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勉強は嫌いです!

今回は差別的発言、体罰などの表現がありますので、ご注意下さい。


12/14 改稿


4歳になってからは、ノックスの訓練があるのでちょくちょく獣舎に遊びいってた。ノックスの訓練に参加したり、ワイルドベアーのベイと遊んだりしてすごしてた。

穏やかな毎日だったのに、家令のマージェスに教養をお教えいたしますって言われて、平和な日々にさよならを告げた。

最初は挨拶の仕方やテーブルマナー。

これはなんとかなった。

問題は政治経済と歴史。ちんぷんかんぷんだね。学生のときも社会の成績はよろしくなかったね。

あと、地理も少し教わったよ!


ガシェ王国の中心部にある王都。四方というか、東西南北にある領地。その領地を治めているのが宰相と三人の大臣。それぞれの家名がその領地の名前になっていて、パパンとこだとオスフェ領だね。他にも北方領とも呼ばれてるんだって。

領地には直轄領と貸与領があって、貸与領っていうのが、領地が広くて困るから代わりにその地域治めてよーってなノリで貴族に貸している土地のこと。封建制ってやつ?その貴族を代主って言って、治めている地域を家名の最後に代を付ける。

領=県、代=市や群、って感じかな。


政治の仕組みはよく理解できなかったけど、感想はたらい回しだね。

代主で手に負えないものは領主に、領主に手に負えないものは国王に。国王も即決できないものは会議にかける。


税金制度もあって、ちょっと変わってるのが職業納税。

ある一定以上の技能があれば、その技能を国に奉仕することで納税になるんだって。

芸は身を助くってやつ?

私も何か食べていける技術を身につけないとだな。


マージェスにわからないを連発し、困らせながらも、基礎はなんとか修了した模様。

今度からは家庭教師が教えてくれるそうで…。

ちっ、まだ終わりじゃなかったのか。結局、10歳になったら学校行くんだから、別に今しなくてもいいのにね。



「ネマお嬢様、今日から家庭教師を勤めて頂く、アンリー・デッサ様です」


紹介されたのは、30代後半のふくよかな女性。

若草色の髪はきれいにアップスタイルでまとめてて、瞳は琥珀色。お化粧も控えめだし、雰囲気美人だね!


「よろしくお願いいたします、ネフェルティマ様」


おぉ!お辞儀する姿は完璧だ!

動画があれば、教材にできるな。


「こちらこそ、よろしくおねがいします!」


マージェスがお茶の準備をして退室すると、アンリーさんの雰囲気が変わった。


「お嬢様にはまず、言葉遣いを直して頂きます」


ん?私の敬語、どっかおかしかったのかな?でも、お願いしますってしか言ってないよね?


「マージェス様にお聞きした所、お父さんお母さんとお呼びしているとか…」


あぁ、それのことか!

間違っちゃいないので、頷いておく。


「返事する時はちゃんと声に出して下さい」


すると、突然腕を抓まれた。服の上からだけど、爪が食い込んで超痛い!


「いった!」


何すんのさーっと、アンリーさんを睨みつける。

そうしたら、もう一回ギュッと抓まれた。


「貴族の淑女たる者は、何が起きようとも顔に出してはなりません」


くっそー。こいつスパルタ式でやるつもりか?もう、さん付けでは呼ばないぞ!敵だ敵!!


その後も、歩く姿勢が悪いと背中を叩かれ、口答えをすると抓まれ、言われたことができないと扇子で頭叩かれた…。その扇子、何仕込んでんだ!?マジ痛いし、たんこぶできたじゃんか!

まったく、子供に容赦ないんだから。これがこっちの教育方針だったら、学校なんていかない!


お兄ちゃんとお姉ちゃんの家庭教師もやったみたいだけど、やたらベタ褒めしてるから、体罰はしてないみたい。

まぁ、してたらパパンに言いつけて、日の目を見れないようにしてやったんだが。

にしても私だけって、バカにして…あぁ、これケンカ売ってんのかな?買っちゃうよ?私も敵前逃亡とかしたくないしさ。仕事で培った営業スマイルと猫かぶりは、十分武器になるよね!


