この時を待ってました!
ほとぼりが冷めるまで王宮に遊びに行くのを禁止され、謁見の間から約一ヶ月。
ようやくヴィが例の竜を見せてくれるって言ったので、意気揚々と遊びに行きました!
まずは、ヴィのお部屋で今日見せてくれる、リンドブルムとリンドドレイクのお勉強。
彼らはとても賢く、人間の言葉を理解はできるがしゃべれないとのこと。
そして、喉元や羽、尻尾を触られることを嫌うらしい。よっぽど気に入ったパートナーでなければ、攻撃してくるんだって。俗に言う「逆鱗」ってやつだね。
この世界では竜はまず3種に分類される。
炎竜のソルは『原竜』。あちらの世界の言葉に直すと古代竜かな?四大元素を司る聖獣であり、何千年という寿命を持つ。人語も操るその知識は生きる歴史であり、精霊と共に神に近しい者だと。
リンドブルムは羽を持つ小型の『翼竜』。体はトカゲのようだが、口がワニのように出張っている。有名なワイバーンもこの翼竜だ。
リンドドレイクは羽がないリンドブルムのこと。地を走る竜は『地竜』に分類される。蛇型のドラゴンや地中にいるワームもこの地竜になる。
竜騎士は竜たちに認められて一人前。普通の騎士より実力があるのはもちろんだが、竜にこいつなら乗せてもいいと思ってもらえるのが絶対条件なんだって。
だから、竜騎士たちの訓練は厳しく、竜たちのお世話も一生懸命やる。たまに、いきすぎてとんでもないことをしでかす人もいるみたい。そんな竜騎士たちの竜に好かれるための努力話を、ヴィから面白可笑しく聞いていたときだった。
部屋に一人の男性が入ってきた。制服を見ると近衛騎士のお偉いさんみたいだ。
にしても、この銀髪美青年、どこかで見たことある。
本を読んでいるふりをして、美青年をじっくり観察してみる。
銀糸の髪は長く、腰くらいまである。邪魔にならないよう、三つ編みにしてあるのに女性っぽく見えない。
体つきも近衛騎士の中では華奢な部類なのにな。まぁ、原因は目だね。水色の瞳から放たれる目力はクールを通り越してアイスだよ。そんな目で睨まれたら、悪寒でガクブル間違いない!
あれ?
そういえば最近、どっかで極寒アイスビームな視線を受けたことあるぞ…どこだっけ??
…あっ!!謁見の間だ!!
王妃様の斜め後ろくらいに居た。
王妃様にハグされたとき、すっげー睨まれたんだ。
私そのときそれ所じゃなかったから、ガクブルはしてないけどね。
ヴィに紹介されたので、椅子から下りて淑女らしく対応する。
「初めまして、お嬢様。グウェン・フィールズです」
挨拶した感じは、仕事には忠実だけど一癖も二癖もあるアイスビューティーってとこかな?
よし、めんどくさいから距離を置いたお付き合いをしよう!
でも今は、ヴィもいるから大人な態度で愛想良くしとかないとね。
大丈夫!体は子供だけど、中身は大人なんだから!!
それにしても、こっちの世界に来てからめんどくさいこと多いな…。
ヴィよ…人選間違ったんじゃね?
グウェン、私ほっぽって口喧嘩してますよ?可愛い可愛い竜にはいつご対面できるの??
てか、一緒に連れてきた部下さんたちも呆れてますケド。
んー、とりあえず様子見とくか。
でもさぁ、私待ちぼうけで暇なんですよ。誰でもいいから構って。
って思うと、来てくれるんだよね!
そこら辺を飛んでいた鳥さんが頭の上に乗っかってきた。
ツンツンと髪を啄まれ、手の方に下りてくると、ご飯は?って訴えられた。
あ…ごめんよ。今は餌になるもの持ってないんだよ。
謝罪の気持ちも込めて、羽をなでなでしとく。
そしたら、一匹のポテがやって来て、コレあげるーっと木の実を差し出してくる。
グハッ!!ちょっ…可愛すぎだし、なんていい子なんだ!!
スコティッシュフォールドみたいにヘタレた耳といい、フワフワしてそうな尻尾といい、そして何よりコテンっと首を傾げる仕草が堪らん!!!
いいんだよ?鳥さんには木の実は大きいみたいだから、君がお食べ。
その代わり、その魅力的な耳を堪能させてくれ!
指先でヘタレ耳の付根をなぞり、耳たぶを親指と人差し指ではむはむしてみる。
思ったより肉厚だな。
くすぐったいのか、ポテはぷるぷる震えている。
あぁぁぁ!!この衝動をどこにやればいいんだ!
ラース君とかソルみたいに大きかったらギュッてできるのにぃぃぃぃ!!
もう、人目がなかったら地面をバンバン叩きたい。それかギュッてしたい。
まて、近くにいるじゃん。力いっぱいギュッてできるの!
………で、まだやってんの!?
あーもぅ!ホントめんどくさい人だな!!この人、シカトしていい?いいよね?大人な態度とか言ってる場合じゃないよ。
だって、グウェンと口喧嘩している相手が竜騎部隊の隊長さんみたいだから、この人に直接頼めばよくね?
しかも、グウェンときたら、獣臭いとか言ってるんだぜ!トカゲタイプなら臭いとかしないし、どっちかっていうと藁とか草の匂いなんだけどね。
ホント、馬鹿じゃなかろうか。
ということで、話をぶった切ってやりました!
「ねー。りゅうしゃんにあってもいー?」
竜騎部隊の隊長さんのズボンをグイグイと引っ張って、私に意識も向けさせる。
すると、私に気づいた隊長さんはしゃがんで、私に目線を合わせてくれた。
これだけでいい人決定!
日常じゃ珍しくもないことかもしれないけど、王宮じゃこれをしてくれる人は一握りしかいない。
地位という物に依存している人ほど、人前で子供に膝を折ることを屈辱に感じるのだ。
グウェンもこれはしてくれなかったしね。
目線が合ったことだし、挨拶をしよう。
本来なら、身分が下の者から名乗るのが形式だけど、ムリなお願いをしているのは私だからね。
「デーりゅラント・オすふぇのじじょ、ネふぇるティマでしゅ」
笑顔でお辞儀をすると、隊長さんは私の頭をわしゃわしゃにした。
「ちっさいのに偉いな!オレは竜騎部隊の隊長をやってるダン・イェーツだ。ダンでいいからな」
「あい、ダンしゃん」
いいね、こういうフランクな感じ。実力で高い地位にいる人の方が、気さくで偉ぶってないんだよね。
「まぁ、見るだけなら構わねぇが、絶対触るんじゃねぇぞ?バクッと喰われちまうからな!」
んー、ソルの力もあるし、何より神から奪い取ったアレもあるから大丈夫だと思うけどね。
「あい。やくしょくしゅるー」
ダンさんと仲良くお手々繋いで、ようやく竜舎の中へ。
後ろでグウェンがブツブツ言ってるけど気にしない。つか、そんなに嫌ならついてこなくていいよ。
「グうぇんちゅいてこなくてもだいじょうぶだよ?」
って言ったら、部下さんたちがお側におりますと、なぜか張り切っていた。
別にいいけど、空気でいてね?邪魔されたくないからさ。
ようやくポテのもふもふを書けました。
最初の方に出てきた、タレ耳リスです。
リンドブルムたちは次回に持ち越しとゆー(笑)
短くてすみませんm(_ _)m