陛下とお出かけ!
私は今、豪華な馬車に乗せられてドナドナされている。
いや、ちゃんと事前に連絡はもらっていたけどね。
皇帝陛下に連れられて、ロスラン計画の予定地であるヘリオス領というところに向かっているらしい。
一度、転移魔法を使っているので、帝都から離れているのは確かだ。
ヘリオス領といえば、あの男装の麗人が治めている領地で、オーグルが出現して軽くはない被害が出ているのだとか。
そのオーグルは討伐されたとのことだった。
まぁ、魔物を殺さないようにしようってなっても、被害が出たのならば民を守ることを優先するよね。
それにしても、皇帝陛下がお忍びだって言ってたけど、全然忍べてないよ。
だって、皇帝陛下とルイさん、テオさんって揃っていたら、守る人の人数も多くなる。
現に、皇族が乗る馬車の周りには、軍人がいっぱいいる。
パウル曰く、彼らは軍人の中でも優秀なエリート集団らしい。
皇族の護衛。つまり、我が国でいうところの宮廷近衛師団のような存在で、警衛隊と言うんだって。
皇族個々に専属の隊が組まれ、皇帝陛下警衛隊、第一皇子警衛隊と呼ばれる。
その警衛隊が三隊いて、私たちの護衛をする別の軍人たちもいたら、かなりの大所帯である。
これで目立つなという方が無理だ。
だが、これだけ武装している人間がいるからか、今のところは平和だった。
しばらくまったり外の風景を楽しむ。すでにヘリオス領自体には入っているらしい。
山と緑の多い、自然溢れる場所なのはわかった。移動時間のほとんどが、変化の少ないこの光景ばかりだからだ。
突然、外の様子が変わった。
護衛の人たちが何かバタバタし始め、何やら指示も飛んでいる模様。
パウルが調べてきますと、馬車を降りようとしたところに、ルイさんがやってきた。
「ネマちゃん、おいで。珍しいものが見られるよ」
ん?珍しいもの?
どうやら危険はなさそうなので、ルイさんのお誘いに乗ることに。
ひょいっと抱っこされて向かうのは、列の先頭の方。
何があるのかワクワクしていると、なんか見えた。もふもふしたものが!
牙を剥いてこちらを威嚇しているもふもふだが、どうもおかしい。
もふもふ自体は見慣れた…いや、こちらの世界では見たことないが、あちらの世界では見たことのある生き物だった。
ただし、尻尾が一本のものならば。
「あれはキュウビという魔物なんだけど、知ってる?」
ルイさんがそう教えてくれたが、ちょっと待とうか。
キュウビだと!?
「…魔物なの?」
「そうだよ。まだ成体ではないけれどね」
…ヲイ、神様!ちょっとここに来て正座しなさい!
日本の神様の神使を、魔物にするとはどういう了見だ!!
心の中で神様に説教をしていると、唸っていたキュウビと目が合った。
警戒しつつも、何かを訴えるような眼差しが私に突き刺さる。
やめろ。私に助けを求めるんじゃない!
そんな暇があるのなら、今のうちに逃げるんだ!!
そう念を送っても、キュウビに届くことはなかった。
それよりも先に、新たに別のものが出現したからだ。
緑色と茶色の丸い物体。
うねうねと動く触手なようなものが、キュウビに伸ばされた。
-きゅーん
可愛らしい声を出しながら、キュウビはその触手に捕まる。
「…まさか、アルラウネ!?」
いやいやいや。アルラウネは可愛い女の子でしょ?夢と希望を壊すようなこと言わないで!
あれはどう見たって、RPGで素材をゲットするために倒すモンスターだよ?
急な展開についていけてないが、キュウビはもがきながらも炎を出して触手を焼き切った。
自由になった途端に、こちらに向かって全速力してくる。
もちろん、その後ろを触手が追いかけてきている。
警衛隊の人たちが剣を抜き身構え、魔法をいつでも発動できるようにし、戦闘態勢が取られた。
こちらに来てもフルボッコされるよ!と思っていたら、意外とキュウビの動きは素早かった。
器用に警衛隊の隙間をジグザグに走り抜け、あと少しで私の側まで到着するかと思われたのだが…。
森鬼がキュウビの首根っこをムズッと掴む。
-きゅーーん!
離してと言わんばかりにジタバタするキュウビ。
森鬼は無造作に投げる。…触手の方へ向かって。
-きゅーぅぅぅ
徐々に細くなっていくキュウビの鳴き声。
触手はそんなキュウビを見逃すはずもなく、空中でキャッチした。
え…どうしよう…。
なんとも微妙な空気に包まれる中、ウゴウゴとうねる触手。
アルラウネって肉食なの?あの子食べちゃうの??