今までがストレスフリーな生活だったせいか、次の日には食欲がなくなり、朝ご飯を残してしまった。

ストレスかな?体の方が正直者ってことか。

それを見て、家族たちはすっごく心配してくれた。今まで残さず平らげてたからね、腹具合が悪いのかってお医者さんに連れていかれそうになった。

真っ先にお腹の調子を心配されるの、なんか納得行かない!私、そこまで食い意地はってる?風邪とか別の病気だったらどうすんのさ。

んで、とりあえず逃げてみた。

逃げたと言っても、お家で鬼ごっこだけどね。だって、原因はわかってんだもん。アザだらけの体を見られるのもマズいしね。



「ネマ、捕まえた!」


お兄ちゃんの声がしたと思ったら、突然体が動かなくなった。

なんか、目に見えないロープのような物で、グルグル巻きにされた気がする。

コレ魔法でしょう!反則だ!!


「まほうはずりゅい!!」


「文句ならあとでいくらでも聞いてあげるよ。それより、お母様への言い訳を考えてた方がいいと思うけど?」


うっ…。ママンの所に直行ですか…。

どうしよ…。

お兄ちゃんに抱っこされると魔法も解除されたが、逃げようにもお兄ちゃんも怒っているのか、顔が恐いデス…。


「ネマ、どうして治癒術師(おいしゃさま)が嫌なのか、理由を言えますか?」


ママンのお部屋で、説教モードのママンとご対面。

ちぇっ、パパンの方が扱い易いのに。


「…いたいことするから」


「わたくしに嘘が通じるとでも?ネマはそんなにお馬鹿さんだったかしら?」


うぅ…通じないのは百も承知してるし、馬鹿なのも否定しないけどさ!

でも、言っちゃうと負けのような気がする…。あ、勝負だと思ってるのは私だけか。


「遊んでいるときにできたという痣のせいよね。でも、本当はアンリー・デッサが原因なのでしょう?」


…バレてやんの!

ママンってば、魔法で覗いてたりしてたの?プライバシーの侵害だよ、それ。


「なぜ黙っていたの?」


「…うられたけんかはかうしゅぎだから」


だってそうでしょ!

売られたケンカは買わないと江戸っ子じゃない!

うん、江戸っ子じゃないよ。地方の田舎育ちだよ。

あー、んーっと、この庶民感覚がいけなかったりする?


「わたくしたちには手を出すなと?」


その通り!

ケンカは一対一のガチンコタイマン勝負じゃないとね!


「おとーしゃん、やめさせちゃうでしょー?」


「えぇ。絶対にするでしょうね」


パパンとお姉ちゃんにバレるのは避けたいんだよね。あの二人、怒ると火を吹くからさ。強い火属性特有というべきか、怒りの感情が強いときに魔力がだだ漏れて火に変換されちゃうんだよね。


「ネマはあのアンリーに勝てる策はあるの?淑女の鑑と呼ばれている彼女に、まず作法では勝てないわよ」


なんじゃそら?淑女の鑑が子供に体罰とかしてんじゃねぇよ!

ますます負けらんねぇぞ!

闘志をメラメラと燃やしていると、ママンは楽しそうに微笑んでいた。

説教モードは解除されたみたいだけど、何かあるな…。


「アンリーと勝負するなら、同じ舞台に立たないと話にならないわ。ネマ、アンリーから盗めるものはすべて盗みなさい。そして、相手をよく知ることです。そうでなければ、勝負すらしてもらえなくてよ?」


うぅぅ、確かにママンの言うことも一理ある。

ということは、しっかりと貴族令嬢としての立ち振る舞いをマスターした上で、ケンカを買えということですね?


「アンリーにしゅくじょとみとめられなければいけないってことだね」


「ふふっ。ネマにできるかしらね?」


むぅー。できないと思ってるでしょ!

私はやるときはやるんだから!

いいよーだ。ママンの手のひらの上で踊ってやるもんね。


「じゃあ、僕がネマに協力するよ」


今まで成りゆきを見守っていたお兄ちゃん、いきなりどうしたっ!

優しく抱っこされ、聞こえてきたのは詠唱魔法の呪文。


「レクール・クレシオール」


『女神の癒し手』と呼ばれる治癒魔法だ。

痛みを訴えていた場所に、温かい手の感覚が伝わってくる。見えない手に撫でられると、痛みはスッと消えていく。きっと、アザもなくなっているんだろう。


「僕ならすぐに治してあげられるし、踊りの相手もできるよ?」


治癒魔法は、我が家ではお兄ちゃんしか使えないしね。

それより、踊りって社交ダンスみたいなやつかな?

