいないと思うぞ?」
ヴィのどこか気まずそうな返答に、私はもう一度あぁって納得した。
『少年レヴィンの冒険』は大陸中で親しまれている童話……というより、児童文学に近いかな?
田舎育ちの主人公・レヴィン少年が冒険者になりたいと家を飛び出すところから物語は始まる。そして、仲間ができたり、初めての依頼をこなしたりと、ありきたりな成長もの冒険譚なのだが、そのレヴィン少年がピンチのときに颯爽と登場するのが風竜なのだ。
レヴィン少年は契約者でもなんでもないのだが、最初の邂逅で少年を気に入った風竜がその後も気にかけてくれるという。
ぶっちゃけ、契約者であるヴィは聖獣がそんなことするわけないと、夢も希望もない感想を抱いていそうって思ってた。子供らしい一面もあったんだね。
「アイデリーナ、側にいてくれるだけでいいんだ。頼むよ」
皇帝だった威厳はどこへやら……。先帝様は皇太后様に必死にお願いをしているが、皇太后様は美しい微笑みを崩さない。というか、どこか楽しそうなご様子だ。
まぁ、カイディーテの性格を考えるとね。皇太后様が一緒に行かないなら、絶対動かないと思う。
先帝様と皇太后様の攻防を見守りつつ、私はカイディーテに質問した。
「けいえい隊のみんなやうちのウルクを運ぶことができるの?」
ガウと肯定が返ってくる。
「どうやって?」
――グルルル。
うーん、なんか説明はしてくれているみたいだけど……。カイディーテの周りに砂が現れて動いていることから、砂をどうにかしてみんなを運ぶのかな?
「以前、主にせがまれて作ったものに似ているそうだ。運ぶものを固定して砂で運ぶと」
森鬼が通訳してくれたけど、砂のスライダーに似ているのに人を固定するの?砂だけが動くってこと?
頑張って想像してみようとしたが、まったくもってイメージがつかない。
でも、先帝様がカイディーテなら運べると言うのなら、過去にもそうやって移動したことがあるってことだろう。
私としても、ウルクの希望を叶えてあげたい。
「皇太后様がごいっしょなら、みんなを運んでくれる?」
――……グルッ。
返事にやや間があったことから、契約者以外を運ぶこと自体が不本意なんだろうなぁ。でも、皇太后様のお願いだから聞き入れると。
カイディーテ、健気すぎるよ!
「カイディーテ、無理はしちゃダメだよ?いやなときはちゃんといやって言ってね。みんなで他の方法を考えるから!……どうしようもないときはお願いするかもだけど……」
嫌なことはしなくていいって言えたらいいんだけど、皇太后様の立場だと国のためにお願いしたり、命令することもあるかもしれない。
だから、私とかのお願いは嫌だったらちゃんと言ってねってお願いする。
――ガルルル。
「本当に嫌なことは、契約者のお願いでもやらないそうだ」
私が言うまでもなく、めっちゃしっかりしてた!
じゃあ、他人を運ぶのは不本意ではない?
「ひょっとして……運ぶの面倒くさいって思ってる?」
私の問いに、ゆっくり頷くカイディーテ。
面倒臭いのか。それは仕方ないね。面倒臭いって気持ちはどうしようもできないもんね。
自分も面倒臭いときはとにかくやりたくない、動きたくないって思うから、気持ちは理解できる。
カイディーテのやる気スイッチを押せるのは、皇太后様だけなんだね!
「ネマも風竜に会いたいだろう?」
カイディーテとお話してたら、なんかこっちにまで飛び火してきた。
「会いたいですけど、カイディーテがい……」
「ほら、ネマもこう言っている」
最後まで言わせてよ!
カイディーテに無理強いするつもりはないんだってば!
