★コミカライズ9巻発売お礼小話 粘土で遊ぼう!
ダオとマーリエが遊びにきてくれた。
「いらっしゃーい!」
今日は雨が降っているということもあり、お外ではなく部屋の中で遊ぶ予定である。
「今日は何するつもり……って、準備万端ね」
呆れたというよりは、これを私にやらせるのかとジト目でマーリエに睨まれた。
リビング的な部屋の床に防水シートが敷かれ、その上にはデデンッと特製粘土を置いてある。
そう。最近のマイブームである粘土で遊ぼうと用意したのだ。
「わたくしは見ているだけにするわ」
マーリエはそう言うと思った。
しかーし!今日はマーリエにも粘土で遊んでもらおうと、あるものを用意しているのだ!!
「マーリエ、ネマは諦めてないみたいだよ?」
「嫌よ!衣装を汚したら、お母様に怒られるもの」
マーリエのドレスは準皇族のお姫様に相応しい、高級なものであるのは間違いない。それを汚したら、うちのパウルにも叱られそうだ……私がね!
「パウル、あれを持ってきてくれる?」
「畏まりました」
私とパウルのやり取りに、警戒心を強めるマーリエ。心なしか、私から距離を取ろうとしている?
しかし、逃がしはしない!
この部屋の扉の前に星伍と陸星を配置し、逃げ道を塞ぐ。
そうこうしているうちに、パウルがあるものを手にして戻ってきた。
「マーリエ様、遊ぶ際はこちらをご着用ください」
「……何?これ?」
パウルから例のブツを受け取ったマーリエは、訝しみながら両手で広げる。
白い肌着のようにも見えるそれは、私が古の記憶を掘り起こして再現したものだった。
「かっぽうぎよ!」
まぁ、実際の割烹着より裾は長くて、真っ白なワンピースみたいになっているけども。
調理中の汚れを防ぐことではなく、粘土遊びでの汚れを防ぐことが目的なので、ドレス全体をカバーできるようにしたらそうなった。
「カッポーギ……?聞いたことないわ?」
ガシェ王国独自のものかとマーリエが問うと、私ではなくパウルがいいえと答える。
「ネマお嬢様のいつもの突飛な発案ですので、軽く流していただけると助かります」
突飛な発案って……ドレスを汚すことなく遊べるグッドアイデアでしょうが!
と、パウルの何気に酷い発言に、私はふて腐れてみせる。
「これでマーリエも一緒に遊べるね!」
にっこり笑顔のダオに、マーリエもうっと言葉を詰まらせる。
さすがにこの笑顔を見て、一緒にやりたくないとは言えないだろう。
一見、無邪気な発言にも思えるが、どこかマーリエを手のひらでコロコロしているような気がしなくもない。
……強かで腹黒いダオとか嫌なんですけど!
マーリエに割烹着を着せて、粘土を置いているシートの上に連れていく。
「前回の反省をいかして、今日はいろいろと用意してみたの!」
前回、ダオと粘土遊びをしたときは、道具などいっさいなく、手だけで形を作っていた。
ダオはそれでも躍動感あふれる青天馬を作っていたが、私の方はお察しだ。
手だけでは限界がある!ならば、道具を使えばいいじゃないか!
大工組合の親方にお願いして、粘土に細工ができるような道具を依頼し、それが昨日届いたのだ。
「まずは、これ」
シートの上にずらりと並べてみる。
「……木の棒?」
「先の形が全部違っているでしょう?こうやって、もようを描いたり、穴をあけたりできるのよ!」
粘土の塊に線を描いたり、穴をあけて、実践してみせた。
木の棒は全部で十本あり、両端の形がすべて異なっている。
カトラリーのナイフのような形、錐みたいに尖っている形、彫刻刀のようなV字にヘラ状に平べったい形、球体と、バリエーション豊かだ。
まぁ、形の指定は私がしたんだけどね!