面白そう!体を動かすのは大好きなんだ!!


「にーに、おねがいしましゅ!でも…」


「わかっているよ。アンリーのことに、僕は口出ししない。僕はね、ネマが素敵な淑女になるお手伝いをしたいんだ」


はうぅ。お兄ちゃんが一番私の扱い方を心得ているな。

お母さんには手のひらで転がされ、お兄ちゃんには程よく操られ…。むむぅ、今は仕方がないと開き直るしかない!


「デールとカーナのことは、わたくしに任せておきなさい」


ママンがそー言うのであれば、絶対にパパンとお姉ちゃんにバレることはないだろう。

我が家の最強はママンだし。…いや、ひょっとしたら、この国最強かもね。


よっしゃー!この国一番の淑女目指して頑張るぞー!!

…あれ?なんか違うけど、まぁいいか。



って言っておきながら、半年経ってしまった…。自分の馬鹿さ加減に我ながら呆れてる。

食欲は戻ってるし、アザだらけになるようなことも減った。お兄ちゃんがいるから、どれだけやられても平気だけどさ。

もうすぐ5歳だが、5歳とは思えない程の技術を手に入れてやったぜ!

挨拶やテーブルマナーも完璧。お茶の淹れ方からお客様のおもてなしまで、あとは独学で時事とかも勉強した。

私のセンスと子供の体っていうこともあって、ダンスはあっちの世界で大会に出られるんじゃね?っていう程度のレベル。体動かすのは楽しかったから、ダンスは続けたいなぁ。


お母さんからは褒められたし、お姉ちゃんもびっくりしてた。

普通短期間でここまでやらないらしい。学校に上がるまでの間に、貴族としての作法を身につければいいんだって。

ってことは、学校に行くようになるまで、もふもふとなでなでして過ごせるってことですね!

それだけでも頑張ったかいがあったよ!


さてさて、こっからが反撃開始ですよ、ふっふっふっ。



アンリーの前では、完璧に猫をかぶっている。アンリーはそれを自分の教育の賜物だと信じてるんじゃないかな?


「ねぇ、アンリー。イクゥ国がかんばつでたいへんなのに、なぜそうせい教は何もしないのかしら?」


イクゥ国はガシェ王国の南西にある小さな国だ。

この夏、旱魃によって作物が育たず、国の蓄えだけでは次の収穫期まではもたない。そのため、近隣諸国と創聖教に助けを求めた。

我が国を始め、隣のミルマ国、王妃様の母国であるライナス帝国などが救済を決めた。しかし、創聖教がイクゥ国の旱魃は神罰だと発表した。

創聖教は神の怒りを買った国を助ける必要はないと言い、政治に創聖教が食い込んでいる国、数カ国が救済を打ち切った。


「イクゥ国は神様を怒らせてしまったからです。神の使徒である教会の方々が助けては、神の意に背くことになります」


「では、かんばつがしんばつだと、なぜわかるのです?」


「それは神子様がご神託を受けられたからです」


聖女に神子と来たか。これで勇者が召喚されれば完璧だね!


「しかし、人はそうぞうの神がつくられたのでしょう?それをばっするために死なせるのはおかしいわ」


「イクゥ国は獣人を擁護する野蛮な国ですから、何をしててもおかしくないですよ」


あーやだやだ。ほんと、馬鹿な選民意識を持った人って困るよね。

お前らが神に選ばれるような凄いことやったのかよ?やってないだろ。

それで神に選ばれた種族だって自意識過剰すぎて恥ずかしいわ!


「アンリーはイクゥ国のかたやじゅうじんにお会いしたことあるの?」


「まさか!恐ろしくて近づけませんよ」


だろうね。期待していた答えをありがとう!


「あなたのようなかたが、いやしい人だなんて思いもしませんでしたわ!」


心底驚いた風の表情を作り、アンリーの出方を待つ。

アンリーは最初、何を言われたのかわからないといった風だったが、理解できた途端、顔を真っ赤にして怒り出した。


「この私が卑しいですって!?」


バシッと扇子が飛んでくる。

私はそれをあえて受けた。これは教育に必要だと思っている体罰ではない。自分を蔑まされた怒りによる暴力だ。

必要なこととはいえ、めっちゃ痛い!てか、顔狙いやがりましたよ!