しかし、これもまた自然の摂理…。生存競争とは過酷なものなのだと、自分に言い聞かせる。
今度はアルラウネを追い払うべく、警衛隊が魔法を放ち始めた。
植物だからなのか、使用されている魔法は火の属性のものばかり。
こちらを襲うような素振りは見せていないが、油断は禁物だな。
「アルラウネまで出てくるとは。さすがネマちゃんってことか」
どうも魔物ほいほいだと思われている気がする。
ガシェ王国では、魔物がいる場所に行ったから遭遇しただけであって、私が呼び寄せているんじゃないんだけどなぁ。
アルラウネが徐々に後退を始めた。
こちらが追ってこないとなれば、山にでも逃げるだろうと誰もがそう思ったとき。
アルラウネが爆発した。
魔法が当たったのか!?
ライナス帝国の精鋭がまさかの失態かと、周囲が騒ついた。
しかし、爆発したアルラウネの中から、きゅーんと元気にキュウビが飛び出したので、犯人はあやつだと判明。
食べられてなくてよかったねと言えばいいのか、爆発したアルラウネにご愁傷様すればいいのか、非常に判断に困る。
だがしかし、まだ事態は収束していなかった!
爆発したと思われたアルラウネは生きていた!
緑色した触手とは別に、茶色の触手まで出して、元気にうねうねし始めた。
両者一歩も譲らぬ大バトル!!
二匹の熱いバトルは決着がつかず、もう何十分経過しただろうか……。
私はルイさんに降ろすようお願いして、二匹に近づく。
「いいかげんにしなさーーーい!!」
大きな声で怒ると、バトルを繰り広げていた二匹がピタリと止まった。
「今日はもうおあいこよ!早く森に帰りなさいっ!」
人間がたくさんいる前でバトルするとは、ちょっと危機感が足りてないのではなかろうか。
先に進むために、退治しようってならないうちに、とっとと森へお帰り願いたい。
-きゅぅん
キュウビが甘えるような鳴き声を出してきたが、ダメなものはダメ!
「帰るの!」
お家へハウス!と言わんばかりに、森を指差した。
すると、いつの間にか馬車から降りた皇帝陛下がとんでも発言をかましてくれました。
「ネフェルティマ嬢、よければその魔物に名を与えてみてはどうだろう?」
「私が?陛下ではなくて?」
この前、聖獣の契約者が魔物に名前を付けられるか、自分で試すみたいなこと言ってなかったっけ?
「アルラウネは私もできそうだが、キュウビは無理だな。合わない、そう感じるんだよ」
陛下の言っている意味が理解できなくて、首を傾げる。
フィーリングとか、そんな直感的なもの?
「ネフェルティマ嬢は感じたことがないのかい?出会った魔物の中で、相性が悪いとか、そういったものを」
そう言われて、今までに遭遇した魔物のことを思い出してみる。
最初はゴブリン。かなり友好的だったね。
次はフローズンスパイダーかな?
グラーティアの母親は、我が子のために必死に飢えと戦っていた。
私たちを餌として見ていたのはわかったが、相性が悪いという感じはしなかった。
グラーティアにいたっては警戒すらされていない。
スライムたちは論外だな。雫からのご指名だったし。
コボルトのおちびさんは別として、コボルトの面々はいろいろとあったが、相入れないとは思わなかった。
セイレーンのお姉様方も最初はちょっと怖かったけど、面白いお姉様方だったし、海もねぇ。
「ゴブリン、フローズンスパイダー、スライム、コボルト、セイレーンに会ったけど、みんないい子たちだよ?」
今さらだけど、会った魔物に全部名前付けてたわ。
「属性特化がいなかったのか。アルラウネには何も感じない?」
アルラウネの方を観察してみても、これといって何かを感じることはなかった。
キュウビはと聞かれたので、キュウビからの好感度がなぜか高いと感じたと答えた。
「おそらくそれは、ネフェルティマ嬢が炎竜殿の契約者だからだろう。火の属性同士、相性はいい」
そもそも魔物に属性があるの?って思ったけど、コボルトの賢者の氏は魔法が使えてたわ。
ってことは、キュウビは火の魔法が使えるのかな?