「この粘土は?見たところ、色が違うけど?」
「さすがダオ!よく気づいてくれたわ!粘土も固さが違うものを用意したの」
前回の粘土は私が試行錯誤して好みの固さにしたものだったが、それだとダオには柔らかすぎたらしい。
形を整える際に力加減が上手くいかず、何回か失敗していたからね。
なので、今回は固さが違うものを用意し、部位によって使い分けてもらおうと思ったのだ。
「ネマの遊びにかける熱意、本当にすごいわ……」
「珍しくマーリエにほめられた!」
「ほめているんじゃなくて呆れているのよ!」
ツンデレなマーリエさん、素直じゃないねぇ。
ニマニマしていると、パウルもボソッと何かを呟いた。
「ん?」
「なんでもありません」
聞き返そうと思ったら、素知らぬ顔で返された。
なんて言ったんだろう?
なんか釈然としないまま視線を戻すと、ダオがマーリエに問いかけていた。
「今日は何を作ろうか?マーリエは何がいい?」
「……そうね」
何を作るか相談し合う二人。
そんな仲良しな二人の姿に、私はほっこりしてしまう。
何年経っても、今のように仲良しでいてもらいたいな。
「ネマ、作るもの決まったの?」
「できてからのお楽しみよ!」
今日作るものは決めてある。
道具もあることだし、今日はマーリエに上手いと言わせてみせるからね!!
◆◆◆
「ネマ……これは何かしら?」
「ソルよ!」
「……炎竜様ってこんなんなの?」
どこか戸惑っている様子のマーリエ。その視線の先にいるパウルは、ゆっくりと首を横に振った。
「マーリエは……うーん……わかった!ファングね!」
「我が家で飼っているリアよ!そもそも、ファングって何よ!?」
リア……?え、マーリエのお家で飼っているリア、猫のスフィンクスみたいに毛がない種類なの??
「ファングって、火山にすむ小型の魔物じゃなかったかな?」
「ダオ、物知りだね!これくらいの大きさでね……」
ファングを説明しようと思ったら、作ったものを魔物と間違われたことにマーリエが怒り、説明どころではなくなる。
ファング、ハツカネズミみたいで可愛いし、害のない生き物なのに……。
「ダオ!私とネマ、どっちが上手だと思う?」
「えっ……」
いきなりそう詰め寄られたダオは、不安げに視線をさまよわせる。
「ダオルーグ殿下、ネマお嬢様のことはお気になさらず」
だから、私のことをなんでパウルが答えるの!
「……マーリエの方が上手いと思うよ?」
パウルのアドバイスに従ったものの、なぜか疑問形で答えるダオ。
それでも、選ばれたことに満足したのか、マーリエはそうでしょうと胸を張る。
ダオがマーリエを選ぶのは仕方ない……というか、私を選んでいたらそれはそれで問題なのでお説教コースだ。
でも、私の作ったソルもなかなかいい出来だと思うんだけどなぁ……。
二人が帰ったあと、私はパウルに聞いてみた。
「私の作ったソル、下手だと思う?」
「……僭越ながら申し上げますと、下手ですね」
バッサリ斬られた!!
「下手なのか……」
パウルの言葉を受け止め、自分が下手なのだと認めるも、気持ちは落ち込んでしまう。
その後、なぜか粘土のソルが消えてしまうという不可思議なことが起きたと思ったら、珍しくソルの方から話しかけてきた。
――我はなかなか味のある出来だと思うぞ。
最初はなんのことかわからなかったけど、詳しく聞いたら、粘土のソルを精霊さんが本物のソルに届けていたことが判明した。
それで、下手だと言われた私を慰めるために、ソルが話しかけてくれたようだ。
――本当?ソルは気に入ってくれた?
――あぁ。我を模そうとしてくれたことが嬉しい。
ソルが気に入ってくれたのならいいか。
――ありがとう、ソル!
ネマとマーリエ、手先の器用さはどっこいです(笑)