「仕方ないですわね……」
皇太后様がついに折れるのかと思ったら、それはもう美しい笑みを浮かべて続けたのが……。
「十日ほど余暇をいただけるならご一緒します」
と、交換条件を出してきた。
「余暇だと?」
先帝様も意外だったようで、一瞬驚いたあと、真剣な表情で考え始める。
皇太后様がお休みを取っても大丈夫か、帰国後の予定などを思い返しているのだろう。
そして、算段がついたのか、返事をしようと口を開くより先に、皇太后様が述べる。
「えぇ。その間の公務は陛下がなさってね。セリューや他の子たちに押しつけては駄目ですよ?」
しっかりと予防線を張る皇太后様に、言葉を詰まらせる先帝様。
皇太后様がお休みしている間の公務を、先帝様が全部引き受けてねってことだけど、大丈夫なのかな?
まぁ、もう退位されているので、皇族としてのお役目くらいだと思われるが。
「わかった。アイデリーナの分も儂がこなす。それでよいか?」
先帝様が決意すると、皇太后様は嬉しそうにお礼を言う。
「カイディーテ、やったわ。ライナスに戻ったら、二人きりでゆっくりしましょう」
カイディーテはグルルと甘えた声を出し、尻尾をパタパタ振って喜びを顕にしている。
なるほど。皇太后様のことが大好きなカイディーテにとって、誰にも邪魔されずに皇太后様と過ごせる時間は間違いなくご褒美だ。
「よかったね、カイディーテ!」
そうだ!皇太后様にブラシをプレゼントしよう!
皇太后様にブラッシングしてもらったら、カイディーテもきっと喜ぶはず。
カイディーテが協力してくれたら、カイディーテ専用のブラシを作ることができるんだけどなぁ。
他人に触られるの嫌いそうだから見送ってたけど、プレゼントのブラシを気に入るようだったら、皇太后様に提案してみようか?
「そうと決まれば、すぐにでも出発するぞ!」
先帝様の言葉に慌ただしくなる警衛隊。
私の方も早く組み合わせを決めないとだ!
私はラース君かサチェに乗せてもらうとして、海は鳥バージョンになって、稲穂を連れて先に行ってもらおう。
星伍と陸星は私とヴィに抱っこかな?
ウルクはカイディーテに任せるけど、心配だから森鬼かパウルについてもらいたい。
バタバタとパウルに指示していたら、お前はこっちだとヴィに抱き上げられた。
パパンが目からビーム出そうな勢いで睨んでるよ!
「オスフェ公も同行したいと思うが、オスフェ公爵夫妻にはあとのことを頼みたい。さすがに貴公たちまでいなくなっては、ミルマ国側にも失礼だからな」
ヴィが王太子としてパパンに指示を出し、パパンは眉間に皺を寄せながら御意と受け入れた。
ママンが当然という表情をしているので、私が先帝様たちに気を取られている間に、こちらでも何かあったのかもしれない。
まぁ、うちの両親の場合、ママンが勝つのは目に見えているけど!
ヴィによってラース君の背中に乗せられると、ほらと星伍を渡される。陸星はヴィに抱っこ……俵抱きはやめろっ!
「片手の場合はこうよ!」
お腹側から腕を入れて前脚の付け根部分を手のひらで支える。そして、腕で後脚を押さえるように抱え込む。
私では腕の長さが足りないので、実演しても抱えることはできないけど、ちゃんと伝わったようだ。
二匹はギリ小型犬って言える大きさだからこの方法でもいいけど、できるなら両腕で抱っこしてもらいたい。
ウルクたちはどんな様子かと見やれば、警衛隊の隊員に囲まれていた。
「いいか、垂直のときはこうだ!足は動かせないから、こうやって手をつくんだ」
なぜか前屈をして、地面に手をついて見せる隊員がいた。
「傾斜があるところはこう。重心を低くすると安定する」
というか、なんのレクチャーをしてるの?
「あとはとにかく腹筋に力を入れて、上半身を維持しろ!」
何かを教えている警衛隊、皇太后様の警衛隊だな。カイディーテの運び方に関係あるのかも?
