次は獣舎にお邪魔してみた。
今日は特殊部隊の一つ、獣騎隊の動物たちがいる獣舎に遊びに行くことになりました!
仲良くなった竜騎士さんが、獣舎にも珍しい動物がたくさんいますよって教えてくれたの。
本当はパパンにおねだりしたんだけど、なぜかヴィの所に話が行ったみたい。
ヴィがまたグウェンを付けようとしたので、キッパリと断って、代わりにダンさんを要求しました!
あ、一応優しさだからね?
グウェン、生き物は全般苦手みたいだしさ。
そういえば、グウェンを断ったとき、グウェンの部下さんたちがリアルorzだったけど、どうしたのかな?
グウェンに弱点があったのがそんなにショックだったのか。
でも、人には克服できない苦手なモノってあるよね?考えようによっては、あのアイスビューティーに親近感わくからいいと思う。
ダンさんに手をひかれながら向かった先は竜舎の真反対の方角。
「動物は竜たちを恐がるからな。できる限り離してあんだ」
そうだよね。竜ってどう考えても食物連鎖のトップだもんね。
そら、ビビるわ。
で、さっきから高い塀に沿ってずーっと歩いてんだが、いつになったら着くんだ?
「もぅちゅく?」
「あぁ。この塀の向こうがそうだ。入り口は…ほら、あそこだ」
なんですと!!
これ、高さが5mはありそうなんだけど、監獄とかの間違いじゃなくて?
つか、結構な距離をこの塀に沿って歩いてたけど、どんだけ広いのこの王宮!!
入り口に入ると、獣騎隊の隊長さんが出迎えてくれた。
この隊長さんも、すぐに私に目線を合わせて挨拶してくれる。
「初めましてお嬢様。私は特殊部隊獣騎隊の隊長をしているレスティン・オグマです。どうぞ、レスとお呼び下さい」
レスティンは穏やかな人だった。始終笑みを絶やさず、さりげなくエスコートもしてくれる。まるで、絵本や物語に出てくる騎士そのもの。
外見もイケメンとまではいかないから落ち着く。
焦げ茶の髪は短くまとめてあって爽やかだし、髪よりもやや暗い茶の瞳は日本人と同じで懐かしい。
今まで会った騎士の中では満点だ!
ダンさんもいい人だよ?面倒見いいしね。最近、ちょっと元気ないみたいだけど。竜たちを眺めながら、ぼーっとしてる所をよく見かける。
ダンさんの困った所は、竜が好きすぎることかな。
私が竜の言葉がわかると知ったら、通訳してくれってなって、全部の竜に問診みたいなことやらされたの。
食べ物の好き嫌いから始まり、正確な年齢とか体調、お気に入り隊員の名前。
おかげで獣舎に来るのに15日もかかったよ。
そのときに、ダンさんからいろいろ質問されてわかったんだけど、間違った噂が流れてるみたいでさ。
私が正式に炎竜と契約してるってなってるんだって。原因は竜玉をもらったからだね。ダンさんが教えてくれたのは、体の大きな原竜が契約者と繋がっていられるようにって創ったのが竜玉なんだって。
でも、契約云々関係なく、気に入った人間ならあげてもいいやって感じだったよ?ソルはね。
ダンさんにはちゃんと訂正しておきました!
ソルは私が大人になったとき、ソルのことを必要だと思うなら契約するって言った。それがソルの持つ力が必要な状態なのか、ただ一緒にいたいだけでもいいのか、わからないのが難しいとこなんだけどさ。
話の流れで、『聖獣の恩恵』とはなんぞやって聞いてみた。そしたら、知らんってたった3文字で返答された…。ちぇっ、ダンさんも知らないのか。
家族は教えてくんないしさ、ソルは契約したときにわかるって言うしさ。どいつもこいつも。
さて、人間どもの話はこれくらいにして、メインイベントと行こうじゃないか!
レスティンに案内された先には竜舎と同じような光景が広がっていた。
ただ、牧場ではなくサファリパークだったが。
だって、地平線が見える…。
目に見える範囲は草原だけっぽいけど、魔法でいじってる区域もあると思う。
一番最初に出会ったのが、定番のお馬さんの群。
軍馬な彼らだけど、あっちの馬より少し体格がよくて、脚が太い。多分、力も強いんじゃないかな?
黒の青毛、焦げ茶の栗毛、白混じりの葦毛、真っ白の月毛と色合いはあっちと変わらない。
「ネフェルティマ様、折角なのであの子たちに乗って、獣舎を見て回りませんか?」
レスティンが素敵な提案をしてくれた。
やったー!
小さいときにポニーに乗せてもらったくらいしかないから、すっごく嬉しい!
あ、小さいときって前世でだよ?
「おうましゃんのりゅー!」
私が両手を上げて喜んでいると、レスティンは指笛で馬を呼んだ。
すっげー!指笛って口笛より大きい音でるんだね。
指笛に気づいて、一頭が走って来た。
群の中でも一際体格のよい青毛の個体だ。
「この子はあの群の長で、ワズといいます」
ふむふむ。何やら俺様オーラを感じると思ったら、群のボスですか。
呼ばれて来てやったのに、なんだこのチビは?みたいな視線を感じるんですが…。
「ネマってゆーの!よろしくねーワじゅ」
「フンッー」
鼻息あっらいなぁ。
…ん?てか、今鼻で笑われた感じ??