「でも、聖獣を怖がっていた魔物もいましたよ?」
ゴブリンやコボルトの群れでは、ラース君に怖くて近づけないっていう子も多くいた。
ただ、うちの子たちは怖がらなかったけどね。
「まぁ、弱すぎる魔物は聖獣に近づくことはできないだろうが、弱くても相性がよければ近づけるのではないか?」
だから、その相性が謎すぎるんだが……。オーラとか、そういう不可視的なもの?
「万物に愛されるゆえに、愛し子のネフェルティマ嬢には理解できない感覚かもしれないな」
属性の相性かぁ。
皇帝陛下が感じているものは、どんな感じがするんだろうね?
人に感じる、この人苦手だなっていうのと似ているのかな?
「それで、付ける名は決まったかい?」
え!?名前付けるの確定なの?
「アルラウネに陛下が付けるのではなくて?」
「…もし、アルラウネが眷属になったとしても、使い道がないな」
いや、私もないよ!
護衛は森鬼とスピカ、星伍と陸星っていっぱいいるしさ。
「おきさき様のごえいとか?」
あ、でも、さすがにあの大きさは護衛に向かないか。
あと、肉食だとしたらご飯が大変そう。
スライムたちみたいに、なんでもいいわけじゃないしね。
「あぁ、それはありだな。后はああ見えて、可愛らしいものを好んでいるし」
ん?じゃあ、なおさらダメじゃん。
うねうねは面白いけど、可愛いからは遠い気がする。
「では、私がアルラウネ。ネフェルティマ嬢はキュウビといこう。先にお手本を見せてもらいたい」
やっぱり名前を付けることから逃げられなかった。
もふもふだけさせてもらえれば、森へ帰っていただいて結構なんだが…。
皇帝陛下の期待に満ちた眼差しが辛い。
ルイさんとテオさんも、興味津々な様子で止めようともしてくれない。
皇帝陛下がご所望なら、誰も止められないってことか。
キュウビに向き合うと、こちらもつぶらな目をキラキラさせていた。
四本の尻尾が、全部同じ方向にフリフリ揺れている。
九尾の狐と言えば、玉藻前か。あとはお稲荷さん。お稲荷さんと言えば、五穀豊穣の神様だな。
五穀なら、やっぱり米だよね。
米、白米を名前にしたら美味しそうだけど…。
うーん、稲じゃ名前っぽくないし。
稲…豊穣…あ!
実るほど頭を垂れる稲穂かな!これだ!!
でも、その前に。
「名前、欲しいの?私にしばられちゃうよ?」
-きゅう!
そっかぁ。いいのかぁ……。
じゃあ、仕方ないね。
「私はネフェルティマっていうの。君の名前は『稲穂』よ」
-きゅぅぅぅぃ!!
キュウビ改め稲穂は、物凄く喜んでくれた。テンションが上がって、私に頭ぐりぐり攻撃してくるほどだ。
「稲穂、少し落ち着こう」
宥めるように背中を撫でれば、想像とは違った感触に驚いた。
もふっもふな見た目なのに毛が固い。
そして、太い。
撫でると、指でその太さを感じ取れるくらいなので、人間の髪の毛よりも断然太い。
でも、チクチクはしなくて、滑らかだ。
近いと言うなら馬の尻尾のような感じだろうか?
逆に、尻尾の毛は見た目通り、ふっわふわのもっこもこだ。
しかも、温かい。
体温とかではなく、尻尾そのものが発熱しているみたいだ。
この尻尾だけは、ハンレイ先生の毛並みを越えるかもしれない!
凄く病みつきになる!!
-きゅっ!
稲穂が急にびっくりしたので、何があったのかと思ったら、白とグラーティアに驚いたらしい。
仲間になったことがわかったのか、二匹は友好的な態度で何やらアピールしている。
グラーティアの万歳スタイルはいつものことだが、えっへんって効果音がつきそうな感じなのはなぜだ?
白もぽちょんぽちょんと音を立てて、稲穂の周りを跳ねていた。
…もしかして、弟か妹的な存在が増えて嬉しいのか!?
末っ子の赤ちゃんスライムたちの方が、先に成体になっちゃったからな。
グラーティアはまだまだ幼体だし、白はあと一回進化しなければ親スライムにはなれない。
星伍と陸星は、小さいけれどハイコボルトに進化済みなので、ああ見えても成体だ。
あ、そういえば稲穂は雄かな?雌かな?
ちょっと調べさせてもらったら、雌だった。
-みゅっ!みゅーみゅっ!
-きゅんっ!
会話をしているように聞こえるけど、自己紹介でもしているのだろうか?