謎のレクチャーが終わると、いよいよ出発だ。
海はすでに人がいないところで変身して先に行っている。
警衛隊は綺麗に二列縦隊に並び、最後尾にウルクと森鬼、パウルがいた。
ちなみにスピカは、走って追いかけると意気込んでおり、今は準備運動中だ。
先帝様を乗せたサチェが羽ばたき、皇太后様を乗せたカイディーテが咆哮し、それを真似るようにディーが鳴く。
「では、カイディーテ、お願いね」
皇太后様の言葉にカイディーテは頷くと、片前脚でタシッと地面を叩いた。
地面から水のように砂が湧き、警衛隊のみんなの足に絡みつく。もちろん、ウルクたちの脚にも。
それからどうなるのか見守っていると……。
ザーッという音とともに、先日の砂スライダーのように砂が動き始めた。
ただ、砂スライダーと違うのは、人が上を滑るのではなく、砂が人を動かしている。
何を言っているのかわからないと思うが、そうとしか表現できないんだよ!
砂が動くのと一緒に人も動いている。
……あっ!アレだ!!動く歩道に似ているんだ!
なんとなくスッキリしたところで、カイディーテが皇太后様を乗せたまま地面に沈んで消えた。
「来るぞ!気合いを入れろっ!!」
皇太后様の警衛隊隊長が叫ぶと、砂の動きが一気に変化した。
動く歩道が荒ぶる歩道に……。
荒ぶる歩道は建物や地形に沿うようにして動いており、垂直にそびえる建物の外壁もそのまま。
隊員たちは体が後ろに持っていかれないよう前屈姿勢で手をついて耐えていた。
「さっきやってたのはこれのためだったのか!」
カイディーテ……契約者以外にはほんと容赦ないのね。
まぁ、ウルクは壁に張りつくこともできるので、垂直は問題ないみたいだし、森鬼もパウルも前屈せずに平然としている。
やはり、体幹が人間離れしてしているのだろう。森鬼は魔物なので理解できるが、パウルもついに人間を辞めてしまったのか……。
「俺たちも行くぞ」
あまりの光景に呆気に取られていたら、いつの間にかディーたちもいなくなっていた。
「おとう様、おかあ様!いってまいります!!」
パパンはヴィとタンデムしているのが気に入らないのか、ギリィッて顔していたのが一瞬で笑顔になった。
「気をつけていっておいで。何かあったら、殿下を盾にするんだよ!」
ガシェ王国の臣下としてその発言はいかがなものかと思うが?
様子を窺うように、チラリと後ろのヴィを見る。
「盾にするならラースか炎竜殿の方が確実だ」
ヴィは気にした様子はなく、真面目に返してきた。
確かに、ヴィは私より大きいけど、盾には向かないかな。
◆◆◆
空を駆けるラース君の真下では、荒ぶる歩道に翻弄される警衛隊たちがいた。
ばったり荒ぶる歩道に遭遇してしまった城下町の人の悲鳴もちらほら聞こえてくる。
「しっかりしろっ!意識を飛ばすんじゃないぞ!!」
正直言って、このあとちゃんと護衛ができるのか心配だ。
そんな気息奄々、青息吐息な警衛隊たちと楽しそうに並走しているスピカ。
森鬼に話しかける余裕すら見えた。さすが獣人の身体能力!
そんなこんなで到着したのは、築造流のドワーフたちが泊まっている砦の近く。
荒野と呼ぶほど広くはないが、平らく整地してある場所にソルと風竜がいた。
上から見ているだけでも、風竜はソルと同じく正統派なドラゴンって感じがする。
原竜と比べると、他の竜種はザ・恐竜って見た目だもんね。
『とっとと帰らぬか!』
『やだね。火のおやっさんが珍しく外に出てると思ったら、いるんだろ?愛し子が』
ゆっくりと降下していくと、なんか言い合いしてた。
ラース君から下ろしてもらい、ソルの方へ駆け寄る。
「ソルー!」
ソルはもう慣れたもので、私が駆け寄ると頭を下げてなでなでさせてくれる。
相変わらず、鱗とは思えないすべすべ感!