これ、ひょっとして見下されましたかね。
ふーん、そういう態度取っちゃうんだ。
ワズに向かってにっこりと笑う。
ワズの方もジッと私を見ている。
睨んでるの方が正しいかもしれないが、そんなの気にしなーい。
馬は主と認めた人にはすっごく従順だって言うしね。一応警戒してるみたいだしさ。
ここは根比べだな。
「ワじゅあしょぼー!」
笑顔は絶やさず、何度も「ワじゅ」と連呼する。
ワズは私から視線を外し、レスティンの方を見た。このチビをどうにかしろってことかもしれないけど、レスティンは面白そうに事の成り行きを見守っているだけ。
「ワじゅあしょんでくりぇないのー?レしゅしゃんべつのとこいくー?」
「ブルルルルッッー」
ワズが前脚で地面を掻いて抗議してきた。
うんうん。せっかく主に会えたのに、もうバイバイじゃ淋しいよね。
だから、私を認めたらレスティンもついてくるんだよ?
「じゃあしょぶ?」
もう一度聞いてみると、後ろにいる群を見たり、レスティンを見たりと落ち着きがなくなった。
ボスとして群を取るか、個として主を取るか葛藤してるのかな?
「すみません、ネフェルティマ様。ワズは少し我儘な所がありまして…」
そうレスティンが言った途端、ワズが項垂れた!
脚元が気になったとかではなく、ガーンって言う効果音が聴こえてきそうなくらい項垂れたよ!!
超カワイイ!!
これって素ですか?こっちがデフォルトですね!?
群のボスってのもあって、頑張って俺様を演じていたんだね。
俺様もいいけど、断然こっちの方が可愛くて好きだ。
とりあえず、誤解解いとこうか。
「レしゅしゃんちがうのー。ワじゅはわがままじゃないよ?むりぇのぼしゅとして、しりゃないひとをむりぇにちかじゅけたくなかったんだよー。ねーワじゅ?」
ワズに問いかけると、鼻面を押し付けてきた。
なんでチビのくせにわかるんだよ!でもありがとうっていうとこか?
くそぉー愛いやつめ!
鼻筋を撫でて、首の部分をポンポンとしてやる。
とりあえず、ワズを籠絡できたかな?
「えっ!?」
ようやく私の言ったことが理解できたのか、レスティンが驚いた声を上げた。
滑舌が悪くてすみませんね。
「えーっと、ワズはあえて我儘な態度を取り、人間を群から遠ざけていたと?」
「しょーだよ」
信じないの?
てか、ワズはレスティンに対しては甘えん坊でしょ?
「馬がそんなことするのか?」
「ワじゅはあたまのいいこなの!」
ダンさんまでもが、信じ難いって顔してる。
死んだふりとか仮病を使う動物だっているし、犬だって甘えん坊な子は試行錯誤して飼主の気をひこうとするでしょ!
一生懸命説明して、二人は半信半疑ながらも納得はしたみたい。
レスティンがワズに、気づいてやれなくてごめんって謝った。
ワズは嬉しそうにレスティンにスリスリしている。
うんうん。こういう光景はほんわかしていいね。
ワズとも仲良くなったことだし、早く行こって二人を急かす。
「ネフェルティマ様と相性がよくて、ダンにでも乗れる子を呼んでくれないか?」
レスティンがお願いすると、ワズは群の方に向かってヒヒーッンって高い声で鳴いた。
すると、群から一頭がこちらに駆けてくるのが見える。
その子が着く前にちょいと質問!
「ダンしゃんにでもってどーゆーこちょ?」
おっと、油断した。失礼。
「オレは馬は苦手なんだよ。獣騎士のときの相棒はワイルドベアーだったし」
気まずそうに言ってるけど、馬が苦手ってダメじゃん!騎士に馬は付き物でしょ!!
しかもクマって…地で金太郎やってたの?武器は斧じゃないよね??
えっ、ハルバートだった。………やっぱり斧かよ!!
想像してみた。どうやっても西洋風な金太郎。だってダンさんは私より茶が強い赤茶の短髪に淡い緑の瞳。筋骨隆々な濃い感じのイタリア系イケメンだもの。
なんて心の中で悶々としていたら、お馬さんが到着した。
よし、忘れよう!それが一番だ!!
ワズが呼んでくれた子は綺麗な白馬だった。
一目で気に入ったけど、私よりお兄ちゃんに乗ってもらいたい!そしたら童話に出てくる、金髪碧眼の白馬に乗った王子様ができるよ!!
「この子はヒューと言います。とても大人しく、乗り手に関係なく自分で判断して走るので、ダンには丁度いいですね」
わぉ!ある意味自動操縦!
そして何気なく皮肉ってる?
意外に腹黒キャラなのか??
さてさて、二頭に鞍を装着して、出発進行!!
ワズが残念な子になってしまいました…こんなはずでは(笑)
そして次回は大漁もふもふ!!