表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/332

★11巻お礼小話 早く起きた朝は……。(稲穂視点)

くわぁ~っと大きなあくびをして、ぐいーっと体を伸ばしたら、後ろ脚で耳をかきかきして準備は終了。


『あるじ様、起きて。早く起きないと、こわーいパウルが来ちゃうよ!』


あるじ様の顔をペロペロ舐めてみても、体の向きが変わっただけで、全然起きてくれない。

仕方ないから、今度はしっぽで顔をペシペシしてみる。


「も……もふもふぅぃぃ」


――ぎゃんっ!?


寝ぼけたあるじ様がイナホのしっぽをぎゅって握ったせいで、ちょっと痛い。

あるじ様、イナホのしっぽ、ぺちゃんこになっちゃう……。

どうにかしてあるじ様を起こそうとしたけど、あるじ様が起きるより先に扉の向こうにパウルの足音が聞こえた。

そして、コンコンって叩く音がして、パウルが入ってくる。


「ネマお嬢様。イナホと遊んでいないで、早く起きましょう」


『遊んでないよ!あるじ様がしっぽをぎゅーってはなしてくれないの!』


そう訴えても、パウルは知らん顔する。パウルは本当に意地悪だ!

あるじ様がパウルに起こされて、顔を洗ったり、お着替えしている間に、イナホはみんなにあいさつをしに行こうっと。


『セーゴ兄ちゃん、リクセー兄ちゃん、イナホ起きたよ!』


『イナホ、おはよう』

『おはよう、イナホ』


セーゴ兄ちゃんとリクセー兄ちゃんはイナホの本当の兄ちゃんじゃなくて、ハイコボルトって種類だってあるじ様が言ってた。見た目はコボルトなんだけど、能力はハイコボルト以上らしいよ。

でもね、でもね。シンキ兄様がイナホもすごい進化ができるだろうってほめてくれたの。えへへっ。


『シンキ兄様!カイ兄様!』


ちょうどお部屋に入ってきたシンキ兄様とカイ兄様を見つけて、嬉しくてついしっぽをブンブン振って飛びかかる。


「イナホ……危ないよ」


カイ兄様はまだ眠たそう。


「パウルに怒られるぞ」


シンキ兄様には注意された。

でも、パウルとの約束は、食べているときに走らない、跳ばない、かきかきしないだもん。今は大丈夫……なはず。

シンキ兄様になでなでしてもらって、カイ兄様にはほっぺにすりすりして少し匂いをつけておく。

本当はちゃんと匂いをつけたいんだけど、あるじ様にだめって言われたからがまんしてるの。イナホ、えらいでしょ!


『カイ兄様、今日も遊んで!』


「うん。いいよ」


カイ兄様と遊ぶ約束をしたので満足して離れると、止まり木にいるノックス兄さんが目に入る。


『ノックス兄さん、おはよう!イナホは今日も元気だよ!』


ピィと短く鳴いて返事をしてくれたけど、ノックス兄さんはイナホにはあまりしゃべってくれないの……。イナホのこと、きらいなのかな?


『あ、イナホ起きた!遊ぼっ!』


『ママも起きた?ぼく、ママのところに行ってくる!』


ハクにぃにはイナホの周りをぴょんぴょん跳んで、グラにぃには全速力であるじ様の部屋へ向かった。


「イナホはこれから毛繕いだから、ハクとは遊べないよ」


スピカ姉様に抱き上げられて、ちょっとげんなり。

毛繕いは気持ちいいんだけど、じっとしていないといけないからつまんない。

でも、毛繕いをしないと、あるじ様といっしょにご飯食べさせてもらえないの。


「さぁ、イナホ。お姉ちゃんが綺麗、綺麗にしてあげますからねー」


スピカ姉様に部屋の隅に連れていかれ、丁寧に体中をくしで撫でられる。


「痒いところはない?」


『背中はもうちょっと強めがいいな』


「ここ?」


『そこそこ~』


しっぽの先までふっさふさになったのを確認して、イナホはすっごく満足したよ。

スピカ姉様にお礼を言って、いつもご飯が用意してあるところまで行く。

すると、シンキ兄様がイナホやセーゴ兄ちゃん、リクセー兄ちゃんのご飯を持ってくるところだった。


『シンキ兄様ご飯!』


(あるじ)が来るまで待て」


ご飯の匂いにつられて、セーゴ兄ちゃんとリクセー兄ちゃんもやってきた。

兄ちゃんたちはピシッとお座りして、微動だにしない。

イナホはがまんできなくて、ふらふらとご飯に口が吸いよせられて……。


「イナホ、待て。あと、(よだれ)もどうにかしろ」


シンキ兄様に見つかって怒られた。

でも、兄様。よだれはイナホにも止められないの。

ご飯の誘惑と戦いながら待っていると、ようやくあるじ様が来た。

あるじ様のご飯も準備ができて、パウルが食べていいよと言った瞬間、兄ちゃんたちはすでにお皿に口を突っ込んでいて……。イナホは出遅れちゃった。

でも、ご飯は美味しい!

お皿がきれいになるまで舐めとっても、ちょっと物足りない。

最近はおやつの回数が増えたから、あるじ様と会う前みたいにお腹空きすぎて動けないとかはないし、幸せなんだ。


食べ終わったら口周りをきれいにして、お気に入りの場所でごろ寝する。

あるじ様がお出かけの準備をしている音を聞きながら、ちょっとだけ休むね。



◆◆◆


「稲穂、今日もいい子にしててね」


あるじ様になでなでされて、きゅぅぅって喉が鳴る。

イナホはあるじ様が連れ出してくれるときしかお外に行っちゃいけないから、いつもスピカ姉様やカイ兄様に遊んでもらうの。

セーゴ兄ちゃんやリクセー兄ちゃんはあるじ様の護衛で、いつもあるじ様といっしょですごくうらやましい。

イナホもしっぽがもっと増えれば、あるじ様の護衛としていっしょにお外に行けるかな?


扉のところまであるじ様をお見送りして、またお気に入りの場所に戻る。

ここはお日様も当たるから、ご飯のあとに寝るととても気持ちいいの。


「イナホ、寝る?」


『うん、寝るぅ……』


「僕、出かけてくる」


『は~い。帰ってきたら遊んでね』


カイ兄様のご飯は特別だから、お出かけしないとご飯を食べられないらしい。

あるじ様からももらえるって言っていたけど、カイ兄様が食べているとパウルやカーナ様が怖い顔するんだって。

怖いパウルは近づきたくないよね。うんうん。


くわぁ~っとあくびをして、体を丸めて目をつぶる。

今日は何をして遊んでもらおうかなぁ。






11巻は稲穂の出番が少なかったので、ここで。


基本、稲穂はお寝坊さんです。ネマが起きると一応目を覚ますが、そのまま二度寝。

スピカに無理やり起こされて、寝ぼけたままブラッシングからの朝ご飯がいつもの流れだけど、たまに早起きすることもある(笑)

稲穂が他の魔物っ子たちを違う敬称で呼んでいるのは、稲穂の中での序列が反映されているから。

森鬼が一番上で、よく遊んでくれるスピカと海がその次あので「兄様・姉様」呼び。ノックスはよくわからないけど、なんか上らしいので「兄さん」呼び。星伍と陸星は同じくらいだから「兄ちゃん」呼び。白とグラーティアは上だけど幼体だから「にぃに」呼び。

実は稲穂、白とグラーティアをにぃにと呼んでいても下に見ているんですよ(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