ウルクの鱗と比べると、ソルの方が硬質な感じがする。
鱗を叩いたら、金属的な甲高い音が出そうだよね。
リンドブルムは歳を重ねると鱗が分厚く硬くなるので、ソルも同じような性質を持っているのかもしれない。
「来てくれてありがとう!王女様もよろこんでたよ!」
『構わん。まぁ、風の坊主の尻拭いというのは気に食わぬが……』
それは許してあげて。
ヴィもまさか遺跡を埋めることになるとは思ってもみなかっただろうし。
『おぉ!本当に愛し子だ!ちっちゃい!なんの種族?』
ソルの横からぬっと顔を寄せてきた風竜。
竜玉のおかげで、風竜の言葉がわかるのはありがたいのだが……なんか軽くない?
「風竜さん、初めまして。私はネマって言うの。種族は人よ!」
『人ってこんなにちっこかったっけ?』
『こやつはまだ幼子ゆえ小さい』
風竜もソルも、そんなに小さいを連呼しないでよくない!?
私の成長期が戻ってきたら、すぐに大きくなるんだから!
「風竜さんは何か用事があってミルマ国に来たの?」
『あぁ、忘れてた!新しいのがこっちに来たって聞いて、ちょっくら見にきた』
「新しいの?」
『獅子光のことだ。精霊たちがだいぶ騒いでおったから、興味を持ったのだろう』
ソルは尻尾で風竜をバシバシと叩く。
風竜もソルにやり返しながら、そのときの精霊たちの様子を教えてくれた。
そのとき、風竜はワジテ大陸の方に遊びにいっており、ラーシア大陸の風の上位精霊が知らせにきたのを聞いたらしい。
ワジテ大陸からラーシア大陸に戻ると、海の上で水の精霊が輪になって踊っていたそうだ。
「そういえば、海にいくつも巨大な渦が発生したと報告があったな」
ちょっと離れたところで、ヴィが精霊の仕業だったのかと納得していた。
風竜は、獅子光がどこの国に現れたのかを聞きそびれたので、まずは西の方へ向かってみたと。
ラーシア大陸の西は、イクゥ国と小国家群があるのだが、そこでは風の精霊たちがお祭り騒ぎをしていたとか。
「大きな竜巻が複数確認されたとあったが、それも精霊が原因か」
巨大な渦潮に巨大竜巻……天変地異でも起こすつもりなのか!?
ヴィの言葉に私が驚いている間も、風竜は精霊の様子を語っていく。
火山の上を通れば、火口で火の精霊が飛び跳ね、溶岩を撒き散らし、雪山の上を通れば、水と土の精霊が楽しそうに転がり、砂漠では風と土、火の精霊が入り乱れて駆け回っていたらしい。
噴火、雪崩、砂嵐……。
ヴィだけでなく、先帝様も報告を受けたという自然災害。
どの自然災害も人里離れた場所で起きたので、人的被害がゼロだったのはよかったと思う。
『んで、火のおやっさんなら知っているかと思って探しにきたら、新しいのだけでなく、愛し子も一緒だっていうから見ていこうと思ってな』
風竜はニカッと笑っているつもりなのだろう。
犬が威嚇するときのように、鋭い牙を剥き出しにしている。
精霊たちにいろいろと申したいことはあるがその前に……。
「風竜さん、ワジテ大陸に行ったの!?」
ワジテ大陸はラーシア大陸の西の先にあるらしい。
ワジテ大陸に行くには、魔族の人に連れていってもらわないと到達できないってジーン兄ちゃんが言ってた。
大きな魔物に襲われたり、方向がわからなくなる海域があって、船では行けないんだとか。
それを聞いたときは、バミューダトライアングルみたいだなって思ったね。
まぁ、魔族の人がラーシア大陸の人が来られないよう、人為的に起こしている現象なので、ミステリー要素はないんだけどさ。
『愛し子はワジテ大陸に興味あるのか?あそこは面白いぞ!』
ワジテ大陸の様子がどんなふうなのか、ワクワクしながら続きを待っていると、バチンッと激しい音がした。
『余計なことを教えるでない!』
ソルが尻尾で風竜を叩いたようだ。しかも、風竜がよろめくくらい強く。
ソルさんや。私がワジテ大陸に行くー!と言い出すとでも思ったの?さすがにそんなこと……いつか行けたらいいなぁ。
たくさんのお祝いコメントありがとうございますm(_ _)m