「この子は白で、こっちがグラーティアって言うの。仲良くしてね」
-きゅーん
稲穂が一鳴きすると、白とグラーティアが稲穂の背中に飛び乗った。
すると、稲穂は力強くジャンプして、見上げなければいけないほどの高さまで上がる。
確かにキツネは飛び跳ねるけど、あれは餌になる小動物を探す動作じゃなかったっけ?
ここまで跳ぶ必要ある?
「遊ぶのはあとにしなさーい!」
音も立てずに着地した稲穂。
素早く白とグラーティアを回収して、みんなを紹介する。
「私のおねえ様と、あなたのおにいちゃんにあたる森鬼、おねえちゃんのスピカよ」
すると、稲穂はきゅーきゅーと鳴きながら、お姉ちゃんやスピカに擦り寄った。
「可愛いわね。キュウビが出たと聞いたときはどうなるかと思ったけれど、さすがネマだわ!」
「イナホ、お姉ちゃんのスピカですよー」
二人に可愛がられる稲穂だったが、森鬼には近寄ろうとしない。
森鬼が怖いか、それとも相性とやらが悪いのか。
「あと、星伍と陸星ね」
-ワンッ!
-ワンッ!
二匹は元気よく鳴くと、稲穂をくんくんと嗅ぎ始めた。
くんくん、くんくん。
稲穂の周りをクルクル回って、しつこいくらいに嗅いでいる。
稲穂も同じように二匹のことを嗅いでいるので、特有の挨拶的なものかもしれない。
ほら、犬の挨拶はお尻の匂いを嗅ぐ的なやつ。
「稲穂、ちょっとおいで」
稲穂を呼び寄せて、額に紋章が現れているかを確認しようとしたが、密度の高い毛に邪魔されて見えなかった。
仕方ないので、グラーティアを手に乗せて、陛下に見せる。
「名前を付けると、こういったもんしょうが出てくるんです」
「なるほど。それで魔物側が受け入れたかどうかがわかるのか」
さて、次は陛下の番だ。
アルラウネはというと、少し離れたところでこちらを窺っているように見えた。
「声をかけて見たらどうですか?」
こちらから近寄ると警戒しそうだし、おいでおいでしたら来そうじゃない?
「そうだな」
すると陛下は地面にしゃがんだ。
これには、ルイさんたちも慌ててた。
でも、仲良くなろうってするのであれば、視線を下げるのはいいことだと思うよ。
まぁ、野生の動物に同じことやると、敵対意識持たれて襲ってくるけど。
「おいで。私とでよければ、仲良くしようじゃないか」
こちらをじっと見ているのか、触手の動きが止まった。
「大丈夫だ。君を傷つけるようなことはしない」
陛下は根気よく、おいでおいでと手招きをしている。
ここで私が口を出してしまうと、陛下に名前をつけさせてくれない気がして、ぐっと堪える。
ようやく、アルラウネが動き出した。
緑色の触手を陛下の方に伸ばして、何かを確かめているようだ。
護衛の警衛隊が庇おうとするのを、陛下が手で制す。
「さぁ、おいで」
触手が本体に戻ると、ゆっくりと陛下に近づいてきた。
陛下はそれをいい子だと褒めながら、手が届く距離に来るまで待った。
陛下、意外にも生き物とのふれあい方が上手い。
やはり、ユーシェがいるからかな?
「私はセリューノス・ラウ・ライナスという。君に名を与えたいのだが、いいだろうか?」
陛下がそう問うと、チッチッチッと小鳥のような鳴き声が聞こえた。
おそらくアルラウネの声なのだろう。見た目に反して可愛らしい声だ。
「では、『ウィーディ』の名を君に」
-チィー!チッチッ!
先ほどより大きな声で鳴いたと思ったら、うねうねが見る見るうちに小さくなっていく。
何が起こっているのかと見守っていると、うねうねがなくなり、小さな生き物が出てきた。
「ネフェルティマ嬢、これがアルラウネの本当の姿だ」
鼻のとんがった、茶色の顔と手足。小さくつぶらなお目々。
背中には毛の代わりに、緑色のツンツンしたもの…。
君、ハリネズミだったの!?
ウィーディの額には、グラーティアのものとは違った紋章が刻まれていた。
グラーティアのは白くカクカクした感じだけど、ウィーディのは青く丸っこい。
「ウィーディ、よろしくね。私はネマよ!」
ウィーディに手を伸ばすと、自ら手の上に乗ってくれた。
そっと背中のツンツンしたものを撫でると、思ったよりは柔らかかった。
「アルラウネの背中の棘は、葉が変質してできたものらしい」
陛下がそう教えてくれたので、じっくりと観察してみる。
葉っぱと言われると、確かに葉っぱに見える。
松の葉っぱのように細く尖っているので、チクチクしそうだけど。
「これがうねうねになるの?」
触手だと思っていたのは蔦の類いではなく、この葉っぱなのだろうか?