頬に当たったよ!!腫れるかな?腫れるだろうな。今まで露出している部分には攻撃してこなかったから油断した。


「だってそうでしょう?私は会ったこともないかたをさげすむような、ひれつな人間にはなりたくありません。それとも、そのような見かたが、きぞくのれいじょうとして正しいのですか?」


「…それは…」


「私はオスフェこうしゃくれいじょうとして、おとー様にはじないりっぱなしゅくじょにならなければいけないのです」


本当はそんなこと微塵も思っちゃいないけどね。末の娘の教育が甘かったくらいで、揺らぐような家名ではないもんね。


「そもそも、淑女が政治といった無粋な話をするのはよろしくありません」


ここまで来ると笑っちゃうよ?

この半年、アンリーの嗜好を調べるために観察し、言動からは思考を推察し、必要な情報を得るためにそれとなく質問したり、あえて怒らせて思ってることを暴露させたりしてたんだ。

そして、何度もシミュレートして、どう会話を運ぶべきか、何通りか用意してたけど、こうも上手く行くとはね。アンリーって意外に素直な性格だったんだね。


「では逆に、いきなお話とは何ですか?たしかにごれいじょうたちとお話しするときは、おいしいおかしのお店やドレスのお話しなどがこのまれます。しかし、とのがたがそのようなわだいにきょうみがおありかしら?それともアンリーは私に人形のようにもの言わず、とのがたのとなりにたっていろとでも?」


「いいえ。難しいお話しになったときは、ただ相づちだけでいいのです」


「そう。でもそれはあいてにしつれいなことだわ。かいわとはそうごりかいをふかめるためのものでしょう?」


時と場合によっては、相づちだけの方が上手く行くこともあるけどさ。それでも、へーそうなんだって言うよりも、確かにあれはよかったよねとか、知っていてなおかつ自分の意見も言える方が会話は楽しいと思うんだ。

人と話すってことは、その人を理解する上で欠かせないことだしさ。


「ほかのごれいじょうがたは、どのようにしてとのがたを楽しませているのでしょうか?」


殿方を楽しませるって、なんか卑猥だけどさ。まぁ、そういうニュアンスも含んでるけど…。


さすがにこの質問にはアンリーも答えられない。

そりゃあ、子供には言えないよね?

でも、意外と多いらしいよ?ワイドショー並みのムフフッな話は。

うちの侍女たちはかなりの情報通でしたね。


アンリーは細かく震え、何かを耐えるようにギュッと拳を握る。耐えているのは怒りか、それとも悔しさか。

私の視線から逃げるように、何も言わず部屋を出ていった。


よっしゃっ!勝ったどー!!

思わずガッツポーズしてしまうくらい達成感があった。

まずは1勝ってとこかな?アンリーがどう出てくるかで、今後の対策が変わってくるんだが…。

まぁ、考えるのはあとにしよう。なんか疲れた。

達成感がすぎると、ドッと疲労感が押しよせてきた。

はぁ。とりあえず、ノックスに癒してもらおう。


「ノックス、おいでー」


部屋に設置してある止まり木で、ひなたぼっこをしていたノックスを呼びよせる。

羽ばたかず、滑空だけで私の足の上に着地した。そして、もぞもぞと座り易い位置を探し、膝を曲げて座り込む。

これをリラックス体勢と私は呼んでいる。

背中を撫で始めると気持ちいいのか、ノックスがうたた寝し出した。

あーあ、産毛が全部生え変わっちゃったのは寂しいな。

でも、これから冬毛になるから、胸の部分とかふわふわになりそうだな。

冬毛と言えば、ナイトアウルの冬毛は極上の羽毛!鳥類の中で、今のところ一番の触り心地だね!

前の冬、私がずっと触るもんだから、ナイトアウルが毛繕いで取れた羽をくれたんだ。嘴に咥えて、はいって渡す姿は悶絶を通り越すほど可愛いくて、カメラがないことをマジで怨んだよ。


あっ!いっけね、ほっぺた冷やすの忘れてた!!



ネマが大人の階段を上りました!

どうしてこんな負けず嫌いになっちゃったのか…。貴族の令嬢らしくなったとネマは思っているみたいですが、中身は全く変わってないですよ(笑)


12/14

皆様のご意見を参考に、色々と付け足してみました!

今回は大変勉強になりました。

これからもよろしくお願い致します。

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