そう思ってウィーディに聞くと、わざわざ実践してくれた。
葉っぱが伸びて、数本が螺旋状に絡み合い一本となった。
おそらく、うねうねの太さも自由に変えられるのだろう。
今度は、足の方から茶色いものが出てきた。足ではない。
よくよく見ると、根っこっぽい。こちらの方が固くしっかりしていて、強度はありそう。
性質の異なる触手を使い分けていることはわかったが、この子は何を食べているのか気になるよね?
稲穂を襲っていたから肉食かな?って思ったけど、これだけ植物の性質を持っていると違うのかもしれないし。でも、一応、魔物だし。
とりあえず陛下に聞いてみたけど、陛下も知らなかった。
じゃあ、本人に聞いてみようってことで、翻訳係の森鬼を呼ぶ。
「ウィーディはいつも何を食べているの?」
-チィ?チッチッチッ!
「好きなものはイラエの実だと言っているな」
ほうほう。あの葡萄みたいな果物か。
肉食ではなく雑食ってこと?
しかし、ウィーディはまだ何か訴えている。
「…それは便利だな」
珍しく森鬼が驚いた表情を見せたあと、納得するように頷いた。
森鬼が言うには、アルラウネは食べ物からエネルギーを摂取できるが、背中の葉っぱと根っこからもエネルギーを得ることができるらしい。
ただし、そのエネルギーはもっぱら葉っぱや根っこを触手状にし、動かすためのエネルギーに使用されるので、生命維持には食べ物が必要なんだって。
好んで食べるのが木の実や果物。たまに虫。
じゃあ、なんで稲穂を襲っていたのかと聞くと、日向ぼっこしていたウィーディに稲穂がちょっかいをかけたことが原因のよう。
稲穂は稲穂で、初めて見るものだったから気になったと、ちょっかいをかけたことを認めた。
「稲穂、ウィーディにごめんなさいしようか」
そう促せば、稲穂は素直にごめんねと、頭を下げた。
と思ったら、ウィーディの小さな顔をベロベロ舐め始めた。
ウィーディの背中の葉っぱが、ハリネズミのように逆立つと、再び触手状になり、稲穂に襲いかかる。
「なんでまたちょっかい出すの!?」
触手に巻きつかれて苦しそうにもがく稲穂。
「ウィーディ、待って待って!」
ちょっ!首絞まってるよ!死んじゃうから、ギブギブ!!
白タオルがあれば投げ入れてたと思う。
慌てる私を横目に、陛下が笑いながらウィーディに声をかけた。
「ウィーディ、離してあげなさい」
すると、ウィーディは大人しくなり、触手も元の葉っぱに戻った。
ケンカするほど仲がいいとは言うが、これは違う気がする。
「相性が悪いと言うよりは…」
陛下も私と同じことを考えていたようだ。
「性格によるものだと思います」
あれだ。ソリが合わないってやつだ。
水と油。混ぜるな危険ってね。
そう言えばうちの子、マイペースな子が多いけど、やんちゃな子も多かったわ。
私と相性がいいってことは、私も同じタイプってこと?
甘えん坊なのは自覚あるけど、マイペースでもやんちゃでもないよ!
あ、あれか!神様と相性がいい子が集まってんのか!超納得!!
とりあえず、きゅーきゅーと泣きながら、ウィーディにやり込められた稲穂を慰めるとするか。
今回出てきたキュウビとアルラウネは、以前取ったアンケートの子たちでした!
アンケートにご協力くださった皆様、ありがとうございますm(_ _)m
きっと、神様とネマが再び出会ったら、説教されるでしょう。
ネマ「はい、そこに正座して。神様が厨二病なのは知っているけどさ、日本の神様の使いを魔物にするってどうなの!?日本に喧嘩売ってる??」
神様「いや、だって格好いいじゃん!超長い年月を得て神格が上がると尻尾が増えるとか!!」
ネマ「だから、なんで魔物にしたの!聖獣でもよかったでしょ」
神様「あ……。いやいやいや、善にもなれば悪にもなる。それが魅力なんだよ!わかる!?」
ネマ「忘れてたって顔してたけど?」
なんて会話があったりなかったり(笑)